2017年10月19日(木)

日本以外全部沈没 パニック短篇集 



著者:筒井 康隆
発売日: 2006/6/24

評価〔C〕 確かに勢いはあります。
キーワード:短編集、SF、高度成長期

「ブワナ・ヤス。ミサイルの仕入れ、あなたも来てほしい」(「アフリカの爆弾」より抜粋)


表題作を含む11編の、パニックを主題とした短編集です。

まず題名のインパクトが凄い表題作ですが、元ネタは小松左京の「日本沈没」です。しかし、それを未読でも十分楽しめます。私も読んでいませんし。時代は経済高度成長期の頃でしょうか、当時の有名人が次から次へと登場します。今では昔の人ですが、この頃に読んだらもっと面白かったことでしょう。他の短編「新宿祭」「農協月へ行く」など、この時代の影響を強く受けたものが多めでした。

滅茶苦茶な設定ばかりですが、どこか現実味があり、社会風刺のようでした。皮肉が効いている、とでも言うのかな。どれもテンポが良く、ドタバタ劇のようでした。「アフリカの爆弾」はあまり時代を感じさせない内容ですし、「黄金の家」は短編らしい切れがあって良かったです。

しかし、結末は投げっぱなしで、この後も暴走は続きます的なものが多かったのが残念でした。綺麗にオチがついているのもあるので、もう少し終わりが良ければなあ。



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[ 2017/10/19 22:03 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2017年09月14日(木)

儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫) 



著者:米澤 穂信
発売日: 2011/6/26

評価〔B+〕 人の持つ残酷さが強烈。
キーワード:連作短編集、暗黒ミステリ、ホラー、文庫化

わたしは初めて、疑問を持ちました。変わった買い物には、どんな意味があるのだろうか、と。(北の館の罪人より抜粋)


時代は昭和初期あたり、旧家や本家という呼び方が似合う裕福な家々で起きる事件を綴った連作短編集です。裏表紙には暗黒ミステリとありますが、サスペンスホラーと呼んだほうがしっくりくる内容です。

どの逸話もバベルの会という読書会が登場し、これによって5つの短編が繋がっていることがわかります。前から順に読んだほうがよいと思いますが、各々独立していますので読む順番はそれほど気にすることはありません。もう少し強い繋がりのほうが、連作短編らしくて良かったかな。

途中で結末が読めてしまったものもありましたが、「身内に不幸がありまして」や「北の館の罪人」は、意外なオチで面白かったし怖かったです。推理小説とはまた違った面白さですね。使用人や料理人が当たり前のようにいる昔の上流階級の様子や、彼らの価値観も描かれていて、もしかしたらこういう人々や事件があったのかもしれないなと思ってしまいました。

著者の作品は、古典部シリーズや小市民シリーズでおなじみの、日常の謎の印象が強いので、本書のようなホラーも書けるとは驚きました。この作風の短編でこれなら、長編はどうなるのだろうかと思ってしまいます。



[ 2017/09/14 22:38 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2017年09月02日(土)

ラットマン (光文社文庫) 



著者:道尾 秀介
発売日: 2010/7/8

評価〔B+〕 題名がヒントです。
キーワード:推理、文庫化、

同じことをやれ。同じことを。(P130本文より抜粋)


人が何かを見るとき、直前に見ていたものが判断や理解に影響する現象を、分かりやすく体験できるのがラットマンの絵です。この先入観のようなものが、本書では重要な意味を持ちます。

事件はあるライブハウス。趣味でバンドを組んでいる主人公・姫川の恋愛と、彼の過去の不幸な出来事の2つを軸に、物語は進んでいきます。やや暗く重い雰囲気で進み、事件がなかなか起きないので推理小説ではなく青春小説っぽいですが、事件後はテンポよく進むのでご安心を。

早い段階で真相が分かってしまったと思いながら読んでいたら、案の定と言いますかやっぱり間違っていました。文脈効果というヒントをもらいながら深く考えていなかったので、うまくミスリードに引っかかってしまいました。いや、しかし、終盤までそう思い込ませるとは巧いです。

話の筋自体は好みではなかったのですが、伏線も上手でしたし、なにより予想していたより読後感が悪くなかったのが良かったです。



[ 2017/09/02 19:06 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2017年08月20日(日)

グランドマンション (光文社文庫) 



著者:折原 一
発売日: 2015/11/11

評価〔B〕 世相を反映したマンションでミステリー。
キーワード:連作短編集、推理、マンション、文庫化

彼は極度に神経質で、ちょっとした物音が気になる性格だった。車の走行音や屋外の子供の遊ぶ声などはそれほど気にならないのだが、室内の物音、この建物内の騒音にはことのほか敏感だった。(音の正体より抜粋)


グランドマンション1番館の住人達が事件を引き起こす、または巻き込まれる連作短編集です。推理物なので裏表紙にはミステリー連作集と書いてあります。雑誌連載後書き下ろしを追加して刊行された単行本の文庫版です。

各短編にはテーマとなる社会問題、ストーカーや振り込め詐欺などが盛り込まれています。住人同士は交流があまりなく、その近所付き合いの希薄さが事件の遠因になっていることもあって、現代風でなかなか現実味があるなあと思ってしまいました。推理小説ではありますが、こうした推理以外の要素もしっかりしていると、読んでいて引き込まれます。

それぞれ推理のヒントとなる伏線の描写が巧みでした。結構色々な描写に目を光らせて読んでいたのですが、あっさり騙されてしまいました。読者の目を真相からそらすのが上手いなぁ。しかし、物語としては強烈な印象は残りませんでした。何故だろう。また、裏表紙に大どんでん返しと書かれているのも、どういった種類の謎が仕掛けられているか予想がつくので良くないですよね。ま、これも気がつかなくて騙されたわけですが。(笑)

斬新さやインパクトはそれほど感じませんでしたが、うまくまとまった連作短編集だと思います。



[ 2017/08/20 21:01 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2017年07月23日(日)

占星術殺人事件 (講談社文庫) 



著者:島田 荘司
発売日: 1987/7/8

評価〔B-〕 これが元ネタだったのか。
キーワード:推理、文庫化、

「この謎解きは大ざっぱにいって二つの問いかけがあると思う。一つは犯人捜し、もう一つがこのアゾート捜しだよ」(P134より抜粋)


四十年前に迷宮入りとなった殺人事件に、頭の切れる占い師・御手洗潔と、彼の友人・石岡の二人が挑みます。著者のデビュー作。

序盤の遺言状兼小説が退屈でしたが、事件の概要あたりから徐々に面白くなっていきます。古い推理小説らしく、読者への挑戦状があるので、うっかり解決編を読んでしまうことはありません。こうした著者の発言は、劇中の雰囲気を損なうこともあるので、好みが分かれそうですが。また、冗長なところあったが少々残念でした。事件の中心人物を詳しく描写するためや、推理のミスリードのためなのは分かりますが、それよりもくどいと言う印象のほうが強かったです。

事件のトリックは独創的で素晴らしかったです・・・・・・が、最後の事件のトリックに関しては、前に似たようなトリックの作品を見たことがあったので、素直に楽しめませんでした。こちらのほうが先に出版されているので、本書が元ネタだったのですね。いやー、あれに似ているなーと思ってたら、本当にあれだったとは。驚きです。最初に考えた著者は凄いですね。

実写化すれば面白そうですが、凄惨な場面があるから難しいかな。余談ではありますが、2013年に講談社文庫から改訂完全版が出版されています。読んでから完全版の存在に気がつきました。まだ未読の方はそちらを読んだほうが良さそうですね。



[ 2017/07/23 21:13 ] 小説 | TB(0) | CM(0)