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2020年05月22日(金)

ルポ 人は科学が苦手 アメリカ「科学不信」の現場から 



著者:三井 誠
発売日: 2019/5/21

評価〔B+〕 実物大のノアの方舟があるとは驚き。
キーワード:科学、宗教、政治、論理的、アメリカ、

温暖化を疑う姿勢は、その人の「知識のあるなし」に由来するのではなく、その人の「思い」から生まれているのだ。(第1章より抜粋)


科学分野でのアメリカといえば、NASAなどを見ても明らかなように世界の最先端を走っているイメージがあります。しかし、進化論を否定し人工妊娠中絶を許さない、科学よりも宗教を重んじる人々が少なくないというニュースも時々耳にします。また、科学に対する不信も深まっているそうです。なぜ科学を信じないのか、科学を専門とする記者が全米各地で生の声を聞いたノンフィクションです。

知識がないから科学者の研究結果を信じないと考えるのは著者も指摘していたように間違いで、結局人は見たいものを見て信じたいものを信じるということなのでしょう。私もネットで自分の反対意見の記事を読もうとはあまり思いません。本書ではその理由として宗教と政治に注目しています。宗教と科学が反発するのは分かります。政治とも合わないことがあるのは驚きでした。政治、政治と言っていますけど、正確には経済的な理由や反エリート主義だと思います。

問題点の列挙だけでなく、科学者たちの反科学に対する取り組みまで調べているのは良かったです。ただ知識を伝えるのではなく、アリストテレスの論理・信頼・共感の3要素をおろそかにせず相手に伝えることが大切なのは賛成です。話はよく分からないけれどあの人の言うことなら信じよう、なんてことは珍しくないですからね。

アメリカの取材だけで『人は科学が苦手』と言えるのかは疑問ですが、反科学の人々を理解するのに有益です。



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[ 2020/05/22 20:52 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2020年05月22日(金)

もっと言ってはいけない 



著者:橘 玲
発売日: 2019/1/17

評価〔A〕 問題点を間違わないように。
キーワード:社会学、遺伝学、先天的、進化、脳科学、

もしひとびとの素朴な常識が正しいなら、成長につれて一卵性双生児の類似性は下がっていくはずだが、実際には逆に高まっていくのだ。(2、一般知能と人種差別より抜粋)


受け入れがたい冷酷な真実を数々の実験やデータから明らかにしています。本書は前作「言ってはいけない」の続編ですが、こちらだけ読んでも理解できます。ただ、本書のほうが知能と遺伝と進化に絞って前作よりも論じる範囲を狭めているので、少し読む人を選ぶかもしれません。

タブーとされる知能や人種間の違いについても遠慮せずに書いているのが特徴です。読みながらツイッターなどで発言したら大いに話題になりそうな意見が多かったです。データに基づく結論は刺激的で説得力のあるものでした。著者の個人的な意見に対しては自分の意見とは違うなと思うことが時々ありましたが。

引用した上記の「知能に及ぼす遺伝の影響は年齢とともに増加」をはじめ、「同性愛が残った理由」「遺伝子から分かったサピエンスの移動」「アメリカで成功している高知能集団」「東アジア人は幼形成熟説」など興味深いものが多く読みごたえがありました。同性愛の項目では、男性の同性愛者は一見子孫を残すのに役に立っていないようにみえるけれど、彼らは男性を引き付ける魅力があり彼らの女性の血縁者も同様に男性に対して性的魅力を持つので、結果として自分に近い遺伝子を残す機会に恵まれると説明していて疑問は残りますが面白かったです。

また3章にある、犬種の違いを論じても差別ではないのに人種の違いについては否定される、は斬新で新鮮な意見でした。反発する人は出てくるでしょう。しかし研究は進んでいて、遺伝的には東アジア人とヨーロッパ人の差よりもタンザニア北部の人と西アフリカの人の差のほうが大きいことが明らかになっています。アフリカ内でそれだけ差があるなら一言で黒人と呼ぶには大雑把過ぎます。集団の特性を論じるべきか、論じるならどこで集団を区切るのか。難しいですね。

研究や実験によって自分には不愉快な結論が導かれても認めるのが公平であると考えます。問題をタブーとせず、何がダメなのかどこが不公平なのかを議論していく姿勢が大切なのではないでしょうか。



[ 2020/05/22 20:50 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)