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2019年05月28日(火)

非社交的社交性 大人になるということ 



著者:中島 義道
発売日: 2013/5/17

評価〔C+〕 実質エッセイ本です。
キーワード:哲学、現代、哲学塾、若者

だが、この際とくに言っておきたいのは、きみと異質な人々を切り捨てるのではなく「大切にする」ことである。(はじめにより抜粋)


題名の「非社交的社交性」とはカントの言葉で、人間は我慢できないが離れることもできない人々に囲まれて生きているという意味だそうです。少し調べてみたところ著者は人間嫌いみたいなので、そういう人が人間関係をどう思いどう実践しているのか、哲学者から見た人付き合いとはどうなのか興味があって手に取りました。

前半は哲学のエッセイと著者の半生が書かれています。エッセイの部分はカントが中心でまったく知らないことが多く興味深かったです。学問とは少し外れた哲学者の飲み会の話題は何か、なども面白いです。少子化などの社会問題には触れないところがいかにもって感じですよね。

後半は著者が主催する哲学塾について、日頃思っていることや印象に残る出来事を綴っています。特にある種の特徴、言葉を額面通りに受け止め批判に弱い生徒たちの言動を紹介しています。はじめは穏やかに紹介しているのですが次第に辛辣になって、少々戸惑いましたしあまり良い気分ではありませんでした。そして、前半では自分は哲学を続けているので真っ当な社会人とは違うと言っているけれど、後半では生きづらそうに生きる生徒たちに対してもっと真っ当になれと諭しているのが、なんだか皮肉っぽくて印象に残りました。

上記のとおり本書は哲学の本というより哲学者のエッセイです。勘違いしないように注意してください。



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[ 2019/05/28 22:19 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2019年03月09日(土)

恐怖の構造 



著者:
発売日:

評価〔C〕 一個人の考察です。
キーワード:恐怖、ホラー映画、ホラー小説、

我々が恐れている感情の多くは「恐怖」ではなく「不安」なのではないか。(本文より抜粋)


題名は心理学のそれですが、内容はホラー小説化が恐怖について語るエッセイです。

新書のように体系立てて書かれていないので話がやや散文的ではありますが、恐怖という感情を仕事にしている方が恐怖についてどう思っているのか知ることができます。説得力があると感じたのは恐怖と不安の違いです。対象がはっきりしている恐怖と、漠然とした感情の不安の違いを上手く説明していて興味深かったです。他には創作のジャンルとしてのホラーの定義も、なかなか新鮮で面白いです。

ただし、これらの意見は著者の個人的な体験をもとに書かれているので、客観的な裏付けがあるわけではありません。あくまで一個人の価値観です。何か根拠となる実験や調査結果があればぐっと説得力が増すのですが・・・・・・。

最後の章で精神科医の方と恐怖をテーマに対談をしています。途中で精神科医の方が、平山さん(著者)が怖いものではなく平山さんが怖いって話じゃないのと言っていて、私が思っていたことを代弁してくれたかのようで印象的でした。やはり小説家って感性が少し違うのかなって思ってしまう対談ですので、著者のファンの方は読んでみることをおすすめします。



[ 2019/03/09 21:36 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2018年09月09日(日)

おくのほそ道(全) (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス) 



著者:角川書店 (編集)
発売日: 2001/7/1

評価〔B-〕 意外と堅苦しくないです。
キーワード:古典、俳句、俳諧、詩歌、旅行記、江戸時代、

夏草や兵どもが夢の跡(本文より抜粋)


多くの人が俳句といえば松尾芭蕉、芭蕉といえば奥の細道を連想するであろう有名な作品です。学校で勉強したはずですが、東北地方を旅したくらいしか覚えていませんでした。

芸術関係の本なので、歌集のようにある程度知識がないと楽しめないのかなと危惧していましたけど、万葉集や古今和歌集のように歌だけではなく、風変わりな旅行記を読んでいるようで予想よりもずっと分かりやすかったです。現代語訳も説明が多すぎることもなく違和感がないのが良いです。

あの有名な「松島やああ松島や松島や」は芭蕉の句でなく、近代に作られたもので無縁の駄句と書かれていて驚きました。確かに単純すぎないかとは思っていたのですが・・・・・・。では芭蕉はどんな句を詠んだかというと、絶句して詠めなかったそうです。よっぽど荘厳な景色だったのでしょう。

また、「閑かさや 岩にしみいる 蝉の声」が山形県山寺とは知りませんでしたし、「庭掃きて 出でばや寺に 散る柳」は偉人の人間味あふれる側面が見えて興味深かったです。実際に芭蕉がたどった土地や名所を訪ねてみるのも、面白いかもしれません。



[ 2018/09/09 11:57 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2018年05月03日(木)

大放言 



著者:百田 尚樹
発売日: 2015/8/12

評価〔B+〕 この本は炎上してないみたいです。
キーワード:放言、批判、炎上、反論、

どこからも突っ込まれない意見や、誰からも文句の出ない考えというものは、実は何も言っていないのと同じだ。(まえがきより抜粋)


失礼ながら著者はなんだか喋るたびに炎上している印象があります。有名な小説の作家ということ以外よく知らず、具体的にはどのようなことを言っているのかほとんど知りませんでした。

実際に著者の意見や非難に対する反論を読んでみると、自分とは異なる意見のものもありますが、概ね理解できる意見です。炎上が頻発するほど過激にはあまり感じません。メディアが発言の一部のみ抜粋するので、真意やニュアンスが本来のものとは異なって伝わることが多いようです。

他人の目は正しい、超少数意見は厳しいようだけど無視していい、国会のヤジは問題ないのか?、あたりが読んだ後も印象に残りました。特に、最初の放言は、本心を出さずに生きてきた人は出さずにいる姿が本当の姿と続き、説得力のある内容です。

放言を問題発言だとむやみに騒ぎ立てずに、その真意を読み取ることが大切です。本人の反論もきちんと聞くべきですね。言葉狩りが横行することのないような社会を望みます。



[ 2018/05/03 18:40 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2018年03月24日(土)

土佐日記(全) (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス) 



著者:紀 貫之、 西山 秀人
発売日: 2007/8/1

評価〔C〕 昔の記録としては貴重ですが。
キーワード:随筆、古典、旅行記、国司、

三十日。雨風吹かず。「海賊は夜歩きせざなり」と聞きて、夜中ばかりに船を出だして、阿波の水門を渡る。(本文より抜粋)


男もすなる日記といふものを、の出だしで有名な紀貫之の作品です。日記ですが旅行記、紀行文の要素が強い文章で、現代では平安時代の船旅がどのようなものであるかを知る重要な資料となっています。

また男性が普段使う漢文ではなく、女性が使うひらがなで書くことによって、日記をいつもとは違う視点や感性で描こうと挑戦しているのが大きな特徴です。ネットで男性が女性のふりをするネカマと一緒です。もしかしたら土佐の国司という高い身分を、一時的にでも忘れてみたかったのかもしれませんね。

内容はというと、日記なのに一人で物思いにふける場面は少なく、登場人物たちが様々な場面で感情を表現するために和歌を詠んでばかりです。船が出港できなければ嘆きの歌、夜の月を見れば優雅な歌を詠みます。まるで物語つきの歌集のようでした。もっと旅行記のならではの珍しいものを見た的な記述を期待していたので、正直なところ残念でした。ただ、昔の船は速度がでないばかりか、出港することさえ思いどおりにならなかったのだなと、当時の人々の苦労は少しだけ分かりました。

和歌が好きで昔の歌集の知識があれば、かなり面白い旅行記だと思います。



[ 2018/03/24 21:14 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)