2009年07月31日(金)

理性の限界 

理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)理性の限界――不可能性・不確定性・不完全性 (講談社現代新書)
著者:高橋 昌一郎
出版:講談社
発行:2008/06/17

評価〔S〕 妥協なき知的探求と知的刺激があります
キーワード:哲学、科学、理性

ただいまから、「理性の限界」に関するシンポジウムを開催したいと思います。(序章より抜粋)


人は何をどこまで知ることができるのか?また、その理性や知識に限界はあるのかないのか?といった難しいけれど興味深いことを題材に取り上げています。タイトルを見るといかにも難解で取っつきにくそうですが、この本では論文のように解説するのではなく、架空の登場人物たちがシンポジウムで議論するという形式を用いることで、読みやすくそして格段に分かりやすくなっています。

シンポジウムでは表題の理性の限界について、選択・科学・知識の面からそれぞれ追求していきます。例えば、選択に関する章では、卒業旅行の行き先を多数決で決めた話から始まり、完全に公平な多数決は存在するのか?といった究極のところまで議論は進みます。

選択の章で出てくるアロウの不可能性定理は知らなかったので、驚きと共に感心しました。民主主義のひとつの答えを知ったような気分です。また、有名な囚人のジレンマに最適な答えがあるのかを調べた「繰り返し囚人のジレンマ」は、その結果が実社会ときちんと繋がっていて面白いです。2つ目の科学そのものを考察する科学の章では、不確定性原理など知っていることも多かったのですが、科学の合理性に疑問を投げかけたファイヤアーベントの主張などはとても興味深いものでした。3つ目の論理学と数学を扱った知識の章は、ぬきうちテストのパラドックスや、正直ナイトと嘘つきネイブのパズルといった分かりやすそうな話から、数学の限界について論じたゲーデルの不完全性定理、さらにその先まで説明されています。この章は難しいですね……まだ完全に理解できたとは言えません。

選択の章は予備知識なしでも大丈夫そうですが、残り2章は多少なりとも知識があったほうが良いかもしれません。とは言え、各分野の大まかな流れをつかむことは十分できます。分からない点でどうしても深く知りたいならば、それについての解説本を別に読めばいいんじゃないのかな。

通常ならば3つの章をそれぞれ別々の本として出しても良いくらい興味深く、そして科学の最先端や理性の限界に触れることができたかのような内容の濃い本でした。久しぶりにつけた評価Sは、またも知識といいますか学問の類の本。知的探求は面白いなあ。



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[ 2009/07/31 22:57 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2009年07月26日(日)

診療室にきた赤ずきん 

診療室にきた赤ずきん―物語療法の世界 (新潮文庫)診療室にきた赤ずきん―物語療法の世界 (新潮文庫)
著者:大平 健
出版:新潮社
発行:2004/08

評価〔B〕 例え話で見えてくるもの
キーワード:心理学、童話、昔話

本書では、どういう仕組みでお話が心の薬となるかをお話しします。(まえがきより抜粋)


書店で文庫本が大量に置かれたコーナーを見つけました。どうやら名作100選のような企画でした。毎年夏だったと思うけれど、いくつかの出版社で行われています。その中で、新潮文庫の100冊の小冊子を眺めていたら、この本の紹介に興味をひかれ読んでみることにしました。

精神科では、医者が患者の話を訊いて必要な薬を出すのですが、著者はその診察の際に例え話として皆がよく知っている童話や昔話を用います。表題にある赤ずきんを始め、ももたろう、ジャックとマメの木などです。それらが不思議と患者の状況や心境を表していることが多い、と述べています。童話は昔から廃れることなく語り継がれたもの。不条理や理不尽な展開もありますが、長い年月の中に埋もれることなく残る何かがあるのではないでしょうか。

本で挙げている相談例は、著者が患者に掲載許可を貰った実話なので、現実味があります。生活に支障をきたすほど悩んでいる人、家族に心配されて精神科を訪れる人、精神的健康のために悩みはなさそうだけど診察に来る人……。自分には当てはまらなくとも、周囲の人には当てはまる人が1人ぐらいいそうですね。価値観の違いを例えた「幸福なハンス」や「ぐるんぱのようちえん」は、なるほどと感心してしまいました。また、今更粗筋を聞くまでもないと思っていた話でも、忘れていたり記憶違いだったこともあり、そうした再発見も新鮮です。

物語療法という治療法があるのを知ることができ、面白いと思いました。著者が自己分析として自分にあう物語を探してみたように、僕も自分の人生や性格を表している童話を探すのも、意義があるし楽しそうです。


(追記の可能性あり)


[ 2009/07/26 21:52 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2009年07月21日(火)

エンマ3 

エンマ 3 (ライバルコミックス)エンマ 3 (ライバルコミックス)
著者:土屋 計
出版:講談社
発行:2009/05/01

評価〔A〕 少しずつ違うのが良いんです
キーワード:オムニバス、シリアス

――…何処へでも、入り込むのだな(本文より抜粋)


冥府からの使者・エンマの物語もはや3巻です。出版していたのは知っていたのですが、急いで読むよりもじっくり落ち着いて読みたかったので、今月にしました。読後も結構心に残るし、その余韻も楽しみたいしね。

前の2冊同様、大量死を防ぐために骨を抜きにいくという軸は一緒ですが、今回はついに未来が舞台の話が初登場です。そう言えば、未来はもとより現代・21世紀の話も今までなかったような……。昔のほうが力や権力の差がはっきりしていただけに、この漫画と合っていたのですが、未来だとどうなるのかなーと思っていたのですが、なかなかどうして他の話と同じくらいよくできている内容となっています。

エンマの役割上、同じような話の流れになりがちなのに、目標の性格や状況を変えて飽きさせないのは上手いと思います。魅せてくれるとでも表現すべきでしょうか。今回は特に古代中国・燕の国の話が良かったです。

【ここからネタばれ】
閻魔王の情けが人の骨の数を上回った場合はどうなるのか?という疑問は、当初からありましたが、あのような結果になるとは……。閻魔王がいうように、あの時は結果的にうまくいったから良いものの、より悪化してしまったらどうするんだろうね。
【ネタばれここまで】

また、この巻ではエンマ自身にも焦点が当てられ話が動きそうです。そのあたりは次巻以降に持ち越しかな。そのへんも含めて良質の物語を期待しています。



[ 2009/07/21 21:40 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2009年07月12日(日)

パーツのぱ 

パーツのぱ (電撃コミックス EX 130-1)パーツのぱ (電撃コミックス EX 130-1)
著者:藤堂 あきと
出版:アスキー・メディアワークス
発行:2009/05/27

評価〔B〕 アキバの客ではなく店側の話。
キーワード:アキバ、パーツショップ、パソコン、オタク

ある小さなパーツショップのいつもの日常(本文より抜粋)


秋葉原のパソコン専門店の様子を描いた漫画です。週刊アスキーにて連載中と、既に感想を書いた『ハニカム』と同じ雑誌出身ですが、『ハニカム』の1回4ページよりも短く、1回2ページとなっています。極端に短いですが、コンパクトにまとまっていて、本の総ページ数のわりには十分に楽しめました。

アキバやオタクに関する漫画は結構な数が出ていますが、店員に焦点を当てた漫画はあまりないような気がします。なんとマニア向けなんだ。表紙のASSUを見てもそれが分かります(マザーボードのメーカーASUSをもじったのでしょう)。パソコンに興味のない人は聞いたこともない言葉を注釈なしに使うので、ある程度パソコンについて知っていないと面白さが半減するんじゃないのかな。

ゲーム好きな男性アルバイト・入輝と、小柄で童顔の女性先輩・本楽、それと店長の3人を中心に話は進んでいきます。後で増えていきますけれど。読んでいて思ったのですが、本楽のように自作パソコンに強い女性はかっこいいね。

また、変わった主題に注目した4コマや短編漫画では、段々と普遍的なもの、例えば恋愛などに重点が移っていって、せっかくの特色が薄れていってしまうことがありますが、この漫画はそうならずにあくまでパーツショップの日常に重点が置かれている点が良いです。

あのコマ割を見ていると、安倍吉俊のニアアンダーセブンを思い出すなあ。何はともあれ、気に入ったのでこの調子で続いて欲しいです。


(追記するかも)

[ 2009/07/12 22:22 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2009年07月03日(金)

2009年6月の読書メモ 

理系のための恋愛論〔B+〕

先月読んだのはこの1冊だけでした。なんということか。これでは読書が趣味とはちょっと……。

読みたい本はあったのですが、6月はパソコンを新しいものに取り替えたので、データ移行や組立などに時間を取られてしまって、余裕がありませんでした。まだ少し残っていますが、7月は大丈夫だと思います。

昨年11月以来の新しく漫画を読まなかった1ヶ月となりました。反動で漫画が多くなりそうです。


[ 2009/07/03 21:58 ] 月別まとめ | TB(0) | CM(0)