2010年09月29日(水)

さがしもの 

さがしもの (新潮文庫)さがしもの (新潮文庫)
著者:角田 光代
出版:新潮社
発行:2008/10/28

評価〔B〕 本と人との交際話
キーワード:短編集、本、

そうして、本を読むのは、そのような行為のなかで、もっとも特殊に個人的であると、私は思っている。そう、だれかと一対一で交際をするほどに。(あとがきエッセイより抜粋)


本をテーマにした9つの物語からなる短編集です。本にまつわる、著者の言葉を借りるならば、本との付き合いや本との交際のお話。本に本のことが書かれているのはちょっと変わった感じです。本書は、2005年5月に出版された「この本が、世界に存在することに」を改題したものです。また、2010年の「新潮文庫の100冊」のうちの一冊です。

人との出会いが人それぞれであるように、本書に書かれた本とのエピソードは十人十色です。思わぬところで再会を果たしたり、長い間捜し求めたり、人生を変えるものであったりと、本の内容そのものとは別に心に残る想いと繋がっているものがあります。あぁ、この本を買った時は貧乏だったなぁとか、あの本に出会ったおかげで人生が決まったんだっけとか、そういう記憶や思い出のようなもの。よく読書したり本を読むのが好きだったりすれば、きっと分かるのではないでしょうか。

各エピソードはインパクトのあるものではありませんでしたが、じわじわと心にしみます。読んでいるときよりも、読み終わったあとの余韻が強く、色々想うところがありました。余情が溢れるとでも言うのでしょうか、読後感は良かったです。

あとがきエッセイ・交際履歴に読んだときによって感想の変わる本がでてきますが、こういう本は本当に良い本なんだと思います。僕も子供の頃に読んだ古典や名作ってちっとも面白くなかったなあ。今また読んだら、やはり感想は変わるんでしょうか。読んでみようかな。





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[ 2010/09/29 21:53 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2010年09月25日(土)

紫色のクオリア  

紫色のクオリア (電撃文庫)紫色のクオリア (電撃文庫)
著者:うえお 久光
出版:アスキーメディアワークス
発行:2009/07/10

評価〔A〕 壮大で衝撃的SFラノベ
キーワード:SF、クオリア、量子力学、シュレディンガーの猫、

毬井ゆかりは、ニンゲンがロボットに見える。それは、どうしても変えることのできない絶対条件。(本文より抜粋)


自分が感じている主観的感覚をクオリアと言います。例えば、色を見て青い、物を食べて美味しい、贈り物を貰って嬉しいなど、他人とは比べることのできない感覚です。本書は、そのクオリアにまつわるSFライトノベルです。

自分以外の人間がロボットに見える中学生・毬井ゆかりと、その秘密を知る友人であり語り部でもある波濤マナブを中心として描かれる二話+エピローグ。前半の「毬井についてのエトセトラ」を読んでいる時は、軽めのSFかなくらいに思っていたのですが、後半の「1/1,000,000,000のキス」を読み進めるうちに感想が変わりました。物語の急展開・急加速で、どこまで突き進んでいくんだろうと困惑と期待でドキドキした。文章や構成が上手いというよりとにかく衝撃的でした。穏やかな表紙からはとても想像できません。劇中のトライ&エラーが印象に残ります。

常人とはかけ離れた凄い能力を持っていて世界を変えられるほどなのに、実に個人的なことだけに執着している点は、少しブギーポップに似ていると感じました。壮大だけれども、非常に身近なお話です。

題名にあるクオリアをはじめとする心理学・哲学そして物理学の専門用語は、物語の中でも説明されていますが、こういうSF用語のようなものは、やはり読む前から知っていたほうがすんなり読めると思います。SFを読みなれている人には、お馴染みなのかもしれませんが。

以前読んでいた同著者の「悪魔のミカタ」は、登場人物が好きになれず途中で止めてしまったのですが、この本は満足です。ネットで評判が良かったので読んでみたのですが、正解でした。ライトノベルとSFの中間くらいにあるこの小説、面白かったです。SFにちょっと興味があるくらいの人は、特にお勧めです。




[ 2010/09/25 11:56 ] ライトノベル | TB(0) | CM(0)

2010年09月21日(火)

黄昏乙女×アムネジア1 

黄昏乙女×アムネジア 1 (ガンガンコミックスJOKER)黄昏乙女×アムネジア 1 (ガンガンコミックスJOKER)
著者:めいびい
出版:スクウェア・エニックス
発行:2009/08/22

評価〔B〕 美少女幽霊が活躍
キーワード:オカルト、幽霊、ホラー、コミカル、学園

「だってわたし、旧校舎の幽霊だもの」(本文より抜粋)


なんとなくオカルトっぽいものが読みたくなって手を出した一冊です。主人公である中学1年生の貞一が、幽霊の夕子と出会い、そして夕子の記憶の謎を追いつつも不可思議な現象に関与していきます。コミカル風味の学園ホラー、といったところでしょうか。

ストーリーは学校で起きた不思議なものを追うという定番の流れですが、幽霊自身が調べる側から怪談に関わるのはなんか変で面白いです。ホラーと聞くと見るのも怖いと言う人がいますが、夕子が全然幽霊らしくない幽霊のせいか怖くはなく、苦手な人でも読めると思います。一方、貞一は主役なのに個性が弱いので、もう少し特徴があれば良いのに……。話の展開も、まだ始まったばかりのせいか、大事件がないのが残念なところです。

絵は全体的に暗くてホラーらしさが漂いますが、コミカルな場面は明るくキャラもデフォルメで描かれ良い感じです。特に、表情が豊かに描かれていて目を惹きます。明るい性格の夕子が目立ちます。

登場人物の個性を強く押し出していくのか、それともストーリー重視でいくのか、1巻だけではよく分かりませんでした。次の巻で、漫画の方向性がはっきりしていくんじゃないのかな。個人的には後者になって欲しいと期待しています。





[ 2010/09/21 21:54 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2010年09月18日(土)

論語 (ビギナーズ・クラシックス 中国の古典) 

論語 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 中国の古典)論語 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス 中国の古典)
著者:加地 伸行
出版:角川書店
発行:2004/10

評価〔B+〕 論語と儒教の易しい入門書
キーワード:古典、論語、中国、孔子、儒教

この『論語』をしっかり読めば、儒教の核とはどういうものかが分かります。また、『論語』には人間や社会について、さまざまに語られ、宝石のような美しいことばがあふれています。(第一部(九)より抜粋)


中国の思想家、孔子の言葉を残した論語の入門書です。論語を読んでみたくなったのですがあいにく古典が苦手なので、漢文が分からなくても理解できるよう易しい本を探していたら、この本を見つけました。本書は、著者が中学生に語りかけるつもりで書いた、と言っているだけあって、平易にしかし重要な部分は損なわないように解説してあると思います。

前半は、孔子とはいつどこで生まれ、どのような人生を送ったかが書かれています。時代背景を知るのは、その本を知る助けになり、また久しぶりに伝記を読んだので興味深かったです。後半は、論語の本文・書き下し文・現代語訳の3つが併記されており、知識がなくても雰囲気を味わいつつ学ぶことができます。

論語は古代中国の箴言集くらいにしか思っていなかったのですが、「仁」や「孝」に代表される儒学の経典としても大変有名だと知ることができました。恥ずかしながら。儒教の道徳は賛同できるものとできないものがあって、興味深いですね。それに、「吾十五にして学に志す」から始まるあの文章は、孔子その人が人生を振り返って述べた言葉で、一般論としての人生論と勘違いしていました。あいまいな記憶や記憶違いが正しく修正されて良かったです。

厳しい乱世の中、知識だけでなく道徳を備えた教養人であれと説いた孔子は、かなり理想主義だったのではと感じました。その高い理想は、時を越えて国を越えて多くの人々に読み継がれています。論語の最初と最後の文は、印象に残りました。

(こういう本を読んだとき、論語本文と解説文のどちらの評価を本の評価とすればいいのか迷いますね。)







[ 2010/09/18 22:05 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2010年09月12日(日)

反貧困―「すべり台社会」からの脱出  

反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)反貧困―「すべり台社会」からの脱出 (岩波新書)
著者:湯浅 誠
出版:岩波書店
発行:2008/04

評価〔A〕 貧困の現場とその対策の実情
キーワード:貧困、社会、現代、

本人の責任として片づけるにはあまりにも多様な人たちが、日々新たに貧困に陥っている。そのことは、現代の日本社会に人々が貧困化する構造的な要因があるのではないか、という疑念を生じさせる。(第1章より抜粋)


経済の停滞により非正規雇用が増え、労働者全体の収入が下がってきていることにより、生活すること生きること自体が困難になっている人々がいます。そんな貧困層の現場と実情が生々しく語られているのが本書です。著者は、読み終わってから知ったのですが、2008年末に話題になった派遣村の村長をしていた方です。

6章2部構成になっていて、前半は、貧困はなぜ広まっているのか、どのような生活なのか、政府の対応などが述べられ、後半は、貧困問題にどう取り組んでいるのか、活動家である著者の奮闘が書かれています。貧困に喘ぐ人の相談にのったり、日雇い派遣として実際に働いてみたりと、上から目線ではない実体験に基づく見解は貴重です。「生活保護申請は一人で行ったときと、支援者と二人以上で行ったときとでは職員の態度が違う」は、体験してみなければ分からないことだけに驚きました。

よく言われている「貧困は自己責任」論が間違っていることは、なんとなく分かっていたので驚きはしませんでしたが、ネットの書評では啓蒙されたと評している方が少なくありません。それよりも、自助努力の欠如ならぬ自助努力の過剰や、自分自身からの排除のほうが新鮮で納得してしまいました。この2つを知っているか知らないかで、テレビや新聞の報道の見方が変わるのではないでしょうか。また、生活最低費としての生活保護基準など、専門的に関わっている人しか知らない情報も記載されていて、ためになります。

著者の言う“溜め”を作るために「たすけあい金」や居場所作りが重要になるんだと思います。終章にあるように、対立して違う立場の者を非難しても自分の暮らしは良くなりません。

2年以上前に書かれた本ですが、今の問題として読むことができました。国内の貧困を認めたがらない政府や、貧困層を食い物にする貧困ビジネスなどまだまだ問題がありますが、活動家たちのがんばりによって、少しずつ変わりつつあります。社会について考えさせられましたし、社会全体の問題として認識しなければならないでしょう。為政者や組織の上に立つ人は、こういう本こそしっかり読んでおくべきです。





[ 2010/09/12 14:58 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2010年09月05日(日)

エンマ7 

エンマ(7) (ライバルコミックス)エンマ(7) (ライバルコミックス)
著者:ののやま さき
出版:講談社
発行:2010/09/03

評価〔B+〕 感情が芽生えたエンマの行方は
キーワード:オムニバス、シリアス

「オレも…苦しい…のか?」(本文より抜粋)


骨抜き紙人形のエンマ、7冊目です。予告どおり匣部藩のその後から始まります。

6巻でエンマの身に起きた出来事、そしてその影響が強く出てきます。これは予想通りだったのですが、こうなると分かっていても面白いです。反面、良く分からなかったのがナユタ。エンマの監視のようなそうでないような……。彼の今後も気になります。

少し前からエンマの存在自体に話が傾いてきていますが、一方で1巻から続く大量に死人が出ないように骨を抜く一話完結のスタイルも維持している点が目を惹きます。同じ一話完結でも、エンマの変化前と後では印象が変わりますね。登場人物のほうに重点が置かれると、今までメインだった骨抜きは軽視されるのかと思っていたので、上手いつくりです。

最後のエピソードである人物が再登場します。強烈な引き。そして、予告によると次で最終巻となるようです。非常に残念だなあ。もう少し続いても、と思ってしまう。エンマ出生の謎、閻魔王の思惑が明らかになるのでしょうか。期待したいと思います。





[ 2010/09/05 17:17 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2010年09月01日(水)

2010年8月の読書メモ 

殺戮ゲームの館〈上〉〔B-〕
70億の針4〔A〕
ロボットとは何か――人の心を映す鏡〔S-〕
殺戮ゲームの館〈下〉〔B+〕
放課後プレイ1〔B〕
AURA ~魔竜院光牙最後の闘い~〔A-〕
生徒会役員共4〔B〕

以上7冊でした。7月に続いてC以下がなくて順調です。新書は1冊だけだったのか。もっと読んだような気がしたんですが。

で、その1冊「ロボットとは何か」がS-。どちらかと言うと、知識よりも好奇心を満たしてくれた満足感が大きかったのが、高評価の決め手でした。予想よりもまだまだ未知のことが多く、また、哲学的な問題を含んでいる点が面白かったです。

8月は、近所の人から2冊借りて読みました。湊かなえの文庫版「告白」と、今野敏の「ST 警視庁科学特捜班」です。評価はA-とBくらいかな~。前者のように、次々に視点が変わって全体像が見えていく形式が好きなんですよ。

読みたい漫画が多いけれど、漫画だけに偏らないように注意していこうと思っています。




[ 2010/09/01 21:30 ] 月別まとめ | TB(0) | CM(0)