2016年02月10日(水)

傷はぜったい消毒するな 生態系としての皮膚の科学 



著者:夏井睦
発売日: 2009/6/20

評価〔A〕 新しい治療法にせまります。
キーワード:消毒、湿潤療法、創傷治療、

消毒薬による傷の消毒とは、言ってみれば「傷の熱湯消毒」と変わりないのである。(本文より抜粋)


数年前、テレビ番組で傷口をサランラップでグルグルまいている様子を見ました。なんだか痛そうだなーと思ったのを覚えています。あの傷を綺麗に洗い流してグルグル巻きの治療法――湿潤療法と、傷を消毒してはいけない理由を、著者の実体験とともに紹介しています。

傷の消毒はしなくてはいけないものではなく、むしろ消毒はしてはいけないと、従来とは逆の主張をしています。その生物学的説明、実践した結果、消毒に代わる適した治療法である湿潤療法が分かりやすく書かれていて、医学的知識がない方でも大丈夫です。例えば、傷を乾燥させても治る根拠を、口の中の傷は乾かせないけれど治りますと説いていて、説得力があります。何より痛みが軽減され、早く綺麗に治るのが良いですね。また、なんでもかんでも湿潤療法で治るわけではなく、適していないので病院に行ったほうが良い事例も記述しているのが、誠実または謙虚で好感が持てました。

医学の歴史から消毒が常識となった理由、傷が化膿する仕組み、生物の進化と細菌、今までの常識が変わるパラダイムシフトと、治療そのものだけでなく関係する周辺のことも興味深いです。生まれたばかりの新生児に皮膚常在菌を与えるため、母親に抱っこさせる育児法(カンガルーケア)があることを初めて知りました。

著者が医学の問題を解決策を探る方法として、医学より高次の生物学や化学の研究書を読んでいるそうです。従来とはまったく違う価値観は、こうした姿勢や考え方から生まれるのでしょう。感服しました。

あとがきでも、医学界に喧嘩を売りまくる本と書いてありますが、出版当初は風当たりが強かったと思います。湿潤療法で検索すると、多くのサイトで取り上げられていました。本書が出版された当時よりは、普及しているようです。湿潤療法は火傷にも効果的らしいので、もし大やけどを負ったら痛くないこの方法でお願いしたいです。火傷の消毒は相当痛いらしいので。


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[ 2016/02/10 21:20 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

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