2018年05月09日(水)

青の数学 



著者:王城 夕紀
発売日: 2016/7/28

評価〔B〕 一問も解けなさそうです。
キーワード:数学、数学オリンピック、証明、高校生、

「数学は、数字だけでできているわけじゃない」(本文より抜粋)


数学オリンピックをご存知でしょうか。その名の通り、数学の問題を解くことを競い合う大会なのです。十代のころ少し興味を持ち、どのような問題を解いているのか調べてみたのですが、どのくらい難しいのかも判断できないほどさっぱり分からなかったのを覚えています。本書はそんな学校の数学レベルを遥かに超えた証明問題を解きあう、高校生たちの物語です。

主人公の高校生・栢山(かやま)は、数学で決闘するサイト『E2』を知り、数学にのめり込んでいくわけですが、この相手と競い合うシステムは既にネットにありそうですよね。ただ解くだけでなくルールに基づいて競い合うのは、まるでスポーツのようです。題材が数学と言う珍しいものではあるものの、高校生が部活に熱中している青春ものとみればよくあるお話なのかもしれません。登場人物たちの決闘に対する姿勢の違いが表れていて興味深いです。

ただ、序盤は誰がどの台詞を喋っているのか分かりづらいし、難読名字が登場したりと読みづらさを感じました。読んでいるうちに慣れますが、戸惑いました。また、登場人物が多いので、誰が記憶すべき人物なのか混乱してしまいました。

過激さはなく雰囲気は穏やかですが、主題が主題だけに読む前から拒絶する人もいそうですし、読んでからも好みの分かれそうな青春小説です。数学はある程度知っていたほうが読みやすいです。数学が好きな人の気持ちが分からないと思っている人こそ、読んでみたら面白いのかもしれませんね。



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[ 2018/05/09 21:50 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2018年04月29日(日)

いたいのいたいの、とんでゆけ 



著者:三秋縋
発売日: 2014/11/21

評価〔B〕 人を選びそうな物語です。
キーワード:青春もの、現代、SF

「信じられないのも無理ありません。当人ですら、なぜ自分にそんなことができるのか、未だにわからないんですから」(本文より抜粋)


なかなか一言で表現できない読後感です。無気力な生き方をしている大学生の瑞穂はとある女子高生と出会い、彼女の復讐の手助けをすることになります。そこに少しだけSF的な要素が加えられていて、個性的な復讐劇となっています。

復讐するからスカッとするかというと、そうでもありません。むしろ物語は暗く重く、暴力的な場面も多々ありますので、悲惨な描写を受け付けない人にはお勧めできません。しかし、傷ましい話のわりには、どこか温かみのある独特の雰囲気があります。人生がうまく行かなくても、もう少しだけがんばってみようという気にさせてくれます。読んでいてどこか乙一の作品に似ていると感じました。

あの結末をどうとらえるかによって評価が分かるでしょう。すっきりせず残念だととらえるのか、幸福を見出すことができて良かったと思うのか。私はどちらとも言い切れませんが、現時点では後者のほうがやや強いかな。あとがきに書いてある「元気の出る話」の意味が分かるよう気がします。



ネタばれ話はつづきにて↓
[ 2018/04/29 18:45 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2018年03月17日(土)

一番線に謎が到着します 若き鉄道員・夏目壮太の日常 



著者:二宮 敦人、shimano
発売日: 2015/5/13

評価〔C+〕 謎解きよりも働く姿。
キーワード:鉄道会社、日常の謎、連作短編集、現代、

「早く忘れ物を見つけてください! 本当に重要なんです! なくなったら、取り返しがつかないんです!」(一章より抜粋)


普段何気なく使っている公共交通ですが、当たり前ですけどそこで働く人たちがいるからこそ毎日運行しています。電車もその一つです。そんな鉄道会社に勤める人たちの日常を描いた鉄道員ミステリ。短編4つからなる連作短編集です。

題名を見た時に謎とあったので、電車関係の推理ものだとばかり思っていましたが、読んでみたらミステリ風鉄道員物語でした。比重が鉄道員のほうが重いです。日常の謎やトラブルを絡めながら、彼らの日常や働く姿を見せているといった感じ。引用に挙げた忘れ物や、様々な事情によるダイヤの乱れなどは大変なんだろうなーと見るたびに思っていましたが、劇中でも苦労が絶えない描写でしたので、実際も同じかそれ以上に大変なんだと思います。頭が下がります。

個性的な登場人物とやや緩い感じの雰囲気で読みやすいです。しかし、謎解きの部分が弱く、謎解きの爽快感を味わいたかった読者としては物足りなかったかな。駅長もエピローグのオチも、勘のにぶい私がなぜか途中で読めてしまいましたし。求めていたものと違っていたのが残念でした。

鉄道員の話としては温かみもあり面白いですが、推理小説としてはあまりおすすめしないかな。社会科見学のような一冊でした。




[ 2018/03/17 21:49 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2018年03月07日(水)

日本酒BAR「四季」春夏冬中 さくら咲く季節の味 



著者:つるみ犬丸
発売日: 2016/9/24

評価〔B+〕 いろんな酒があるもんです。
キーワード:日本酒バー、唎酒師(ききさけし)、

「──変わった人でしたね。あんな注文、初めてでしたよ」(プロローグより抜粋)


近所にあったら試しにいってみたい日本酒バー、冴蔵(さくら)と楓の物語。

日本酒という専門的なものを扱っているのにもかかわらず、難しくなく説明されているので読みやすいです。醸造アルコールについては知っていたので、冴蔵の気持ちはよく分かりました。私でしたらその場で言ってしまいそう。

前の巻では四季の創設者が話の中心にいましたけど、今回の物語の軸となるのはまた違った難題です。こういうやっかいごとは、実際ありそうだし色々と大変そうですね。でも、解決の方法はこの物語らしくて合っていました。

今回も登場人物の境遇や心情を反映した日本酒が登場し、なるほどなと感心しました。どういった過程でその酒が生まれたのかも紹介されることもあり、ますます興味を引かれました。ただし、前回に比べると酒の傾向にややかたよりがあった気がします。

綺麗にまとまって終わりましたけれど、もう少し波乱万丈でも良かったかな。小説の雰囲気とは合わないけどね。



[ 2018/03/07 21:12 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2018年02月04日(日)

日本酒BAR「四季」春夏冬中 さくら薫る折々の酒 



著者:つるみ犬丸
発売日: 2016/4/23

評価〔B〕 ためしに飲んでみたくなりました。
キーワード:日本酒バー、唎酒師(ききさけし)、

「日本酒に詳しい人と一緒に、ずっとやりたいことがあったの!」(一章より抜粋)


最近漫画ではグルメものが流行っていますけど、本書は小説で、しかも扱うものは日本酒です。珍しいと思います。

家出した酒蔵の息子・北条冴蔵(さくら)は食べるものも住むところもない中、四季という店・赤橋楓の主人に助けれます。彼女は冴蔵の知識と能力を知り、彼女の夢を実現させるため動き出します。

本書の特徴は、なんと言っても実在する日本酒が登場する点です。私が知らないものが多かったのですが、飲んだことのあるお酒も出てきて嬉しいというか共感しました。日本酒版ソムリエである唎酒師の資格を持つ冴蔵(さくら)が、お客の境遇や気持ちに合ったお酒を提供するのが見所です。どの人の人生も異なるように、どの銘柄にも異なる物語があるのだなと知らさせます。

予想外の事件や奇想天外な人は出てきません。もう少し刺激的でも良かったかなとも思いますが、グルメものはこうした落ち着いた雰囲気のほうが似合っているのかもしれませんね。



[ 2018/02/04 18:15 ] 小説 | TB(0) | CM(0)