2015年04月15日(水)

十角館の殺人 (講談社文庫) 

十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)十角館の殺人 <新装改訂版> (講談社文庫)
著者:綾辻 行人
出版社:講談社
出版日:2007/10/16

評価〔B-〕 トリックは良いけれど。
キーワード:孤島、推理、

怪訝に思って、オルツィは十角館のテーブルに歩み寄った。そして、そこに並べられているものを認めるや、粋を呑んでその場に立ち尽くした。(第三章より抜粋)


面白い推理小説や衝撃を受けた推理小説なんかでネットを調べると、必ずと言っていいほど挙げられるのが本書、十角館の殺人です。1987年にノベルスとして出版されてから30年以上たちますが、週刊文春の東西ミステリーベスト100の2012版、日本編で見事8位に輝いています。人気ありますね。本書は、文庫版のさらに新装改訂版です。

孤島の館に少人数のグループが集まり殺人事件が起きる――と書くと、よくある推理小説のようですが、当時は新鮮だったのではないでしょうか。次々に起きる事件に緊張感が高まり、最後は驚愕の真相が明かされます。驚愕の部分はたしかに上手かったのですが、期待し過ぎたためか、絶賛するほどではありませんでした。また、僕の読解力が足らないせいか、序盤は誰がどのような性格か把握するのに手間取りました。個性があまり強くなかったのかも。ネットで犯人の動機が弱いという書評も見かけましたが、そう書かれるのも分かります。

トリックは良いのですが、全体的に見ると少々物足りない気もします。やはり過剰な期待が良くなかったようです。こうした有名作品は、情報なしで先入観がない状態で読むのが一番なのかも。


追記
長門有希の100冊のうちの1冊でした。

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[ 2015/04/15 22:01 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2013年03月08日(金)

星を継ぐもの (創元SF文庫) 

星を継ぐもの (創元SF文庫)星を継ぐもの (創元SF文庫)


著者:ジェイムズ・P・ホーガン
出版:東京創元社
発行:1980/05/23

評価〔A+〕 ミステリ風ハードSF
キーワード:SF、近未来、ミステリ風、科学調査

「何者であるかはともかく……チャーリーは五万年以上前に死んでいるのです」(本文より抜粋)


月で発見された謎の遺体。調査の結果、彼は五万年前に死亡していることが判明します。彼は、はたして地球人なのか宇宙人なのか。どうして地球ではなく月面に存在したのか。物理学者ハントたちが謎の解明に挑みます。有名SF作家J・P・ホーガンの出世作。

近未来の宇宙を舞台としたハードSFですが、未来の生活やテクノロジーをあたかも体感しているようなものではなく、今ある現実的な技術で謎を解明していく地味ですが壮大な小説です。裏表紙の粗筋からわかるように、謎解きが主題なのでミステリ風です。ほんの少しずつ事実が判明していきますが、あることが分かると違う疑問点が持ち上がるので、最後まで引き込まれます。

科学調査の部分が細かく書かれていて、実にリアリティがあります。未知の言語の解読なんかは、昔TV番組で見たものと同じような感じで驚きました。遺体から生活していた場所の重力を割り出すところも良いです。本書の初版が1980年であることを考慮すると、著者の知識と調査・取材に圧倒されます。本書は、戦争がなくなりそのお金を宇宙開発に費やした近未来の話ですが、現実世界の2013年から見て、劇中の2029年の技術を実現するのはちょっと難しそうです。でも、それくらいにガニメデまで往復できるくらいになっていればいいなあ。

強いて残念な点を挙げるとすれば、人物の魅力があまりないことでしょうか。主役のハント博士でさえ、内面があまり伝わってこなかったです。それと、翻訳のせいか専門的なせいか、読みやすくはありません。自然科学系の知識はあったほうがすんなり読めると思います。でも、謎解きの面白さや素晴らしい発想が損なわれるほどではありません。

まるで遺跡調査のドキュメンタリー番組を見ているかのように、ワクワクさせてくれます。昨年末に読んだ『幼年期の終わり』も壮大でしたが、あれよりもこちらのほうが好みです。スケールの大きい謎をお望みなら、是非。



追記
長門有希の100冊に入っています。


ネタばれは続きにて↓
[ 2013/03/08 21:54 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2012年05月02日(水)

ゲーデルの哲学 

ゲーデルの哲学 (講談社現代新書)ゲーデルの哲学 (講談社現代新書)
著者:高橋 昌一郎
出版:講談社
発行:1999/08/20

評価〔B+〕 それでもやはり難しいです
キーワード:論理学、不完全性定理、哲学、伝記

ゲーデルは、不完全性定理によって人間理性の限界を明らかにしながら、人間理性そのものを疑うことはなく、世界は合理的に進歩すると信じていた。(はじめにより抜粋)


アリストテレス以来の最大の論理学者、もしくはそれ以上の逸材と評され、二十四歳の若さで不完全性定理を証明したクルト・ゲーデル。彼の残した証明や論理を解説すると同時に、あまり知られていない彼の人間性や哲学を明らかにします。半分は初心者向けの説明、半分はゲーデルの人生を振り返る伝記のような感じです。同著者の『理性の限界』を読んで興味を持ちました。

不完全性定理をパズルやアナロジー(比喩的表現)を使って分かりやすく説明していて、まったく馴染みのない方でも大まかなイメージはつかめるようになっていますが、やはり元の理論が難解なだけに完全に理解するのは難しいと思います。また、『理性の限界』にある記述もあるので、個人的にはそれほど新鮮味はありませんでした。

神の存在論は、相変わらず禅問答のようで分かったような分からないような気分になりました。ただ、それらの証明は唯一神を対象としているみたいで、そのあたりはキリスト教(または一神教)の影響かなーと思ったりもします。それ以外にも人間機械論やランダム性について書かれています。ランダム性はようやく少し分かった、ような気がします。

中盤の伝記では、論理を重視し内気で頑固だったゲーデルの内面を垣間見ることができます。仲の良かったアインシュタインと散歩をするのが好きだったと書かれています。二人の天才はどのような会話をしたのか興味がわきます。意外と普通の世間話だったのでしょうか。それに、アインシュタインもそうですが周囲が有名な人ばかりなのが凄いですね。現代コンピュータの基礎を作ったフォン・ノイマン、言語哲学のウィトゲンシュタイン、現代数学の父・ダフィット・ヒルベルト……。特にノイマンは、「二十世紀最高の知性」と呼ばれるたびに、それは自分ではなくゲーデルだと返答していたことから、ゲーデルがいかに桁外れの才能を持っていたかが分かります。

不完全性定理も神の存在論も難解で、特に後者のゲーデルの存在論的証明はイメージをつかむことすら困難です。初心者にも分かるようにとありますが、本当に予備知識0の人が読んでも理解できるのでしょうか……。理解は本当に大まかな部分だけにとどめ、ゲーデルの伝記を読んでいると割り切れば良い本だと思います。




[ 2012/05/02 23:14 ] 心理・哲学 | TB(1) | CM(0)