2009年10月17日(土)

アイの物語 

アイの物語 (角川文庫)アイの物語 (角川文庫)
著者:山本 弘
出版:角川グループパブリッシング
発行:2009/03/25

評価〔S-〕 テーマはAIだけど、それだけで終わらない
キーワード:SF、現代

「何だ? お話を聞かせてもらいたいってのか?」「逆よ。私が君に話を聞かせたい。」(本文より抜粋)


「神々は沈黙せず」以来、山本弘の本を読んでいなかったので、ネットで書評を調べて評判の良さそうなものをと手に取ったのが本書です。SF小説なので多少の科学知識があったほうが良いのですが、なくても物語自体は十分楽しめるつくりになっています。

読み書きができるほうが珍しいくらい人類が衰退し、ロボットが君臨する遠い未来。語り部と呼ばれる少年が一体のアンドロイドと出会う。そのアンドロイドはアイビスと名乗り、彼に話を聞かせたいと言う――彼とアイビスの会話、そして語られる7つの短編から構成される連作短編集です。テーマはAI(人工知能)ですが、それと同時にフィクションとしての物語の意義についても語られています。固そうな話に聞こえますが、意外とすんなり読めました。

短編はどれが好きか意見が分かれそうです。僕は「ブラックホール・ダイバー」と、ネットも評判が良かった「詩音が来た日」が好きです。後者は筆者の妻が元看護師だそうで、舞台の老人保健施設について現実味のある描写で良かったです。看護用アンドロイド・詩音が出した論理的な結論は、実にそれっぽいなあと感心してしまいました。最後の「アイの物語」も、AIと人間の関係はこうなるかもしれないと思わせてくれます。それにしても「正義が正義である世界」は、著者らしい趣味丸出しの短編だなあ。

AI同士の会話に彼らたちしか理解できない概念を使ったりと、AIの表現が新鮮でした。そして、AIと人間を対比させることによって、ヒトや心をうまく描写しているように感じました。また、最初の短編を2つを読み終わった時は正直言って普通かな~ぐらいに思っていましたが、読み進めるにつれどんどん面白くなっていったと感じました。

小説では初の評価S-をつけました。これはSFとしての設定よりもいかに印象的だったか、アイビス風に言えばいかに情動刺激されたかを考慮した結果です。気になることがなかった訳ではありません。7つの短編はやはり少し長い点と、AIを少し理想主義っぽく書かれているかなと感じた点です。しかし、その点を差し引いてもS-でした。SFファンだけでなく広く読まれて欲しいです。帯にあるように、映像化できれば凄いですね。


(追記するかも)


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[ 2009/10/17 19:27 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

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