2017年04月08日(土)

重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る 



著者:大栗 博司
発売日: 2012/5/29

評価〔A〕 物理学の最先端を垣間見た。
キーワード:重力、超弦理論、相対性理論、物理学、

アインシュタインの「最高のひらめき」とは、このニュートン以来の論理を逆転させることでした。(第三章より抜粋)


重力よりも副題の超弦理論の文字にひかれて手に取りました。高次元を解明する最先端の理論としか知らなかったので。

まずは前提となる相対性理論や量子論から始まり、超弦理論やブラックホールと進んでいくのですが、今は科学から遠ざかっている高校生の同窓生に語るつもりで書いたとあるように、かなり分かりやすく書かれています。難解な理論をほとんど数式を使うことなく、図と簡単な具体例で上手く説明しているのは鮮やかです。これなら知識なしでも読める、とは思いますが、やはり多少は知っていたほうが理解が早いですし面白いと思います。

超弦理論の超弦の意味は、高次元を表すことができる凄い紐くらいに捉えていたのですが、超対称性を前提とした弦のことだったとは初めて知りました。また、潮汐力の説明は本当に分かりやすくためになりました。今までの理解が浅かったようです。物理学を10億のステップで考えることと理論の関連性は、なるほどと関心しました。確かに新理論の存在が予見できます。

途中まではだいたい知っている内容も多く少し退屈でしたが、中盤以降はかなりワクワクしながら読みました。こんなに進んでいるんだと思う反面、まだまだ謎が多いとも感じました。事象の地平線の先から特異点まで、物質には何が起こり、最後に何が残るのでしょうか?

何度読んでもピンとこないところもあります。最先端のあの理論も、分かったような分からないような感じです。しかし、多少分からなくても、次から次へと有名人やノーベル賞受賞者が登場し、発展していった物理学の歩みは面白かったですし、興味のある人には是非読んでもらいたいです。




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[ 2017/04/08 22:01 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2017年03月29日(水)

視力を失わない生き方 



著者:深作 秀春
発売日: 2016/12/15

評価〔A-〕 きちんと調べてから診てもらいましょう。
キーワード:眼科、手術、白内障、緑内障、

大切なのは、寿命は90歳であっても、眼の寿命はもっと短くて、せいぜい70歳ぐらいであることをまず認識することです。(第2部(2)より抜粋)


日本の医療は世界の中でも最先端というイメージがありますが、本書の著者によると、眼科の手術に関しては低レベルなのだそうです。外国で最先端の技術を学び、アメリカの学会で何度も賞を受賞した著者が、視力を保つために知っておくべきことを解説しています。

大学は研修病院に過ぎない、手術の腕がないために失明してしまうことが多いなど、医療関係者以外ではなかなか知りえない有益な情報が記載されています。少し前に話題になったレーシック、加齢による白内障や緑内障、糖尿病と眼の関連性と、専門的でやや分かりにくい点もありますが丁寧に説明されていて、患者のことを考えていることがよく分かります。驚いたのは、花粉症で目をこすっていると目に損傷が蓄積し、網膜剥離の危険があることです。本でよく紹介されている眼の運動も、ほとんど無意味だそうですよ。

眼科に救急はなく、腕のよい眼科外科医にかかることが大切だそうです。眼の手術は医者によって大きく差があるので、慎重に選ぶようにと主張しています。探す時も著者が言うように、誰かの意思が介入している場合もあと思うので、複数の媒体・サイトから探すのがおすすめです。

著者は最先端の技術を学び腕も確かなようですが、アメリカで技術を学んだためか、自己主張が激しいです。自信と実績があるので、本書の中で何度も自分の病院をすすめています。しかし、超上級者と連呼されると宣伝のための本のようで、あまり良い気分ではありません。「社会調査のウソ」のように、日本の眼科医療全体の発展を願うような文章であれば、さらに良かったのですが。それと、著者が大学病院にいた頃は、眼科医療は確かに遅れていたのでしょうが、インターネットがある現在でも大幅に遅れているのでしょうか。どうなんだろう。

今後、眼の病気にかかってしまったら、本書のことを思い出して適切に行動するよう心がけます。今のうちに読んでよかったと思います。



[ 2017/03/29 22:06 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2017年02月18日(土)

もしも宇宙を旅したら 地球に無事帰還するための手引き 



著者:ニール・F・カミンズ (著), 三宅 真砂子 (翻訳)
発売日: 2008/4/19

評価〔B+〕 科学的検証が現実味をもたせています。
キーワード:宇宙旅行、太陽系、惑星、無重力、

宇宙へ行くと、半数以上の人が微小重力状態に入って数日の間に、宇宙適応症候群、あるいは宇宙酔いと呼ばれるものを経験する。(第5部 医学的な危機より抜粋)


宇宙飛行士が宇宙船の中からテレビ中継する姿は、あまり珍しくなくなりました。電子機器の進歩やネットの発達によって、地球にいても鮮やかな地球の映像を見ることができます。しかし、一般の民間人が外国旅行のように宇宙へいくには、現時点では、まだまだ先の話になりそうです。

もし、この先、宇宙へ気軽に行けるようになるとしたら、どのような点に気をつけるべきなのか。未知の世界での危険について、宇宙物理学者が細かく検証したシミュレーション本です。

空気・放射能等、各項目を短く区切り、宇宙や物理学にあまり詳しくなくても理解できるよう書かれています。空気、水、重力の問題はすぐ思いつきますし、宇宙線や太陽風による放射線の影響も少しは知っていましたけど、思っていたよりも色々と問題点があり驚きました。放射線による機械の誤作動、宇宙酔い、概日リズムのずれ。変わったところですと、惑星・衛星での地震や地すべりの危険性、閉鎖空間に長期滞在する精神への影響が興味深かったです。

ぼんやり想像していた宇宙がほんの少しだけ身近なものとなる、夢のある科学読み物です。SF小説を書く人は読んでいるんでしょうね、きっと。



[ 2017/02/18 21:32 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2016年09月10日(土)

ダンゴムシに心はあるのか 



著者:森山 徹
発売日: 2011/3/19

評価〔C+〕 動物学と心理学の研究とは。
キーワード:生物、動物行動学、心理学、

気がついたのが、このように観察者である私に「おかしいな」と思わせる、「意味不明」な出現の仕方をする変則転向、それはまさしく、心によって発現させられた「予想外の行動」なのではないだろうか、ということでした。

(本文より抜粋)


動物行動学の研究者が、心を解き明かすために行っている最新の研究を紹介しています。

心というと意思や感情を連想しますが、著者が主張している心とは平たく言うと『抑制された精神活動部位』です。意識しているが行動にしない考えのようなものだと理解していますが、今のところ半信半疑です。分かるような、いや違うような・・・・・・どこかすっきりしません。何故でしょう?

読み進めていくと、ダンゴムシの観察をしているだけのように見えますが、実験の意図が分かると面白さが分かります。知能や心があるとは思えない昆虫にも、著者が定義した心はあるように思えてきます。大脳に相当する器官はないのに不思議です。4章でも触れられていましたが、知能や心と器官の関連性も、今後解き明かされていくのでしょう。

動物学が少しだけ具体的に知ることができたのは良かったです。研究はまだまだ続いているので、新たな真実の発見に期待しましょう。



[ 2016/09/10 19:00 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2016年07月18日(月)

その数学が戦略を決める 



著者:イアン エアーズ (著), Ian Ayres (原著), 山形 浩生 (翻訳)
発売日: 2010/6/10

評価〔A+〕 人工知能とは違う近未来の力。
キーワード:絶対計算、経済、近未来、統計、回帰分析、無作為抽出、

われわれはいま、馬と蒸気機関の競走のような歴史的瞬間にいる。直感や経験に基づく専門技能がデータ分析に次々に負けているのだ。(序章より抜粋)


映画の売れる脚本や裁判の判決をコンピュータが予測すると聞いたら、そんなのまだ早いと思うのが当然だと思います。しかし、前者は既にハリウッドで動き出していますし、後者は良い結果を出しています。データを集めて商売や危機管理に役立てているのは知っていましたが、創造性や複雑な判断にまでデータ分析が及んでいて、驚くとともに感心してしまいました。

本書では、それらの大量の情報を収集・解析するデータマイニングと、それを行う絶対計算者たちについて、専門家が具体例を交えて説明しています。ちなみに、英語の題名はこのデータ分析で決めたそうです。

計算による予測として回帰分析と無作為抽出の2大理論が、要点のみ分かりやすく書かれています。どちらも知っていたので、すんなり頭に入ってきましたが、数学に疎い方でも大丈夫だと思います。上記のように、様々な分野での実証例が挙げられていますので、それらも理解の助けになります。アメリカでの最先端の研究と、それを適用したビジネスの例が豊富なのが魅力です。

印象深いのは、専門家と絶対計算の比較の章です。人間は自分の予想に自信過剰である、複雑なものの重要要因を見極めるのが得意ではないとあり、おおむね賛成です。公平に偏見なく感情的にならずに物事を判断するのは、かなり難しいと思います。経験も時には邪魔になりますし。計算式によって導かれた確率は、それらには影響されずにすむのが強みです。皆、自分の分野ではデータ分析より人間のほうが勝っていると信じていますが、そうでないことを知ることができます。

全体的に分かりやすく書かれているとはいえ、興味のない話や込み入った話もありました。400ページ近いので、もう少し短くても良かったかもしれません。それと、理論の説明でもほとんど図や表がなかったと思うので、もう少し視覚的に分かりやすい説明が欲しかったです。入門書ならなおさら。

各章の最後にまとめがあるので、読み返す時に便利です。この感想文も、まとめを見て思い出しながら書いています。今後も、データ分析が社会に影響を与える機会はどんどん増えていき、避けられない流れだと断言しています。どのように利用すればよいのか知るためにも、一読するのもよいのではないでしょうか。



[ 2016/07/18 21:22 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)