2012年04月28日(土)

グロテスク〈上〉 (文春文庫) 

グロテスク〈上〉 (文春文庫)グロテスク〈上〉 (文春文庫)
著者:桐野 夏生
出版:文藝春秋
発行:2006/09

評価〔B-〕 予想以上に異様です。
キーワード:現代、性、

「ユリコは何と言っていいのかわかりませんが、ひと言で言うなら怪物でした。恐ろしいほどの美貌の持ち主だったからです。」(本文より抜粋)


1997年3月、ある女性が殺害されました。事件後、被害者の女性は一流と呼ばれる大企業に勤めているにもかかわらず、夜は売春をしていたことが発覚しました。本書はこの「東電OL殺人事件」を取材し題材にした小説です。2003年6月に発行された同タイトルの文庫版です。おそらく。

物語は「わたし」が相手に向かってひたすら喋る、取調べまたは取材のような形をとっています。主な登場人物は「わたし」、彼女の妹で絶世の美女のユリコ、努力家で後に一流企業の社員かつ娼婦となる和恵、天才肌のミツルの4人で、「わたし」は和恵と影響を与えた人たちについて語るのですが、その内容は辛辣で相手を肯定することがほとんどないのが特徴です。また、3章はユリコの手記なのですが、手記を読むと「わたし」の証言と違うところがあり、「わたし」の言うことを鵜呑みにしてはいけないと分かります。どれが事実かは読者が判断しなければならないのが興味深いです。

「わたし」に限らず登場人物たちは利己的で、理解できなくはありませんが、読者の共感を得るのは難しいと思います。悪意、嫉妬、憎しみ、ねたみ、高慢と否定的な単語でいっぱいなので、明るいのが好きな方は読まないほうがいいでしょう。途中、読むのが辛くなることもありました。でも、人の負の部分がこれでもかと描写され、かつ女性として生きる辛さ(のようなもの)も表現されているので、何か感じることは確かだと思います。題名のグロテスクとは、人の内面の異様さ・不快さなのでしょう。「毒にも薬にもならない」という言葉がありますが、本書はそうではないと言えます。

上にも抜粋しましたが、怪物的美貌のユリコとはどのような容姿なのか? 他人を褒めることが滅多になかった「わたし」が、身内にもかかわらず賞賛したその容貌を見てみたい気もするなあ。そんな妹を持つ「わたし」の感情も分からなくはないのですが……。

読むのは辛いですが、この先に何が描かれ、和恵はどうしてそうなったかが気になるので、引き続き下巻を読みます。




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[ 2012/04/28 23:13 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

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