2011年01月21日(金)

アリスへの決別 

アリスへの決別 (ハヤカワ文庫JA)アリスへの決別 (ハヤカワ文庫JA)
著者:山本弘
出版:早川書房
発行:2010/08/10

評価〔A-〕 社会批判的SF
キーワード:SF、短編集、社会批判、問題提起

「密航者?」報告を聴いた私は仰天し、次に笑いだしそうになった。「この二十二世紀に?」(「地球から来た男」より抜粋)


表題作を含む中短篇7本で構成されたSF短編集です。舞台は月面・未来・異世界・宇宙コロニーと多彩で、想像力豊かに描かれています。以前読んだ「シュレディンガーのチョコパフェ」と同じ形式ですが、本書は社会通念に対して疑問を投げかける問題提起のSF作品であるのが特徴です。

キャリアが長く、SFの賞の受賞歴もある著者だけに、どの作品もさすがに話を作るのが上手く読みやすいです。「地獄はここに」はすぐオチが読めてしまったのはご愛嬌ですが、ミステリー風に話が展開するものやどこに話が行き着くのか分からないものもあって魅せてくれます。「オルダーセンの世界」と「地球から来た男」が好みかな。後者は真相の意外性が良いですね。

しかし、他の作品でも時々見られるように、数編で著者の主義・主張が強く出ているのが気になりました。露骨と言うか直接的と言うか。その点が鼻についたり、興ざめしてしまうところがあります。小説なのですから、主張は弱めて娯楽性を前面に押し出して欲しいなぁ……。社会批判のためにSFを使うのは悪くないのですが。良くも悪くも著者の気配が漂います。

手に取りにくい表紙ですが、表題作を読む前と読んだ後では表紙を見る目が違ってきます。その意味は読んでからのお楽しみです。「始めから刺激的な題材だな」と思って読んでいましたが、あとがきに記述してある各作品の初出を見て納得しました。この短編は最初でないほうが、すんなり読むことができたかもね。

主張が強いので好き嫌いが分かれそうです。でも、なにはともあれ話そのものは面白いと思います。興味を持った方は読んでみてはいかがでしょうか。




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[ 2011/01/21 19:52 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

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