2012年02月01日(水)

お伽草紙 (新潮文庫) 

お伽草紙 (新潮文庫)お伽草紙 (新潮文庫)
著者:太宰 治
出版:新潮社
発行:2009/03

評価〔B〕 ユーモアのある中期の太宰
キーワード:文学、太宰治、御伽噺、

「お前は、まあ、何を言い出すのです。私はそんな野蛮な事きらいです。亀の甲羅に腰かけるなどは、それは狂態と言ってよかろう。決して風流の仕草ではない」(お伽草子 浦島さんより抜粋)


日本や中国の古典・民話・伝承を下敷きに、著者が自由に物語を創作した短編集です。数編の中国の物語と、井原西鶴の作品を元にした「新釈諸国噺」、日本の昔ばなしを作り変えた「お伽草子」となっています。全編パロディのような本です。

太宰と言えば代表作・人間失格のせいか暗いイメージがありますが、中期ではお伽草子のようなユーモア溢れる小説を発表していて意外でした。詳しく描かれていないおじいさんや狸の性格を想像して個性を出すのは、解説でも書かれているように得意そうです。竜宮城の著者の解釈は斬新だと思いました。御伽噺は覚えているようで、かなり忘れています。特に、舌切雀は本来の話がまったく思い出せません。今度確かめて、太宰のそれと見比べてみます。

一方、「新釈諸国噺」は、著者が世界で一ばん偉い作家と絶賛した西鶴の作品を、独自に書き変えたものです。諸国と題しただけあって、日本の様々な地域を舞台とした小品を選び書いています。西鶴と著者を通して、当時の社会の様子や人々の想いが分かります。武士の義理を描いた「義理」、庶民の大晦日がテーマの「遊興戒」などは、時代を感じます。人の言動自体は今とあまり変わりなさそうですけどね。「赤い太鼓」はオチが良いです。最後の長台詞は実に上手い。

中国の古典の中では「清貧譚」が好みです。才之助の意地っ張りなところが。貧乏人のプライドは、客観的にはあのように見えるのでしょうか。うーん。

全体的にユーモアと遊び心に溢れています。太宰治が暗くて取っつき難いと思っている方には、本書から読むことをお勧めします。印象が変わる短編集となるでしょう。


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[ 2012/02/01 22:58 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

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