2011年12月14日(水)

完全教祖マニュアル 

完全教祖マニュアル (ちくま新書)完全教祖マニュアル (ちくま新書)
著者:架神 恭介、辰巳 一世 他
出版:筑摩書房
発行:2009/11

評価〔S〕 真剣に不真面目な宗教入門
キーワード:宗教、マニュアル、入門書

教祖はただお金が稼げるだけではありません。あなたを信じる人々をハッピーにし、そして彼らからの尊敬も得られる素晴らしい職業なのです。(序章より抜粋)


常々思うのですが、人に難しいことを分かりやすく教えるのはとても困難なことです。興味を持ってもらえるように面白く教えるとなると、至難の業ではないでしょうか。その至難の業を、宗教という日本ではあまり良いイメージがなさそうな題材でなしえた本書には感心してしまいました。……まあ、敬虔な信者の方には怒られそうですが。

この本は教祖になるためのハウツー本、の体裁を取った宗教入門書です。目次を見ると、弱っている人を探そう、現世利益をうたおう、異端を追放しようなど真面目なのか不真面目なのか判断しにくいのですが、中身は不真面目な内容を真面目な顔をしてやっている感じです。

説明はところどころ今時の口調をそのまま使っていて、真面目な台詞が妙に俗っぽくなっていたりして笑いを誘います。仏僧はニート以下!と主張し、甘い汁を吸うため出版を勧めるその姿勢は、ここまで言い切ってしまって良いのだろうか?と一読者ながら心配してしまいます。

もちろん、ただふざけているだけではありません。キリスト教・イスラム教・仏教の3大宗教をはじめ過去の宗教が通ってきた道を例に挙げ、どのような経緯で何をするようになったかが解説されています。巻末の参考文献を見ると、きちんと調べて書かれていることが分かるでしょう。イスラム教は寛容だと聞いていたのですが、どこがそうなのかよく分からなかったのですが、食事規制や禁止事項の例を読み、なるほどと納得できました。また、お守りは免罪符という意見も理解できます。一見なんのためにするのか分かりにくい事にも、それなりの理由があるのが面白いですね。衝撃的だったのは、悟りをひらこうの記述です。なんかもう紙一重って感じ。

宗教の布教活動が資本主義社会の経済活動と似ているのは興味深いです。科学的ですと説明すると、鵜呑みにしてしまう人がいます。4章では、テレビの権威にしたがうおばさんとイスラム教徒の違いは、みのもんたに従うか預言にしたがうかの違いしかないと、その判断の委任の快適さを論じています。どの宗教も、程度に違いはあれそうした面を持つものだと再認識しました。また、宗教施設はディズニーランドと同じく別世界を感じさせ、高揚感を与えることで人々の心をとらえているとの分析はなるほどなーと思いました。

さすが「よいこの君主論」の著者だけのことはあります。大いに笑わせて、いや楽しませてもらいました。人間の宗教活動そのものを一歩突き放して見た、でも学術書のように硬く難しくはない読みやすい奇書です。特定の宗教に厚い信仰を寄せている人々には薦めにくいですね。




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[ 2011/12/14 22:39 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

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