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2013年04月25日(木)

メタボラ(上) (朝日文庫) 

メタボラ(上) (朝日文庫)メタボラ(上) (朝日文庫)
著者:桐野 夏生
出版:朝日新聞出版
発行:2010/07/07

評価〔B〕 記憶喪失の青年が今を生き抜く。
キーワード:記憶喪失、沖縄、若者、現代、

どういうわけか、<僕>の脳内ではさっきから、「ココニイテハイケナイ、ココニイテハイケナイ」という言葉が呪文のように繰り返されて、その激しい回転摩擦で脳味噌が沸騰しそうだった。(本文より抜粋)


記憶喪失となってしまった<僕>が、なぜか夜の森を必死で逃げている場面から始まります。名前すら思い出せない状態で、同じように森の中を逃走中の昭光と出会い、行動をともにすることになります。彼らはギンジとジェイクと名乗ることとし、生きのびようとします。ギンジは記憶を取り戻せるのか、ジェイクは自分の人生を思うようにできるのか。現代の沖縄を舞台にした、若者ルポ風サスペンスです。

若者ルポと書いたように、現代の若者が数多く登場します。旅に出たいため働いている者、夢を探している者、夢を追いかけている者、日々を楽しく暮らしたい者。共通するのは、裏表紙に『社会から零れ落ちていく若者』とあるように、社会的成功とはあまり関係なさそうであることだと思います。彼もしくは彼女たちの現実が、良い点も悪い点もうまく描かれています。釜田のゲストハウスの様子は容易に想像できて、なんか笑ってしまいました。

物語は主人公2人の視点が入れ替わりで進みます。礼儀正しいギンジと享楽的なジェイクの違いが、物語の幅を広げていて面白いです。どちらか一方だったら決して踏み入れなさそうなところにも行くので、色々見ることができます。ジェイクの沖縄の方言は、訳がなくて正直よく分かりませんが、それはそれで現実感があって良いと思います。沖縄の人が沖縄と本土と分けて考えていることは知っていたけれど、沖縄本島と離島でまた違うのは意外でした。そういう内と外の意識が強い土地柄なのかな。

「グロテスク」ほどは衝撃や新鮮味はないけれど、沖縄と若者の今を見ているようで興味深いです。どのような結末をむかえるのか、引き続き下巻を読みます。



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[ 2013/04/25 19:28 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

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