2011年06月08日(水)

沈黙のフライバイ 

沈黙のフライバイ (ハヤカワ文庫JA)沈黙のフライバイ (ハヤカワ文庫JA)
著者:野尻 抱介
出版社:早川書房
出版日:2007/02

評価〔B+〕 地に足が着いたSF
キーワード:SF、現代

「こっちから出かけてって、地球外文明を探したくはないかってことだ」
「そんなこと、できるんですか」
「できるさ」(表題作より抜粋)


JAXA(宇宙航空研究開発機構)職員が謎の有意信号に挑む表題作を始めとして、5つ作品が収められたSF短編集です。フライバイは天体への接近通過、または重力による宇宙船の軌道操作(別名スイングバイ)を意味します。この題名から察することができるように、科学的な論理を重視したいわゆるハードSFです。

SFが苦手な人が想像するSF小説のように、専門的で難解な箇所もありますが、ストーリーの分かりやすさや面白さがその弱点を補ってくれています。論理的であるためか、遠い未来の話ではなく近いうちに現実のものとなりそうな雰囲気があります。違和感ある表現ですが、地に足が着いているSFです。また、解説で野尻の小説は気負いがないと評しているのも、分かるような気がします。どの短編も、なんとかなるよ、という空気が流れています。

そんな現実味と気負いのなさが両立している、1人の大学生が宇宙を目指す「大風呂敷と蜘蛛の糸」が気に入っています。こう経験ある専門家ではない主人公が、独創的なアイディアと熱意で突っ走る様はなかなか格好良いです。エッセイ風に書かれた「轍の先にあるもの」も、途中まで事実を元にして書いているので、展開が未来に達してもあまり違和感がありません。作中で描かれたインド洋上空のアレの建設も、実際はあんなふうになりそう。

地球存亡の危機や人類滅亡の窮地はまったくありません。映画のような派手さの代わりに、現実的な夢のあるSF小説となっています。




スポンサーサイト

[ 2011/06/08 20:03 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

コメントの投稿














管理者にだけ表示を許可する

トラックバック

この記事のトラックバックURL
http://tonaku.blog51.fc2.com/tb.php/271-8645a695