2013年01月29日(火)

舞面真面とお面の女 

舞面真面とお面の女 (メディアワークス文庫)舞面真面とお面の女 (メディアワークス文庫)
著者:野崎 まど
出版:アスキーメディアワークス
発行:2010/04/24

評価〔C+〕 先祖の残した謎解き物語。
キーワード:ミステリ、遺言、現代

「さて。この謎めいた文章は、いったいどういう意味かな」(一二月二五日より抜粋)


もしも、自分の親戚の家に謎の物や言葉が残されていたら、どのようなことを想像しますか? やはり遺産でしょうか、それとも誰かの悪戯だと思うのでしょうか。本書の大学院生・舞面真面は、叔父から頼みたいことがあると言われて尋ねてみると、叔父の祖父、つまり真面の曾祖父の残した一枚の書状を調べて欲しいとお願いされます。彼は従姉妹の水面と別のもう一人とともに、遺言の解明にのりだします。

切羽詰ってはいない、のんびりしたミステリです。舞台の田舎ということもあって、穏やかでのんびりしています。他の作品同様、ちょっとした会話に味があっていいです。ライトノベルほど派手ではないですが。作品の雰囲気は「アムリタ」や「小説家」と似たような感じかな。

でも、終盤の展開は、他の作品に比べると落ちる気がします。真相である曾祖父の意図も良かったですし、どんでん返しも悪くはないと思いますが、意外性や斬新さはあまりなかったように感じました。あくまで著者の他作品と比べて、ですが。これが最初の本でしたら、評価はB-だったかも。

謎解きはいかにも推理小説といった趣ではないと思います。ミステリの部分に期待しすぎないで読むと、良い感じに楽しめるのではないでしょうか。



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[ 2013/01/29 21:08 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2013年01月26日(土)

人間について (新潮文庫) 

人間について (新潮文庫)人間について (新潮文庫)
著者:ボーヴォワール
出版:新潮社
発行:1955/06/28

評価〔B-〕 抽象的概念が難解です……。
キーワード:哲学、人間、実存主義、人生、

反省の立場から見れば、だから、人間のどんな計画も不合理なものに見えます。なぜなら、計画というのは、限界が決定されて、初めて存在するもので、しかも、この限界を、人はいつだって越えることができるからです。(P8より抜粋)


人が人らしく生きるうえで本質的な難問を、分析・解説している哲学の本です。著者はフランスの哲学者サルトルの、事実上の妻であったシモーヌ・ボーヴォワールです。また、訳者あとがきによりますと、『人間について』は、『ピリュウスとシネアス』の改題名だそうです。

人間はどのような目標や目的を持つことができるのか、この世界における自分の位置・立場とは、など本当に基本的な哲学的問題を取り扱っています。しかし、非常に難解です。裏表紙に明晰・素朴・平易・という言葉が並んでいたので、これならば読んでみようかなと思ったのですがこんなに難しいとは……。哲学の専門家や哲学に馴染み深い方にとっては分かりやすいのかもしれませんが、そうでない人々にとってはかなり複雑で分かりにくいと思います。身近な例を挙げてくれるのは良いのですが、数行進むと抽象概念が入り乱れ、本当に理解できたか怪しくなってきます。でも、まったく分からない訳ではなく、ところどころ分かったような気になったりきちんと理解できた気がして、実存主義ってこういう考え方なのかと思うときもあります。しかし、その論理を筋道を立てて説明するまでは至りません。

重要なのは超越性と、自信がありませんが自由性でしょうか。自分の存在する位置、時の流れ、他者との関係、選択と行動など興味深い題材ですが、きちんと理解できなかったのが残念です。

理解できていない以上、評価するは気がひけますが、とりあえずB-としておきます。評価のしようがありません。後で何回か読み直してみて、少しでも多く理解できるといいかなと思います。





[ 2013/01/26 17:51 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2013年01月20日(日)

殺竜事件 

殺竜事件 (講談社ノベルス)殺竜事件 (講談社ノベルス)
著者:上遠野 浩平
出版:講談社
発行:2000/06/06

評価〔B〕 推理+ファンタジー。
キーワード:ファンタジー、ミステリ、

「竜を殺した者を、突きとめられると言うのか、貴様らは?」(本文より抜粋)


剣と魔法の世界と、理詰めで真相を暴く謎解きを組み合わせた新しい形の物語です。著者は、ブギーポップシリーズで有名な上遠野浩平です。現代ものだったりSFだったり、色々書くんですね、この方は。

戦争の停戦調停に選ばれた竜の住む都市。そこで調停の準備のために訪れた所属の異なる3人は、竜が殺されているのを発見します。神の如き力を持ち、人間では到底倒すことの出来ない存在が、一体誰にどうやって殺されたのか? そしてその理由は? 原因を探るべく3人は事件の真相を追うことになります。

確かに展開はミステリーですが、舞台がファンタジーなので新鮮です。機械や高度な科学技術は登場せず、中世のような世界で戦闘がメインでないのは、不思議な感覚です。読んだ後、ファンタジーの部分のほうが印象が強いと思います。ミステリーファンよりはファンタジー好き向けかな。しかし、謎解きの部分もしっかり作られていて、戦地調停士EDの終盤の推理は鮮やか。良い伏線でした。

数多くの人物が登場する割には、誰も彼も個性豊かなのは、著者の力量のように感じます。1ページ2段で250ページを超える量にしては、読みやすかったです。戦闘以外のファンタジーをご所望の方は、試しに読んでみてはいかがでしょうか。




[ 2013/01/20 21:05 ] ライトノベル | TB(0) | CM(0)

2013年01月15日(火)

万能鑑定士Qの事件簿 VI 

万能鑑定士Qの事件簿VI (角川文庫)万能鑑定士Qの事件簿VI (角川文庫)
著者:松岡 圭祐
出版:角川書店(角川グループパブリッシング)
発行:2010/10/23

評価〔A-〕 強敵出現。
キーワード:鑑定士、知識、雑学、アパレル、

MNC74発動したよーん こうご期待(本文より抜粋)


シリーズ6冊目、舞台を日本に戻し今度はアパレル業界の話です。とはいっても、ファッションや被服に詳しくなくても楽しめますのでご安心を。

経営の苦しいアパレル会社の社長・八木沢は、大口の注文を持ってきた若い女性・雨森華蓮と会います。怪しい話に八木沢は警戒しつつも、彼女の話を吟味していきます。最初から相手が分かっている倒叙ものです。犯人や真相がまったく分からないまま進むのとは、また違った良さがあります。雨森華蓮は今までの相手と違い、凜田莉子と同じような能力を有している天才詐欺師で、知識比べ知恵比べで莉子に勝るとも劣らない、いえ、見方によっては莉子を上回る凄い人物です。結構このキャラ好きです。

両者の知識に驚くとともに、物語の核となる「MNC74とは何か?」を推理するのが面白いです。やすやすとは華蓮の真の意図が解明できないのが面白いです。それにしても、著者の知識の量、もしくは取材の量には頭が下がります。単なる雑学でなく、物語に自然に散りばめているのは本当に上手いですね。

終盤の華蓮の策、莉子の推理は盛り上がります。どちらがどちらを上回るのかは、最後まで読まないと分かりません。毎度のことながら読後感は良いです。最後の封筒のトリックがにくい。このまま高い質を保ったまま続いてほしいですね。





[ 2013/01/15 22:48 ] 小説 | TB(0) | CM(1)

2013年01月15日(火)

THE CHAT(アルファポリス文庫) 

THE CHAT (アルファポリス文庫)THE CHAT (アルファポリス文庫)
著者:椙本 孝思
出版:アルファポリス
発行:2006/10

評価〔B+〕 ネット絡みの怖い話です。
キーワード:ネット、チャット、ホラー

ナカツカ> 僕は インターネット の中に存在する 亡霊 です(本文より抜粋)


ネット上で一対一または多人数で文章を通じて即時に会話をするチャットは、距離を気にせず楽しむことのできる便利な道具です。しかし、ネットで出会いお互い名前も知らない場合もあります。そんな関係の中、チャットメンバーたちの身に次々と恐ろしいことが起きたとしたら……。本書はチャットをテーマにした、ホラーサスペンスです。裏表紙では異色ホラーミステリーとありますが、サスペンスのほうがしっくりくると思います。

コンピュータ関連会社に勤める平岡は、いつものようにチャットルーム・『ヒュプノス・カフェ』で仲間と雑談していると、ネットの亡霊と名乗る人物が現れます。不可解な言葉を残して立ち去りますが、その後思いもよらない事件が現実世界で起きます。誰の仕業なのか? 自分を知っている者なのか? チャットという相手の顔が見えない状況を上手く利用して書かれていて、出てくる人物が誰も怪しく見えてきます。どの人物が誰なのかを推理しながら読んでいくと面白いです。

見えない敵と戦い、徐々に追い詰められていくのが結構怖くてハラハラします。展開も意外性があって面白いのですが、最後の最後(P270以降)、明らかにされるあれは恐怖感をあおるには良かったのですが、無理があるような気がします。読み返して伏線がまったくなかった訳ではないのですが、あの真相に気がついた読者は何人いるのでしょうか。うーん、しっくりきません。

時代に合った内容ですので読みやすいです。テンポも悪くないですしね。はじめてホラー小説を読むには、こういう小説がいいのかもしれません。




[ 2013/01/15 22:40 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2013年01月11日(金)

大東京トイボックス5 

大東京トイボックス 5 (バーズコミックス)大東京トイボックス 5 (バーズコミックス)
著者:うめ
出版:幻冬舎コミックス
発行:2010/01/23

評価〔B+〕 創作活動は大変です。
キーワード:ゲーム業界、社会人、新入社員

でも、もう一度確かめたいんです。みんなの気持ち。(本文より抜粋)


ゲーム業界漫画も5冊目に突入しました。紆余曲折する「デスパレートハイスクール」の開発ですが、須田が会議で重要な決定を下します。そして、ついにむかえたα審査、それぞれの思惑が交錯します。

前の巻に引き続き、物を創作する側の葛藤はもちろん、企業で働く社会人としての責任や個人の希望や夢についても描かれていて目を惹かれます。太陽の立場だけでなく、組織の一番上に立つ月山や電算花組の半田の心中に触れているのが良いですね。

後半のゲームセンターでのある出来事が、太陽と仙水の少年時代の話と共に進行し盛り上がります。この漫画らしい展開です。この巻の序盤の台詞、「だからゲーム屋やってんだろ?」を思い出させてくれます。

終盤の会議のせいで、次の巻は荒れそうだなあ。ソリダス品証部の卜部も色々活動していて、デスパレにも絡んできそうな予感がします。このゲームが世に出るときに笑うのは誰なのでしょうか?




[ 2013/01/11 22:58 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2013年01月11日(金)

妄想ジョナさん。 

妄想ジョナさん。 (メディアワークス文庫)妄想ジョナさん。 (メディアワークス文庫)
著者:西村 悠
出版:アスキーメディアワークス
発行:2011/09/23

評価〔B+〕 かなり真面目な妄想のお話。
キーワード:妄想、友達、大学生、現代、青春、

よくよく見れば、それは確かに人間だった。いや正確には人間の形をした忌々しき僕の妄想である。(本文より抜粋)


妄想は何か(自分に都合の良いことを)心に思い描くイメージがあります。これらは空想や夢想で、現実とは違うことは本人がよく分かっています。では、この空想が本人にとって、現実とまったく区別がつかないものだとしたらどうでしょうか。本書の主人公の妄想は、どれもこれも五感にうったえる現実味がある存在です。彼は、自分の妄想と現実に存在するものの区別がつきません。そんな彼の大学生活を描いています。

大学二年生の彼は友人が一人だけ。もっと青春を謳歌したいと望む彼の前に、ジョナと名乗る女性が現れます。妄想から逃れ現状を打破すべく、彼女とともに行動を起こすという青春ものです。終盤、ジョナさんと語り合うシーンは非常に複雑な心情になりました。切ないような清々しいような最後が、また良いですね。

読んでいて、「統合失調症の人は幻覚や幻聴を見る」ということを思い出しました。自分だけが体感している妄想とはこんなに辛いものなのかと、主人公の彼に同情しました。実際に彼のような妄想に悩む人たちは、周囲の人の理解を得るのが難しく、やるせないだろうなあ。

展開自体は結構素直で、本書の見どころはやはり最後にあるのだと思います。意外性を考慮すると秀逸とは言えませんし、読む人を選ぶと思いますが、読後感は良かったです。



[ 2013/01/11 22:54 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2013年01月07日(月)

快適睡眠のすすめ 

快適睡眠のすすめ (岩波新書)快適睡眠のすすめ (岩波新書)
著者:堀 忠雄
出版社:岩波書店
出版日:2000/07/19

評価〔B+〕 眠りに関するアレコレ。
キーワード:睡眠、昼寝、朝型、夜型、時差ボケ、

その後の研究でも、睡眠時間の短縮は可能であるが、無理なく短縮できる限界は六時間であろう、というところにおちついている。(第3章より抜粋)


明けましておめでとうございます。今年最初の本は、睡眠についてのものです。1日8時間寝るとすると、人生の3分の1は寝て過ごしていることになる、とよく言われますが、睡眠それ自体を詳しく知っている人は案外少ないと思います。その睡眠について調査・研究して分かってきたことを紹介し、新しい生活習慣として昼寝を勧めています。

序盤は少し前の新書のように学術的で、退屈に感じるかもしれませんが、中盤からは実用的な内容です。寝るときにどうしたらいいか?など就寝方法が書かれているのかと予想していたのですが、そうではなく、朝方と夜型の違いや、眠気のリズムなどが記載されています。

印象に残った点は、アルコールの大量摂取で寝てしまうのは麻酔と同じで体力回復にはならないことや、時差ボケは一時間につき1日半あれば慣れるのに、サマータイム制で一時間早起きすると慣れるのに一週間くらいかかることです。就寝に適するのは体温が下がるとき、というのも役に立つ情報です。周囲の環境から自分の生活リズムまで、様々な要因を分析しています。

著者が一番主張したかった昼寝の効用・推奨も良かったのですが、それ以外の内容のほうが印象深かったです。読みやすさよりは正確さ優先で、最近の新書と比べると少々お堅い感じもしますが、題名どおり睡眠を快適にするのに役立ちそうです。睡眠の習慣を変えたいときに、もう一度読み返すことにします。



[ 2013/01/07 19:22 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)