2011年12月29日(木)

李陵・山月記 (新潮文庫) 

李陵・山月記 (新潮文庫)李陵・山月記 (新潮文庫)
著者:中島 敦
出版:新潮社
発行:2003/12

評価〔B+〕 中国の古典を元にした短編集
キーワード:文学、近代、短編集

気が付くと、手先や肱(ひじ)のあたりに毛を生じているらしい。少し明るくなってから、谷川に臨んで姿を映して見ると、既に虎となっていた。自分は初め眼を信じなかった。(表題作より抜粋)


十代の頃、国語の授業で表題作である山月記を読みました。抜粋だったか全文だったか覚えていませんが、虎となってしまった人が何かを語っているシーンがどこか心の中に残っていて、後で読み返してみようと思っていました。それが読むきっかけです。

表題作を含む4つの短編・中編が収められています。全て中国の古典が元となっています。今風に表現すると、インスパイヤやモチーフといった感じでしょうか。山月記の素材は「人虎伝」です。

大人になってみて読み返した山月記は、記憶していたよりも深い物語でした。主人公である李徴の苦悩も、教科書で読んだ時はあまりピンときませんでしたが、大人になってみると色々と理解でき、その奥深さに心を打たれます。詩を歌った後、李徴は運命について話していますが、それがなんと言いますか人生を感じさせてくれて良かったです。上手く言い表せませんが。

人生の悲哀という点では李陵も興味深いです。漢の武帝の頃、戦乱の世を生きる軍人を通して、忠誠心・孤独・望郷の念など表現しています。李陵と同じような境遇に陥りながらも、違う行動を示した蘇武の存在によって、李陵の揺れる心が鮮明になっています。この作品は、昭和19年に中国語に翻訳され出版される程良く出来たものです。本場の人に受け入れられるのは凄いですね。

一つだけ残念な点があります。文章が古いためか、注釈が非常に多いです。そのため読む速度が落ちて、物語にのめり込むのを妨害された気分になりました。でも、その煩わしさがあっても、読む価値はあると感じます。


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[ 2011/12/29 23:52 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

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