2011年01月29日(土)

夏の前日1 

夏の前日 1 (アフタヌーンKC)夏の前日 1 (アフタヌーンKC)
著者:吉田 基已
出版:講談社
発行:2010/02/05

評価〔B〕 年上女と年下男の恋愛模様
キーワード:恋愛、芸大、絵描き、和服、

クソッなんなんだ。ちょっといい女だからって調子にのるなよ、藍沢晶……。年下からかうのがそんなに面白いかよ!(本文より抜粋)


芸術大学洋画科の学生・青木哲生と、彼のアルバイト先で知り合った藍沢晶の恋愛を描いた漫画です。絵に情熱を傾ける年下男性と和服が似合う年上女性の恋が主題となっているようです。

特徴はなんと言ってもその独特の雰囲気、落ち着いたしっとりした空気です。男女が急接近する展開も良いのですが、やはり絵から発しているかのような情緒的で懐古的なところが良いですね。意外といってはなんですが、官能的な場面もしっかり描かれていて、絵のためか一層艶っぽく感じました。扇情的。一方、晶に溺れる哲生が初々しいし、年上らしさが時々なくなる晶も可愛らしいです。年下男と年上女の互いに対する心情が上手く描写されていると感じました。

ただ、平穏無事な始まりではなく、哲生と同じ大学にいるひまわりの女の子の動向が懸念されます。このまま彼女が絡まないまま終わる、なんてことはないと思うので。荒れそう。題名を夏の日ではなく、夏の前日としているのも気になります。

この調子でしっとりとじっくりと進んでいってほしいです。こういう恋愛を真っ向から描いた漫画は久しぶりに読んだかもしれません。なかなか良い感じです。





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[ 2011/01/29 21:37 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2011年01月27日(木)

人間はどこから来たのか、どこへ行くのか 

人間はどこから来たのか、どこへ行くのか (角川文庫)人間はどこから来たのか、どこへ行くのか (角川文庫)
著者:高間 大介(NHK取材班)
出版:角川書店(角川グループパブリッシング)
発行:2010/06/25

評価〔S〕 人間の本質に迫る
キーワード:人類学、人間、最先端、進化論、

このようにいま科学の現場では、人間に関する研究から意外な発見や思わず膝を打ってしまうような発見が相次いでいる。それを知ることは、新しい自己像を知ることであり、自己鍛錬の選択肢を教えてもらうことでもある。(はじめにより抜粋)


それぞれ専門の異なる10人の研究を紹介し、共通のテーマである「人間」を解明していく科学読み物です。2008~09年にかけてNHK放送されたサイエンスZERO「シリーズ ヒトの謎に迫る」をもとに書かれたものです。1章を読んでいて「何かテレビで見たことあるような気がする」と思っていたら、そういうことだったんですね。

タイトルどおり、人間の由来、存在、行く末について記述されていますが、登場する研究者の分野がDNA解析、サル学、ロボット工学、心理学、言語学……と多岐にわたるため、人の一部だけに焦点を当てるのではなく、多面的に見ることができるのが特徴です。それでいて、1つ1つの章が素人にも分かるように、最先端の研究が面白く書かれているので、極めて興味深くワクワクしながら読むことができました。例えば、ジュウシマツの鳴き声から人類の言語の発端を調べ、将棋のプロ棋士とアマチュア棋士の違いから人間の思考の仕組みに挑みます。

昔、教科書で習った常識と思える定説にも疑問を投げかけ、新たな説を論じているのは非常に刺激的で読んでいて楽しいです。全部で10章ですが、将来よりも起源をたどる研究のほうが多いです。どれもこれも面白いのですが、他のサルとの違いを究明する“不思議のサル”や、定説を覆す農耕の発祥説、深層心理が垣間見える心理実験「4枚カード問題」が印象的でした。3章や10章は「ロボットとは何か」「ヒトはどうして死ぬのか」の2冊が既読でなければ衝撃的だったかも。

現代科学では各分野が高度になるにつれ、他分野との繋がりが強くなっています。本書のテーマである人類学も、哲学や社会学、生物の進化論だけでは網羅・対応しきれないから、このように専門家たちがそれぞれ得意分野で研究を進めているのでしょう。より複雑により難解になってきているだけに、本書のような解説本は最先端科学に触れることができてありがたいです。

研究者たちの答えた「人間の定義」が、それぞれの人類に対する見方が分かりなかなか深いです。寄せ集めなのでどうしても各研究の全容を知ることは難しいですが、それでも「人間とは何か」の答えに近づけるだけの内容だと思います。理系の哲学書とでもいうのでしょうか、知的好奇心を満たしてくれます。非常に満足です。





[ 2011/01/27 21:40 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2011年01月23日(日)

GOTH(英語版) 

GOTHGOTH
著者:Otsuichi、Kendi Oiwa 他
出版:TokyoPop
発行:2008/09/09

評価〔B〕 GOTHの世界を英語で
キーワード:英語版、ホラー、漫画化、

MORINO AND I WERE ALWAYS LOOKING FOR HEARTRENDING STORIES LIKE THIS.(P55より抜粋)


英語版の漫画GOTHです。洋書。「GOTH」は元々小説として出版され人気を博しました。その後漫画化、それを更に英語化したものが本書です。外国語(英語)で書かれた漫画を見て楽しむことができるかどうか試してみたったので、思い切って実行しました。ついに。本書を選んだのは、漫画で長いシリーズものではない・日本語版を持っている・内容が気に入っているの条件を満たしているからです。それと台詞が多過ぎないこと。挫折しないようにね。

予想よりもつまずく回数が少なく、苦戦せずに読むことができました。途中、難解な単語も出てきますが、あまり重要でない台詞なので、意味が分らなくても大丈夫でした。やはり話の流れを知っているのが大きいようです。一番困惑したのは単語や文法ではなく、全て大文字で書かれている点でした。初歩的な単語でも大文字だと違う単語に見える時があり、まあ語学力不足なんでしょうが、とにかく読みにくい。これだけは可能なら是非修正してもらいたいです。また、台詞やモノローグは全て英語なのに、効果音や擬音はそのまま日本語なのはちょっと笑ってしまいました。バランスが良くないけれど、仕方ないのでしょう。

英訳が難しそうな文章に限って簡単な単語だけで翻訳してあったり、簡単な台詞なのに翻訳すると難しく感じる文章があったりして、なかなか面白いです。言い回しなど忘れていたものもあり、勉強になります。一番疲れたのは、原作者・乙一の英訳コメントでした。

最後のページに漫画の読み方の解説があり、また、日本語版では年齢制限がないのに、英語版では18歳以上が対象となっていて、文化の違いも本書から垣間見えます。なにはともあれ、最後まで読むことができたのでホッとしています。少しだけ自信がつきました。また何か、挑戦してみようと思っています。





[ 2011/01/23 16:52 ] 言語 | TB(0) | CM(0)

2011年01月21日(金)

アリスへの決別 

アリスへの決別 (ハヤカワ文庫JA)アリスへの決別 (ハヤカワ文庫JA)
著者:山本弘
出版:早川書房
発行:2010/08/10

評価〔A-〕 社会批判的SF
キーワード:SF、短編集、社会批判、問題提起

「密航者?」報告を聴いた私は仰天し、次に笑いだしそうになった。「この二十二世紀に?」(「地球から来た男」より抜粋)


表題作を含む中短篇7本で構成されたSF短編集です。舞台は月面・未来・異世界・宇宙コロニーと多彩で、想像力豊かに描かれています。以前読んだ「シュレディンガーのチョコパフェ」と同じ形式ですが、本書は社会通念に対して疑問を投げかける問題提起のSF作品であるのが特徴です。

キャリアが長く、SFの賞の受賞歴もある著者だけに、どの作品もさすがに話を作るのが上手く読みやすいです。「地獄はここに」はすぐオチが読めてしまったのはご愛嬌ですが、ミステリー風に話が展開するものやどこに話が行き着くのか分からないものもあって魅せてくれます。「オルダーセンの世界」と「地球から来た男」が好みかな。後者は真相の意外性が良いですね。

しかし、他の作品でも時々見られるように、数編で著者の主義・主張が強く出ているのが気になりました。露骨と言うか直接的と言うか。その点が鼻についたり、興ざめしてしまうところがあります。小説なのですから、主張は弱めて娯楽性を前面に押し出して欲しいなぁ……。社会批判のためにSFを使うのは悪くないのですが。良くも悪くも著者の気配が漂います。

手に取りにくい表紙ですが、表題作を読む前と読んだ後では表紙を見る目が違ってきます。その意味は読んでからのお楽しみです。「始めから刺激的な題材だな」と思って読んでいましたが、あとがきに記述してある各作品の初出を見て納得しました。この短編は最初でないほうが、すんなり読むことができたかもね。

主張が強いので好き嫌いが分かれそうです。でも、なにはともあれ話そのものは面白いと思います。興味を持った方は読んでみてはいかがでしょうか。





[ 2011/01/21 19:52 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2011年01月13日(木)

異文化理解 

異文化理解 (岩波新書)異文化理解 (岩波新書)
著者:青木 保
出版:岩波書店
発行:2001/07/19

評価〔C+〕 異文化対策の手引書
キーワード:異文化、外国、宗教、民族、グローバリゼーション、

文化的背景を異にする人々が出会い、結びつき、協同する社会がますます拡大し、人々が急激に国境や地域を超えて移動する現在、かつてなく人々は互いに深く理解し合わなければならなくなっています。(はじめにより抜粋)


交通網の発達やインターネットの普及によって、外国人、異なる文化の人々と接する機会が増えてきています。大都会でなくても、他国の人を見かけることは珍しくなくなりました。そんな自分とは違った文化で生まれ育った人たちと上手く付き合っていくにはどうしたら良いか?を考える本です。

文化はある社会の生活様式・習慣と行動規範であると認識していたのですが、本書で「価値である」と記述してあるところがあってなるほどと感じました。価値、つまり文化とは価値観のこと。その価値観には宗教や慣わしなど非合理なものも含まれるのが、異文化理解を困難にしているのだと思います。宗教に限らず、文化理解の鍵は「何をどのように信じているか」なのではと考えています。

理解不足による失敗例や著者の異文化体験など、違いを示す事例が挙げられていて読みやすいです。社会的に空白の時間である「境界の時間」、文化におけるコミュニケーションの3段階、どの文化にも属さない「ディアスポラ」は分かりやすくて面白かったです。宗教のタブー、しぐさの意味の違い、ステレオタイプによる偏見などは、異文化交流の際の準備として有用でしょう。しかし、全体的に異文化に接したことのない人向けに書かれた印象を受け、実際に多少なりとも接した経験のある人には少々物足りない気がしました。宗教の話に偏っている感じでしたし。具体例をもう少し挙げて、様々な価値観について書いて欲しかったですね。前半がちょっと退屈でした。

現代の殆どの文化は他文化と影響しあう混成文化なので、自文化を知ることも異文化理解に通じますし、文化交流によって自文化を再発見することもあります。そんな異文化交流の前の心構えとして読むと、良いのではないでしょうか。





[ 2011/01/13 21:44 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2011年01月09日(日)

世縒りゆび 

騎崎サブゼロ作品集 世縒りゆび (リュウコミックス)騎崎サブゼロ作品集 世縒りゆび (リュウコミックス)
著者:騎崎 サブゼロ
出版:徳間書店
発行:2008/03/19

評価〔D+〕 好みが合う人は高評価だと思います
キーワード:錬金術、魔法、ファンタジー、作品集、

「何の変哲もない石が金に成り得るのは――その石が金に成りたいと望んでいた時だけ。そして石は望む限り金でいられる。」(イツマデの絵本より抜粋)


錬金術師見習の少女・樹を軸としたファンタジーの世界を描いた、騎崎サブゼロ初の作品集です。短編集のようになっていますが、時系列はあっていなくてもほとんどの話が繋がっているので、1冊の長編のように読むことができます。帯で村田蓮爾が大絶賛しています。

ファンタジーと言っても中世風の剣と魔法の世界ではなく、現代に錬金術師と魔法が違和感なく溶け込んでいる世界で、不思議な雰囲気のあります。絵柄の影響もあってか、絵本のような童話のようななんとも言えない空気です。背景や小物までしっかり書き込んであり、幻想的な世界に厚みがあります。その雰囲気が合えば、一気に魅了されてしまうでしょう。凄く個性的です。

しかし、合わない人はのめり込むのが難しいかもしれません。ストーリーは魔法がでてくる割には落ち着いていて、派手さは感じられません。また、説明をだいぶ省略しているせいか、不十分な印象を受けました。僕には、どうも好みに合わなかったようです。こういう質は高いけれど面白く感じられない本は評価しずらいなあ……。

絵の完成度は高いため、数ページ読んで気に入れば最後まで楽しめる作品だと思います。絵を見て気になった方は1度読んでみることをオススメします。





[ 2011/01/09 15:54 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2011年01月07日(金)

ボクらのキセキ 

ボクらのキセキ (メディアワークス文庫)ボクらのキセキ (メディアワークス文庫)
著者:静月 遠火
出版:アスキーメディアワークス
発行:2010/02/25

評価〔D+〕 物足りなさが残った小説です。
キーワード:学園ミステリ、青春、恋愛、

「信じられないと思う。だけど聞いてほしい。これから先、僕にあってもどうか声をかけないでくれ。僕たちは人を殺し、そして君は死んでしまう。僕はその未来を防ぎたいんだ」(プロローグより抜粋)


悪戯好きの高校生・波河久則がついた嘘が、一目惚れの相手の三条有亜と出会ってから思わぬ出来事を引き起こす、嘘と現実が交差する学園ものです。裏表紙には学園ラブミステリーとありますが、ミステリー風青春ものくらいでしょうか。嘘から出た真のお話。

読んでいると、突然何かが狂ってしまったような不思議な違和感があります。自分たちが変えているのではなく、周りで何か起きているが知らされていないような感覚です。推理モノのように硬くなく、サスペンスのようにもなっていて読みやすいです。

上記の2人と久則の従兄弟である正臣を加えた3人がメインキャラなのですが、どちらかと言うと主役でない正臣が一番個性があり目立っています。恋愛の渦中にある2人の個性があまり感じられなかったのが、どうもこの物語の印象が薄い原因なのではないでしょうか。話の展開のほうも、山場も確かにあるのですがいまいち盛り上がらないと言いますか、平坦な感じがすると言いますか……。好みに合わなかったんだと思います。

でも、悪くはないどまりで、物足りないんだよね。読後にあまり残りませんでした。そんな訳で満足度を考慮すると、やはりD+くらいかな。期待し過ぎてしまったのかもね。






[ 2011/01/07 21:56 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2011年01月04日(火)

エンマ8 

エンマ(8) (ライバルコミックス)エンマ(8) (ライバルコミックス)
著者:ののやま さき
出版:講談社
発行:2010/12/29

評価〔A-〕 きっちり完結しました。
キーワード:オムニバス、シリアス

「次がお前の最後の任務となる」
「…最後…?」
「…そうだ。2010年、日本へ――」(本文により抜粋)


7巻巻末の予告どおり最終巻となりました。前回からの引きである某人物との再会、ナユタの行方、紙人形をめぐる閻魔王と楚江王の思惑、そしてエンマの未来と次々に物語に決着がつきます。

様々な地域や時代が骨抜きの場となりましたが、最後にきてついに現代の日本が舞台となりました。いつかならないかなーと思っていただけに、読むことができて嬉しいです。意外なターゲットも面白い。主要キャラそれぞれの決断と結末には、なんか納得です。

また、終盤にて閻魔王様のご尊顔を拝することができます。美しい。この時、エンマにかけた言葉が彼(?)の内面を示していると感じました。

最初のころはすぐ飽きてしまうかもと危惧していたのですが、巻数を重ねてもそのようなことはなく、毎回生と死、人生を感じさせてくれる素晴らしい出来だったと思います。骨抜き対象たちの生き様が印象的な作品でした。シリーズ全体としての評価もA-。良い少年漫画でした。秀作。次回作も期待しています。




[ 2011/01/04 21:34 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2011年01月04日(火)

2010年12月の読書メモ 

Self-Reference ENGINE〔B+〕
パーツのぱ3〔B+〕
マクベス (新潮文庫)〔A〕
マンホール2〔C+〕
書店繁盛記(ポプラ文庫)〔B〕
空ろの箱と零(ゼロ)のマリア〔A-〕
今日の早川さん3〔B〕
希望のつくり方〔A-〕

あけましておめでとうございます。2010年のまとめより後になってしまいましたが、12月のまとめです。

全部で8冊。かたよらないように読んだつもり。思ってたよりも新書を読んでなかったんですね。年内にマクベスを読むことができたのが良かったです。今後も少しずつ古典を読んでいこうと思っています。今まで読まな過ぎだったので。

今年もよろしくお願いします。



[ 2011/01/04 21:31 ] 月別まとめ | TB(0) | CM(0)