2016年10月13日(木)

人格転移の殺人 



著者:西澤保彦
発売日: 2000/2/15

評価〔B+〕 ややこしいSF推理小説。
キーワード:推理、人格交換、

自分が一夜にして、まったく他人の身体に変身してしまった、なんて事態は、いったいどういうふうに理解すればいいのであろうか。(本文より抜粋)


人格が入れ替わるなんてSFみたいだなと思っていたら、比喩でもなんでもなく本当にそのとおりだったので、推理小説でこういうのもありなのかと驚きと感心が入り混じった気持ちになりました。しかし、著者は超能力が存在する推理小説も書いているので、納得と言えば納得でしょうか。

アメリカのファーストフード店で偶然居合わせた6人の男女が、ある出来事がきっかけで人格が入れ替わります。混乱の中で話し合いが始まりますが、唐突に事件が起きてしまいます。犯人は誰の人格が行ったのか?を推理するわけですが、最初はとにかく戸惑います。名前を覚えたかと思ったら、入れ替わってしまいますので。

中盤、物語が急展開します。予想外で緊張感のある場面の連続でひきこまれますが、せっかく面白いルールがあるので、一人ひとりじわりじわりと退場していく展開が見たかったです。推理をしようとしても誰が誰だっけ?となり、加えて他の人物も誰が誰かも考慮しなくてはならず、真面目に解こうとすると本当にややこしいです。

最後の最後に明かされるあの真相は、読後感を良くしてくれます。ネットの評判はかなり良いですが、期待しすぎたためか白眉というほどでは・・・・・・好みの問題なのかもしれませんね。実写化したら映えそうです。




[ 2016/10/13 21:47 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2016年10月02日(日)

夜行観覧車 (双葉文庫) 



著者:湊 かなえ
発売日: 2013/1/4

評価〔B+〕 家族と野次馬を描いた小説です。
キーワード:家族、家庭、子育て、近所付き合い、

いったい、あの幸せを絵に描いたような家で何が起こったのだろう。(第一章 遠藤家より抜粋)


冒頭で事件が起き真相が分からないまま進むので、推理小説かサスペンスのようですが、内容は家族一人ひとりを描いた家族小説です。2010年に刊行されたものを文庫化。テレビドラマ化もされました。

家族の物語と聞けば、何か感動的な話を連想する方もいそうですが、「告白」を書いた著者の家族小説となると、綺麗事では終わりません。一見幸せそうな家庭でも不満やストレスがあったり、親の思いと子の思いがすれ違っていたり、そういう現実をきちんと描写しています。他人を理解する難しさを教えてくれます。他の作品でも思ったのですが、人の利己的な部分、悪とまではいかないけれど改めてほしい短所を描くのが巧いです。観察眼があるのか、著者の周りの人たちが個性的なのか・・・・・・。

家庭内だけでなく、家庭同士も思い込みによる誤解があります。事件を知った無関係の人たち、野次馬たちも同じです。小説の読者として客観的な立場で見ると、いかに単なる憶測に過ぎないことであるかが分かります。もしかしたら自分もそうなのかもしれないと、思い込みがないか疑ってみることが大切なのかもしれません。

事件の終結までの展開は、さほど意外性もなくあっさりしたものでした。そこが本書の要ではないのですが、もう少しだけ捻りが欲しかったです。



ちょっとだけネタばれ話↓
[ 2016/10/02 22:02 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2016年09月25日(日)

厭魅の如き憑くもの (講談社文庫) 



著者:三津田 信三
発売日: 2009/3/13

評価〔B+〕 分厚い本です。それと、まさかの真相。
キーワード:戦後、神隠し、民俗学、ホラー、推理、

ある種の感慨を覚えながら前方を見遣った言耶の眼に、神々櫛村の入口の両脇に立つ二体のカカシ様の何とも不気味な姿が、いきなり飛び込んできた。(弐より抜粋)


戦後、怪奇小説家の刀城言耶が取材で因習が根強く残る辺境の村を訪れ、そこで起きる事件に巻き込まれていく和風ホラーミステリーです。誰かの視点で固定されず、いくつかの視点で順番に物語が綴られていきます。刀城言耶(とうじょうげんや)シリーズの1冊目で、2006年2月に刊行した本を文庫化したものです。

なんといっても長いです。600ページ以上あります。序盤が固有名詞が多く読みにくかったので、最後まで読み切れるか心配しましたが、紗霧の日記からは読みやすくなって安心しました。前半はホラー要素が濃く、後半から終盤にかけてミステリ要素が強まっていきます。分厚い本なので、読んでいる途中でまだ半分も読んでないのかと何回も確認してしまいました。もう少し短くできなかったのかな。ホラーの雰囲気を出そうとすると、仕方ないのかもしれませんが。とにかく長いという良くない印象が大きく残りました。

しかし、最終盤の謎解きでは自分の予想した犯人が当たった?と思ったら、新事実発覚で外れていたり、二転三転して翻弄されましたけど面白かったです。意外過ぎる真相でしたが、見抜けた読者はいたのでしょうか? ヒントはありましたけど、相当難しいのではないでしょうか。

最後が見事だっただけに、その長さだけが残念でした。長くても気にならない人もいますので、好みの問題だと思います。無理に1冊にせず、上下巻に分ければ印象も違っていたと思います。もしも、上下巻だったら、上は評価Bで下は評価Aにしたかもしれません。



[ 2016/09/25 21:55 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2016年09月16日(金)

万能鑑定士Qの事件簿 XII (完) 



著者:松岡 圭祐
発売日: 2011/10/25

評価〔A-〕 最終巻らしかった、かな?
キーワード:鑑定士、知識、雑学、

「妻はいなくなるはずのない状況で消えたんです。でもそんなはずはありません。構造的に何か見落としているところがあるんです。鑑定でそれを浮き彫りにしてください」(本文より抜粋)


依頼人のすぐ近くで忽然と姿を消してしまった妻の捜索を頼まれた凜田莉子は、ある建造物の鑑定に挑みます。シリーズ12冊目、最終巻です。

問題の鑑定物は、日本人なら映像で見たことがありそうな有名な建造物です。どのような作りになっているのか知らなかったため、興味深かったです。機会があったら近くで見てみたいものです。一番の謎である蓬莱瑞希が消えたトリックよりも、正体不明の鑑定依頼や盗難事件の裏事情と事件周辺の謎解きのほうが面白かったと思います。

別の方向へ話が進みつつある状態で一度完結としたのは、少々惜しいですが良い判断だったのではないでしょうか。マンネリにおちいるよりはずっと良いです。最終巻ということで最後が気になるところでしたが、まぁ予想した範囲内で終わりました。1巻を読み始めてからかなり時間がかかってしまいましたけど、完結まで楽しませていただきました。時間が空いて久しぶりに読んだためか、最後の3冊は新鮮に感じてより面白かったです。ありがとうございました。

凛田莉子の物語は、「万能鑑定士Q推理劇」として続くようです。ちょっと調べてみたら4巻で完結みたいです。




[ 2016/09/16 21:54 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2016年09月16日(金)

万能鑑定士Qの事件簿 XI 



著者:松岡 圭祐
発売日: 2011/8/25

評価〔A〕 華蓮とは違ったタイプの強敵登場。
キーワード:鑑定士、知識、雑学、

「道理で考え方が似通っているわけね・・・・・・」(本文より抜粋)


舞台は京都、願いがかなうと言われる音隠寺は拝観者で賑わっていました。数年前まではまったく無名の寺だった若き住職の水無施は、衆人環視の元で願いをかなえてみせます。彼の神通力なのか、それとも何かトリックがあるのか。京都を訪れていた莉子は、偶然音隠寺へ立ち寄ることとなるのですが・・・・・・。シリーズ11冊目です。

今回の相手は頭も切れ弁もたつ強敵です。なにより今までの相手とは違って、ある事情から莉子も小笠原も驚き警戒します。理由は読んでのお楽しみですが、ひとつ言えることは、どのようなものでも使用者次第だということです。まさに裏と表のような。

彼はなかなか隙を見せない相手なので盛り上がりました。奈良の大仏の謎は見事にひっかかりましたし、なにより感心したのは古墳の書の秘密です。作者はよく思いつくなぁ。

人の死なないミステリらしく殺人はなく、読後感も良かったです。次で完結なのが惜しくなってきました。






[ 2016/09/16 21:52 ] 小説 | TB(0) | CM(0)