2018年01月27日(土)

下流老人 一億総老後崩壊の衝撃 



著者:藤田孝典
発売日: 2015/6/12

評価〔B-〕 健康が一番の財産なのかも。
キーワード:貧困、老後、介護、家族、

下流老人とは、言いかえれば「あらゆるセーフティネットを失った状態」と言える。(第一章より抜粋)


貧困はメディアで何度も取り上げられているテーマですが、高齢者の貧困に絞って分析・解説した書籍です。著者はNPO法人理事兼研修者で、現場にもデータにも精通している方です。現在30代と若くて意外でした。

少し前に、老後を安心して暮らすにはこれだけ必要です!とテレビでも紹介しているのを見かけて、それなら大部分の人が下流老人になりそうと思っていたのですが、本書を読むと予想ではなく現実のものとなりそうだと実感しました。膨大な貯蓄や頼れる支援者がいる人は少数派で、今後も増えていくようです。

社会保障が申請制度を採用していて、告知が十分でないのも問題だと述べています。確かに役所の制度やイベントは探そうと思わないと見つけられないことのほうが多い気がします。また、自己責任論の章で責任と権利は別のものであるという説明をして、問題に対する理解が深まりました。どちらも勉強になります。

子や孫には頼れそうにない時代、生活保護は恥ではなく権利だと主張しています。少なくなったとはいえ、生活保護をもらうをためらう人がいて、もらうべき人がもらっていないのは問題です。さらに問題解決のためには社会保障の充実だと説いています。始めは国頼みなのかと少々がっかりしたのですが、読み進めていくうちに、問題が大きすぎるので社会の仕組みから変えていくしかないのかもと思うようになりました。ただ、もう少し希望の持てる対策があったらなあとも思ってしまいます。

問題を再確認できた一冊でした。



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[ 2018/01/27 11:19 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2018年01月11日(木)

性と法律 



著者:角田 由紀子
発売日: 2013/12/21

評価〔A-〕 少しずつ改善していこう。
キーワード:法律、男女差別、価値観、慣習、

職場で女性が働くときに性的なことにかかわって屈辱的な扱いを受けたり、それによって職を失なったりすることが珍しくなかったことは、この裁判の証拠とした実態調査結果報告書『女6500人の証言』でも明らかであった。(5セクシャル・ハラスメントより抜粋)


男女平等の世の中と言われていますが、人々の価値観や慣習はすぐには変わらず、なかなか差別をなくすまでは至っていません。例えば、男女で賃金や雇用形態が異なるのは徐々に改善してはいますが、昔から問題となっています。弁護士として40年以上働き、この問題に従事してきた著者が、得た女性の声や現状を説明しています。

結婚、ドメスティック・バイオレンスと章ごとに項目が分かれているので、読みやすいです。法律には疎いので、こうして整理して書いてくれると分かりやすくて助かります。戦前のことにも触れていますけど、現在進行形の問題もあります。予想していたよりも男女で差があることに驚きました。どの章からも著者の怒りが伝わってきました。印象深かったのは、「性暴力の暴行の程度を問うのはおかしい」「妻に強姦罪が適用しないのもおかしい」です。

また、法律の専門家でも、慣習的な価値観から抜け出せない人が数多くいることにも驚きました。家長は男性(夫)で、その権利と義務があると感じている人は現在でも多そうです。ところで、この女性差別の裏には、男性はこうあるべきと考えている場合も多いと思います。男は仕事をしてお金を稼ぐものだ、とか。仕事も家事も男女関係なく行うものなのですが、意識の面ではまだまだ昔の差別的な価値観が残り続けています。意識は当事者たちだけでなく社会全体の問題なので、自分も気をつけようと思います。

読んでいると著者の怒りは理解できますが、他の問題も複雑に入り組んでいる場合もあるので、簡単にはいかないなと思うこともいくつかありました。慰謝料を払わない元夫は、低賃金で払えないのかもしれませんし、DV対策に警察や国は配慮してくれないとありますが、人員と予算が足りていないのかもしれません。

男性は責められているように感じることもあるかと思いますが、男女どちらが読んでもためになる本です。




[ 2018/01/11 23:09 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2017年09月28日(木)

キリンビール高知支店の奇跡 勝利の法則は現場で拾え! 



著者:田村 潤
発売日: 2016/4/21

評価〔B-〕 まずは動機づけ、そして習慣に。
キーワード:営業、ビール、リーダー、上司、現場

最下位クラスから1位へ、負け続けから勝ちに転じた、その要因はテクニックではありません。捉え方であり、行動スタイルなのです。(第1章より抜粋)


ライバル会社の新商品により苦境に陥っている中、著者が転勤先となったのは高知支店でした。縁のない地方で悪戦苦闘の末に学んだ営業のポイントについて語ります。著者は元キリンビールの営業本部長です。

なにか特別なデータ解析方法やセールス話術が書かれているかも、と期待した方はおそらくがっかりしてしまうでしょう。重要なのは、仕事の動機づけと自分で考えて動くことだと説いているからです。基本中の基本かもしれませんが、現場に行って顧客に顔を覚えてもらい意見を聞く、無駄だと思わずに色々試してみるのが、後々成功へ繋がると書かれています。テクニックはまったく書かれていない訳ではなく、自発的に約束させ、当事者意識を高めるのは分かりやすくて効果的だと思います。

地方によって効果的な手法が違うのが興味深いです。データ上の数字には表れない地域性が、地道な営業によって分かるのは感服しました。また、移動先によって少しずつ方法を変えて部下を指導・育成できたのは、指針だけ示し、具体的な営業活動は任せたおかげなのでしょう。会議廃止、本社の言うことは聞くな、など大企業ではなかなか言えない指示も思い切って出しています。

1章の最後のほうで、「真っ暗なビルで、支店だけに明かりがついているのを見て勇気づけられた」とあります。仕事熱心なのは良いことですが、自らの意思とは言え遅くまで残業して労働環境や残業代はどうなっているのだろうかと、余計な心配をしてしまいます。著者のように仕事が人生の中で最も大切と思っている人は良いですが、家庭やその他の活動が1番と思っている人にはやりづらい職場に見えます。

何か特別なことがあるのかなと思いながら読みましたが、営業はどの業種でも通用する基本をしっかり続けることが肝心だと再認識しました。



[ 2017/09/28 21:44 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2017年09月23日(土)

商店街はいま必要なのか 「日本型流通」の近現代史 



著者:満薗 勇
発売日: 2015/7/16

評価〔B〕 コンビニの次は何だ?
キーワード:商店街、流通、小売り、

店舗小売業においては、詐欺的な不正取引におびえて客が買い物を控えるようなことが起こりにくいので、行商に比べると、よりいっそう活発な取引が展開されることになります。(第3章より抜粋)


題名は商店街となっていますけれど、それだけでなく近代から現代までの小売と流通の歴史を紹介しています。思うに主題と副題が逆なのでは。百貨店、通信販売、商店街、スーパー、日本型コンビニエンスストアの5つの形態について、発祥と成長の過程を考察しています。

商店街の章では、商品を修理して使うのが当たり前で、掛売りが珍しくなかった時代に合っていたとの指摘しています。また、高速輸送の手段がなかった、もしくは限られていたので、現代よりも住民と地域の繋がりが強かったのでしょう。説得力があります。しかし、商店街について語っている文章が、期待していたより多くなかったのが残念でした。5つの章はどれを軸にという訳でもなく、どれも同じくらいの分量なので、商店街が主役と言う感覚はありませんでした。

他の4つはというと、初めて現金正札販売を取り入れた百貨店や、革新的なシステムを取り入れ大量消費社会を作ったスーパーには感心させられました。また、現在隆盛しているコンビニの問題点はニュースにもなり、商店街のことよりも印象に残りました。
コンビニ会計は公平さに欠けるよねぇ。

流通史として読むならバランスよくまとまって分かりやすいですが、商店街のことをよく理解したい場合はあまりおすすめしません。



[ 2017/09/23 22:13 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2017年09月07日(木)

老人喰い 高齢者を狙う詐欺の正体 



著者:鈴木 大介
発売日: 2015/2/6

評価〔B+〕 防犯対策の本ではありません。
キーワード:振込め詐欺、世代格差、

詐欺の現場プレイヤーのモチベーションは、異様なほど高い。これは取材を重ねるほど痛感したことだった。(第3章より抜粋)


噂で聞いたかテレビで報道していたか忘れましたけど、振り込め詐欺にはタイムカードがあると知った時は、行き当たりばったりでなく組織化されているのだなと驚きました。すぐになくなってしまうかと思っていたら、かなり長い期間流行している振り込め詐欺ですが、一体どのような人物が何を考えながら犯罪を犯しているのでしょうか。取材によって見えてきた詐欺の実態を明らかにします。

現場の雰囲気や行動を小説形式で書かれているので、臨場感があって分かりやすいです。著者もほぼノンフィクションと考えていいと断言していますので、あの物語のような集団がたくさん存在するのでしょう。予想よりも暴力の世界ではなく、連帯意識の強いブラック企業のようだと感じました。行っていることが犯罪なので読んでいて気分は良くないですが、知らない世界を見るという意味では興味深い内容です。中でも、非行少年ではなく、ごく普通の若者を詐欺集団の一員に育て上げる過程が、新興宗教の勧誘と似ているのは凄かったです。本当によくここまで取材したなあ。

著者は世代格差が原因で、貧しい若者が豊かな老人を食いものにしていて、人材と才能の浪費だと主張しています。確かに世代格差は存在して、下の世代ほど大変です。しかし、取材対象にやや肩入れしているのが気になりました。彼らの活動が違法なだけに。もし著者が言うように、彼らがやる気が旺盛で仲間思いの豪胆なら、体育会気質の会社はたくさんあるのでそこで働けば十分やっていけそう、というのは甘い考えなのでしょうか。それとも、ブラック企業は詐欺集団よりも酷いのでしょうか。そうだとしたら、それはそれで大問題です。

振込め詐欺の裏事情を知ることができる、ためになるノンフィクションでした。




[ 2017/09/07 21:50 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)