2013年04月29日(月)

メタボラ(下) (朝日文庫) 

メタボラ(下) (朝日文庫)メタボラ(下) (朝日文庫)
著者:桐野 夏生
出版:朝日新聞出版
発行:2010/07/07

評価〔B+〕 よみがえるギンジの記憶
キーワード:記憶喪失、沖縄、若者、現代、

どういうわけか、<僕>の脳内ではさっきから、「ココニイテハイケナイ、ココニイテハイケナイ」という言葉が呪文のように繰り返されて、その激しい回転摩擦で脳味噌が沸騰しそうだった。(本文より抜粋)


居場所を確保できて落ち着き始めたように見えるギンジとジェイク。那覇で幸せをつかもうと、必死にもがきます。

ギンジはある人物と出会い、唐突に記憶を取り戻します。彼の語った半生は読んでいてかなり辛いのですが、グイグイ引き込まれました。家族、職場、将来……裏表紙にある『社会から零れ落ちていく若者のリアルと後戻りできない現代の貧困を暴き出す』の言葉どおりの現実がそこにはありました。著者の書く小説はもちろん創作なのですが、そう感じさせないリアリティがあります。おそらく現在も、ギンジのような人生を送っている人がいるかと思うと、相当重い気分になります。過去編はとても良かったです。その反面、安楽ハウスの続きは少々あっさりしたものに感じられました。もう少し関係者たちの内面が見たかったです。

巻末の解説では、社会と性差について言及しています。作中の性差はあまり意識していなかったのですが、思い返してみると、男性たちと女性たちは同じような境遇にあっても、違う考えや態度を示していて、なるほどなと感心しました。著者は人間の内面、特に負の面を描くのが上手いです。

終盤、ジェイクの現状を見てギンジがとった行動に驚きましたが、彼が何を大切にしているかと考慮すると分からなくもないです。でも、この結末は好みではないので、もう少しこう違った前向きな終わり方にして欲しかったです。


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[ 2013/04/29 18:25 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

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