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2013年09月24日(火)

ボクには世界がこう見えていた―統合失調症闘病記 

ボクには世界がこう見えていた―統合失調症闘病記 (新潮文庫)ボクには世界がこう見えていた―統合失調症闘病記 (新潮文庫)
著者:小林 和彦
出版:新潮社
発行:2011/10/28

評価〔B+〕 主観で綴る貴重な統合失調病記録です
キーワード:闘病記、統合失調症、精神科、精神疾患、幻覚幻聴

立ち上がると、世界が変わってしまった。空はオレンジ色になり、建物や地面はあやふやで、手や足がそれらを通り抜けてしまうのではないかと感じ、すべてのものが自分への脅威となった。(本文より抜粋)


24歳にして突如統合失調症を発症し、入退院を繰り返した患者本人が書きとめた闘病記です。統合失調症は聞きなれていない方も多いと思いますが、簡単に説明しますと幻覚や妄想などにより日常生活が困難となる精神病の一種です。

この病気は思考障害も引き起こし、論理的に筋道立てて考えるのができなくなることが多いそうですが、著者の文章は本人以外が読んでも理解できます。そういった意味で非常に貴重な記録です。

本書には幼年時代から現在までの半生が綴られていますが、発症するまでは波乱万丈というわけでもなく、やや冗長に感じました。しかし、発症してからの文章は興味深く、統合失調症にかかるとこのように世界が見えるのかとめんくらいました。客観的には合理的でない妄想も、主観では理屈の通った合理的な出来事に見え、そして行動した結果、周囲の人々といさかいを起こしてしまうことが分かりました。症状以外の文章は個人的なことが多いので、退屈に感じることがありました。小説ではないので仕方がないのですが。それにしても日記があるとはいえ、ここまで過去のことを細かく書けるなんてすごい記憶力です。

精神科の閉鎖病棟、開放病棟の両方の描写があり、どちらも比較的穏やかで落ち着いた場所のようです。患者と理解ある医療関係者たちしかいない世界は、著者も書いていますが、彼らにとって天国なのかもしれません。

終盤、某事件について『現実と妄想の区別がつかなくなった人間の犯行』と分析されているのを知った著者が、自分も区別がつかなくなったけど人は傷つけなかった、犯罪者と精神科の入院者をごっちゃにされてはたまらないと主張しているのに、はっとさせられました。非常に切実で重要なコメントだと思います。

読むと分かりますが、著者は内向的で記憶力が良く、自分の恋愛成就と世界の平和を願う人です。統合失調症だからまったく理解し合えない、というのは先入観です。偏見を持っている人ほど読んでほしい一冊です。



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[ 2013/09/24 21:49 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

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