2017年06月24日(土)

イシュタム・コード 



著者:川口 祐海
発売日: 2012/10/3

評価〔C〕 終盤をじっくりやって欲しかったです。
キーワード:回顧録、SF、哲学、現代

どういうことなのか、見当がつかなかった。お母さんが戻るなり、オレはこのことを報告した。(03より抜粋)


ひっそりと起きる不気味な社会の変化を、主人公が過去を思い出しながら自分の成長とともに書く、という形式のファンタジック・ミステリー。裏表紙にはファンタジック・ミステリーとありますが、私はサスペンス風SFと解釈しました。

生物学や心理学、哲学とちょこちょこ興味深い会話がされて好みなのですが、本筋が進むのが遅く、ようやく核心に触れたかと思ったら、あっという間に幕が閉じてしまったので物足りなかったです。色々なものをちりばめて、面白くしようとしたのかもしれませんが、どうも散漫に感じられました。

確かにSFなのですが、成長物語や青春もののような感じがします。主人公と友人知人たちの日常の描写のほうが、本筋より多かったので。本筋をじっくり見せてくれれば、読後の印象が違っていたと思うんだけどなぁ。




[ 2017/06/24 10:48 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2017年05月19日(金)

フリーランチの時代 



著者:小川 一水
発売日: 2008/07

評価〔B〕 軽かったり重かったり色々。
キーワード:SF、短編集、

回復の見込みはゼロだった。でもこのとき世界には、Vフィールドが作られつつあった。(Live me Me.より抜粋)


表題作を含む5つの物語からなるSF短編集です。著者は名前はよく見かけるけど読んだことがなかったので、読みやすそうな短編集を試しに読んでみました。

軽い雰囲気で新時代を描いた「フリーランチの時代」があったかと思えば、現代から地続きで説得力のあるシリアスな人生の「Live me Me.」と、意外にも時代も雰囲気もバラバラな短編集です。よくある宇宙船で宇宙を旅する話もあり、これだけあればどれかは気に入った物語がありそう。印象深かったのは上で引用した「Live me Me.」と「千歳の坂も」かな。変わりゆく社会に翻弄されながらも、流されず自分の人生を生き切る意志が描かれていて目を引きます。

どれも落ち着いていて、登場人物が新たな一歩を踏み出す、というのが全体に共通する印象です。上手く表現できませんが。お腹を抱えるような笑いや、派手な展開とは縁遠いです。インパクトを求める人には、そこが弱いかもしれません。

著者の他作品「時砂の王」の外伝も収録されています。私は本編を未読だったので、そういった楽しみ方はできなかったのですが、読まなくても支障はありません。単体でも楽しめます。



[ 2017/05/19 21:35 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2017年04月28日(金)

体育館の殺人 (創元推理文庫) 



著者:青崎 有吾
発売日: 2015/3/12

評価〔B+〕 雰囲気は軽く、推理は真面目に。
キーワード:推理、学園、文庫化

「あの人は探偵っていうより、引きこもりでアニメオタクの駄目人間かな」(本文より抜粋)


高校で殺人事件が起き、一風変わったオタクの生徒が事件に挑む・・・・・・と書くと、ライトノベルではありがちな推理ものと感じる方が多いと思います。しかし、それらとは違って、オタク趣味はあくまで物語のアクセントであり、見どころは理詰めの推理です。第22回鮎川哲也賞受賞作。文庫化。

最初は探偵役が天才的なひらめきで即解決と思っていたのですが、意外とじっくり推理をしていて少々驚きました。ひらめきではなく、様々な可能性を一つひとつ潰していく着実な論理で真相にせまっていきます。反論を断つ方法というか、逃げ道をなくすやり方で、ラノベのような軽い雰囲気も持ちながら、こうした推理を見せるのは味があると思います。

解決編の前に「読者への挑戦」があったので、それにつられて少しだけ推理してみましたが、見事に外れました。真相の半分くらいしかわかっていませんでした。きちんと時間をかけて推理すれば良かったかも。

劇中、オタク趣味に関する発言がちらほら出てきますが、分からなくても楽しめます。分かれば、より楽しめます。推理劇は古風、人物像は今風な作品でした。




[ 2017/04/28 11:15 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2017年04月12日(水)

ふわふわの泉 



著者:野尻 抱介
発売日: 2012/7/24

評価〔A-〕 泉のネーミングセンスも結構好き。
キーワード:SF、化学、宇宙、

「努力しないで生きたいと思わないか」(本文より抜粋)


SFでは遠い未来の魔法のような技術が度々登場しますが、その技術がいかにして作られ、そして発展していったのかを追ったのが本書です。物語は、努力しないで生きることが目標の化学部部長・朝倉泉が、唯一の部員・保科昶(あきら)と共に文化祭の展示物を制作しているところから始まります。第33回星雲賞日本長編部門受賞作。

身近で少し変わった出来事が起こる学園系SFかーと読んでいたら違っていて、どんどん突っ走っていきます。テンポよく進むので爽快で面白いです。良い意味で期待が裏切られた形でした。練られた伏線ではなく、現実の想像できるところからワクワクするようなところまで発展するのが、容易に想像できるのが本書の魅力ですね。SFの部分も少な過ぎず、かと言ってSFを読んだことない人が嫌になるほど多くもなく、ちょうど良かったと思います。

多少、強引な展開や唐突な急展開もありましたが、面白さが損なわれるほどではなかったです。推理小説のような緻密なシナリオを望む人には、合わないかもしれません。

あとがきによると、設定は専門家にお世話になったらしいので、おそらく科学的考察もしっかりしているのでしょう。あの物質も・・・・・・まあこれは読んでのお楽しみですね、表紙から受ける印象とは異なり、しっかりとした説得力あるハードSFでした。でも、泉の性格のおかげか、または著者の文章力のなせる業なのか、堅苦しくなく読みやすかったです。




[ 2017/04/12 21:08 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2017年03月22日(水)

タイムマシン (光文社古典新訳文庫) 



著者:ウェルズ (著), 池 央耿 (翻訳)
発売日: 2012/4/12

評価〔B〕 意外と古さは感じませんでした。
キーワード:SF、イギリス文学、

「大方は絵空事に聞こえるだろう。それはそれで、やむを得まい。が、どう取られようと、私の話は何から何まで本当だ」(本文より抜粋)


とある会合で発明したタイムマシンを披露したタイム・トラヴェラーは、翌週の会合で痛々しい格好で現れます。そして、自分が体験してきた時間旅行について主人公たちに語り始めます。物語は大部分がタイム・トラヴェラーの語りで進みます。回想なので臨場感に欠けますが、物事を整理して語られているので読みにくいということはありません。

昔の人の予想する未来だから、現代と比較して未来像が当たったり外れてたりするのだろうなと予想していましたけど、それは大きく外れました。タイム・トラヴェラーが行ったところと現代の違いは、日本と外国ぐらいだと思っていたら、まるで別の星ではないかと思うくらいかけ離れていました。ある程度は当時のイギリス社会を反映しているのでしょうが、それを抜きにしても興味深いです。映像化したら衝撃的で面白いかもと考えながら読んでいたら、解説で既に映画化されていることを知りました。やっぱり他の人もそう思うよね。

本編の後に、著者の補遺、評論家の解説、著者の短い伝記、日本人研究家の解説、そして訳者あとがきが収録されいます。本書の3割を占めていて、本編をより深く理解したい人には良い読み物です。私は本編にだけ興味があったので、これらはさらっと読んでしまいましたけど。



[ 2017/03/22 21:45 ] 小説 | TB(0) | CM(0)