2017年01月08日(日)

「昔はよかった」病 



著者:パオロ・マッツァリーノ
発売日: 2015/7/17

評価〔B+〕 現代の悪いところばかり目立つものです。
キーワード:文化史、昔、社会、新聞、治安、人情、

戦前の日本では、今の10倍以上の詐欺被害が発生していました。しかも当時の日本の人口がいまの半分くらいだったのですから、戦前は平気で人をダマす悪いヤツがそこら中にいたんですよ。(第2章より抜粋)


異常なクレイマーやモンスターペアレンツ、凶悪な事件などがニュースで報じられると、社会が段々悪くなってきているような気がします。そうした影響からか、しばしば「古き良き」「昔はよかった」と言われますが、本当にそうなんでしょうか。イタリア生まれの日本文化史研究家が、様々な史料をもとに昔が本当に良かったか検証します。

読みやすい話し言葉で書かれていますので、かなり読みやすいです。新聞の投書や犯罪統計など裏づけもしっかりしていて、外国の方であることを忘れてしまうほど、内容もしっかりしています。

上で引用した犯罪件数が今のほうが少ないことは知っていましたけど、自警団の実態や美人を優遇していた企業・役所、商店街の歴史など知らないことばかりでした。印象に残ったのは、江戸時代は人情が薄かったことです。住居転出率の高さから、深い近所付き合いはなかったと断言していて興味深いです。

随筆は思うがままに書くものだと思っていたのですが、巻末の参考文献を見ると、下手な新書よりずっと正確であると感心しました。著者の他の本も評判が良さそうなので、機会がありましたら読んでみます。



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[ 2017/01/08 19:05 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2016年02月02日(火)

他人をほめる人、けなす人 (草思社文庫) 



著者:フランチェスコ・アルベローニ (著), 大久保昭男 (翻訳)
発売日: 2011/4/12

評価〔C〕 エッセイにしては硬い文章かな。
キーワード:エッセイ、人間関係、短編集、

こういうタイプの人びとは、自分の日常生活の出来事のなかから多くのことを学びとる。あれこれ出来事を観察し、対比し、判断し、辛抱強く関連づけることによって学びとる。(「真の教養がある人」より抜粋)


世の中には色々な人がいます。ほめない人、冒険できる人、先入観にとらわれない人。観察と洞察によって、短い文章で人の本質に迫ります。

一項目4~5ページでどの項目から読んでも大丈夫なので、読みやすいです。ただし、簡潔に書かれてはいますが、抽象的な単語や婉曲的な表現を使っているので、分かりやすくはないと思います。また、理解しやすい流れではないのが、読みづらさを感じました。例えば、題名のような人物を最初から説明するのではなく、逆のタイプの人物の考察から入ったり、全然関係ない話題が長く続く場合もあるので、何について話しているのか良く分からなくなってしまった時もありました。

良かったのは、自分の考えと同じでも反対でもなく、まったく違った見方をしていることを知ることができた点です。こういう見方は考えたことなかったなぁと思うこともありました。例えば、「困惑させる人」は単なる意地悪や気晴らしではなく、他人を利用するために行動している、というのはなるほどと思いました。なかなか合わないタイプの人を理解するための、より良い人間関係を築くための助けとなるかもしれないですね。

序盤に好ましくないタイプが固まっているのも良くなく、始めは読んでいてあまりいい気分ではありません。しかし、徐々に見習うべき人物が出てくるので、途中で読むのをやめないほうが良いです。



[ 2016/02/02 21:36 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2015年09月24日(木)

人間はどこまで動物か (新潮文庫) 



著者:日高 敏隆
発売日: 2006/11/28

評価〔C〕 題材は嫌いではないのですが
キーワード:随筆、生物学、動物行動学、文庫化、

じつはショウジョウバエは酒そのものが好きなのではない。アルコール分が好きなのである。(P33より抜粋)


動物行動学者のエッセイ集です。新潮社の「波」に掲載されていた文章をまとめた本を、さらに文庫化したものです。

随筆ではありますが、生物学の新書とエッセイをまぜ合わせた内容となっています。ハエや蝶、蝉などが度々取り上げられ、身近にいながら知られていないそれらの生態を知ることができ、興味深いです。また、大学の先生らしく学生や大学も題材として選び、感想や自論を述べています。

好みに合っていると思って読んだのですが、どうもどんどん先を読みたくなるといった感じではありませんでした。なんか合わない、とでも言いますか。理由はいまいちよく分かりません。気になったのは、エッセイにしては詳しく説明していてテンポが悪いことでしょうか。それと、内容が硬めで気軽に読めないと思います。このあたりは好みの差なのかな。

新書のように専門的な文章か、逆に娯楽性を追求した随筆のどちらかに寄っていれば、もう少し違った感想になっていたでしょう。



[ 2015/09/24 21:12 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2015年09月02日(水)

中の人などいない @NHK広報のツイートはなぜユルい? (新潮文庫) 



著者:浅生 鴨
発売日: 2015/5/28

評価〔B+〕 ツイッターの良い点悪い点が見えてきます。
キーワード:ツイッター、ネット、現代、SNS、

こうして私は、みんなと普通の会話をするようになりました。(P78より抜粋)


ずっと前ですが、NHKの公式ツイッターがNHKらしかぬことを呟いている、という文章をネットのどこかで見ました。ツイッターをしていなかったので、あまり気に留めなかったのですが、先日本屋さんで本書の表紙を見て急に思い出したのです。今もツイッターは未登録ですが、ちょっと興味がでてきたので読んでみました。

広報のツイッター初代担当の著者が、発端からどのようなことを意図して呟いていたのかまで、読みやすい文章で綴っています。宣伝ではなく広報、NHKのイメージを変えたいという願いから始まったのが面白いです。特定の番組ではなく、局そのものの、企業そのものの印象。ツイッター初心者の著者が、試行錯誤で視聴者と会話をしていく過程が書かれていて、どこか微笑ましいです。

不特定多数の人に見られているため、何かに対して賛成の人と反対の人が必ず出てきます。公式では対応が難しい点も正直に話しています。東日本大震災の対応も様々な意見があると思いますが、著者の方針・行動は悪くなかったのではないでしょうか。

メンション欄など分からない用語もありましたが、これは後で調べてみようと思います。知らないアプリのことは、なかなかピンとこないですね。日常的に触れている人には知っていて当然なのでしょうが。

文庫化にあたって収録されたあとがき「外の人になりました」がなかなか良いです。しんみりしてしまいますが、新しい一歩を踏み出せたことは喜ばしいことだと思います。また違う題材で何か本を書いて欲しいですね。



[ 2015/09/02 22:29 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2014年01月22日(水)

堕落論 (新潮文庫) 

堕落論 (新潮文庫)堕落論 (新潮文庫)
著者:坂口 安吾
出版社:新潮社
出版日:2000/05/30

評価〔C+〕 哲学と文学の人。
キーワード:文学、戦後、哲学、

僕の仕事である文学が、全く、それと同じことだ。美しくみせるための一行があってもならぬ。美は、特に美を意識して成された所からは生れてこない。(日本文化私観より抜粋)


書店やWEBで何度も見かけ読もうか迷っていたのですが、なんだか難しそうという理由で敬遠していました。でも、ようやく今回読みました。無頼派と呼ばれた坂口安吾の随筆・評論集です。

文学、美術、人生、歴史をテーマに、どれも迷うことなくぶつけるかのような文章です。上記の抜粋部分や「人間は何をやりだすか分からんから、文学があるのじゃないのか」(教祖の文学)の一文は強烈で、文学のことなんてまるで知らない僕でも分かったような気になります。表題作は短いながらも気概に富んでいて、著者がどのような人物か推し量れると思います。また、古代に関する裏話を書いています。歴史好きの方には大いに受けそうです。

題材事態に興味がなく退屈に感じる箇所と、おそらく読解力がなくてよく理解できていないためつまらなく感じる箇所があり、全体的な評価はあまり良くないです。章ごとの評価がまちまちで、こうした総合評価はあまり意味がないのかもしれませんね。しかし、人気があるのが分かる作家です。

数年後くらいにもう一度読んだとき、また感想が違ってきそうです。



[ 2014/01/22 20:19 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)