2017年05月07日(日)

結婚と家族のこれから ~共働き社会の限界~ 



著者:筒井 淳也
発売日: 2016/6/16

評価〔A-〕 余裕を持って暮らしたい。
キーワード:結婚、家族、共働き、専業主婦、

家族をセイフティ・ネットとせざるをえないような社会とは、同時に家族がリスクになる社会でもあります。(本文より抜粋)


現代の日本の家族は晩婚化、未婚化、少子化と、数世代前とはまったく異なる特徴や問題を抱えています。このまま進むと家族は一体どう変化していくのでしょうか。本書では歴史や社会学の知見から、現代の家族について分析しています。

意外だったのは、古代では男性優位の社会ではなかったことです。個人よりも子孫を残すことが最も重要であり、家族ではなく村のような小さな共同体が構成員を守っていて、男女関係も厳格ではなくかなり自由だったみたいで興味深いです。歴史の流れで男性優位となり、専業主婦が誕生し、共働きへと変遷していく様子が分かりやすく説明されています。

家事や介護の問題は、他の本でも読んだのでそれほど衝撃的ではなかったのですが、共働きがもたらす格差は知らなかったので少々驚きました。恋愛や結婚を個人的な体験談ではなく、収入の面に注目して考察しているのがいかにも学者の本らしいです。同類婚や異類婚の概念はなんとなく分かっていましたが、きちんと専門用語があったんですね。家族・税・格差の関係が簡潔に示されているので、これから政治を志す人たちには知っていてもらいたいです。

著者の主張するように、家族に縛られることがない社会となるのか、それとも、今までにない新しい形となるのかまだ分かりません。しかし、過去や外国の現状を踏まえて、家族のありかたや問題を包括的に学べる良い本だと感じました。




[ 2017/05/07 17:37 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2017年05月07日(日)

2017年4月の読書メモ 

その「つぶやき」は犯罪です 知らないとマズいネットの法律知識〔A〕
重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る〔A〕
ふわふわの泉〔A-〕
盤上の詰みと罰 1〔B+〕
あなたの話はなぜ「通じない」のか (ちくま文庫)〔A〕

盤上の詰みと罰 2 (完)〔B〕
体育館の殺人 (創元推理文庫)〔B+〕


以上7冊です。漫画が少なく活字の本の割合が多いです。しかし、総数が少ないので、漫画を除けばいつもと同じくらいでした。

もう少し読めると思ったのですが、下旬は他のことに時間を使っていてあまり本は読めませんでした。上旬あたりは本を借りて読んでいたので、本を読まなかったという感じではありません。



[ 2017/05/07 17:21 ] 未分類 | TB(0) | CM(0)

2017年04月28日(金)

体育館の殺人 (創元推理文庫) 



著者:青崎 有吾
発売日: 2015/3/12

評価〔B+〕 雰囲気は軽く、推理は真面目に。
キーワード:推理、学園、文庫化

「あの人は探偵っていうより、引きこもりでアニメオタクの駄目人間かな」(本文より抜粋)


高校で殺人事件が起き、一風変わったオタクの生徒が事件に挑む・・・・・・と書くと、ライトノベルではありがちな推理ものと感じる方が多いと思います。しかし、それらとは違って、オタク趣味はあくまで物語のアクセントであり、見どころは理詰めの推理です。第22回鮎川哲也賞受賞作。文庫化。

最初は探偵役が天才的なひらめきで即解決と思っていたのですが、意外とじっくり推理をしていて少々驚きました。ひらめきではなく、様々な可能性を一つひとつ潰していく着実な論理で真相にせまっていきます。反論を断つ方法というか、逃げ道をなくすやり方で、ラノベのような軽い雰囲気も持ちながら、こうした推理を見せるのは味があると思います。

解決編の前に「読者への挑戦」があったので、それにつられて少しだけ推理してみましたが、見事に外れました。真相の半分くらいしかわかっていませんでした。きちんと時間をかけて推理すれば良かったかも。

劇中、オタク趣味に関する発言がちらほら出てきますが、分からなくても楽しめます。分かれば、より楽しめます。推理劇は古風、人物像は今風な作品でした。




[ 2017/04/28 11:15 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2017年04月25日(火)

盤上の詰みと罰 2 (完) 



著者:松本渚
発売日: 2015/11/12

評価〔B〕 記憶障害の真相とは。
キーワード:将棋、記憶、

「また私と対局してくれますか?」(本文より抜粋)


記憶障害の原因となった対局相手を探すため、都は旅を続けます。

劇中で某が、将棋の一手には感情や人生観が込められていると言っています。実際将棋を指していると、確かに相手の意図や気性が出ているなと感じることがあります。それが本書のテーマなのだと強く感じました。

都が追い求めていた相手はいったいどのような人物だったのか。ぼんやり予想していた人物像とは大きくかけ離れていましたけど、この漫画らしい、彼女らしい結末だったと思います。

もうちょっと将棋旅を続けて欲しかったかなとも思いますが、だらだら引き伸ばさずスパッと終わるのも潔くて良かったです。



[ 2017/04/25 21:58 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2017年04月25日(火)

あなたの話はなぜ「通じない」のか (ちくま文庫) 



著者:山田ズーニー
発売日:2006/12/6

評価〔A〕 よく考えて喋るのが重要。
キーワード:会話、コミュニケーション、実用、

問いを発見しよう。あなたが抱く問いには、かけがえのない価値がある。

(第2章4より抜粋)


人と話していると、どうにも用件や感情が伝わっていないと感じることがあります。逆に、相手の言わんとしていることが、よく把握できない時もあります。なぜ意思疎通がうまくいかないのでしょうか? 何が問題点で、どうすればより理解が深まるのか。編集者として長年小論文を担当してきた著者が、うそをつかずに通じ合える技術を丁寧に教えてくれます。

コミュニケーション技術を扱った本は多いと思いますが、本書ほど事細かく丁寧に書かれたものはあまりないと思います。会話の目的から論理的に話す方法、共感と信頼を得る心得と、本質を分かりやすく説明しています。この台詞さえ覚えておけば大丈夫、なんてお手軽な会話術ではなく、その場限りでない良い関係を構築するための考え方が、具体例とともに示されていて良いです。送別会でのコメントの例は、誰しも一度は似たような言葉を聞いたことがあると思うので理解しやすいですし、その直前の問いの見つけ方は会話以外にも役立つことでしょう。

正論はなぜ人を動かさないのか?は興味深かったです。理由を見て、なるほどと感心しました。また、著者が短い時間で全幅の信頼を置いた人物の話も、説得力がありました。こうした、おそらく皆が曖昧な感覚として知っていることを、きちんと言葉にして説明できているのが本書の素晴らしいところです。

得た知識をすぐ使いこなすことはできません。しかし、少しずつ意識しながら話をすることで考える技術を磨き、信頼を得ることによって多くの人と通じ合えることができるようになるのでしょう。前に読んだ「伝わる・揺さぶる!文章を書く」同様、良書でした。




[ 2017/04/25 21:55 ] 実用 | TB(0) | CM(0)

2017年04月12日(水)

盤上の詰みと罰 1 



著者:松本渚
発売日: 2014/11/10

評価〔B+〕 主人公は起きている間、将棋しかしてなさそう。
キーワード:将棋、記憶、

「私はもう一度、あの人と対局したいんです」(本文より抜粋)


霧島都は元プロ棋士で、全国将棋一人旅をしています。理由は、記憶障害の原因となった対局の相手を探し出すため。彼女は相手を見つけ出すことができるのか、なぜ記憶を失ってしまったのかを求める将棋の旅です。

将棋の魅力にとりつかれ、何よりも将棋が好きな彼女の生き様が実に楽しそうです。いや、記憶が1ヵ月ごとにリセットされてしまうのですから、本人にしてみたら苦しいのかもしれませんが、将棋を指している姿は生き生きとしていて目を引きます。旅先で出会う人々も将棋にいろいろな想いを持っていて、都との違いが面白いです。勝負どころは迫力があり、きっと将棋のルールを知らない人でも楽しめるかと思います。

クライマックスの対局ですが、最後にプロ棋士の解説つきで棋譜が載っています。見ただけではよく分からなかったので、実際駒を並べて見たのですが、どちらも攻め将棋で迫力がありました。96手目と97手目なんて私には高度過ぎて指せません。こういう手はプロが監修しているだけあってさすがです。

次で完結ですが、一体どのような相手とどのような将棋で終わるのか。期待しています。



[ 2017/04/12 21:09 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2017年04月12日(水)

ふわふわの泉 



著者:野尻 抱介
発売日: 2012/7/24

評価〔A-〕 泉のネーミングセンスも結構好き。
キーワード:SF、化学、宇宙、

「努力しないで生きたいと思わないか」(本文より抜粋)


SFでは遠い未来の魔法のような技術が度々登場しますが、その技術がいかにして作られ、そして発展していったのかを追ったのが本書です。物語は、努力しないで生きることが目標の化学部部長・朝倉泉が、唯一の部員・保科昶(あきら)と共に文化祭の展示物を制作しているところから始まります。第33回星雲賞日本長編部門受賞作。

身近で少し変わった出来事が起こる学園系SFかーと読んでいたら違っていて、どんどん突っ走っていきます。テンポよく進むので爽快で面白いです。良い意味で期待が裏切られた形でした。練られた伏線ではなく、現実の想像できるところからワクワクするようなところまで発展するのが、容易に想像できるのが本書の魅力ですね。SFの部分も少な過ぎず、かと言ってSFを読んだことない人が嫌になるほど多くもなく、ちょうど良かったと思います。

多少、強引な展開や唐突な急展開もありましたが、面白さが損なわれるほどではなかったです。推理小説のような緻密なシナリオを望む人には、合わないかもしれません。

あとがきによると、設定は専門家にお世話になったらしいので、おそらく科学的考察もしっかりしているのでしょう。あの物質も・・・・・・まあこれは読んでのお楽しみですね、表紙から受ける印象とは異なり、しっかりとした説得力あるハードSFでした。でも、泉の性格のおかげか、または著者の文章力のなせる業なのか、堅苦しくなく読みやすかったです。




[ 2017/04/12 21:08 ] 小説 | TB(0) | CM(0)