2018年05月18日(金)

サイコパス 



著者:中野 信子
発売日: 2016/11/18

評価〔A〕 きちんと理解できてよかった。
キーワード:サイコパス、犯罪、精神分析、共感、合理性、

表情や音声から他者の感情を読み取る実験をおこなうと、「怒り」「喜び」「驚き」といった感情については一般人と同程度に読み取れるものの、「恐怖」「悲しみ」を察する能力には欠けていることがわかっています。(第1章より抜粋)


報道で伝え聞くサイコパスは、血も涙もない殺人鬼といったイメージでしたが、本書を読むとそれは正しくないと分かります。犯罪者の中のごくごく一部の人たちの特徴をそう呼ぶのかと思っていたのですが、もっと範囲が広く、全人口のおおよそ1%が当てはまります。その中には成功者もいれば違法行為をして捕まる者まで様々です。例としてブラック企業の社長などが挙げられていて、なるほどなと思ってしまいました。

サイコパスの人たちはあたかも感情がないかのように言われますが、他者の感情を読み取る能力が高いのが意外で興味深いです。それが同情や共感を伴っていればよいのですが、共感性は低く合理性のみで行動していく点が一番の特徴だと感じました。感情のない合理性は、冷静という表現を通り越して違和感を覚えます。なぜ冷酷な言動を取ってしまうのかが分かります。

また、遺伝と環境のどちらの影響が大きいのか調べていて、現状では遺伝のほうが大きそうです。単に結果だけ示すのではなく、反社会的行動に向かわないための要素、解決法も示していて良かったです。詳しくは第3章の3脚理論をご覧ください。

今までぼんやりとしたイメージしかありませんでしたが、こうして一から説明を読み、偏見が少なくなったことは収穫でした。サイコパス気質の人と出会っても振り回されないよう注意したいです。




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[ 2018/05/18 20:12 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2018年04月07日(土)

哲学の練習問題 (河出文庫) 



著者:西 研
発売日: 2012/11/3

評価〔A〕 考えることは簡単なようで難しいです。
キーワード:哲学、本質、人生、社会、

人は意外なほど、ほんとうは自分は「何が」気になっているのか、をわかっていないもの。そこを見つめようとする勇気と、つきつめて根っこからわかろうとする意志から「考えること」ははじまる。(プロローグより抜粋)


教科書のような題名ですが、あまり専門用語を使わず素人でも読めます。しかし、分かると思って読んでいると、いつの間にか難しい問題へと突入しているので油断なりません。抽象的な概念が数多く登場します。

四章でも言及されていますが、唯一の真理や美はなく、本書を読めばてっとり早く全て分かるという訳でもありません。むしろ上記の引用のとおり、深く突き詰めて考えることの大切さを痛感するばかりです。生き方や人との関係の本質についてそれぞれ考えるきっかけを与えてくれる内容で、練習問題という題名がぴったりです。

ネットで時々見かける宇宙の果てはどうなっているの問題が取り上げられていて、それに対する解答(もしくは証明)が非常に面白かったです。宇宙を考えているのに、いつのまにか人間について考えているのが奇妙な感じです。また、異文化交流は違うから面白いのではなく、違いの中に共通性を見出すことが理解に繋がると書かれていて印象深かったです。まるっきり違う文化には本当に違和感しか覚えないのでしょうか。興味深いです。

各章の終わりには参考文献(推薦図書?)が挙げられていますので、気になった主題はさらに追いかけてみるのも楽しいかもしれません。こうした記述は読者の視野を広げる一助となるので、どんどん書いて欲しいです。




[ 2018/04/07 21:43 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2017年10月27日(金)

こころと脳の相談室名作選集 家の中にストーカーがいます  



著者: 林 公一
発売日: 2013/12/13

評価〔B+〕 本人や関係者の生の声があります。
キーワード:精神科、Q&A、相談、うつ病、統合失調症、

姉である私に対して、幼稚な嫌がらせをしたりしていましたが、最近はそれがエスカレートしております。(1章より抜粋)


数年ほど前に、著者のサイト「Dr林のこころと脳の相談室」から転載された文章を読み、衝撃を受けたのを覚えています。それは1章の「家の中にストーカーがいます」でした。今回改めて読んだのですが、やはり怖いです。

選集とあるように、相談サイトによせられた悩みの中から55件を選び収録しています。著者は医療相談は明るい希望だけを伝えるもので、それは事実ではないと主張しています。サイトのほうにも、質問される方へで「事実を回答することを基本方針としております。医療相談ではありません。」「精神科に関係したことなら、どんな質問もOKです。」と書かれています。

相談対象は相談者本人、家族、職場の部下など人生相談同様様々で、内容も統合失調症やうつ病はもちろん、擬態うつ病や独特な嗜好などこちらも様々です。病人の家族を持て余している人や、なかなか病気が治らず不満がある人の長い長い文章を読んでいると、自分の想像していたものよりも苛烈で驚きました。生の声の迫力や訴える力は凄いです。

先生の回答は医者としてむやみに断言せず事実を淡々と述べていて、正確に見極めようとする姿勢に好感が持てます。著者の擬態うつ病の本に興味を持ちました。

相談者によって読みづらい文章があったのが、少々きつかったです。病人本人の主観を知ることができるのは良いのですが、支離滅裂な部分や同じことを何度も繰り返すことがあり、病人の話だと分かっていても混乱します。それが長かったりすると読むのも辛いです。精神科医やカウンセラーは本当に根気を要する仕事ですね。




[ 2017/10/27 20:14 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2017年10月11日(水)

違和感のチカラ 最初の「あれ?」は案外正しい! 



著者:齋藤 孝
発売日: 2009/10/10

評価〔B〕 ちょっと立ち止まって考えてみては。
キーワード:違和感、経験知、観察、

違和感は、自分と対話するきっかけだ。自分がおかしいと感じている、自分のやろうとしていることに疑問を感じる。(第三章より抜粋)


何かに対して違和感を覚えた時、もやもやした気分になりますが、積極的に解決しようと行動する人は多いのでしょうか。私は自分でも理由がよく分からないので、対処が難しく放っておくことが多いです。そんな違和感を、仕事や私生活、人生に活かそうと試みたのが本書です。

まず、違和感は自分の経験知がもととなって発生しているという考えは、分かりやすいし同意です。何か土台となる知識や価値観があって、それとズレがあるものを見たり聞いたりすると、違和感を感じるのでしょう。また、違和感があったら、観察することが重要であることもうなずけます。よく観察し、自分の中に解決するヒントがないか探してみるのがよいと説いています。放っておかず突き詰めて考えてみるのが、違和感をうまく活用する方法のようです。

本書で挙げている具体例は多岐に渡りますが、違和感とはあまり関係なさそうなものもあり、牽強付会に感じるものもありました。新しいアイディアを生むために使えるとありますが、基本的には危険の兆しを発見し、危機を回避するのに役立てるほうがしっくりきます。

近頃、あまり違和感を覚えませんが、機会があったらうまく活用してみたいです。



[ 2017/10/11 21:29 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2017年08月12日(土)

なぜ、それを好きになるのか? 脳をその気にさせる錯覚の心理学 



著者:竹内 龍人
発売日: 2014/3/10

評価〔B+〕 無意識と誤解の産物です。
キーワード:心理学、好意、視覚、

自分の行動や認知の理由を何かのせいにすることを帰属と呼びます。人間の面白いところは、この帰属が常に正しいというわけではないところです。(第2章より抜粋)


強烈にではなく、ぼんやりとした感じで好きなものはありませんか? なんとなく好きだけど上手く説明できないのはなぜでしょうか。実験心理学の研究から、そうした好きという感情の仕組みに迫ります。

堅苦しくない文章で、脳の情報処理の仕組みから順を追って説明しています。視覚の重要さから始まり、どのように無意識として反映されるかまでを分かりやすく書かれています。単純接触効果は他の心理学の本を読んで知っていましたけど、その先の「処理の流暢性による誤帰属」は知らなくて驚きました。理由があって好きになるのではなく、好きなんだと理由づけしてしまうとは・・・・・・。

具体的な例も、色や絵画、異性の表情など様々な形で挙げています。応用編として、なんとなく好かれるために注意すべきことや、自分から苦手なものを好きになる方法も書かれていて、自己啓発書や実用書のようでもありためになります。特に、勉強(学習)に関する記述は新鮮でした。成績の良さの原因は知能指数ではなく自制心の強さ、自制心も疲弊する、はそうかもしれないと感じました。

好きを解明する読みやすい本でした。



[ 2017/08/12 18:45 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)