2018年01月19日(金)

脳が壊れた 



著者:鈴木 大介
発売日: 2016/6/16

評価〔B+〕 脳梗塞の人を知らなかったら評価A。
キーワード:闘病記、脳梗塞、リハビリ、

ともあれ、しゃべれない、指も動かない、視界はグニャグニャ。どうやら歩行には支障がないようだが、確実にこれは脳のトラブルだ。(第1章より抜粋)


現役のフリー記者が脳梗塞を患い、体験したことを分かりやすく伝える闘病ドキュメンタリーです。

文章のプロが綴っているだけあって、事細かに丁寧に書かれています。脳の病気になって性格が変わってしまったという話はときどき聞きますが、著者によると注意力や意識、感情の制御がうまくいかないためにそう見えるそうです。リハビリはくじであるという比喩は分かりやすく興味深かった。なかなか理解しづらい患者の内面が、前よりは分かった気がします。

恥も外聞もなく正直に思った事や知られたくないであろうことも語っていて、さらには病気の原因についても生活習慣を反省し、改善しようと今もなお試みているのが立派です。食事と運動に気をつけていてもなってしまうのが怖い。元アスリートは危険なのも意外でした。

私は脳梗塞の患者を知っているので、ああこんな感じだよねと割とすんなり読めましたけど、周囲に患者がいなかった人にとっては知らないことばかりかもしれません。脳梗塞を理解する助けとなる闘病記でした。予防のために読むのもよさそうです。




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[ 2018/01/19 22:22 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2017年12月28日(木)

万葉集 (角川ソフィア文庫―ビギナーズ・クラシックス) 



編集:角川書店
発売日: 2001/11/1

評価〔B-〕 結構変化に富んでいます。
キーワード:古典、詩歌、奈良時代、

川の上の つらつら椿 つらつらに 見れども飽かず 巨瀬の春野は(本文より抜粋)


日本最古の歌集、万葉集の入門書です。全二十巻、4500余首ある中から選び抜いた約140首を紹介しています。古今和歌集など他の歌集と違い、素朴で率直な力強い歌が特徴です。

自然の美しさや故郷への想いを綴ったものが多いと思っていたのですが、恋愛や夫婦愛、死者を悼むものなど変化に富んでいます。中でも恋愛はもっと時代が下ってから流行したと思っていたので、ちょっと驚きました。隣町でも移動するのには苦労したであろう時代だからこそ、人への思いがよりいっそう高まり歌にしたくなるのもかもしれません。

専門用語も出てきますが、コラムで簡単に説明がありますので心配ありません。枕詞はもちろん、相聞、挽歌、序詞などひととおり解説があります。昔、学校で習った記憶がありますが、あまり覚えていないのでこうしたコラムはありがたいです。

聞いたことのある歌や印象に残った歌を引用してみます。

田子の浦ゆ うち出でて見れば 真白にぞ 富士の高嶺に 雪は降りける


憶良らは 今はまからむ 子泣くらむ それその母も 我を待つらむぞ


賢しみと 物言うよりは 酒飲みて 酔ひ泣きするし まさりたるらし


世間を 何にたとえむ 朝開き 漕ぎ去にし船の 跡なきごとし


防人に 行くは誰が背と 問う人を 見るが羨しさ 物思いもせず



「世間は~」は僧が詠んだ哲学的な歌ですが、いつの世もあまり変わらないなと本当に思います。毎度のことですが、古典を読むと人間は千年くらいでは本質的に変わらないなと思うばかりです。昔の人に親近感を覚えます。

解説は分かりやすいのですが、読んでみて詩歌を楽しむ能力が低いことを実感しました。年を取り素養を身につければ違ってくるのかもしれませんね。




[ 2017/12/28 21:28 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2017年05月23日(火)

完全版 社会人大学人見知り学部 卒業見込 (角川文庫) 



著者:若林 正恭
発売日: 2015/12/25

評価〔B+〕 少しずつ変わっているのが興味深いです。
キーワード:エッセイ、芸能、お笑い、テレビ、文庫化、

誰もぼくのことなんて見ていない。それはわかっているのだ。だがしかし、だ。ぼくなのだ。ぼくが!見ているのだ!(「自意識過剰」より抜粋)


お笑いコンビ・オードリーのピンク男じゃないほう、スーツ姿の常識人っぽいほうの若林さんが雑誌で連載していたエッセイをまとめた本です。完全版ということで100ページ以上加筆されています。

どうやら人見知りかつ自意識過剰で有名らしく、その内面を飾ることなく明かしています。内向的な人なら結構共感できる点も多いのではないでしょうか。個人的には、「テレビのお仕事をしていくうちに感じてたのが、世の中の人は食べ物にすごい興味があるんだな」、あたりがかなり頷けます。芸能人でもそう思っている人がいて、なんか安心しました。

一つひとつのエッセイが数ページと短いためか、序盤は物足りなさを感じていたのですが、中盤以降は彼の行動に変化が出始めて面白いです。最初は無趣味だった彼が、面白いものを見つけて変わっていくのは良いですね。

「ネガティブモンスター」では考えすぎない方法を考え、ネガティブを潰すのはポジティブではないと結論付けます。また、「書籍化します」では、物事を楽しむためにはどうするのかを悩み、彼なりに答えを出します。こうした内向的な人なら身に覚えがありそうなことに対し、あやふやにせずきっちり言葉で説明しているのが良いですね。抽象概念を言葉にする能力が高そう。

短いものより長い文章のほうが面白かったので、次があるなら少し長めのエッセイを出して欲しいです。



[ 2017/05/23 21:40 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2017年01月08日(日)

「昔はよかった」病 



著者:パオロ・マッツァリーノ
発売日: 2015/7/17

評価〔B+〕 現代の悪いところばかり目立つものです。
キーワード:文化史、昔、社会、新聞、治安、人情、

戦前の日本では、今の10倍以上の詐欺被害が発生していました。しかも当時の日本の人口がいまの半分くらいだったのですから、戦前は平気で人をダマす悪いヤツがそこら中にいたんですよ。(第2章より抜粋)


異常なクレイマーやモンスターペアレンツ、凶悪な事件などがニュースで報じられると、社会が段々悪くなってきているような気がします。そうした影響からか、しばしば「古き良き」「昔はよかった」と言われますが、本当にそうなんでしょうか。イタリア生まれの日本文化史研究家が、様々な史料をもとに昔が本当に良かったか検証します。

読みやすい話し言葉で書かれていますので、かなり読みやすいです。新聞の投書や犯罪統計など裏づけもしっかりしていて、外国の方であることを忘れてしまうほど、内容もしっかりしています。

上で引用した犯罪件数が今のほうが少ないことは知っていましたけど、自警団の実態や美人を優遇していた企業・役所、商店街の歴史など知らないことばかりでした。印象に残ったのは、江戸時代は人情が薄かったことです。住居転出率の高さから、深い近所付き合いはなかったと断言していて興味深いです。

随筆は思うがままに書くものだと思っていたのですが、巻末の参考文献を見ると、下手な新書よりずっと正確であると感心しました。著者の他の本も評判が良さそうなので、機会がありましたら読んでみます。



[ 2017/01/08 19:05 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2016年02月02日(火)

他人をほめる人、けなす人 (草思社文庫) 



著者:フランチェスコ・アルベローニ (著), 大久保昭男 (翻訳)
発売日: 2011/4/12

評価〔C〕 エッセイにしては硬い文章かな。
キーワード:エッセイ、人間関係、短編集、

こういうタイプの人びとは、自分の日常生活の出来事のなかから多くのことを学びとる。あれこれ出来事を観察し、対比し、判断し、辛抱強く関連づけることによって学びとる。(「真の教養がある人」より抜粋)


世の中には色々な人がいます。ほめない人、冒険できる人、先入観にとらわれない人。観察と洞察によって、短い文章で人の本質に迫ります。

一項目4~5ページでどの項目から読んでも大丈夫なので、読みやすいです。ただし、簡潔に書かれてはいますが、抽象的な単語や婉曲的な表現を使っているので、分かりやすくはないと思います。また、理解しやすい流れではないのが、読みづらさを感じました。例えば、題名のような人物を最初から説明するのではなく、逆のタイプの人物の考察から入ったり、全然関係ない話題が長く続く場合もあるので、何について話しているのか良く分からなくなってしまった時もありました。

良かったのは、自分の考えと同じでも反対でもなく、まったく違った見方をしていることを知ることができた点です。こういう見方は考えたことなかったなぁと思うこともありました。例えば、「困惑させる人」は単なる意地悪や気晴らしではなく、他人を利用するために行動している、というのはなるほどと思いました。なかなか合わないタイプの人を理解するための、より良い人間関係を築くための助けとなるかもしれないですね。

序盤に好ましくないタイプが固まっているのも良くなく、始めは読んでいてあまりいい気分ではありません。しかし、徐々に見習うべき人物が出てくるので、途中で読むのをやめないほうが良いです。



[ 2016/02/02 21:36 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)