2017年06月28日(水)
| 著者:野尻 抱介、 KEI 発売日: 2012/2/23
| 評価〔B+〕 はじめが身近なところが良い。キーワード:SF、宇宙、動画共有サイト、ボーカロイド、現代、連作短編集 「私、聞いたことあります。“ハミマ入店音シリーズ”のことですよね?」(「コンビニエンスとピアピア動画」より抜粋)
表紙や題名から推測できるのですが、動画共有サイトとボーカロイド、そして少し恋愛を加えたSFです。SFマガジンに載った3編に描き下ろし1編、合計4編からなる連作短編集です。 どのお話も、些細な思いつきからとりあえず面白そうなことを始めてみるのが発端で、ネットの動画投稿の精神がそのまま表れているのが実に現代的です。個人の願望がどんどん大きく発展していくのがテンポ良く描かれています。軽く緩い雰囲気を保ちつつ非日常へと繋がっていくのが楽しいし面白いです。2話目の「コンビニエンスとピアピア動画」が結構好みです。 元ネタがニコニコ動画と初音ミクなので、ネットやオタク文化に明るい人は親近感がわき、より楽しめると思います。著者のように動画を投稿している人は特に。逆に、そういうのが好きでない人たちにとっては、ピンとこないかもしれません。 SFらしく科学の専門用語が多い台詞もありますが、理解できなくても物語は楽しめますので心配いりません。私も分かりませんでした。全部分かる人は相当のSF好きか、宇宙ファン(と言うのでしょうか?)でしょう。 現実でタッチパネル式の端末が、突如現れた時のように、かなりワクワクしました。4話目はスピードも量も圧倒的で思わず笑ってしまいました。想像しやすい身近なSFは、なんというか世の中の可能性を感じられて楽しかったです。
2017年06月24日(土)
| 著者:加藤 元浩 発売日: 2013/2/15
| 評価〔B+〕 描き下ろしが良い。キーワード:推理、謎解き 「この問題は“問いかけ”ではなく“メッセージ”のような気がしたんです」(本文より抜粋)
いつもどおり1冊に2話収録ですが、後半の「Question !」は描き下ろしです。この「Question !」がなかなか面白かったです。 燈馬たちと家庭裁判所で調停を行っていた人たちに、差出人不明の宿泊招待状と奇妙な問題が届きます。皆、訳の分からないまま人里離れた別荘に集まり、謎解きを始めることになります。殺人事件のような派手さはありませんが、数学ネタ、今回はフェルマーの定理を絡めていて本シリーズらしさが出ています。ちりばめられた一つひとつの謎は難問ではありませんが、同時進行する別の問題を解くための鍵になっているのが巧みです。トリックや謎よりも、テーマの良さが光った物語でした。 こうした解決して終わりでなく、読後感が良く余韻に浸たれるエピソードがあるのがいいところ。あまり強調せず、説教臭くないのも好感が持てます。この点で言えば、前半の「チューバと墓」も悪くなかったのかもしれませんね。
2017年06月24日(土)
| 著者:川口 祐海 発売日: 2012/10/3
| 評価〔C〕 終盤をじっくりやって欲しかったです。キーワード:回顧録、SF、哲学、現代 どういうことなのか、見当がつかなかった。お母さんが戻るなり、オレはこのことを報告した。(03より抜粋)
ひっそりと起きる不気味な社会の変化を、主人公が過去を思い出しながら自分の成長とともに書く、という形式のファンタジック・ミステリー。裏表紙にはファンタジック・ミステリーとありますが、私はサスペンス風SFと解釈しました。 生物学や心理学、哲学とちょこちょこ興味深い会話がされて好みなのですが、本筋が進むのが遅く、ようやく核心に触れたかと思ったら、あっという間に幕が閉じてしまったので物足りなかったです。色々なものをちりばめて、面白くしようとしたのかもしれませんが、どうも散漫に感じられました。 確かにSFなのですが、成長物語や青春もののような感じがします。主人公と友人知人たちの日常の描写のほうが、本筋より多かったので。本筋をじっくり見せてくれれば、読後の印象が違っていたと思うんだけどなぁ。
2017年06月17日(土)
| 著者:村松 秀、 五月女 ケイ子 発売日: 2016/3/16
| 評価〔A-〕 発想力は鍛えられるキーワード:科学、アイドル、東大、テレビ番組、 ロケから帰ってきたすイエんサーガールズたちは、口々に「脳から火が噴いた」と叫ぶのが常だ。それぐらい、頭をグルグルと使うのである。(第1章より抜粋)
番組内で日常で起きる些細な疑問に挑戦してきたアイドルたち・すイエんサーガールズが、企画の一つとして有名大学の学生たちとの知力勝負をするのですが、彼女たちは強敵相手に予想以上の善戦します。なぜこんなに強いのか? 知力と彼女たちの強さの秘密に迫ります。 知力勝負の内容は、自由度の高い柔軟な発想が求められるものです。学生たちの知識を活かした思考力はもちろん、すイエんサーガールズの発想力には舌を巻きました。時には、それでいいの?と思ってしまうような結論で、実際に好記録を出してしまうのは、先入観に囚われないことの素晴らしさを感じます。 著者は番組で培った考える力・グルグル思考と、それを鍛えることによって育まれる知力に注目しています。答えなんてあるのだろうかと思ってしまうような疑問を何度もこなしてきた彼女たちは、相当頭を使ってきたはずです。例えば、「なんで足の小指を角にぶつけてしまうのか?」。これなんて、何が問題点なのかから考えないと答えにたどり着きませんよね。考えに考えることで、発想力や実践力を含む知力を高めていったのは納得です。 彼女たちが挑んだ問題が、読者のためのグルグル思考問題集として挙げられています。グルグル思考を7つの力に分けて、楽しく学べます。発想力を向上させる参考にしても良いですし、単に娯楽として読んでも楽しいです。ロウソクの火を一息とガッツポーズの問題は興味深かったなぁ。ただ、7つの分類した力はどこかで見たことがあるような感じで、斬新さはなかったです。 「知力の格闘技」はどの勝負も白熱しました。どのチームも発想豊かで、どのような打開策が出てくるのかを見ているだけでも面白かったです。かなりワクワクしながら読みました。会場で見てみたかったですね。総じて難しい理論や数式を使わず、知識ではなく知力について楽しく書かれた、楽しい科学読み物でした。
2017年06月17日(土)
| 著者:若木 民喜 発売日: 2015/10/16
| 評価〔B+〕 まさかの哲学漫画です。キーワード:哲学、人生、 「君の『自分がなぜここにいるのか?』という疑問。それに答えはあると思うかい?」(本文より抜粋)
初めて見た時、まさか哲学の漫画が出るとは・・・・・・と、驚くとともに嬉しかったのを覚えています。マンガワンで連載していた時に全て読んだのですが、手元に置いておきたかったので購入しました。 主人公の根地(ねじ)が自分の存在や真理に関して疑問を持ち、周囲の人とともに答えを考えていくスタイルです。哲学の入門書によくある誰かの理論を一つずつ紹介していくのではなく、哲学者たちの考えを参考にしながら納得できる答えを探していきます。 本の帯に、著者は京都大学哲学専修を卒業と書かれてあり、全くの素人ではなく知識のある方のようです。時々さらりと専門用語が出てくるのはそのためでしょう。しかし、漫画としての面白さももちろんあるので、専門書よりはずっと読みやすいです。 内容が内容だけに、気に入る人とつまんないと言う人にはっきり分かれそうです。存在とは何か?なんて思索するのが好きな方にはお勧めですので、ぜひ読んでもらいたいですね。
2017年06月08日(木)
| 著者:ぽんとごたんだ 発売日: 2016/9/12
| 評価〔B+〕 2食めくらいまでなら食べてみても・・・・・・。キーワード:グルメ、食材、 「というわけで今回の主役食材でーす」(2食めより抜粋)
グルメ漫画は食べ慣れたものを工夫してさらに美味しく!という印象がありますが、本書は多くの人が食べたことがなさそうな食材に挑戦してみる一風変わった食の漫画です。 あー、あれって食べられるらしいけれど、実際には食べたことがないぐらいのものが多く登場しています。どう調理するのか分からない食材を、下準備から紹介しているのが興味深いです。味付けはもちろん、シメる方法もきちんと・・・・・・。 基本的に主人公の女子高生・桐谷さんが、近所にすむ生物の先生を巻き込んで話は進みます。このジャンルにありがちな、女の子が妙に色っぽい感じで食べることはなく、かと言って長い説明が披露されることもなく、コミカルで勢いがあり楽しいです。あの雰囲気が気に入るかどうかは、好みがわかれるかもしれませんね。 あまりグルメに興味がない人も楽しめる作品です。食べる気になるかどうかは別として。1巻だというのに既に強烈な食材が登場していて、今後どうなってしまうのか、期待と不安が入り混じった心境です。
2017年06月08日(木)
| 著者:海原純子 発売日: 2016/1/13
| 評価〔B〕 分かりやすく言うと時代の流れ。キーワード:心理、男性、ジェンダー、仕事 整形外科や消化器科で抗うつ剤を処方されながら心の病気を否定している男性は多いのだ。(第1章より抜粋)
この題名ですと、男ばかりが苦労しているとも取れますが、内容は男性ならではの悩みやストレスに注目し、どうすればより良い生き方ができるのかを考察しています。 男はこうあるべしという信念や、この方法で順調だったので今後もこれでと従来の方法や価値観にとらわれ、結果として心の病で苦しむ事例が数多く挙げられています。どちらも一昔前では常識だったかもしれませんが、現代社会では柔軟に対応したほうが上手くいくことが多いと感じました。昭和的な価値観が全て悪いわけではありません。 印象に強く残ったのは、3章コラムの「男性の多くは、話を聞くなど気持ちを分け合うことが大きな支援となることに気づかない」です。確かに直接支援にばかり意識が向くことが多いので、周囲の人が困ったり悩んでいたら、声をかける等の直接支援以外の支えも心がけていきたいです。 後半は、承認欲求や自己実現願望、結婚やメンタルケアなど男女に限らず重要なことが書かれています。これらは他の本を読んで知っていたので、新鮮味はありませんでしたが、大切さを再認識しました。自分を知る手法としてエゴグラムが挙げられていたので、あとで 久しぶりに診断してみようと思います。
2017年06月03日(土)
| 著者:馬鈴薯、 山口ミコト 発売日: 2017/1/27
| 評価〔B+〕 なるほど。でも推理難しくない?キーワード:サスペンス、オカルト、ホラー、 「はい・・・はい、準備できました。はい・・・覚悟もできてます」(本文より抜粋)
大詰めを迎えた2つの事件。ついに全てが明らかになります。 解決すべき事件はしっかり解決したので安心しています。「死神様」の時は、大量のヒントのみ残して終わってしまったので、急に打ち切った終わり方にならないかどうか不安だったからです。 Xの正体と霧島家殺人事件の真相は、え、それありなの?と少々戸惑ったのですが、肉体交換やX能力がありなのだから、それも可能なのでしょう。私が3巻読了時に疑問だった点も、確かに説明がつきます。まあ、祥は可愛そうだけど。 物語の発端である姉・由衣の事件も、ついに真相が暴かれます。あー、なるほど。伏線もきちんと回収しているし、こちらのほうは腑に落ちました。でも、こちらのほうは推理するのは難しいですね。♯26冒頭で浩樹が気がついたヒントが、、もう少し早くでていればピンと来た可能性も・・・・・・いえ、それでも分からなかったかも。 この原作者さんの物語は、なんか推理しようという気になります。ちょうど良い難しさなのでしょうか。面白かったです。シリーズ全体としての評価は、サスペンスが好きなのもあってA-くらいかな。もう少し長めの話でも良かったです。次回作に期待しています。 ネタばれ話は続きにて↓
【ここからネタばれ】 まず、祥が二重人格だったこと。半分の人格だけ他人に移せるなんて、ヒントなしでは分かりません。肉体交換はお互い入れ替わるのがルールだったはず。その点は考えなくていいのかな。Xと妹・愛衣が一つの体に入っている時、Xが表に出ている時は愛衣の意識がなく、愛衣の意識があるときはXの意識がない・・・・・・とすると、辻褄が合うのかな? それにしても祥ほど頭が回れば、他の解決方法もあったのではと思ってしまいました。
姉・由衣殺人事件の真犯人がほとんど登場しない父だったこと。推理やサスペンスは全然関係ない第三者が犯人であることはほぼないので、身近で意外な人物を考え姉が怪しいと思ったのですが、見事にはずれました。でも、姉が単なる被害者ではなく、X儀式の参加者であることは当たっていたので、この点では満足です。
由衣が男のほうが良いと言っていたのは、男なら父親に母親の姿を重ねられることも、何かされることもなかったのですからでした。犯人の動機は、創作作品では特に珍しくなかったので、推理できた人もおそらくいたのではないかな。由衣が引きこもった理由、あれだけ強いのになぜ、とそこに目を向ければ真相に近づけたはず。
3巻の感想で書いた推理の答え合わせをします。 1、ぬいぐるみの「残念だった」発言の真意 →自分の別人格が犯人だったから。 不正解、思い浮かびませんでした。
2、利き手問題。 →Xと由衣殺人犯は別人であることの証明。 これは合っていました。
3、シオンの見つけたハサミの意味。 →祥が左利きの可能性を示しています。ここから彼が二重人格であることが推理できます。 前半のみ正解。
4、、X儀式の参加者8人は誰? →3巻劇中で明かされた6人と、浩樹の父と姉。 姉のみ正解。
●祥が最近になって言葉を慎むようになった理由は? 別人格が生まれたから。負の感情はXが引き受けることになりました。
●シオンが見つけた証拠の意味は? 上記の3と同じ。
●愛衣が「一番信頼している人間に突然襲われたら人はどんな顔」発言の真意は? これは描かれなったと思います。祥もしくはXの隠された欲望なのでしょうか。
●浩樹のX能力は何? 本書で明らかになった“真夜中の守護者”。寝てもすぐに目が覚める。 やっぱり一番あやしかったじゃないですか! 明らかに主人公のX能力に触れなかったですからね。X能力と願望の関係まで推理できれば、真相に近づけたのになぁ。
【ネタばれここまで】
2017年06月03日(土)
| 著者:野口 恵子 発売日: 2016/8/17
| 評価〔B+〕 正しい日本語は難しいです。キーワード:日本語、言語、言語学、 「くださる」は「くれる」の尊敬語、「いただく」は「もらう」の謙譲語だが、「いただく」の使用頻度のほうがはるかに高い。日本人はそんなに「もらう」のが好きなのか、と言いたくなるほどだ。(第三章より抜粋)
仕事でメールを書く時、敬語が得意ではないので度々検索して調べていますが、よく分からないことがあります。なにげなく話している日本語ですが、まったく間違えない人は少なそうです。本書には多くの間違った日本語の例が挙げられています。驚くべきことにすべて実例だそうです。簡単なクイズでそれらを紹介し、著者が正しい表現を示しています。 最初の語彙・意味は正解がすぐ分かるのですが、文法や敬語は結構迷いました。どれが正解かなんとなく分かるのですが、何が間違っているのか、どう間違っているのかがうまく指摘できないものもありました。クイズではどれが正解かだけでなく、文法的にどこが間違っているのかしっかり解説していて、理解しやすいのが良いです。「くださる」と「~いただく」は、よく分かっていなかったので勉強になりました。 ツイッターから生まれた誤用を見て、著者は大丈夫か日本人と狼狽し、そして警鐘を鳴らしています。私もネットを見ていると「こんにちは」を「こんにちわ」と書いている文章をよく見かけるのですが、未だに違和感があります。時代が変わるにつれ言葉も変化していきますが、正確な日本語を使って欲しいと願う著者に、共感を覚えました。
2017年06月03日(土)
結婚と家族のこれから ~共働き社会の限界~ 〔A-〕快楽の脳科学 「いい気持ち」はどこから生まれるか 〔B〕神さまの怨結び 〔B〕真夜中のX儀典 1 〔B+〕フリーランチの時代 〔B〕神さまの怨結び 2 〔B〕完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込 (角川文庫) 〔B+〕真夜中のX儀典 2 〔B+〕キミとは致命的なズレがある 〔A-〕真夜中のX儀典 3 〔B+〕以上10冊です。5月は数も種類もそれなりに読むことができたので、結構満足です。4月に続いて評価C以下はありませんでした。6月もこうだと良いね。 マンガワンというアプリで、「今際の国のアリス」を全巻読みました。デスゲーム系の漫画で面白かったです。終わり方、オチがつまらないという書評を目にしましたけど、あれはあれで良かったんじゃないのかな。途中のゲームが盛り上がったので、あまり気にならなかったです。
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