2011年10月31日(月)

六百六十円の事情 

六百六十円の事情 (メディアワークス文庫)六百六十円の事情 (メディアワークス文庫)
著者:入間 人間
出版:アスキーメディアワークス
発行:2010/05/25

評価〔B〕 緩やかな流れの群像劇
キーワード:現代、掲示板、群像劇、青春、カツ丼

そしてどうして定職にも就かないで歌っているんですかというと、ヒーローになるために決まっていた。それがどう繋がるのか正直、自分にも分からない。(一章より抜粋)


とある掲示板の『カツ丼は作れますか?』という書き込みを発端とする、日常系青春群像劇です。ラノベを読んでいると見かける著者の名前、気になったので一冊読んでみることにしました。長い間、著者名を「いるまにんげん」だと思っていました。正しくは「いるまひとま」です。

若者が中心なので自然と恋愛や将来がテーマとなりますが、中には老人もいて、その視点はなかなか新鮮でした。それぞれ悩んでいたり停滞していたりパッとしなかったりする登場人物たちが、平凡で何でもない、しかし簡単には割り切れない問題をどうにかしていこうとするのが良かったです。現実味のあるストーリーなので、刺激的とは言えません。言い方が悪いかもしれませんが、深みがないというか、薄い感じです。もう少し惹きつけるような何かが欲しかったです。

一章で主人公になりたいと願う由岐の心情はよく分かり、非常に共感を覚えました。まあ、彼女とは性格は似てませんけど。また、四章の雅明は、思考の仕方が似ていてちょっと驚きました。こういうのって親近感がわきます。

表紙を見たときにかなりライトノベルっぽいなと思ったのですが、読んでみるとかなり一般向けでした。メディアワークス文庫で合っていると思います。少し前向きになれる読後感の良い本です。





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[ 2011/10/31 21:45 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2011年10月30日(日)

黄昏乙女×アムネジア2 

黄昏乙女×アムネジア 2 (ガンガンコミックスJOKER)黄昏乙女×アムネジア 2 (ガンガンコミックスJOKER)
著者:めいびい
出版:スクウェア・エニックス
発行:2010/01/22

評価〔B〕 幽霊が怪談を解決
キーワード:オカルト、幽霊、ホラー、コミカル、学園

「キミ、幽霊って何か考えたことあるか?」(本文より抜粋)


愛嬌のある幽霊・夕子と中学1年生男子・貞一の学園幽霊譚。今回も誠教学園の怪談に貞一が巻き込まれ、そして問題解決にむけ怪異調査部ががんばります。相変わらず漫画を描きなれている感があって、背景も表情も豊かです。目次の前のタイトルページが好き。

小此木が突っ走り2人が係わっていく形は変わりません。このまま夕子さんのかわいさのみを強調して進めるのかと危惧していたのですが、新キャラ・霧江の登場によって恐怖感が出てきて、ホラーの要素も軽視されていなくて良かったと思います。彼女は貞一より年上に見えるけれど同級生なんでしょうか。今後も重要な役割を果たしそうなので、話を面白くしてくれることを期待しています。

どこぞの書評にも書かれていますが、夕子さんの肌の露出が多いような気がします。話の都合上そうなるのなら分かるのですが、どうも青少年読者に対するサービスでそうしているように見えます。あまりに多いと興ざめしてしまうので、さじ加減が難しいとは思いますが、うまくバランスを取って欲しいです。

タイトルのアムネジアの意味が気になって調べたところ、記憶喪失(症)だそうです。なるほどね。



[ 2011/10/30 09:59 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2011年10月28日(金)

よいこの君主論 

よいこの君主論 (ちくま文庫)よいこの君主論 (ちくま文庫)
著者:架神 恭介、辰巳 一世 他
出版:筑摩書房
発行:2009/05/11

評価〔A-〕 クラスの君主を目指せ
キーワード:君主論、入門書、現代風アレンジ

「分かりました、ふくろう先生。私は努力や苦労なんて泥くさいものは一切したくないけれど、将来愚民どもをアゴでこき使うために、必要最低限の努力はしようと思います。がんばるぞ」(第6章より抜粋)


16世紀に書かれた政治学の本、マキャベリの君主論を、小学生向けの形で解説した珍しい入門書です。クラスの覇権を握るための手引書とありますが、これはユーモアや遊び心であって、実際は大人向けの読み物となっています。……おそらく。「完全覇道マニュア――はじめてのマキャベリズム」の文庫版です。

人物紹介が、「勉強:C+ 運動:B-」などとランクで表示されていてるのが、なんともゲームっぽくて好きです。主要人物は大きなイラスト入りで、誰も彼も邪悪そうな表情なのが笑えます。まあやちゃんが凄い。

クラスの頂点に君臨したい小学5年生のひろしくんが、クラスメイトや先生とどう付き合い、束ねていくか奮戦する一年間を綴っています。小さな章に分かれていて、まずクラス内での出来事が書かれ、その後にふくろう先生と他2名による解説と質疑応答が続きます。短く切ってあり平易な言葉で記述されているので、かなり分かりやすいです。

群雄割拠の小君主たちが、仲間を増やそうと扇動したり引き抜きを試みる姿は、どこか滑稽で面白いです。遠足や運動会も重要イベントとして書かれていて、そういえばそうだったかもと懐かしい気持ちになりました。何回かやった学級委員を思い出します。全然覇を唱えてはいませんでしたが。冗談めかして作られている本ですが、誇張されてはいるもの、社会における派閥争いを現実的に捕らえたものなのかもしれません。

随所に散りばめられたパロディネタも楽しいです。例えば、運動が得意なりょうくん。赤兎馬のごとき「馬」をエサに寝返るよう説得されるシーンがありますが、これって三国志の呂布だよね。りょうくん以外にもまだまだ隠されたパロディがあると思うので、興味がある方は探してみてください。

民衆のことを愚民と呼ぶのが気になりましたが、本家の君主論もそうなんでしょうか。原書も確認してみたくなりました。難しそうな本を分かりやすく面白く説明してくれるのは、嬉しいし凄いと思います。心理学でも難しいことを易しく解説できるのは頭がいいとあったので、著者は原書をきちんと理解されているのでしょう。覇を唱えたいお子様、そうさせたい保護者の方、それと面白く君主論を学ばれたい人におすすめです。読みやすいよ。




[ 2011/10/28 21:26 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2011年10月25日(火)

ファンダ・メンダ・マウス 

ファンダ・メンダ・マウス (このライトノベルがすごい!文庫)ファンダ・メンダ・マウス (このライトノベルがすごい!文庫)
著者:大間 九郎
出版:宝島社
発行:2010/09/10

評価〔A-〕 感情的で威勢の良い独特な文体
キーワード:現代、横浜、アクション、SF

くそったれたしみったれた愛すべき仕事、愛すべき日常、それをぶち壊す小さなケダモノがおれの元に転がり込んできた。

(本文より抜粋)


たまたま目にした著者の受賞者インタビューが強烈でした。応募の動機はお金、受賞後の周囲の反応は周囲に人がいないのでなし、読者の皆様にメッセージと言われて「学歴も、金も、地位も、名誉も、将来も何もない三十男が書いた窮鼠猫を噛む一撃を堪能していただければと思います。」と述べていて、この人の書いた本は一体どのようなものだったんだろう?と疑問と興味を持ちました。第1回『このライトノベルがすごい!』大賞の栗山千明賞受賞作。ちなみに、帯によると選考理由は「私好み」だからだそうな。

個性的な文体で、物語は主にマウスの一人称で進むのですが、感情まかせで柄も言葉も悪いけれど軽快で非常に勢いがあります。今まで読んだ中で似た人を挙げるとしたら舞城王太郎かな。裏表紙の紹介文を見れば、どのような雰囲気か分かります。癖があるので、好き嫌いが分かれそうですね。

顔が鼠に似ていることから自他ともにマウスと呼ぶ男性が、借りのある教師の娘・佐治まことが現れ、助けてほしいと懇願されます。少女のため、姉のため、日常のためにマウスが横浜を東奔西走します。ジャンルは強いて言えばSF風アクションでしょうか。暴力や血がよく出て粗野な感じなのですが、物語のテーマは愛情とシリアスです。どのキャラも信仰あるいは盲目とも思える感情を、他の登場人物にぶつけています。

あまりライトノベルらしくない作品だと思います。終盤が少し駆け足で不満な点もありましたが、とにかくその勢いに圧倒された一冊でした。




[ 2011/10/25 18:46 ] ライトノベル | TB(0) | CM(0)

2011年10月23日(日)

エスニシティ ゼロワン1 

エスニシティ ゼロワン 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)エスニシティ ゼロワン 1 (MFコミックス フラッパーシリーズ)
著者:多田乃 伸明
出版:メディアファクトリー
発行:2011/02/23

評価〔B+〕 管理社会をはぐれた人々
キーワード:SF、近未来、管理社会、

「俺は…俺たちはセンソラムから追放された人間だ。」(本文より抜粋)


機械によって厳しく人口と社会を管理されている近未来。少女ニコは囲郭都市センソラムで平穏に生活していましたが、ある日、好奇心から見知らぬ土地へと足を踏み入れます。そこには思いもよらぬ世界が存在して、彼女も無関係ではいられなくなるというSF漫画です。「70億の針」と同じ著者なので、興味を持って読むことにしました。

パペットと呼ばれるバーチャルペットのようなものがひとりひとりにつき、教育・指導・監視している安全で厳格な社会が描かれています。規律からはみ出さないように人権ポイントなる運転免許の点数のようなものが与えられ、反社会的な行動を取ると減っていくシステムが興味深いです。かなり現実味に溢れていて、将来こうなるかもしれないなーと思わされます。また、ルールを守れない都市を追放された人々が暮らす空白地帯が存在し、そこには現状打破したいと考える者たちもいます。今後、どのようにこの世界が動いていくのかが見所です。

最初の巻だけあって、状況説明や人物紹介で終わってしまったような感じです。巻末に説明を補強する設定資料集が数ページあるので、それを見ればおそらく整理できるでしょう。こういう設定集は見るの好きです。

そういえば、ニコの年齢っていくつなんでしょうか。十歳体という単語が出てきたから、それくらいなのかな?彼女のパソコン操作技術がどのレベルなのかなのも気になるところですが、そのあたりはこれから明かされることでしょう。最後の引きが良かったので、次がどうなるのか楽しみです。





[ 2011/10/23 09:46 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2011年10月22日(土)

夢喰いメリー1 

夢喰いメリー (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)夢喰いメリー (1) (まんがタイムKRコミックス フォワードシリーズ)
著者:牛木 義隆
出版:芳文社
発行:2008/10/27

評価〔C+〕 夢と現実を舞台に活躍します
キーワード:夢、ファンタジー、学園、

「こことは違うもうひとつの世界―――「幻界」の住人よ。――アンタ達も“毎晩来てた”でしょ?」(本文より抜粋)


最近変な夢を見続けている高校生の藤原夢路は、他人の今夜見る夢をオーラとして認識する不思議な能力を持っています。ある日、お使いの途中で突然夢の世界に入りこみます。そこは確かに毎晩見ている夢の中で、夢の世界の住人と名乗る者が登場し、また元の場所に帰りたい言う美少女メリーとも出会います。夢と現実を行き来するアクション系ファンタジーです。

僕はアニメを先に見たアニメ組です。ネットで「アニメより原作のほうがいい」と書いていたのを見て、原作を読むことにしました。

この頃あまり読んでいなかった、敵と戦ういかにも少年漫画って感じの漫画です。夢魔と呼ばれる夢の中の者が、人を器として現実世界に出たがっているのを、メリーが阻止しつつ彼女が帰る方法を模索します。夢魔は人の心の隙につけこもうとするものが多いのですが、嫌悪するほどのものではなく、どこか人間のようなので、彼らを送り返すシーンはなんかしんみりします。

夢魔の持つ独自の空間が個性的で、ファンタジーっぽくて良い感じです。夢と現実の境界線のイメージが出ています。イチマの和風空間が印象的でした。また、口絵のカラーページが幻界の雰囲気が出ていて好きです。こちらを表紙にして欲しかったくらい。そういえば、メリーは夢路より年下ですよねえ? どこかで明言してましたっけ?

本書を読んで、アニメが原作にかなり忠実だったことが分かりました。なんかアニメを漫画化したように感じたくらい。うーん、この巻についてはアニメのほうが良かったかな。アクションシーン等。そんなワケで評価C+です。




[ 2011/10/22 10:10 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2011年10月20日(木)

空ろの箱と零のマリア3 

空ろの箱と零のマリア〈3〉 (電撃文庫)空ろの箱と零のマリア〈3〉 (電撃文庫)
著者:御影 瑛路
出版:アスキーメディアワークス
発行:2010/01/10

評価〔B+〕 はこマリ版人狼の前編
キーワード:サスペンス、学園、殺人ゲーム

これから何をすればいいのかすら分からない。ただ【謀殺】【暗殺】という物騒な単語が、【王降ろしの国】が殺し合いのゲームであることを証明していることだけは分かる。(本文より抜粋)


何の前触れもなく見知らぬ部屋で目が覚めた一輝。彼は移動した先の大部屋で、麻理亜を含む同じ高校の生徒たちと会い、強制的にあるゲームに参加させられます。そのゲームは【王降ろしの国】。本書は「王降ろしの国」前編です。

「王降ろしの国」は参加者に役職が割り振られ、それぞれ敵対する役職の人物を殺すことで勝利することができる殺し合いのゲームです。こんなことができるのは箱の仕業だと確信する一輝と麻理亜。箱の所有者は誰なのか、どうしたらこの箱を打ち破れるのか、彼らは苦闘します。

誰を信用していいのか分からない駆け引きは、まるで人狼のよう。緊迫感があって、疑心暗鬼になりやすいです。参加者たちの性格がかなり違うために、友好的な者、冷静な者、非情な者など行動がはっきり分かれて、それぞれの個性が出ていて興味深いです。誰がどの役職か推理しながら読むと面白いと思います。

土橋真二郎の「殺戮ゲームの館」を思い出しました。似ているのですが、あちらのほうが心理描写が多く現実的ですね。こちらはそれよりも誰と誰が密談でどうなったという人物の駆け引きが凝っている感じがします。

この巻だけでもかなり面白く、また一つの区切りまで話は進みますが、真の山場は次の巻へ持ち越しです。終盤の一輝の決意が、どのような結末を迎えるのか楽しみです。





[ 2011/10/20 21:46 ] ライトノベル | TB(0) | CM(0)

2011年10月20日(木)

自殺について 他四篇(岩波文庫) 

自殺について 他四篇 (岩波文庫)自殺について 他四篇 (岩波文庫)
著者:ショウペンハウエル
出版:岩波書店
発行:1979/04

評価〔B〕 題は「生と死について」くらいでいいのでは
キーワード:哲学、人生、自殺

自殺が果して犯罪であるかどうか、この点に関しては何よりもまず倫理的感情に訴えて判定をくだされたらいいとと私は思う。(表題作より抜粋)


強烈な題名です。表題作の他に4編も収録されているのに、なぜこれをタイトルに選んだのでしょうか。目次を見ると分かるのですが、おそらく他の題名が長かったり補遺であったりしたからだと思います。もう少し全体を上手く表した題があったと思うのですが。全編とも、著者の哲学随筆集の色合いが強い「パレルガ・ウント・パラリポーメナ」から抜粋されています。

全体的に、抽象的な漠然とした人生、生と死について語られています。読んでいて分かりやすい箇所と分かりにくい箇所が、はっきり分かれている印象を受けました。哲学者と言えば迷い悩んでいるイメージがありますが、著者はそのイメージに反して断定的な物言いで持論を述べています。「人生は現象である」と変わった見解であったり、「どのような人間の生活も悲劇の性質を帯びる」とマイナス指向の意見であったりしますが、本人に至っては真理にしたがって語っているだけだそうです。苦笑してしまったのがこれ、

未だかつて、現在のなかで、自分は本当に幸福だと感じた人間は一人もいなかった、――もしそんなのがいたとしたら、多分酔っ払ってでもいたのだろう。(P45より抜粋)


ここまでくると潔いですね。

こうなると、人生は素晴らしいと主張している数々の宗教とは水と油なのかなと思ったのですが、部分的に賛同したり否定したりと柔軟な姿勢を見せていて驚きました。その一例が表題作です。ユダヤ系の宗教では自殺は犯罪と考えているがどうなのか。キリスト教徒(と思われる人)からこういう意見がでるのは、興味深いですね。他に興味を引いたのは、

我々の人生の場景は粗いモザイックの絵に似ている。この絵を美しいと見るためには、それから遠く離れている必要があるので、間近にいてはそれは何の印象をも与えない。(P37より抜粋)


という表現です。備忘録としてここにメモ。

内容とは関係ありませんが、文章で「乃至(ないし)」という単語が出てきて、読み方がなかなか思い出せませんでした。難しい本を読むときは、手元に辞書を置いておいたほうがいいかも。

悲観的ではあり、現存在など見慣れない単語が多々出てきますが、時間と意志と生死についての見方が変わるかもしれない哲学の本です。たまにはこういう本も読んでおかないと。




[ 2011/10/20 21:11 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2011年10月17日(月)

蜘蛛の糸・杜子春(新潮文庫) 

蜘蛛の糸・杜子春 (新潮文庫)蜘蛛の糸・杜子春 (新潮文庫)
著者:芥川 龍之介
出版:新潮社
発行:1968/11

評価〔B〕 少年もの中心だけど侮れない
キーワード:文学、近代、短編集

「多分おれがいなくなると、いろいろな魔性が現れて、お前をたぶらかそうとするだろうが、たといどんなことが起ろうとも、決して声を出すのではないぞ。」(杜子春より抜粋)


文学賞に名前がつくほど著名な作家、芥川龍之介の短編集です。少年少女むけに書かれた作品を中心に、表題作の2編を含む10編が集めてあります。蜘蛛の糸は大まかには知っているけれど、芥川の他の小説はまともに読んだことないなと思ったのがきっかけで手に取りました。こういう時、短編集って便利です。気軽に読めるので。

芥川賞は純文学の賞なので、彼の作品もさぞかし小難しいのかもしれないと危惧してしたのですが、予想していたより読みやすく、すっと物語に入ることができました。蜘蛛の糸が数ページしかなくて驚きました。こんなに短かったっけ。それ以外も長くて20ページくらいなので、気負わなくても大丈夫です。

年少向けだけあって、童話のような話が多かったかな。倫理や道徳を諭すような。「杜子春」が心に響きました。これって巻末の解説によると、中国の伝記が元ネタだそうですね。知らなかった。他には、神秘的な力が出てくる「魔術」や、昔話のパロディである「猿蟹合戦」が好みです。あんな風なパロディを書く遊び心もあったとは意外でした。

僕が手に入れた本と表紙が違うのですが、きっと新しくなったのでしょう。これ平成3年で四十九刷ですし。古い作品ですが結構良かったです。僕と同じように芥川の入門書としてどうぞ。




[ 2011/10/17 19:12 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2011年10月14日(金)

大東京トイボックス3 

大東京トイボックス 3 (バーズコミックス)大東京トイボックス 3 (バーズコミックス)
著者:うめ
出版:幻冬舎コミックス
発行:2008/10/24

評価〔B+〕 始動したSOUPの行方は
キーワード:ゲーム業界、社会人、新入社員

「企画にとって何がいちばん大切かわかるか?」(本文より抜粋)


ソリダスワークス主催の共同開発事業SOUP。主宰者仙水の真の意図は明らかにされないまま、ついに第一次審査が開催されます。これにスタジオG3と電算花組は、「デスパレートハイスクール」で挑みます。

仙水が最高責任者だけあって突拍子もない審査ですが、あれぐらい強引でなければ業界全体が動かなさそうですね。彼とソリダスユーロからきた卜部との腹の探りあいも、いかにも大企業っぽくて良いです。

一方、固い信念を持ってゲームを作る太陽でしたが、その姿勢が揺らぎます。部下の仕事の割り振り、他社との共同作業と、小さな会社とはいえ人の上にたつ難しさがうかがえます。ディレクターも大変だ。それはそうとディレクターとプロデューサーってどう違うんでしょうか。現場監督と総監督みたいなもん?

今回もモモの熱意が伝わってくるシーンがありました。怖いくらい。あれほどの覚悟があれば凄いと思います。彼女と太陽が、今後どうのように成長していくのか注目です。




[ 2011/10/14 20:33 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2011年10月14日(金)

万能鑑定士Qの事件簿 II 

万能鑑定士Qの事件簿 II (角川文庫)万能鑑定士Qの事件簿 II (角川文庫)
著者:松岡 圭祐
出版:角川書店(角川グループパブリッシング)
発行:2010/04/24

評価〔A〕 複線も結末も見事
キーワード:鑑定士、知識、雑学、

「本物と見分けがつかないどころか、機械のあらゆるチェックすら難なく通過する、完璧な仕上がりの偽一万円札が出まっている」(本文より抜粋)


1巻からの続きです。前の巻で少しだけ触れていたハイパーインフレの社会が、偽札偽造によって現実のものとなってしまいます。社会を大混乱に陥らせた偽札事件に、万能鑑定士・莉子が挑みます。

相変わらずの情報量の多さに感心してしまいます。一つの分野にとどまらないところが面白くです。また、紙幣の信用が落ちハイパーインフレとなった世の中を、現実味ある描写で上手く表現してあり舌を巻きます。莉子が航空券購入する場面は、ハイパーインフレの怖さがよく分かるシーンだと思います。実際に可能性のあることだから恐ろしいですね。

終盤、彼女の推理が語られますが、次々と明かされる真相にドキドキしてしまいました。本当に解決するのかこれと思っていただけに、感心し驚くばかりです。伏線の張り方が見事でした。計算されて書かれています。でも、それならなぜ2冊に分けたのでしょうか。出版社の意向でしょうか。それだけが残念です。

莉子は完全無欠の主人公ではなく、鑑定以外は間違えもするし失敗もするので、親しみやすく魅力的なヒロインだと思います。実際にいたら、何についてでもいいから話をしてみたいものです。物知りな人との会話は楽しい。

本書は幅広い知識と巧妙な伏線で2度楽しめます。どこかで目にしたように、確かに人が死なない面白い小説でした。秀作。




[ 2011/10/14 20:30 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2011年10月12日(水)

笑う科学 イグ・ノーベル賞 

笑う科学 イグ・ノーベル賞 (PHPサイエンス・ワールド新書)笑う科学 イグ・ノーベル賞 (PHPサイエンス・ワールド新書)
著者:志村 幸雄
出版:PHP研究所
発行:2009/10/21

評価〔B+〕 科学の楽しさを示す賞。
キーワード:科学、イグノーベル賞、ユニーク、パロディ

受賞決定の第一報を聞いた受賞者たちは一様に「喜び」の表情を示す前に、「戸惑い」を隠さない。(第1章より抜粋)


今月10月にノーベル賞受賞の発表がありましたが、それに先立って今年のイグ・ノーベル賞受賞者が発表されました。「火災など緊急時に眠っている人を起こすのに、適切な空気中のわさびの濃度発見」したことで、滋賀医科大学の今井眞講師らが同「化学賞」を受賞し、日本人による受賞は5年連続となりました。一体どういった賞なのか、はてして名誉なのかそうでないのか、まだあまり有名でない同賞について紹介しています。

賞を創設した雑誌編集者エイブラハムズ氏によると、受賞基準は「人を笑わせ、そして考えさせる」研究とともに「真似ができない、またするべきでない」業績と謳っています。「落下するバタートーストの力学的分析」「ハトによるモネとピカソの作品の識別」「恋愛と強迫神経症は生化学的に区別できないことの発見」などが本書で挙げられていますが、他にも「なぜキツツキは頭痛がしないか」「名前をつけられた牛は、名無しの牛よりもたくさんの牛乳を出す」などユニークな研究が受賞しています。どうしてそれなんだ思う反面、深く考えるとすごい偉業になる可能性を秘めたものが多いです。本当に役に立つのだろうかと思ってしまうものもありますが。

また、名称からも分かるように、ノーベル賞のパロディとして、皮肉や独創性が受賞理由になることもあります。今年の平和賞を「違法駐車している高級車を装甲車で踏みつぶして問題解決できる」ことを示し受賞したリトアニアの市長さんが、まさにそれだと思います。

歴史と趣旨を解説した第1部はとても良かったのですが、研究紹介の第2部は、日本の受賞者のみを扱っていて偏っていたのが残念です。難しいでしょうが外国の研究者にも話を聞いて、その面白さを伝えて欲しかったです。また、10章の日本発の賞候補も、既に有名なものもあってかどこか納得できない選出でした。本の前半が良かっただけに惜しいです。

学生の理系離れが問題視されて久しいですが、科学や研究の面白さを教えるのはなかなか難しいことです。しかし、イグノーベル賞は権威ある偉大なノーベル賞に比べて、はるかに親しみやすくて分かりやすくて面白いです。専門家でも難しい研究よりも、身近な問題を扱っていて笑ってしまうけれど興味深い研究のほうが、生徒や学生の夢となりやすいのではないでしょうか。もっともっと知名度が増して、テレビやネットでもその楽しさが広まると良いですね。




[ 2011/10/12 22:30 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2011年10月09日(日)

二年四組 交換日記 腐ったリンゴはくさらない 

二年四組 交換日記 腐ったリンゴはくさらない (集英社スーパーダッシュ文庫)二年四組 交換日記 腐ったリンゴはくさらない (集英社スーパーダッシュ文庫)
著者:朝田 雅康
出版:集英社
発行:2010/10/22

評価〔S-〕 氏名特定パズル小説
キーワード:パズル要素、学園、交換日記、群像劇、青春、恋愛

交換日記ってそういう風に書くのか? 直接名前書くのは駄目なのか?(第二章より抜粋)


帯に「パズル感覚 学園青春小説」と銘打たれていて、どのようなものかと本を開き、口絵の在籍生徒一覧を見てすぐピンときました。一クラス全員の本名を当てる小説なのだと。

問題児ばかり集めたある高校のクラス。委員長の発案で交換日記をつけることになります。日記では誰が書いたか分からないようにするため、生徒たちは時には異名で、時には本名で記述されます。性格や能力に応じてつけられた異名は、よく合っていて分かりやすいです。日記に書かれた生徒たちの発言や友人関係などから、ある高校のひとクラス全員の本名を探ります。第9回SD小説新人賞佳作受賞作。

名前を特定するのは、メモをしながら読めば、複雑ではありますが非常に難解という訳ではありません。三馬鹿が誰が誰だか分かりづらかったですけど。この探る作業が非常に面白かったです。中盤あたりで次々と判明していくので、終盤は日記に本名しか書かれてきなくても理解できます。逆に、本名を異名に変換したほうが分かりやすいです。お気に入りは機械女・インドア男・虐待男。

パズル要素に比べて、キャラクターや展開は斬新とは言えず、いかにもラノベ的です。描写も少ない生徒もいます。しかし、35人の生徒とすべて登場させた上で辻褄を合わせ、ストーリーを破綻させることなく書ききったのは凄いと思います。多少の欠点は気になりません。欲を言えば、もっとページ数が欲しかったかな。

35人という一見多すぎる登場人物に、うんざりだと感じなかったのはイラストの功績だと思います。性格が良くでていて混同しないように描かれた生徒たち。こうした絵の力を使えるのは、ライトノベルならではです。表紙と裏表紙の絵はそれぞれの関係がよく表れているので、読了後に見返してみると納得するでしょう。

かつてバトルロワイヤルを読んだ時に、混乱しないようにファンがイラストをつけた名簿をプリントし、脇に置いてチェックしたのを思い出しました。

とにかく本名と人間関係を解き明かすのが楽しかったです。久しぶりに夢中になりました。クロスワードのようなラノベで、パズルが好きな人はきっと気に入ると思います。面白かったです。次回作はどのような本を出すのか、楽しみです。




ネタばれ、異名=本名と書き手の備忘録は続きにて。
[ 2011/10/09 11:13 ] ライトノベル | TB(0) | CM(0)

2011年10月07日(金)

ビューティフルピープル・パーフェクトワールド 

ビューティフルピープル・パーフェクトワールド (IKKI COMIX)ビューティフルピープル・パーフェクトワールド (IKKI COMIX)
著者:坂井 恵理
出版:小学館
発行:2010/11/30

評価〔B+〕 外見だけでは万全ではない人生
キーワード:SF、美容整形、人生、恋愛

美容整形技術の向上により、人は望むままの容姿を手に入れられるようになった。(本文より抜粋)


プチ整形手術なる言葉も出てくるくらい、かつてのように大事ではなくなった美容整形。その整形がさらに進化し、誰でも簡単に美形になれるようになったら? 誰もが美男美女で手術していないほうが稀な、そんな世界を描いているのが本書です。SF連作短編集です。

自分の顔を捨てる者、体形を変える者、外見には深い思い入れのない者と色々な考え方を持つ人たちが登場し、それぞれの人生が語られます。整形の動機は、劣等感や野心など様々。うまくいったりいかなかったりと、あぁまさに人生だなあと感慨にひたってしまいました。戸田誠二の「スキエンティア」を連想されてくれます。

アニメのキャラクターになって南の島へ旅行に行く話を読んでいると、笑ってしまう反面、そう遠くない未来に現実となってもおかしくないと思いなおし、なんか考えてしまいます。

予想よりも性的描写が多かったので、気にする方はご注意を。どのエピソードもシリアスではあるのですが、鬱々とした感じはなく読後感は良いです。前向きに生きる気持ちになれます。




[ 2011/10/07 22:09 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2011年10月03日(月)

ことばと文化 

ことばと文化 (岩波新書)ことばと文化 (岩波新書)
著者:鈴木 孝夫
出版:岩波書店
発行:1973/05/21

評価〔B+〕 言語の違いの面白さを知る
キーワード:言語、文化、

私は英語を学び出してから、もう三十年以上になる。米国やカナダにも何年か滞在したこともある。それなのに英語の lip が、このように日本語の「くちびる」とは違っていることに気付いたのは、なんと二、三年前のことでしかない。(P43より抜粋)


国際化が進むにつれ役に立つ言語とそうでないものの差が出てきて、どんどん言語の総数は減っていますが、それでも世界には数多くの言語が存在しています。日本語をそうした他の言語と比較することにより、日本の文化の特色と明らかにし、また言語と価値観・習慣の関係も分かりやすく説明していく、文字通りことばと文化の入門書です。

言語学の本ですが全体的に分かりやすく、やや専門的かなと感じたのは6章くらいです。外国語と母国語の違いを、著者の日常の体験から解説しています。上記の引用のように、lip と唇はまったく同じものを指していると思い込みがちですが、実は少し違います。辞書には違いが書いていないとありましたが、僕の電子辞書には記述されていました。これは、本書が1973年発行で昔の本だからでしょう。それ以外にも、同じような表現だけれども属している文化が違うために、価値観の違いが目立つ例も挙げられていて興味深いです。

ことばの定義で、辞書を引くと堂々巡りに陥ってしまうことが書かれています。やはりあの循環は説明になってないよね。

また、「お姉さん」という呼びかけはあるのに、なぜ「妹」と呼びかけることはないのか。迷子の小さな子供に対して血縁者でもないのに、なぜ大人は「おじさん」「おばさん」と自分のことを呼ぶのか。日本語話者としては当然すぎて考えもしないような言い回しを、多言語と比較して考察しています。日本語は何かと年齢を気にする言語だよね。先輩、後輩、先生など。儒教圏では日本より年齢に厳格なので、もっと年齢や上下を示す単語が多いんでしょうね、きっと。

既に身をもって経験したこともあったので、新鮮だったとは言えません。しかし、異文化や日本語についての本を読んだことのない人には、とても有益です。古くても古さは感じないでしょう。




[ 2011/10/03 20:47 ] 言語 | TB(0) | CM(0)

2011年10月01日(土)

万能鑑定士Qの事件簿 I 

万能鑑定士Qの事件簿 I (角川文庫)万能鑑定士Qの事件簿 I (角川文庫)
著者:松岡 圭祐
出版:角川書店(角川グループパブリッシング)
発行:2010/04/24

評価〔B+〕 圧倒的知識に驚嘆
キーワード:鑑定士、知識、雑学、

「万能鑑定士って……正規の資格じゃないよね。きみひとりで、いろんなものを鑑定するってこと?絵だけじゃなくて?」(本文より抜粋)


鑑定から連想することといえば、難しい顔をして壷を眺めている年配の方でしょうか。しかし、この小説に登場するのは、23歳と若く綺麗な女性鑑定士です。名は凛田莉子。観察力と洞察力、そしてとてつもない知識の量で、物事の真贋を見極めていきます。

彼女の特徴は、絵画をはじめとする芸術品の鑑定のみならず、持ち物から職業を当てるなど、探偵のような推理を発揮できることです。なんでも見抜けるその力は、見ていて面白く痛快です。まさに万能鑑定士。1巻では街中に貼られた「力士シール」の謎を追うとともに、どのようにして莉子が現在に至ったかが記述されています。過去編が多く、時系列が入れ替わっていて少々戸惑いますが、ところどころに散りばめられた雑多な知識が興味深く、読者を飽きさせません。

残念なのは、この巻だけでは事件は完全解決しないことです。一応ひと段落しますが、肝心のところは未解決のまま2に続きます。知っていれば2も一緒に買ったのに。サブタイトルをつけて上とでも書いてくれれば良かったのに。

莉子はその桁外れの能力に反して、性格は純粋で明るく実際にいそうな感じです。親しみやすい感じなのがいいですね。雑学が好きな方、殺人のない推理物が好きな方は、きっと気に入ると思います。次も楽しみです。





[ 2011/10/01 22:04 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2011年10月01日(土)

2011年9月の読書メモ 

死神様に最期のお願いを2〔B〕
罪と罰3(アクションコミックス)〔B+〕
枕草子(角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス)〔C+〕
タイタンの妖女〔B〕
月見月理解の探偵殺人3〔B〕
NIGHTMARE MAKER2〔B〕
ファウスト〈1〉(新潮文庫)〔D+〕
Q.E.D.―証明終了28〔B+〕
θ(シータ) 11番ホームの妖精〔B+〕
ファウスト〈2〉(新潮文庫)〔D+〕

以上、10冊でした。これだけ読んで新書が一冊もなかったのは少々驚きました。既読の新書を読み返していたので、新書自体は読んでいるのですが、新たに読んだものはなかったようです。ここ数ヶ月は読みたくなるような新書があまりなかったからなー。

評価Dを2つもつけてしまったファウスト。古典の有名作品なので、低い評価をつけるのを躊躇ったのですが、面白くなかったのでD+です。芸術的価値が高くても、見る側の人が満足しなければ意味がありません。芸術は鑑賞する人によって評価が大きく変わるものだと思います。

今月は何か新書を読むつもりです。




[ 2011/10/01 21:51 ] 月別まとめ | TB(0) | CM(0)