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2008年03月19日(水)

哲学の謎 

哲学の謎 (講談社現代新書)哲学の謎 (講談社現代新書)
著者:野矢 茂樹
出版:講談社
発行:1996/01

評価〔A〕 分かっているようで分からないことばかり
キーワード:哲学、対話形式

時間が流れるとして、その流れの速さはどれくらいなのだろう。(本文より抜粋)


哲学者の著者が、哲学の根本的な問題・疑問について2人の対話形式で書きだした本です。以前読んだ著者の「無限論の教室」が大変面白かったので、もう1冊何か読んでみようと思って手にしたのがこの本だったのですが、また違った面白さがありました。

始めの『意識・実在・他者』を読んでいる時、何故か恐怖感や不安感でいっぱいになりました。何か踏み込んではいけないところに踏み込んだかのような感覚でした。ホラーの恐怖感とはまた違った感情だったんだけど、あれは一体何だったのか。次の章からはそれらが好奇心に変わり、興味深く読めました。

自己の他は、記憶・時間・体験・言語・行為・自由意志など当然知っているが深く考えると、どういうことか良く分からなくなってくることについて書かれています。例えば記憶のところでは、世界は5分前に作られたかもしれない『5分前世界創造仮説』が、体験の章では私的体験は比較することが不可能である『知覚世界の自閉』なんかがあげられていて、分かりやすい例から本質的な話にうまく繋がっていました。『意味の在りか』で犬という字を書いた紙を前にして、これはただのインクのしみだと言い切る様は、まるで何で何でと繰り返す子供のようでおかしくもあり、本当は誰も何も分かっていないのではないかと全然笑えない状態だったりもします。

いくつかの項目は、昨年読んだ「哲学的な何か、あと科学とか」と重なっていて、すんなりとのみこむことができました。 外面的に人とそっくりなロボットは哲学的ゾンビ、私的体験はクオリアと表現は違ってても内容は同じです。哲学として深く考えたいのならば本書のほうがいいけれど、そこまで追求しなくてもいいし、もっとざっくばらんに読みたい方は、「哲学的な何か、あと科学とか」のほうが良いと思います。

時の流れや経験の一般化、行為と意志は特に興味深かったです。疑問に思わないことを考えてみたり、1つの謎から次の謎に繋げて進んでいくのは新鮮でした。僕も哲学的なことを良く考えているのですが、それよりももっと詳しくもっと体系的でだいぶ頭がこんがらがりましたが、面白かったです。小説のように激しい興奮はありませんでしたが、たびたび手にとって再読しそうな本です。



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[ 2008/03/19 23:01 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)