2012年04月28日(土)

グロテスク〈下〉 (文春文庫) 

グロテスク〈下〉 (文春文庫)グロテスク〈下〉 (文春文庫)
著者:桐野 夏生
出版:文藝春秋
発行:2006/09

評価〔A〕 毒か薬にはなりそうな本。
キーワード:現代、性、

「あなたはユリコさんのお姉さんで、和恵さんの友達でもあったわけだから、二人と一番関係が深いわ。これを持つ人がいるとしたら、あなたしかいない」(本文より抜粋)


「東電OL殺人事件」を題材に、人の内面を描いた小説の下巻です。本書も心の悪い面で満ちています。

下巻も「わたし」の語りが大部分を占めるのかと思っていたら、和恵を殺害したチャン、ある人物と「わたし」の再会、そして和恵の日記とまるで群像劇のようでした。ひとりで語るよりは、多数の視点から人物や事件を知ることができるので、「わたし」だけから聞くよりは公正な判断ができるでしょう。

「わたし」はユリコを怪物と表現したけれど、「わたし」そして和恵も異常な存在・怪物となってしまったかのようで皮肉なものです。なるべくしてなったのか、回避の道はなかったのか、何とも言えない気持ちになります。和恵の日記は結末が分かっているだけに辛かった。女性の何々という言葉はあまり好きではないのですが、この物語はやはり現代女性の生がテーマなのだなと強く感じました。

印象に深く残ったのは、公判後に再会した人物との会話です。その人物の半生は意外にも波乱に満ちていましたが、それ以上に「わたし」の中身の話が衝撃的でした。とても重要なことで、読者も他人事ではないと言われたかのようです。創作ですが執拗に現実を突きつけてきます。凄い。面白いではなく凄いです。

結末はなんかこの物語らしいです。意外でしたが、そうなるのかとどこか納得したような感じ。凄いものを読んでしまった、読んではいけないものだったのかもしれない、というのが読後の感想です。子供の教育には悪い、いや彼女たちのようにならないように読ませるのが良いのでしょうか。迷います。読者はこの2冊で何を考え何を得るのか。性別や年齢にもよると思いますが、今一度6章のあの人の台詞を読んで考えてみたいと思います。



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[ 2012/04/28 23:18 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

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