2013年03月29日(金)

人間そっくり (新潮文庫) 

人間そっくり (新潮文庫)人間そっくり (新潮文庫)
著者:安部 公房
出版:新潮社
発行:1976/05/04

評価〔B-〕 その人物は火星人なのか?
キーワード:SF、火星人、

「じつを言うと、ぼく、普通の人間じゃないんです。火星人なんですよ」(本文より抜粋)


少し前にネットで安部公房がノーベル文学賞候補だったという記事を読み、興味を持ったので適当に何か読んでみようと手に取ったのが本書です。表紙折り返しを見ると、ノーベル賞は取っていなくても、芥川賞をはじめ沢山の賞をもらっていて海外での評価も高いそうですね。よく知りませんでした。

本書はSFで、ラジオ番組の脚本家の家に、自分は火星人だと称する人物が訪ねてくるところから始まります。どうみても普通の人間に見えるその男は、単なるファンなのか、精神病患者なのか、火星人なのか……脚本家と自称火星人の会話を中心に展開していきます。場所も登場人物も非常に限られていますので、場所を移動しない演劇を見ているかのようです。裁判所の法廷だけで進む劇のような。

劇中では火星にロケットが到着しそうでしたが、現実の世界でも最近火星に調査機が到着したばかりで、そう考えるとあまり古さを感じさせません。SFとありますが、未来を思わせる道具や技術は出てきません。しかし、SFのようなオカルトのような雰囲気はあるので、不思議な感覚を受けます。事態をややこしくしている「火星病」や「地球病」の概念が興味深いですね。

最後まで読んで、この結末ならもう少し短くても良かったのでは、とも思います。10~20ページずつ時間をかけながら読んだので、長く感じただけかもしれませんけど。文章は想像していたよりも読みやすかったです。事件らしい事件も起きず、会話だけでここまで話を盛り上げるのはやはりさすがと思いました。安部公房の他作品よりも読みやすそうなので、僕のように試しに読んでみるのも良さそうですよ。




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[ 2013/03/29 21:17 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2013年03月23日(土)

方丈記(全) (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス) 

方丈記(全) (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)方丈記(全) (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)
著者:武田 友宏
出版:角川学芸出版
発行:2007/06

評価〔B〕 千年近く前の無常観
キーワード:平安末期、随筆、古典、

長明の「無常観」は、けっして机の前に座って生まれたものではなく、実際の体験に基づいています。(本文より抜粋)


平安時代末期、源平の争いのころに都の郊外に庵をたて、一人で暮らしていた鴨長明が綴った随筆です。引き継ぐ地位も財力もあった彼は、親族との争いに破れ表舞台から退くことになります。様々な都市型災害を経験した上で、どのような無常観を持つようになったのか。その全文と現代語訳が収録されています。

思ったより短いので驚きました。Amazonのある書評によると400字の原稿用紙で24枚とか。有名な「行く河の流れは絶えずして、しかも、もとの水にあらず」ではじまる本書は、全てこのような難しい哲学的なことが書かれているのだろうなと思っていたのですが、意外にも現実に起きた出来事の描写が多いです。そのため、どうしてこのような無常観を抱くに至ったかが理解しやすかったです。現代でも通じる価値観もあり、約千年の時を越えて語りかけてくる言葉の説得力に感心してしまいます。また、彼の晩年のように、自然に囲まれ一人優雅に暮らすのはどんな感じだろうかと、色々考えをめぐらせるのも興味深いですね。

現代語訳は分かりやすいです。古典の文法が苦手な僕でも関係なく、作品を楽しむことができます。しかし、時折訳者の意見が鼻につくのが残念です。「また長明の自画自賛が始まった。」、こういうのはよくないと思うんだけどなあ。

読後、著者と作品のイメージが親しみやすいものに変わりました。解説で好き嫌いが分かれそうですが、古典初心者には分かりやすくお薦めの本です。



[ 2013/03/23 22:33 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2013年03月23日(土)

探偵失格―愛ト謂ウ病悪ノ罹患、故ニ我々ハ人ヲ殺ス 

探偵失格―愛ト謂ウ病悪ノ罹患、故ニ我々ハ人ヲ殺ス (電撃文庫)探偵失格―愛ト謂ウ病悪ノ罹患、故ニ我々ハ人ヲ殺ス (電撃文庫)
著者:中維
出版:アスキー・メディアワークス
発行:2011/12/10

評価〔C〕 もう一押し欲しい推理系ラノベ
キーワード:SF、現代

「皆様ようこそお越しくださいました。ここが此方と彼方の彼岸、悪名馳せたるジゴクカンにございます。」(本文より抜粋)


面白そうな題名にひかれました。ジャンルは推理ものです。過去の事件でPTSDとなった高校生・空野高は、学校で有名な先輩・黒塚音子に旅行に誘われます。喜んでついていくと、そこは強大な権力と財力を持つ時之宮家の館、時刻館。一筋縄ではいかない客たちが集う豪邸で、不可解な事件が起きます。

推理の部分は個性的な登場人物たち、閉ざされた空間、殺人事件と良くあるパターンですが、結構意外な真相で楽しめました。しかし、ライトノベルとしては各人物の個性がやや弱く、いや、今ひとつ深みがないように感じました。また、どことなく読みづらさを感じる時がありました。これは、ある書評に書かれていたのですが、客観的な描写とキャラクターの主観の区別がつきにくいのと、状況描写が少ないせいなのかもしれません。

ひとつひとつの要素は悪くないですし、ホラー要素もあって良いのですが、全部ひっくるめて1つの物語として魅力に少々難があると思います。あれもこれもと欲張ったら、全体的な完成度が落ちてしまったと言いますか。続編があるようですが、現時点ではあまり意欲がわかないかな。気が向いたらってことで。




[ 2013/03/23 22:30 ] ライトノベル | TB(0) | CM(0)

2013年03月16日(土)

NIGHTMARE MAKER5 

NIGHTMARE MAKER 5 (ヤングチャンピオン烈コミックス)NIGHTMARE MAKER 5 (ヤングチャンピオン烈コミックス)
著者:Cuvie
出版:秋田書店
発行:2012/03/19

評価〔B+〕 結末への助走段階
キーワード:夢、学園、青春、恋愛

「みんなにすっきり目覚めてほしいんだよ」(本文より抜粋)


ついに茅野先生以外の教師にも知られてしまった夢見マシン。内田は開発者として事態の収拾に尽力します。

希望した夢が見られる装置ですが、今となっては題名どおり悪夢を生み出すものとなってしまい、混乱は続きます。茅野先生は相変わらずですが。(笑)

この巻では、新たにある人が犠牲者となるのですが、あれは読んでいて辛いなぁ。もとをただせば……いや、仕向けた人がそうとう性格悪いよねえ。同情しにくいです。また、灯明の家庭問題にひとまず決着がつきます。こちらはやや急転回っぽく感じましたが、頑張ってきた灯明には相応しい結末だと思います。

終盤、とうとう始まった内田の計画ですが、これがみんなの現実にどう影響するのか。次で最後なのできちんと読みきります。



[ 2013/03/16 21:46 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2013年03月16日(土)

友だち幻想―人と人の“つながり”を考える 

友だち幻想―人と人の“つながり”を考える (ちくまプリマー新書)友だち幻想―人と人の“つながり”を考える (ちくまプリマー新書)
著者:菅野 仁
出版:筑摩書房
発行:2008/03

評価〔B〕 十代向けの人付き合い本。
キーワード:友達、社会学、心理学、人付き合い、

友だちが大切、でも友だちとの関係を重苦しく感じてしまう。そうした矛盾した意識をつい持ってしまうことはありませんか。(本文より抜粋)


結構刺激的な題名だと思います。副題につながりとあるように、身近な人とのつながりや親しさについて考える本です。十代の若者向けの本ですが、大人でも周囲の人との関係を再考する上で読んでみるのも良いかと。そのためか、文章も平易で分かりやすく書かれています。

みんな同じという同調圧力・同質性ではなく、みんな違って良いという並存性を強調しています。有名な歌詞「一年生になったら友達100人できるかな」を例に挙げていて興味深いです。確かに、誰とでも親密になれると信じすぎるのは良くないと思います。適度な距離の取りかたにも触れています。

ただ、ある程度年齢を重ねた人には、経験的に知っていることも多いように感じました。上には上がいる、人生の苦味うま味の話など。

十代で、友だちとの関係に悩んでいるなら、本書は有益かもしれません。しかし、すでに大人である自分には斬新さはありませんでした。改めて人付き合いを見直すには良いのではないでしょうか。



[ 2013/03/16 21:38 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2013年03月10日(日)

アラクニド6 

アラクニド(6) (ガンガンコミックスJOKER)アラクニド(6) (ガンガンコミックスJOKER)
著者:村田 真哉、いふじ シンセン 他
出版:スクウェア・エニックス
発行:2012/08/22

評価〔B+〕 蜘蛛狩りの真の意図とは
キーワード:殺し屋、昆虫、現代

「狙って攻撃とか、したことねェーし」(本文より抜粋)


ボスの命令の下、続行中の「蜘蛛狩り」。辛くも危機を脱したアリスたちでしたが、彼女たちの知らないところでも戦闘が始まります。

5巻で明かされなかった「兜蟲(カブトムシ)」の能力が明かされます。昆虫の解説付きで進むアクションシーンはやはり面白いです。知識もついて彼女以外の蟲も多数登場しますが、この巻では彼女の活躍が群を抜いていると思います。それにしても、この漫画の見開きシーンは迫力があって格好良いです。

劇中ある人物が、「蜘蛛狩り」の真の意図を推測しています。確かに単なる抹殺指令ではなさそうなのでが……。後々ボスの口から語られる、のかな? また、終盤登場する表紙の金髪女性ですが、どうやら彼女はアラクニドの外伝『キャタピラー』の主人公のようですね。そちらも興味が出てきました。

本編主人公のアリスは、残念ながらこの巻も出番が少ないです。次こそは活躍を期待。




[ 2013/03/10 13:42 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2013年03月08日(金)

星を継ぐもの (創元SF文庫) 

星を継ぐもの (創元SF文庫)星を継ぐもの (創元SF文庫)


著者:ジェイムズ・P・ホーガン
出版:東京創元社
発行:1980/05/23

評価〔A+〕 ミステリ風ハードSF
キーワード:SF、近未来、ミステリ風、科学調査

「何者であるかはともかく……チャーリーは五万年以上前に死んでいるのです」(本文より抜粋)


月で発見された謎の遺体。調査の結果、彼は五万年前に死亡していることが判明します。彼は、はたして地球人なのか宇宙人なのか。どうして地球ではなく月面に存在したのか。物理学者ハントたちが謎の解明に挑みます。有名SF作家J・P・ホーガンの出世作。

近未来の宇宙を舞台としたハードSFですが、未来の生活やテクノロジーをあたかも体感しているようなものではなく、今ある現実的な技術で謎を解明していく地味ですが壮大な小説です。裏表紙の粗筋からわかるように、謎解きが主題なのでミステリ風です。ほんの少しずつ事実が判明していきますが、あることが分かると違う疑問点が持ち上がるので、最後まで引き込まれます。

科学調査の部分が細かく書かれていて、実にリアリティがあります。未知の言語の解読なんかは、昔TV番組で見たものと同じような感じで驚きました。遺体から生活していた場所の重力を割り出すところも良いです。本書の初版が1980年であることを考慮すると、著者の知識と調査・取材に圧倒されます。本書は、戦争がなくなりそのお金を宇宙開発に費やした近未来の話ですが、現実世界の2013年から見て、劇中の2029年の技術を実現するのはちょっと難しそうです。でも、それくらいにガニメデまで往復できるくらいになっていればいいなあ。

強いて残念な点を挙げるとすれば、人物の魅力があまりないことでしょうか。主役のハント博士でさえ、内面があまり伝わってこなかったです。それと、翻訳のせいか専門的なせいか、読みやすくはありません。自然科学系の知識はあったほうがすんなり読めると思います。でも、謎解きの面白さや素晴らしい発想が損なわれるほどではありません。

まるで遺跡調査のドキュメンタリー番組を見ているかのように、ワクワクさせてくれます。昨年末に読んだ『幼年期の終わり』も壮大でしたが、あれよりもこちらのほうが好みです。スケールの大きい謎をお望みなら、是非。



追記
長門有希の100冊に入っています。


ネタばれは続きにて↓
[ 2013/03/08 21:54 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2013年03月04日(月)

2013年2月の読書メモ 

僕らはどこにも開かない〔C+〕
誘爆発作1〔B+〕
どこまでやったらクビになるか―サラリーマンのための労働法入門〔A-〕
ひぐらしのなく頃に 第三話 祟殺し編 (上)  (講談社BOX)〔C〕
ひぐらしのなく頃に 第三話 祟殺し編 (下) (講談社BOX)〔C+〕

生徒会役員共8〔B〕
羅生門・鼻 (新潮文庫)〔C+〕


以上、7冊でした。Cばかり目立ちますね。1ヶ月でこんなにCをつけたのは初めてかもしれません。好みに合わなかったり退屈だと感じた箇所があったり、まあ色々です。

2月は慌しくてあまり読めなかったので、3月こそはと思って読書中。漫画を多めによもうかなー。



[ 2013/03/04 21:53 ] 月別まとめ | TB(0) | CM(0)