2012年07月11日(水)

スワロウテイル人工少女販売処(ハヤカワ文庫JA) 

スワロウテイル人工少女販売処 (ハヤカワ文庫JA)スワロウテイル人工少女販売処 (ハヤカワ文庫JA)
著者:籘真 千歳
出版:早川書房
発行:2010/06/30

評価〔A-〕 人工知能生命体の可能性
キーワード:SF、未来、人工妖精、ヒューマノイド・ロボット

「やはり“傘持ち”は一人ではないのです?」
『常に一人に見えますが、消えたように思えて瞬いて観測されるようです?』(本文より抜粋)


ある病気の感染者を隔離するため、関東湾に男女別の隔離自治区が作られ、そこでは人間と人工妖精と呼ばれるヒューマノイド・ロボットが共存している世界。人工妖精の揚羽は、“傘持ち”と呼ばれる殺人犯を捜索するうちに、事件はより大きな事態へと発展していくヒューマノイド共生SFです。

不可解な事件を追うサスペンスのような感じで始まりますがミステリーではなく、現実的な緻密な設定でみせるハードSFでもなく、人間と人工知能の交流や人工妖精の生き様に重点が置かれているように思いました。粗筋や伏線も悪くありませんが、人と人工妖精たちの会話のほうがより良かったです。Amazonの書評に「人工知能の幸せとは何かという深遠な哲学的テーマ」と書いたものがありますが、それがしっくりきます。

ほとんど人間と変わらない人工妖精たちや自治区の環境を保つ蝶型微細機械群体の様子は、ハードSFではないのですが、もしかしたらこうなるかもと思わせてくれます。平和な理想郷ではなく、自治区内外に勢力争いがあるのが現実的です。また、自我境界の制約により人工妖精は4つのタイプしか存在しない、というアイディアは独特で面白いですね。人間の性格分類と似ていて興味深いです。

とにかく長いです。500ページ超え。展開がゆっくりなのが難点かも。それと、序盤はかなり分かりにくく読みにくいと思ったのですが、揚羽登場後しばらくして読みやすくなりました。途中さらっと読んでしまって理解の薄い箇所があるので、後で読み返すつもりです。それと、ややライトノベルっぽいので、そういうのが嫌いな方にはおすすめできません。そのあたりは各々の趣味で。

登場人物たちの哲学と生き方に心を打たれ、また色々と考えさせられました。本の厚さのぶん楽しめて満足です。



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[ 2012/07/11 21:40 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

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