2012年02月22日(水)

銃・病原菌・鉄(上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫) 

文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)文庫 銃・病原菌・鉄 (上) 1万3000年にわたる人類史の謎 (草思社文庫)
著者:ジャレド・ダイアモンド
出版社:草思社
出版日:2012/02/02

評価〔S-〕 文明はいつから差がついたのか?
キーワード:文明、格差、食糧生産、狩猟と農耕、家畜

現代社会における各社会間の不均衡についての疑問は、つぎのようにいいかえられる。世界の富や権力は、なぜ現在あるような形で分配されてしまったのか?なぜほかの形で分配されなかったのか?(プロローグより抜粋)


進化生物学者である著者は、研究のために訪れていたニューギニアである人物にこう尋ねられました。「白人はたくさんのものをニューギニアに持ち込んだが、ニューギニア人には自分たちのものといえるものがほとんどない。それはなぜか」。素朴だけれど極めて重要な疑問に、当時は答えられなかった著者が研究によって得た答えを記した人類の文明に関しての本です。ピュリッツァー賞、国際コスモス賞、朝日新聞「ゼロ年代の50冊」第1位。

買おうかどうか一年以上迷っていて、古本で2冊とも安かったらと思っていたら、今月文庫化することを知りました。裏表紙に待望の文庫化と書いてありますが、僕にとってはまさにそのとおり。うれしー。

現代の国や民族の差がこれほどまでに開いてしまったのは、西洋の産業革命が大きな原因だとよく耳にしますが、ではなぜその産業革命時点で格差がついたのか?根本的な原因としていつから差がついたのか?どうしてこのように違った文明と発達していったのか?を本書では究明していきます。確かにアメリカン・インディアンが産業革命を起こす可能性もあったのでは、と思う人もいるでしょう。その文明間の不均衡は偶然なのか、地域住民の能力の差なのか、はたまた何か他の要因があるのかを考察していて、非常に知的好奇心を刺激してくれます。以前読んだ「人類進化の700万年」が人類になるまでの話なら、この本は人類になってからの世界を追っています。先に前者を読んでおくと繋がって面白いです。

2章のポリネシアの島々の変遷や3章のスペインとインカ帝国の邂逅は、詳しく知らなかっただけに良かったです。前者は長いときの流れを感じさせ、後者は文明の差を明確にし、人類の歴史にも様々な衝突があったことを教えてくれます。また、9章の「シマウマはなぜ家畜にならなかったのか」は、確かに考えてみれば馬は家畜なのになぜ?と思います。こうした身近な話から語る歴史は、試験のための勉強とは異なって素直に楽しめます。このような話ばかりなら歴史の授業も面白く感じていたのにね。上巻最後の11章ででてくる病気は、人と人との争いには関係ないように見えますが、実際は大きな影響を与えていたことが分かります。

なお、Amazonのある書評によると、原書には日本について書かれた章があるようです。内容はどうであれ、著者が日本をどのようにとらえていたかは興味があったので、訳書には載せて欲しかったなあ。

話題は多岐に渡り興味深いのですが、持論を説明するための文章が多く、冗長に感じる時があります。主張が正しいことを補強するのは言いのですが、やり過ぎるとテンポが悪くなって読みにくいです。食料生産について幾度となく解説していますが、中盤は少々ダラダラしてしまったように感じました。それと、翻訳された本であるためか、文がわかりづらいところがあります。なんでこんな見慣れない言い方なんだろうと、何度か戻って読み返しました。段落と段落の繋がりに違和感を感じることもありました。先述の冗長さがその違和感をさらに悪化させ、簡潔で読みやすい本とは言えません。内容は良いだけに残念です。

しかし、美点が上記の欠点をしのいでいるため、全体として評価するなら良い啓蒙書だと思います。4章の図で、既に結論が出ていると言っていいのですが、あれは結構説得力のある結論なのではないでしょうか。色々思うところはありますが、引き続き下巻を読みます。




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[ 2012/02/22 22:37 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

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