評価〔C-〕 小説と随筆の中間作品キーワード:SF、現代
こんな夢を見た。腕組をして枕元に坐っていると、仰向に寝た女が、静かな声でもう死にますと云う。(夢十夜より抜粋)
近代日本には、短編小説と随筆の中間あたりに位置する小品と呼ばれる独自の分野があったそうです。文豪・夏目漱石が書いた七編の小品が収録されています。
「夢十夜」が読みたくて手にしたのですが、七編の中ではこれが一番好きです。こんな夢を見た、という書き出し語られるどこか怖くて不思議な物語が印象的でした。何が良いのかは表現しづらいのですが。第一夜は短いですが、綺麗で心に残ります。
「永日小品」と「思い出す事など」はそれぞれ本書の3分の1くらいずつあるのですが、読んでいて退屈でした。後者は闘病日記のようなものなので、大病を患ったことがある人には興味深い文章なのかもしれませんが……。また、「文鳥」は終盤の語り手の責任感のなさが、前半の良かった点も台無しになるくらい不快で後味が悪かったです。これは漱石自身のことなのでしょうか。もしそうだったら性格あまり良くありませんね。
中盤が面白くなかったので、途中読むのが苦痛に感じました。よく分からないところもあったので、読解力不足かもしれません。しかし、本書を全部読んでみて、今まで漱石を教科書でしか読んだことがなかったので、それとは違う面が見れたのは良かったです。