2011年10月20日(木)

自殺について 他四篇(岩波文庫) 

自殺について 他四篇 (岩波文庫)自殺について 他四篇 (岩波文庫)
著者:ショウペンハウエル
出版:岩波書店
発行:1979/04

評価〔B〕 題は「生と死について」くらいでいいのでは
キーワード:哲学、人生、自殺

自殺が果して犯罪であるかどうか、この点に関しては何よりもまず倫理的感情に訴えて判定をくだされたらいいとと私は思う。(表題作より抜粋)


強烈な題名です。表題作の他に4編も収録されているのに、なぜこれをタイトルに選んだのでしょうか。目次を見ると分かるのですが、おそらく他の題名が長かったり補遺であったりしたからだと思います。もう少し全体を上手く表した題があったと思うのですが。全編とも、著者の哲学随筆集の色合いが強い「パレルガ・ウント・パラリポーメナ」から抜粋されています。

全体的に、抽象的な漠然とした人生、生と死について語られています。読んでいて分かりやすい箇所と分かりにくい箇所が、はっきり分かれている印象を受けました。哲学者と言えば迷い悩んでいるイメージがありますが、著者はそのイメージに反して断定的な物言いで持論を述べています。「人生は現象である」と変わった見解であったり、「どのような人間の生活も悲劇の性質を帯びる」とマイナス指向の意見であったりしますが、本人に至っては真理にしたがって語っているだけだそうです。苦笑してしまったのがこれ、

未だかつて、現在のなかで、自分は本当に幸福だと感じた人間は一人もいなかった、――もしそんなのがいたとしたら、多分酔っ払ってでもいたのだろう。(P45より抜粋)


ここまでくると潔いですね。

こうなると、人生は素晴らしいと主張している数々の宗教とは水と油なのかなと思ったのですが、部分的に賛同したり否定したりと柔軟な姿勢を見せていて驚きました。その一例が表題作です。ユダヤ系の宗教では自殺は犯罪と考えているがどうなのか。キリスト教徒(と思われる人)からこういう意見がでるのは、興味深いですね。他に興味を引いたのは、

我々の人生の場景は粗いモザイックの絵に似ている。この絵を美しいと見るためには、それから遠く離れている必要があるので、間近にいてはそれは何の印象をも与えない。(P37より抜粋)


という表現です。備忘録としてここにメモ。

内容とは関係ありませんが、文章で「乃至(ないし)」という単語が出てきて、読み方がなかなか思い出せませんでした。難しい本を読むときは、手元に辞書を置いておいたほうがいいかも。

悲観的ではあり、現存在など見慣れない単語が多々出てきますが、時間と意志と生死についての見方が変わるかもしれない哲学の本です。たまにはこういう本も読んでおかないと。



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[ 2011/10/20 21:11 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

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