2017年09月28日(木)

キリンビール高知支店の奇跡 勝利の法則は現場で拾え! 



著者:田村 潤
発売日: 2016/4/21

評価〔B-〕 まずは動機づけ、そして習慣に。
キーワード:営業、ビール、リーダー、上司、現場

最下位クラスから1位へ、負け続けから勝ちに転じた、その要因はテクニックではありません。捉え方であり、行動スタイルなのです。(第1章より抜粋)


ライバル会社の新商品により苦境に陥っている中、著者が転勤先となったのは高知支店でした。縁のない地方で悪戦苦闘の末に学んだ営業のポイントについて語ります。著者は元キリンビールの営業本部長です。

なにか特別なデータ解析方法やセールス話術が書かれているかも、と期待した方はおそらくがっかりしてしまうでしょう。重要なのは、仕事の動機づけと自分で考えて動くことだと説いているからです。基本中の基本かもしれませんが、現場に行って顧客に顔を覚えてもらい意見を聞く、無駄だと思わずに色々試してみるのが、後々成功へ繋がると書かれています。テクニックはまったく書かれていない訳ではなく、自発的に約束させ、当事者意識を高めるのは分かりやすくて効果的だと思います。

地方によって効果的な手法が違うのが興味深いです。データ上の数字には表れない地域性が、地道な営業によって分かるのは感服しました。また、移動先によって少しずつ方法を変えて部下を指導・育成できたのは、指針だけ示し、具体的な営業活動は任せたおかげなのでしょう。会議廃止、本社の言うことは聞くな、など大企業ではなかなか言えない指示も思い切って出しています。

1章の最後のほうで、「真っ暗なビルで、支店だけに明かりがついているのを見て勇気づけられた」とあります。仕事熱心なのは良いことですが、自らの意思とは言え遅くまで残業して労働環境や残業代はどうなっているのだろうかと、余計な心配をしてしまいます。著者のように仕事が人生の中で最も大切と思っている人は良いですが、家庭やその他の活動が1番と思っている人にはやりづらい職場に見えます。

何か特別なことがあるのかなと思いながら読みましたが、営業はどの業種でも通用する基本をしっかり続けることが肝心だと再認識しました。



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[ 2017/09/28 21:44 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2017年09月23日(土)

商店街はいま必要なのか 「日本型流通」の近現代史 



著者:満薗 勇
発売日: 2015/7/16

評価〔B〕 コンビニの次は何だ?
キーワード:商店街、流通、小売り、

店舗小売業においては、詐欺的な不正取引におびえて客が買い物を控えるようなことが起こりにくいので、行商に比べると、よりいっそう活発な取引が展開されることになります。(第3章より抜粋)


題名は商店街となっていますけれど、それだけでなく近代から現代までの小売と流通の歴史を紹介しています。思うに主題と副題が逆なのでは。百貨店、通信販売、商店街、スーパー、日本型コンビニエンスストアの5つの形態について、発祥と成長の過程を考察しています。

商店街の章では、商品を修理して使うのが当たり前で、掛売りが珍しくなかった時代に合っていたとの指摘しています。また、高速輸送の手段がなかった、もしくは限られていたので、現代よりも住民と地域の繋がりが強かったのでしょう。説得力があります。しかし、商店街について語っている文章が、期待していたより多くなかったのが残念でした。5つの章はどれを軸にという訳でもなく、どれも同じくらいの分量なので、商店街が主役と言う感覚はありませんでした。

他の4つはというと、初めて現金正札販売を取り入れた百貨店や、革新的なシステムを取り入れ大量消費社会を作ったスーパーには感心させられました。また、現在隆盛しているコンビニの問題点はニュースにもなり、商店街のことよりも印象に残りました。
コンビニ会計は公平さに欠けるよねぇ。

流通史として読むならバランスよくまとまって分かりやすいですが、商店街のことをよく理解したい場合はあまりおすすめしません。



[ 2017/09/23 22:13 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2017年09月07日(木)

老人喰い 高齢者を狙う詐欺の正体 



著者:鈴木 大介
発売日: 2015/2/6

評価〔B+〕 防犯対策の本ではありません。
キーワード:振込め詐欺、世代格差、

詐欺の現場プレイヤーのモチベーションは、異様なほど高い。これは取材を重ねるほど痛感したことだった。(第3章より抜粋)


噂で聞いたかテレビで報道していたか忘れましたけど、振り込め詐欺にはタイムカードがあると知った時は、行き当たりばったりでなく組織化されているのだなと驚きました。すぐになくなってしまうかと思っていたら、かなり長い期間流行している振り込め詐欺ですが、一体どのような人物が何を考えながら犯罪を犯しているのでしょうか。取材によって見えてきた詐欺の実態を明らかにします。

現場の雰囲気や行動を小説形式で書かれているので、臨場感があって分かりやすいです。著者もほぼノンフィクションと考えていいと断言していますので、あの物語のような集団がたくさん存在するのでしょう。予想よりも暴力の世界ではなく、連帯意識の強いブラック企業のようだと感じました。行っていることが犯罪なので読んでいて気分は良くないですが、知らない世界を見るという意味では興味深い内容です。中でも、非行少年ではなく、ごく普通の若者を詐欺集団の一員に育て上げる過程が、新興宗教の勧誘と似ているのは凄かったです。本当によくここまで取材したなあ。

著者は世代格差が原因で、貧しい若者が豊かな老人を食いものにしていて、人材と才能の浪費だと主張しています。確かに世代格差は存在して、下の世代ほど大変です。しかし、取材対象にやや肩入れしているのが気になりました。彼らの活動が違法なだけに。もし著者が言うように、彼らがやる気が旺盛で仲間思いの豪胆なら、体育会気質の会社はたくさんあるのでそこで働けば十分やっていけそう、というのは甘い考えなのでしょうか。それとも、ブラック企業は詐欺集団よりも酷いのでしょうか。そうだとしたら、それはそれで大問題です。

振込め詐欺の裏事情を知ることができる、ためになるノンフィクションでした。




[ 2017/09/07 21:50 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2017年08月24日(木)

「戦争学」概論 



著者:黒野 耐
発売日: 2005/9/17

評価〔A〕 世界の動きを勉強しよう。
キーワード:戦争、政治、歴史、

戦争は政治目的を達成する一つの手段であるから、政治目的が具体化された大戦略の基礎となっている地政学を抜きにして、戦争学を語ることができないのである。(第一講より抜粋)


少し前の話になりますが、領土問題で外国と緊張が高まった時、あるニュース番組で自衛隊の人が「一番戦争したくないのは軍人だよ」と言っていました。戦争をモニター越しにしか見たことのない一般人とは違って、現実的な意見だなと色々考えてしまったのを覚えています。そもそも戦争とは何なのか、熟知している人は少ないのではないでしょうか。戦術でも兵器でもなく、戦争そのものを学ぶ戦争学の入門書です。

クラウゼヴィッツの「戦争とは異なる手段をもってする政治の継続」から始まり、ランドパワー(陸上勢力)とシーパワー(海上勢力)などの地政学の説明をしています。地政学とは、国際関係を地理的概念をもとにして考えていく学問です。ネットでシーパワーがどうのこうのと書いている文章を稀に見ますが、このことだったのですね。中盤からはナポレオン台頭から現代まで、戦争はどのように変化していったかを考察ています。

歴史よりは現代の国際事情について深く考察してもらいたかったのですが、過去の事例もそれはそれで興味深いです。ナポレオンがなぜヨーロッパで勝ち続けられたのか、一次大戦後の英仏の失敗、ベトナム戦の勝敗を分けた理由が印象に残りました。ゲリラとテロの違いも理解しました。恥ずかしながら同じようなものだと思っていました。どの時代も軍事と政治が密接に結びついていることが分かります。

地政学以外の戦争の見方が書かれていませんし、現状を様々な面から分析してほしかったですが、戦争を一から学ぶには分かりやすかったです。おわりにの「戦争を推奨するために、戦争を学べと主張しているのではない。知らないことがもっとも危険であるといいたいのだ。」は、そのとおりだと思います。意見を述べる前によく勉強すべきですよね。また、国政を担う人々、特に外交に携わる人々には読んでおいてもらいたいです。




[ 2017/08/24 21:52 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2017年07月30日(日)

男が働かない、いいじゃないか! 



著者:田中 俊之
発売日: 2016/3/18

評価〔B〕 男らしさとは何なのか。
キーワード:男性学、生き方、仕事、

家族に対する責任を果たし、苦難を乗り越えて働き続けるのが「男らしい」男だと言う人もいるでしょう。その考えを否定しません。しかし、それはあくまで個人的な好みの問題であることを理解してください。男だからという理由で、すべて男性が背負う必要はないのです。(第1章より抜粋)


ここ数十年で女性の社会進出が進み、生き方の選択肢は増えました。一方、男性はどうでしょうか。変化がないとは言いませんが、昔ながらの職場で仕事一辺倒の人が多い印象があります。そうした生き方に疑問を投げかけ、より豊かな人生を歩むため若者向けに書かれた男性学の入門書です。もちろん、中高年の方々が読んでもためになります。

よく見たり聞いたりするような意見や問いかけに対し、著者が答える人生相談のような形式ですので、少しずつ読んでも一気に読んでも大丈夫です。一つの質問につき回答が5ページほどで、気軽に読むことができます。研究や統計を使わないのは、入門書だからでしょうか。

題名にもあるように、働かない男性を肯定していますが、働いている男性を否定している訳ではありません。男性だからこうすべきと決めつけないで、違う生き方も模索してみることの価値を訴えています。男性のことなので仕事や職場のことが多いですが、結婚や社会全体についても扱っています。「女性をリードできないとダメですか」あたりは、男女ともに意見が分かれそうですね。

基本的には働き始めた男性向けの本ですが、それ以外の人、上の世代の男性や女性が読んでも参考になるでしょう。男だからと強要されずにすむ社会になるといいなあ。




[ 2017/07/30 11:57 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)