2010年11月30日(火)

現実入門―ほんとにみんなこんなことを? 

現実入門―ほんとにみんなこんなことを? (光文社文庫)現実入門―ほんとにみんなこんなことを? (光文社文庫)
著者:穂村 弘
出版:光文社
発行:2009/02

評価〔B〕 経験も悪くないです。
キーワード:体験エッセイ、現代、人生、

そう、私は経験値が低い。「家を買う」というような大きなことから「髪型」を変えるような小さなことまで、「万引」のような悪いことから「お年玉をあげる」ような良いことまで、現実内体験というものが大きく欠けているのだ。(「現実だな、現実って感じ」より抜粋)


人生何でも経験だ、なんてことを良く言われます。何でも、というのは言い過ぎだと思うのですが、確かに失敗も後になって役に立つこともあるので、なかなか説得力があります。経験という言葉はあまり好きではないけれど。本書では、その人生における様々な経験が極端に少ない「ほむらさん」が、出版社の編集者「サクマさん」と共に未経験のことに挑戦する体験エッセイです。

色々と挑戦するとあったので、好奇心旺盛な人かと思っていたのですが、内向的で空想好きでスローペースなので結構親近感を持ちながら読みました。年を取るにつれ、初めてのことなんて珍しくなりましたが、あの初めてのことに直面した時の戸惑いや恐れ、期待が入り混じった感情を、上手く表現できているような気がします。全然関係ないことを考えこんでしまったりね。

読者メーターには、本ででいていることは献血以外未経験と書きましたが、僕はアカスリはしたことないけれどスーパー銭湯には行ったことがありますし、競馬の馬券は買ったことないけれど競馬場には行ったことがあります。半端な経験です。……なんか経験自体を忘れているような気もしますが、何にしても経験値は低いです。また、読んでいるときムームーなる単語が出てきて戸惑いました。気になったので、読後に検索。なるほど、ハワイのドレスなのか。

【ここからネタばれ】
結婚について。結局何が本当なの?と少々混乱しつつ検索をかけたりWIKIで調べてみると、本書が発行した当時に既に結婚している模様。「あとがきにかえて」にあるように、どうやらサクマさんは存在しないようです。読者が作者を笑っていると思ったら、逆に手玉に取られていたようで、結構面白い仕かけですね。
【ネタばれここまで】

最後に捻りもあって、ただの体験記で終わらないところがにくいです。読者を飽きさせないといいますが、詳しくは書きませんがまさに虚虚実実でした。肩の力を抜いて読むのに適しています。久しぶりにエッセイ読んだな。楽しく読めました。




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[ 2010/11/30 18:42 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2010年11月27日(土)

太宰治全集〈2〉 

太宰治全集〈2〉 (ちくま文庫)太宰治全集〈2〉 (ちくま文庫)
著者:太宰 治
出版:筑摩書房
発行:1988/09

評価〔C+〕 初太宰には向かないかも。
キーワード:文学、太宰治、全集、

結局は、私ひまなもんだから、生活の苦労がないもんだから、毎日、幾百、幾千の見たり聞いたりの感受性の処理が出来なくなって、ポカンとしているうちに、そいつらが、お化けみたいな顔になってポカポカ浮いて来るのではないのかしら。(女生徒より抜粋)


言わずと知れた小説家、太宰治全集の2巻です。入院や心中未遂など混乱し葛藤していた時期の作品が収録されています。裏表紙には、『時に太宰、30歳。生への意欲が燃え、文学への情熱が湧き上がる』とあります。

教科書以外で初めて太宰治を読みました。ずっと読んでみたい気持ちがあったのですが、それほど強くなくただ漠然とした感じだったのです。で、最近になって少し古典に触れるようになり、もういい大人になったし読んでもさっぱり分からないってことはないだろう、と思い挑戦することに。なぜ全集かというと、以前ちょくちょく覗いていたサイトで太宰治全集は素晴らしいと絶賛していたのが頭に残っていて、読むなら全集を読もう!と無謀なことを望んでいたからです。

正直言って、最初のほうを読んでいる時は、何度も途中で読むのを止めようかと思いました。序盤の数編は思考や感情が大きく揺れ動き、ついていくのがやっとでした。読後に気がついたのですが、著者が惑乱している時期に書かれたそうです。「燈籠」から、読んでいて小説を読んでいる感じになってきました。全体的に短編が多く、長いのは「女生徒」と未完の「火の鳥」くらいでしょうか。今まで読んでいた小説と違って、登場人物の過去がずらずら記述されることがあり、話が分断されてしまったような感じがして好きではありません。何か人生の本質のようなことを喋ったり考えたり悩んだりする点は良いんですけどね。

印象的だったのは「燈籠」「女生徒」「懶惰の歌留多」「葉桜と魔笛」です。「女生徒」で少女の次々に変化していく思考を追っていると、他人の心を覗いたらこんな風に見えるのかもしれないと思い、なんか面白いです。逆に、自分の思考も他人が見たら脈絡が無いように見えるのでしょうね。P180の、

私たちには、自身の行くべき最善の場所、行きたく思う美しい場所、自身を伸ばして行くべき場所、おぼろげながら判っている。

が好きです。鋭い。また、「懶惰の歌留多」で怠惰であるが故に魚肉が嫌いと書かれていて、少し笑ってしまいました。結構同感です。僕は団扇は好きだけれどね。名作と言われる「富嶽百景」はそれほど心を打たれませんでした。

それにしても序盤の印象が悪くて、やはり読みづらいイメージが残ったままずっと読んでいました。読む順番が違っていれば評価も変わったかもしれません。序盤は太宰のファンで、著者の一生を知っている人が読めば興味深いのでしょう。僕のように初めて読む人が読む作品ではないと思います。この一冊で著者が分かるわけではないので他の作品も読む予定ですが、次も全集で読むか、とっつきやすい作品だけの本を読むか迷います。さてさて。




[ 2010/11/27 21:30 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2010年11月14日(日)

TISTA2 

TISTA 2 (ジャンプコミックス)TISTA 2 (ジャンプコミックス)
著者:遠藤 達哉
出版:集英社
発行:2008/09/04

評価〔A-〕 ある殺し屋の結末
キーワード:暗殺者、殺し屋、外国、現代、

「将来この夢を叶えて笑ってる事!」(本文より抜粋)


姿無き暗殺者“シスター・ミリティア”ことティスタ・ロウンの物語の続きです。1巻の感想でも書きましたが、この2巻が最終巻。なんか早いなあと名残惜しがりつつ読みました。

ティスタの動揺が仕事に影響している一方で、調査を続けるFBI捜査官スノウがアーティに接触したシーンから始まっていますが、この巻は1巻以上に内容が濃いです。早くそして重い展開で、読み終わったときにはもう何冊か読んだような気分になりました。特に印象的なのが、ティスタの幼い頃が分かる過去編です。彼女に影響を与えるスージーの話は、読んでいてなかなか辛いものがあります。また、ラストへの流れと締めも良かったと思います。

少々詰め込み過ぎな気がするし、巻数を増やしてじっくり読んでみたかった気持ちもありますが、読み終わってみるとこの濃さと潔さが良かったのかもしれません。しかし、ページ数が少ないせいで、物語の核である十字眼や聖心十字会のエピソードが十分でなかったのが残念です。ティスタの左右の目の違いとかね。また、前にも書きましたが、やはりキャラクターの書き分けが上手いです。面長だったり釣り目だったり唇が厚かったりと、それぞれの容貌に個性があって認識しやすいです。

余談ではありますが。この著者の絵、前に見たことがあるような……と思って調べてみたら、「屋上探偵オクタン」の挿絵でした。あー、なるほど、どうりで。

書き分けや構図や構成を考えると完成度の高い漫画だと思います。久しぶりに濃い漫画を読みました。暗いストーリーは好きなほうですが、好みではなく質の高さでA-にしました。次回作も楽しみです。今度は長編が読んでみたいですね。




[ 2010/11/14 18:03 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2010年11月13日(土)

月見月理解の探偵殺人 

月見月理解の探偵殺人 (GA文庫)月見月理解の探偵殺人 (GA文庫)
著者:明月 千里
出版:ソフトバンククリエイティブ
発行:2009/12/15

評価〔B+〕 探偵と助手の知恵比べ
キーワード:探偵殺人ゲーム、人狼、

「では、今度も殺してみせるがいい。君の洞察力と虚偽と謀略で、見事に情報を俺様から引きずり出して、騙してみせろ」(二日目-ゲームスタート-より抜粋)


高校生の都築初(つづきうい)は、車椅子の転入生・月見月理解に危険なゲームを持ちかけられます。探偵だと言う彼女の思惑で、ネットでは推理ゲーム《探偵殺人ゲーム》で、現実ではある出来事の真相を探る勝負をすることに。第1回GA文庫大賞・奨励賞で一番の問題作、だそうです。

理解と初は一緒に行動していて探偵と助手のような関係ですが、目的は正反対で、彼女は事件の犯人を暴こうとし、彼は容疑者を探偵から守ろうとします。協力しているかのようで、どこか探り合っている感じが面白いです。あらすじだけ読むと推理物のようですが、ミステリー風サスペンスだと思います。理解の特殊能力が便利すぎてミステリーっぽくないんですよね。ただ、何が嘘で何が本当か、読み進めるうちに段々分からなくなってきます。

それにしても、うまく騙されました。巻頭カラーの6人を見ながら推測していたら、ものの見事に。途中で事件の裏が予想でき、あぁ結局この人が……と思っていたら、終盤でやられました。少し物足りないかもと思いながら読んでいただけに、悔しいよりも嬉しかったです。惜しいのは、探偵殺人ゲームの設定があまりいかされなかった点です。特に、ネット上での勝負。元ネタは人狼だと思いますが、もう少しこう現実と上手に絡めてくれたらなーと思うのは欲張りでしょうか。エピローグの初と理解のメールのやりとりが結構好きです。

【ここからネタばれ】
ミステリーでなくコンゲーム。騙しあいのお話です。なんか犯人が分かりやすいとは思っていたんですよ。信用できなそうな理解が1番嘘をついていないところが皮肉ですね。しかし、あのラストは投稿時のままだったのでしょうか。問題作と書いてあるから、問題ない方向に手直ししたのかもね。余談ですが、この事件のとばっちりは達也だと思います。散々だ。(笑)
【ネタばれここまで】

挿絵が「AURA」の挿絵と似ていると思ったら、同じ人でした。終盤のイラストは物語を盛り上げてくれました。完成度が高いと言い切れないけれど、楽しめました。この嘘と猜疑心の物語、気になったら読んでみてはいかがでしょうか。




[ 2010/11/13 22:06 ] ライトノベル | TB(0) | CM(0)

2010年11月10日(水)

人はなぜ数学が嫌いになるのか 

人はなぜ数学が嫌いになるのか (PHPサイエンス・ワールド新書)人はなぜ数学が嫌いになるのか (PHPサイエンス・ワールド新書)
著者:芳沢 光雄
出版:PHP研究所
発行:2010/09/18

評価〔B+〕 教える側と学ぶ側のズレを探る
キーワード:数学、教育、好き嫌い、

冷静に考えてみれば、数学の「できる・できない」は相対的なもので、数学の「好き・嫌い」は絶対的なものなのです。(2章から抜粋)


数学は、他の教科と比較して嫌いな人が多いように感じます。国語や社会が好きな訳ではないけれど、数学をやりたくないから文系に進学した、なんて意見をしばしば耳にします。科学技術大国とまで呼ばれる国なのに、どうして数学嫌いな人が多いのか、なぜ嫌いなのか。著者はアンケートを実施してその理由を探り、具体的な対策を提案しています。買ってから気がついたのですが、著者は「数学的思考法」を書いた人だったんですね。

多数の数学嫌いの生の声が掲載されていて興味深いです。「分からない点が分からない」「解けない問題ばかり出された」等の妥当な意見のほかに、「数学ができない血筋だと言われた」と先入観や思い込みが原因となっている人もいて、個人的には数学が好きなのでどうなんだろうと思っていたのですが、嫌いになる理由は人それぞれなんだなと妙に感心してしまいました。

後半は、それらに対する具体的な改善策が、教師や親に向けて提案されています。ポイントは、できるようになる改善策ではなく、好きにさせるヒントな点です。できるできないは所属集団によって変わるが、好みは他人に左右されません。「体育の成績が悪かったけれど、スポーツは好き」が、数学ができないけれど数学好きな人を増やす参考になるかもしれないという意見は、なるほどと納得です。

嫌いな人が読んで好きになるような本ではなく、教員や保護者向けの本ですが、数学嫌いな人の心理が分かり面白かったです。また、数学以外の教科にも通じるものがあって、何かを教える立場の人には役に立つのではないでしょうか。著者の願うように、数学が好きな人が増えるといいですね。




[ 2010/11/10 22:11 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2010年11月06日(土)

空の下屋根の中2 

空の下屋根の中 (2) (まんがタイムKRコミックス)空の下屋根の中 (2) (まんがタイムKRコミックス)
著者:双見 酔
出版:芳文社
発行:2010/05/27

評価〔B+〕 日常系ではなくて現実系4コマ
キーワード:4コマ、ニート、無職、現代

よく考えたら、バイトと就職の違いって、あんまりよく知らない(本文より抜粋)


ニートというか就職というかお仕事探求4コマの2巻です。なんと、この巻で最終巻です。早いですね。しかし、内容を考えると、あまり延ばしても良くないのかな。でも冗長になるよりはずっと良いです。

その主人公の香奈絵ですが、前の巻で無事ニートを脱出し働き始めたのですが、また自分の立場に悩み始めます。そして働きながら、再び仕事を探し始めることになります。周りの意見も十分理解できますが、香奈絵の本音もかなり共感できるんだよなー。やりたい事はないけれど、やりたくない事はたくさん、とかね。結構、働くことについて考えさせられます。終盤の面接での彼女の答えに感心してしまいました。ラストも綺麗にまとまり、読後感も良かったです。

さて、幕間にあるもう1つの漫画、ニート男性のほうも巻末で一応終わります。が、あの終わり方なら別に載せなくても良かったのでは……。個人的には、1巻の時点ではあまり悪いとは思っていなかったんですが。なにか味のある幕切れになるのかな、と思っていたのに。せめて本編終了後の直後に持ってこないで欲しかったです。

自分にとっての働くこととは何か?を探す、緩くて共感できる4コマでした。良くある言い方ですが、働くことに少し意欲と勇気をもえらる良い漫画です。





[ 2010/11/06 22:24 ] 4コマ漫画 | TB(0) | CM(0)

2010年11月03日(水)

2010年10月の読書メモ 

TISTA1〔B〕
田宮模型の仕事〔A-〕
感じない男〔B+〕
スキエンティア〔A-〕
サキ短編集〔B〕
マンホール1〔B〕
ヒトはどうして死ぬのか―死の遺伝子の謎〔A-〕

以上の7冊でした。新書と小説が合わせて4冊、漫画が3冊。このくらいがちょうど良いのかねぇ。今月も先月に引き続きAとBのみで、C以下なし。良い感じで落ち着いているのではないでしょうか。

TISTAの2巻は11月へまわしました。少し時間を空けて読んだほうがいいのかなーと思って。そうそう、久しぶりにエッセイを読みたくなってきました。気軽に読めるのがいいですよね。ちょっと探してみよう。




[ 2010/11/03 10:57 ] 月別まとめ | TB(0) | CM(0)