2018年06月17日(日)

最貧困女子 



著者:鈴木 大介
発売日: 2014/9/27

評価〔A-〕 想像していたより苛烈でした。
キーワード:貧困、女性、性産業、

家を飛び出したのは「本人の選択」として「もうちょっと我慢すれば」というような言葉を軽々しく吐く者は、同時に加害者と変わらないと僕は思っている。(第三章より抜粋)


解決するのが難しい貧困問題の中で、知られていない若い女性たちの現状を記したドキュメンタリーです。

数多くの生の声が記されていて、その暮らしぶりに驚かされます。ある程度は覚悟して読んだのですが凄惨で、著者が取材はもう限界だと嘆くのも分かる気がします。専門家でも弁護士でもないので客観的な数字がないのが残念ですが、当事者たちの言葉はそれ以上に説得力がありました。

本書に登場する彼女たちのように、苦境に立っている人たちを自己責任の一言で切り捨てる人をネットで見かけます。しかし、実態を知らないから厳しい態度を取ってしまう人が多いのだと思います。具体的に助けることはできないかもしれませんが、非難するだけで終わらないようにしたいです。

印象に残ったのは、どんな学童保育だったら良かったのか?です。厳しい管理が彼女たちの足を遠ざけていることは、注目すべき点だと感じました。管理と居心地の良さを両立するのは難しいですが、もっと利用してもらえるよう何らかの対策が取られることを望んでいます。



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[ 2018/06/17 10:41 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2018年04月29日(日)

働く女子の運命は 



著者:濱口 桂一郎
発売日: 2015/12/18

評価〔B-〕 経緯が詳しく書かれています。
キーワード:男女雇用機会均等法、ジョブ型、メンバーシップ型、

人の処遇がジョブではなくコースで分かれる日本社会では、欧米のような「ジョブの平等」は意味がありません。そこで、日本の男女平等政策は、もっぱら女性も男性と同じコースに乗せてくださいね、という方向に向かいました。(序章より抜粋)


1900年代に男女雇用機会均等法ができて以来、少しずつ労働環境の法整備が進んでいますが、未だに女性が働きやすいとは言えないのが日本の現状です。どうして賃金に差がついているのか、なぜすぐに同一労働同一賃金に切り替えられないのか。戦前から日本の労働を振り返り、女性の労働はどのような歴史をたどってきたかを明らかにしています。

日本では仕事に対して対価が支払われるのではなく、組織に所属していることに対して報酬が支払われるメンバーシップ型社会であるのが原因であるとしいます。この説明は説得力があります。昔よりはよくなったもののライフワークバランスなど関係ないかのような残業の多さ、家庭の事情を考慮しない転勤制度は、組織への忠誠心を試されてると考えれば理解しやすくなります。女性の場合、それに加えて家庭での役割も問題となってきます。男性の家での時間が少ないせいか、まだまだ家庭は女性が守るものという意識が残っていて、彼女たちが仕事と家庭の板挟みになるのは無理もないです。

世界が男女均等へと進んでいく時、日本経済が順調でそうした問題を軽視したのも忘れてはいけません。当時の新卒の女性たちはこうした習慣を当然と思っていたのか、それとも社会で大きな活躍を望んでいたのか。生の意見もあったらもっと良かったです。

女性の労働史としては過不足なく書かれていると思いますが、現状や今後の対策の部分が少ないのが残念でした。解決策のほうに興味があって本書を手に取ったので、他国の成功例などを踏まえて未来の話をもっと書いてほしかったです。女性の労働問題の原因や経緯に興味のある方にはおすすめしますが、私のように対策を知りたい方にはおすすめできません。




[ 2018/04/29 18:40 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2018年03月28日(水)

ルポ ネットリンチで人生を壊された人たち 



著者:ジョン・ロンソン、 夏目 大
発売日: 2017/2/15

評価〔A-〕 外国でも起きていたのか。
キーワード:ネットリンチ、ツイッター、SNS、公開羞恥刑

ツイッター上で、大勢で誰かを強く非難している時、その中に非難されている側の立場を考えている人がどのくらいいるか。これだけ非難して相手は大丈夫なのか、もしかして人格破壊につながるのではないか、と考えている人はおそらく多くない。(第三章より抜粋)


英語のネットスラングでSJWという単語があることを最近知りました。これはSocial Justice Warriorの略で、ネット上で差別とたたかう正義の味方のような人々を意味します。本来なら良い意味なのですが、彼らが攻撃的であったり独善的であったりすることが多いので否定的なニュアンスが強いそうです。彼らの行動は時として何をもたらすのか。本書はネットリンチ、日本でいう炎上、について取材をもとに書かれたドキュメンタリーです。

まず、ネットリンチの被害者のその後を取材しています。情報が古くなるのが速いネットなので、一時有名になってもその後を知らないことがほとんどです。叩かれた人の中には自宅から出られなくなってしまった人がいる一方で、あまり変化がなかった人もいて、その違いを知るためにさらに取材をしています。終盤、ある被害者が壊された人生を取り戻すための活動が綴られていて、手段としては少々すっきりしませんが希望の持てる結末となってホッとし、それと同時にこうしたことは今後増えていくかもしれないとも感じて複雑な気分になりました。

ネットリンチのことを本書では公開羞恥刑と訳していますが、これは意味が分かりやすく良い訳だと思います。リンチでは物理的な暴力を連想してしまいますが、羞恥と言われば恥の意識に訴える刑だとすぐ理解できます。公開羞恥刑は最新の出来事ではなく、過去にも同じような刑罰が存在していたのには驚きました。その件で著者が、刑は司法の手にゆだねられるべきで、一般市民が勝手に罰を与えてはならないというような主張をしています。賛成ですし説得力があって良かったです。

アメリカの記者が書いたものなので、当たり前ですがアメリカの事例ばかりです。個人の国のイメージが強い国ですが、こうした問題はやはり国や文化に関係なく起きてしまうもののようです。研究ではないので具体的な対策は掘り下げることなく、被害者の辛い現状の記述が多いですが、ネット利用者としては知っておいて損のないことだと感じました。




[ 2018/03/28 22:20 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2018年02月26日(月)

誰も調べなかった日本文化史 土下座・先生・牛・全裸 



著者:パオロ マッツァリーノ
発売日: 2014/9/10

評価〔B+〕 ちょっとした文化の変化が興味深いです。
キーワード:文化人類学、民俗学、日本、

いま日本人が土下座と呼んでいる所作は、本来、平伏といわれていたものです。平伏までいかない、しゃがんだり片膝立てたりする所作を蹲踞(そんきょ)、あるいは、うずくまりなどといいました。(第一章より抜粋)


日本の文化に興味を持つイタリア生まれの著者が、日本人だったら身近過ぎて疑問に持たなさそうなものに対して、深く掘り下げていく読み物です。エッセイ風の歴史文化史、と言えばよいのでしょうか。題名ほど堅苦しくはありません。むしろざっくばらんです。

それにしても、土下座や先生、新聞広告と多種多様なものが挙げられています。謝罪は日本のエンターテインメントと評し、そこから土下座の本来の意味まで話を繋げていて、読ませるなあと感心してしまいました。時が経つにつれ言葉の使い方が変わるように、動作や仕種の意味も変わっていくとは少々驚きです。また、「疑惑のニオイ」ではある飲み物のにおいについて書かれていて、読んでいて非常に興味深かったです。外国に行ってそれを飲んだときに、薄いような物足りないような感じがしたのは、気のせいではなく理由があったのか。色々勉強になりました。機会があったら、におわないほうを買って飲んでみよう。

外国人の視点を活かして書かれた本はたくさんありますが、本書は単に思うだけ批判するだけでなく、裏付けを取るために色々と調べているのが珍しいです。新聞社の昔の記事、昔の書物や研究者の論文を当たり、論理的に結論を導いているのがエッセイとは大きく異なります。言いっぱなし書きっぱなしで責任を取らない専門家が少なくないですが、著者のようにきちんと調査して発表してくれればいいのにと思うばかりです。そのあたりは「諸説あります」に詳しく書かれていますので、興味のある方は是非ご一読を。



[ 2018/02/26 21:29 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2018年01月27日(土)

下流老人 一億総老後崩壊の衝撃 



著者:藤田孝典
発売日: 2015/6/12

評価〔B-〕 健康が一番の財産なのかも。
キーワード:貧困、老後、介護、家族、

下流老人とは、言いかえれば「あらゆるセーフティネットを失った状態」と言える。(第一章より抜粋)


貧困はメディアで何度も取り上げられているテーマですが、高齢者の貧困に絞って分析・解説した書籍です。著者はNPO法人理事兼研修者で、現場にもデータにも精通している方です。現在30代と若くて意外でした。

少し前に、老後を安心して暮らすにはこれだけ必要です!とテレビでも紹介しているのを見かけて、それなら大部分の人が下流老人になりそうと思っていたのですが、本書を読むと予想ではなく現実のものとなりそうだと実感しました。膨大な貯蓄や頼れる支援者がいる人は少数派で、今後も増えていくようです。

社会保障が申請制度を採用していて、告知が十分でないのも問題だと述べています。確かに役所の制度やイベントは探そうと思わないと見つけられないことのほうが多い気がします。また、自己責任論の章で責任と権利は別のものであるという説明をして、問題に対する理解が深まりました。どちらも勉強になります。

子や孫には頼れそうにない時代、生活保護は恥ではなく権利だと主張しています。少なくなったとはいえ、生活保護をもらうをためらう人がいて、もらうべき人がもらっていないのは問題です。さらに問題解決のためには社会保障の充実だと説いています。始めは国頼みなのかと少々がっかりしたのですが、読み進めていくうちに、問題が大きすぎるので社会の仕組みから変えていくしかないのかもと思うようになりました。ただ、もう少し希望の持てる対策があったらなあとも思ってしまいます。

問題を再確認できた一冊でした。



[ 2018/01/27 11:19 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)