評価〔A〕 あの仕掛けがすごいキーワード:SF、未来、人工妖精、ヒューマノイド・ロボット
「あなとと同じ、青色機関の一人、“全能抗体”。そういう風に言えば、あなたにはわかるはずね?漆黒の抹消抗体」(本文より抜粋)
関東湾に浮かぶ男女別の隔離自治区を舞台とした近未来SFの2作目です。揚羽の後輩の葬式で遺体が突如動き出すリビングデッド事件、人工妖精の顔剥ぎ事件、そして自治区を襲うテロ組織。大小さまざまな出来事が複雑に絡み合い、自治区を揺るがす大事件へと発展していきます。
前半の話のテンポが遅いのが目立ちます。SFならではの解説が多いですし、また登場人物たちのあまり重要でない話もあってか、なかなか進みません。しかし、他の作品なら冗長だと感じるシーンも、会話の内容が興味深いので面白いです。鏡子は相手を罵ってばかりですが、内容は分かりやすく長くてもあまり気になりませんでした。
テロと人工知能が大きく関係してくる話なので、前作の魔法っぽいSFよりは現実っぽいSFになったと思います。もちろん人工妖精も扱いが軽くなっているわけではなく、人工知能と人工妖精の違いも面白いし、終盤あの人が看破した水気質の本質もかなり興味深いです。
ところどころ、知っている人にだけ分かるネタが仕込んであります。AIRの「ゴールしてもいいですか?」や、月姫の「十七分割」など。一体、いくつあるんだろう。
前作は評価A-でしたが、本書は前作とほとんど同じかちょっとだけ落ちるかな。やはり初めて読んだ時の印象が強いです。今評価するなら、前作はA+にします。(笑) 本シリーズは好みなので、次も同じくらい面白いといいなあ。
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