2012年12月23日(日)

街場のメディア論 

街場のメディア論 (光文社新書)街場のメディア論 (光文社新書)
著者:内田 樹
出版:光文社
発行:2010/08/17

評価〔B+〕 メディアを独特の視点で分析しています
キーワード:メディア、テレビ、新聞、出版、ミドルメディア

マスメディアの凋落の最大の原因は、僕はインターネットよりもむしろマスメディア自身の、マスメディアにかかわっている人たちの、端的に言えばジャーナリストの力が落ちたことにあるんじゃないかと思っています。(第二講より抜粋)


大学で教鞭を執る著者が、「メディアと知」という授業でのディスカッションを元に作成した、現代社会のメディアを分析した本です。

テレビや新聞の力が落ちている原因を、ネットなど外的要因ではなく内的要因であると断言しています。その一因として、メディアがクレーマーのようになってきていることを挙げていて、興味深く説得力のある意見だと思います。メディアの性質として、教育や医療を取り上げ始めてきた理由も頷けます。そして、不特定多数ではなく特定多数の人へ情報を発信する「ミドルメディア」の例を示しています。

また、本または情報の発信者と受信者の関係を、人類学の「反対給付」、つまり感謝の気持ちで成り立っているした点は、独特だと感じました。近親相姦の禁止を、この反対給付の概念で説明しているのは、実に斬新だと感じたのですが、人類学では常識なのでしょうか。生物学・医学・倫理以外で意義づけられていて驚きです。

しかし、独特な意見のためか、どれも全面的に賛成とは言えないのが残念です。最初のキャリア論では、学生の時点では適性は分からないと述べていて、自分にはしっくりきませんでした。出版の話では、本はお金をもらうより読んでもらうことが大切と力説していますが、現実的にお金は必要ですし、著者の思いに反して純粋にただお金を稼ぐために出版している人も中にはいると思います。その主張も分からなくはないのですが。

また、本は本棚に揃えて自分にも他人にも影響を与えることができる、電子書籍はそれができないのが欠点としていますが、読んでもいない本を本棚に並べて、読書歴を詐称するのは知的生活ではないと思うのですが。そもそも、未読で読むつもりもない本を本棚に置いておくのにビックリしました。そういう人もいるんですね。

著者のあまり一般的でない考え方に、一定の理解を示すものの全面的に賛成とも言えず、どうも戸惑ってしまいました。賞賛でもないけれど一理ある、のような。新聞やニュースで言われているようなメディア論に飽き飽きしているなら、本書を読んでみてはいかがでしょうか。



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[ 2012/12/23 18:46 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

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