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2018年08月11日(土)

シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感 



著者:中野 信子
発売日: 2018/1/18

評価〔B+〕 協調性の欠点のお話。
キーワード:シャーデンフロイデ、オキシトシン、向社会性、集団、正義感、

攻撃に伴うメリットをなんとしても捻出する必要がありました。それが、社会的排除を執行する際に脳で生み出される「快楽」です。(第2章より抜粋)


題名の単語はドイツ語で、他人の失敗を喜ぶ感情という意味だそうです。誰もが持っている心の動きだけれども、恥ずかしさも覚えます。なぜこのような感情を抱くのかを、脳内物質や心理実験によって分析しています。

この心の働きにはオキシトシンなる物質が関係しているようです。幸せホルモンとも呼ばれるこの物質の働きが、人にどのような影響を与えるのか、欠点はあるのか、そしてシャーデンフロイデとはどのように繋がっていくのかを分かりやすく説明しています。また、動物実験によるとこれの分泌量が多いと、他の個体を認識できる能力が高まるとあったのが興味深いです。私は人の顔を覚えるのが大変苦手なので、分泌量がが少ないのかもしれませんね。

多くの実験や研究が挙げられていてためになります。稲作と稲作以外の地域の集団意識の違いは視点が面白いです。また、本筋から少しそれますが、数種類のジャムを選ぶ実験やある歴史の先生が試みたサード・ウェーブ実験なども良かったです。

本書では危険性と対策の難しさが指摘されていますが、協調性と寛容さのバランスが大切なのではと考えています。昨今のネットでは当事者でもないのに激しく批判する出来事をときどき目にしますので、もう少し寛容になれば息苦しさも緩和されるのではないでしょうか。承認欲求と上手く付き合っていかねば。




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[ 2018/08/11 23:52 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2018年07月23日(月)

ヒトの本性 なぜ殺し、なぜ助け合うのか 



著者:川合 伸幸
発売日: 2015/11/19

評価〔A-〕 攻撃的かつ協力的
キーワード:人間、本性、心理学、比較認知科学、攻撃性、援助行動、

ヒトが攻撃的な傾向を持っているとしても、進化の過程で、自分の攻撃性を抑えるように「進化」してきた、との仮説があります。(第四章より抜粋)


人間は同種の仲間のみならず、時には自分の子どもさえも殺してしまう攻撃性を持つ反面、自分を犠牲にしてまで他者を助けることもあります。果たしてどちらがヒトの本性なのでしょうか? 本書はこの疑問に対し、心や行動を動物と比較する比較認知科学の面から考察しています。暴力・攻撃性と援助行動・協調性が本書の二つの柱です。脳内物質は専門的なので難しいですが、それぞれについて心理実験が紹介されてこちらは分かりやすく説得力があります。

目を引いたのは上にも引用した自己家畜化仮説です。人類には極端に暴力的な人もいたが、そのような社会を破壊しそうな人は排除されていき、自ら攻撃性は低くなっていったという説なのですが、これはなかなか興味深いです。人間は他の動物を品種改良してきましたけど、まさか自らも知らず知らずのうちに変えていったとすると、まるで寓話のようです。

協調性のほうでは、言葉も理解できない赤ちゃんが他人を助けるという実験結果が印象に残りました。強制でも見栄でもなく、何の予備知識もなく援助行動を起こすのは、確かにヒトが持つ本性の一面なのでしょう。ある研究では他人にお金を与えても幸福感が得られるとしていて、協調的な面を補強しています。

実験・研究は多岐に渡り、内容はやや散漫的な感じもしますが、どの章も興味深く読めました。今後も暴力や協調性のどちらか片方だけでなく、同時に研究して新たな発見があることを望んでいます。




[ 2018/07/23 22:39 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2018年05月18日(金)

サイコパス 



著者:中野 信子
発売日: 2016/11/18

評価〔A〕 きちんと理解できてよかった。
キーワード:サイコパス、犯罪、精神分析、共感、合理性、

表情や音声から他者の感情を読み取る実験をおこなうと、「怒り」「喜び」「驚き」といった感情については一般人と同程度に読み取れるものの、「恐怖」「悲しみ」を察する能力には欠けていることがわかっています。(第1章より抜粋)


報道で伝え聞くサイコパスは、血も涙もない殺人鬼といったイメージでしたが、本書を読むとそれは正しくないと分かります。犯罪者の中のごくごく一部の人たちの特徴をそう呼ぶのかと思っていたのですが、もっと範囲が広く、全人口のおおよそ1%が当てはまります。その中には成功者もいれば違法行為をして捕まる者まで様々です。例としてブラック企業の社長などが挙げられていて、なるほどなと思ってしまいました。

サイコパスの人たちはあたかも感情がないかのように言われますが、他者の感情を読み取る能力が高いのが意外で興味深いです。それが同情や共感を伴っていればよいのですが、共感性は低く合理性のみで行動していく点が一番の特徴だと感じました。感情のない合理性は、冷静という表現を通り越して違和感を覚えます。なぜ冷酷な言動を取ってしまうのかが分かります。

また、遺伝と環境のどちらの影響が大きいのか調べていて、現状では遺伝のほうが大きそうです。単に結果だけ示すのではなく、反社会的行動に向かわないための要素、解決法も示していて良かったです。詳しくは第3章の3脚理論をご覧ください。

今までぼんやりとしたイメージしかありませんでしたが、こうして一から説明を読み、偏見が少なくなったことは収穫でした。サイコパス気質の人と出会っても振り回されないよう注意したいです。




[ 2018/05/18 20:12 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2018年04月07日(土)

哲学の練習問題 (河出文庫) 



著者:西 研
発売日: 2012/11/3

評価〔A〕 考えることは簡単なようで難しいです。
キーワード:哲学、本質、人生、社会、

人は意外なほど、ほんとうは自分は「何が」気になっているのか、をわかっていないもの。そこを見つめようとする勇気と、つきつめて根っこからわかろうとする意志から「考えること」ははじまる。(プロローグより抜粋)


教科書のような題名ですが、あまり専門用語を使わず素人でも読めます。しかし、分かると思って読んでいると、いつの間にか難しい問題へと突入しているので油断なりません。抽象的な概念が数多く登場します。

四章でも言及されていますが、唯一の真理や美はなく、本書を読めばてっとり早く全て分かるという訳でもありません。むしろ上記の引用のとおり、深く突き詰めて考えることの大切さを痛感するばかりです。生き方や人との関係の本質についてそれぞれ考えるきっかけを与えてくれる内容で、練習問題という題名がぴったりです。

ネットで時々見かける宇宙の果てはどうなっているの問題が取り上げられていて、それに対する解答(もしくは証明)が非常に面白かったです。宇宙を考えているのに、いつのまにか人間について考えているのが奇妙な感じです。また、異文化交流は違うから面白いのではなく、違いの中に共通性を見出すことが理解に繋がると書かれていて印象深かったです。まるっきり違う文化には本当に違和感しか覚えないのでしょうか。興味深いです。

各章の終わりには参考文献(推薦図書?)が挙げられていますので、気になった主題はさらに追いかけてみるのも楽しいかもしれません。こうした記述は読者の視野を広げる一助となるので、どんどん書いて欲しいです。




[ 2018/04/07 21:43 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2017年10月27日(金)

こころと脳の相談室名作選集 家の中にストーカーがいます  



著者: 林 公一
発売日: 2013/12/13

評価〔B+〕 本人や関係者の生の声があります。
キーワード:精神科、Q&A、相談、うつ病、統合失調症、

姉である私に対して、幼稚な嫌がらせをしたりしていましたが、最近はそれがエスカレートしております。(1章より抜粋)


数年ほど前に、著者のサイト「Dr林のこころと脳の相談室」から転載された文章を読み、衝撃を受けたのを覚えています。それは1章の「家の中にストーカーがいます」でした。今回改めて読んだのですが、やはり怖いです。

選集とあるように、相談サイトによせられた悩みの中から55件を選び収録しています。著者は医療相談は明るい希望だけを伝えるもので、それは事実ではないと主張しています。サイトのほうにも、質問される方へで「事実を回答することを基本方針としております。医療相談ではありません。」「精神科に関係したことなら、どんな質問もOKです。」と書かれています。

相談対象は相談者本人、家族、職場の部下など人生相談同様様々で、内容も統合失調症やうつ病はもちろん、擬態うつ病や独特な嗜好などこちらも様々です。病人の家族を持て余している人や、なかなか病気が治らず不満がある人の長い長い文章を読んでいると、自分の想像していたものよりも苛烈で驚きました。生の声の迫力や訴える力は凄いです。

先生の回答は医者としてむやみに断言せず事実を淡々と述べていて、正確に見極めようとする姿勢に好感が持てます。著者の擬態うつ病の本に興味を持ちました。

相談者によって読みづらい文章があったのが、少々きつかったです。病人本人の主観を知ることができるのは良いのですが、支離滅裂な部分や同じことを何度も繰り返すことがあり、病人の話だと分かっていても混乱します。それが長かったりすると読むのも辛いです。精神科医やカウンセラーは本当に根気を要する仕事ですね。




[ 2017/10/27 20:14 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)