2008年02月24日(日)

夏期限定トロピカルパフェ事件 

夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)夏期限定トロピカルパフェ事件 (創元推理文庫)
著者:米澤 穂信
出版:東京創元社
発行:2006/04/11

評価〔A〕 小市民たちの夏休み
キーワード:青春、日常の謎

「今年の夏の計画を完遂するには……、どうしても、小鳩くんみたいな人がいてほしいの」(本文より抜粋)


前作から1年経った高校二年の夏、小市民を目指す小鳩君と小佐内さんを描いた連作短編集です。夏休みの初日、小鳩君の家を訪れた小佐内さんは甘いものの食べ歩きに誘います。彼女の運命を左右すると主張する<小佐内スイーツセレクション・夏>に。

大きな事件もありましたが、雰囲気や各短編の謎解きの様子は、前作と同様ゆったりとした感じでした。主要人物もほとんど増えず、あまり描写もされていません。つつましく目立たないように暮らすのが目的の2人だから、当然なのかもしれませんが。

随所にちりばめられた伏線を回収し、1つの長編ものとしてみせる仕掛けに驚かされました。終章「スイート・メモリー」はのめり込みました。いったいどの方向に話は進んでいくんだろうという疑問と、常悟朗の現在進行形で進む推理にだいぶみせられました。また、ある登場人物が違和感のある行動をとるのですが、それも最後で明かされる真相を読んで納得です。

【ここからネタばれ】
ゆきの態度に常悟朗は早い段階で違和感をもっていたけれど、事件が終わるまでは考えても分からないんじゃないのかな。スイーツ巡りに誘うのは恋愛感情と思わせるミスリードだとしても、推理を歓迎する態度はそれとは矛盾します。待ち合わせに家にいないのもかなり怪しい。そのあたりから彼女が誘拐事件が起こることを予想していた、と考えていたのですが、真相はもう少し複雑でした。彼の推理が一段楽した後の、『……そう言おうとした。しかし、ぼくはそれを言えなかった。』が、この後さらに何かがあることを暗示していてワクワクしてしまいました。すぐに書かないで溜めるのがいいね。

ちょっと変だと感じたところがあります。ゆきが誘拐中に救援メールを送れたこと。幾らなんでも隙があり過ぎだよね。

第四章の題「おいで、キャンディーをあげる」が彼女から彼に向けられていたものだと分かると、思わず唸ってしまいます。誘拐犯から彼女への言葉ではなかった。終章で明かされたゆきの本性があらわれています。常悟朗がゆきと付き合うのはスリリングと評したのがわかります。

【ネタばれここまで】

できれば第三章をもう少し長くして欲しかったです。この章だけ短くてバランスが良くないと思います。幕間、としてならちょうどいいかも。

終盤は予想していたよりも急展開で、しかも事件は解決したけれどなんとも言えない気持ちが残るような終わり方でした。しかし。どうやら「秋期限定」なる作品がでるようなので、今回の結末がどのように影響し、続いていくのか楽しみです。

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[ 2008/02/24 16:37 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

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