2012年03月30日(金)

新編 悪魔の辞典 (岩波文庫) 

新編 悪魔の辞典 (岩波文庫)新編 悪魔の辞典 (岩波文庫)
著者:アンブローズ ビアス
出版:岩波書店
発行:1997/01/16

評価〔B〕 悪魔紹介の図鑑ではありません
キーワード:箴言、ブラックユーモア、ジャーナリズム、アメリカ、

電話 (telephone n.) 気に食わぬ奴を寄せつけないでおく便宜の一部を放棄せざるを得ぬ悪魔の発明品。(本文より抜粋)


最初手に取った時は、様々な悪魔を紹介している本かと思ったのですが、そうではなく、まるで悪魔が書いたかのように辛辣でブラックユーモアあふれる辞書です。芥川龍之介にも影響を与えた、アメリカ草創期のジャーナリスト・ビアスによる箴言用語集。

名言集はたいてい深みのある真面目な言葉が列挙されているのですが、本書は思わずひどいと笑ってしまうような皮肉と風刺に満ちています。こういったものは、権力や財力のある人が目標になるものですが、彼はそれだけでは飽き足りないとばかりに、。「歯医者」「銀行預金」などたくさん書き連ねています。また、特定の人たちだけでなく普遍のものとして人の心を皮肉っている項目もあり、「友のない」「無謀な」「罵詈雑言」「無感動の」が目につきました。「無感動の」は、あれで良いのでしょうか……。

しかし、機知に富んだ教訓もきちんと書いています。例えば、怠惰を

悪魔が新しい罪なる種でもってさまざまな実験を試み、かつ主要作物である悪徳の成長を促進させる模範農園。

と説明しています。「運命」「哲学」の項目も興味深いです。「誕生」の説明は、シェイクスピアでも似たような表現がありますよね。リア王だったかな。単なるブラックユーモアで終わらず、物事の違う見方を示してくれるのが面白いです。

項目ごとに文章の量が異なりますが、長いのより短いほうが切れが鋭く面白いと思います。また、宗教関係から引用していて、分かりにくい項目もありました。少々残念です。

ブラックユーモアを解さないもしくは苦手な方は読まないほうが良いです。それに、女性にもすすめられません。編者が女性に対して大変辛らつであるからです。書いた本人のせいか、当時の社会のせいかは分かりませんが。もし、読むならば真面目に読まず、あくまでブラックユーモアだということをお忘れなく。





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[ 2012/03/30 22:50 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2011年12月11日(日)

夜の来訪者 (岩波文庫) 

夜の来訪者 (岩波文庫)夜の来訪者 (岩波文庫)
著者:プリーストリー
出版:岩波書店
発行:2007/02/16

評価〔B+〕 どんでん返しと社会風刺の面白さ
キーワード:戯曲、イギリス、近代

警部「こういうふうに仕事を進めるのがわたしのやり方なんです。一度に一人の人間、一つの線の尋問、っていうわけです。さもないと、ごちゃごちゃになってしまいますから。」(第1幕より抜粋)


20世紀前半、小説で人気が得て大きな影響力を持ったプリーストリーの戯曲です。解説によると、本作品は著者のもっともよく知られた戯曲で、1954年には映画化されたそうです。

郊外の裕福な家が舞台。家主の娘シーラ・バーリングと婚約者ジェラルドの婚約を祝って、バーリング一家とジェラルドが幸せなひと時を過ごしていると、グールと名乗る警部が尋ねてきます。ある女性の自殺について聞きたいことがあると彼は言うのですが……というふうに始まるミステリー戯曲です。スピード感があり次から次へと話は進んでいきます。

イギリスは今でも階級社会らしいのですが、当時も爵位にこだわる人物の様子が描かれています。また、登場人物たちの傲慢な言動や知られたくない事が警部によって暴かれていくので、社会風刺の一面を持つ戯曲であり興味深いです。著者の共同体の思想が強く反映されています。警部が帰った後の態度の違いがでて、それによって彼らの本性が分かり面白いです。

終盤どんでん返しがあり、これには感心しました。あの行動にあのような意味があったとは……うまく作ったものです。岩波文庫はとても硬いイメージがありましたが、考えを改めねば。過度の個人主義を非難した警告の書としても、娯楽作品としても楽しめます。




[ 2011/12/11 10:40 ] 小説 | TB(0) | CM(0)