2016年08月05日(金)

言ってはいけない 残酷すぎる真実 



著者:橘 玲
発売日: 2016/4/15

評価〔A-〕 残念ながら平等ではありません。
キーワード:社会学、遺伝学、先天的、進化、

結論だけを先にいうならば、論理的推論能力の遺伝率は68%、一般知能の遺伝率は77%だ。これは、知能のちがいの7~8割は遺伝で説明できることを示している。(1章より抜粋)


あまり認めたくないような格差や真実を、進化論や遺伝学の研究結果から明らかにしていきます。様々な社会問題を挙げているのかと思ったのですが、各個人の人生に影響を与える身近な話題ばかりで、主に生得的能力・才能、容姿、教育について論じています。

生まれ持ったものの影響が想像以上に大きい、というのが大まかな主旨です。誰しも少しは考えたことがありそうな、しかし口に出すと差別だと思われそうな内容が書かれています。確かに残酷ではありますが、覚悟していたよりも意外ではありませんでした。差別だと非難されることを恐れずに真実を伝えようとする姿勢は、見習うべきものがあります。

一番意外だったのは、子育て・教育の子供の成長に対する影響力です。子育てを経験した親ならば、感覚的に知っているものなのでしょうか。遺伝、子育てに次ぐ第3の要素は新鮮でした。著者の主張に全面的に賛成というわけではありませんけど、確かに一理あると思います。

他にも、ユダヤ人の知能の秘密や、安静時心拍数と犯罪の関係、外見から攻撃性を推測する方法、容姿の美醜の金銭的価値などについて触れていて、極端な意見のようにも感じる時がありましたけど面白かったです。

根拠となる文献が明記されているのは良いのですが、書いてあるだけで文献自体に対する意見は書かれていません。内容の精査はしているのでしょうか。そうした疑問があったためか、根拠があるにも関わらず、文章に重みが感じられないときがありました。また、ほとんどが事実を断言して終わってしまうので、格差の対策案や希望の持てる提案が見られなかったのが残念です。

賛否両論になるのも分かります。読んでいて不愉快になるかもしれませんが、知っていたほうがいいのかもしれませんね。差別的にならないよう注意が必要ですが。内容を鵜呑みにせず、何か失敗した時に都合の良い言い訳に使わないようにしたいです。



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[ 2016/08/05 21:58 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2016年02月26日(金)

ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか (角川文庫) 



著者:NHKスペシャル取材班
発売日: 2014/3/25

評価〔S-〕 内面から人の歴史を振り返ります。
キーワード:人類、心、進化、テレビ番組、

『全宇宙の生命を脅かすモノ―― 災いの渦』(本文より抜粋)


人類の進化を生物学や遺伝子学から紹介した書籍は珍しくありません。しかし、本書では従来とは違った角度から、ヒトの内面である心を軸として人類の起源と歩みの解明に挑みます。第10回パピルス賞を受賞。

時間をかけ丹念に調べ、多くの専門家にインタビューをし、新しい説を紹介している非常に読み応えのある本となっています。人類と言えば「二足歩行・道具・言語」が特徴ですが、それ以外でヒトと猿の違いとは何なのかを探っていくのが面白いです。実験や原始的な民族の研究から、普段私たちが何げなく行っていることが、実は他の生物と決定的に違うことを教えてくれます。ヒトがどのようにして血縁関係を超えた集団を形成したのか、わりに合わない農耕生活はなぜ始まったのか、都市の出現とある発明の関係性、平等の心と欲望の心。DNAが、海馬が、なんて話が苦手な人でも興味深く読むことができます。

また、太古と現在では意味が違かったかもしれない物・概念も興味深いです。例えば、おしゃれ。考古学の見地から導かれた自己顕示欲、贅沢品以外の意味は、理にかなっていて唸ってしまいます。それと宗教も意外でした。単に神秘的なものを敬うだけでなく、他にも重要な意義があったとする説はかなり説得力があります。

人間の歴史は戦争の歴史、なんて言いますが、本書を読むと、予想していたよりもヒトは昔から協調性がある生き物だったみたいで少々驚きました。でも、だからこそ、過酷な自然を生き抜いて繁栄できたのでしょう。

話があちこちに飛んだり、本筋が分かりにくいところもありましたが、全体をとおして見ると確かに心について語っています。この環境ではこうした心境だったのだろう、あのような状況ではあのような気持ちかも、と当時の人々の内面を想像しやすいのが良いですね。心という面では、数万年前からほとんど変わっていないと思っています。

著者名から分かるように、NHKの番組を書籍化したものです。それにしても、「人間はどこから来たのか、どこへ行くのか」といい「女と男」といい、NHKの書籍は内容の濃くて興味深い本が多いと感じました。今後も質の高い面白い本を期待しています。



[ 2016/02/26 22:10 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2015年05月29日(金)

人体 失敗の進化論 



著者:遠藤 秀紀
発売日: 2006/6/16

評価〔B〕 具体的な進化の過程が面白いです。
キーワード:進化、脊椎動物、生物、人体、動物園、

実は、このように進化の当初の“狙い”と最終的に出来上がったものの役割が異なることは、身体の歴史としては珍しい出来事ではない。むしろ、進化の常道とすらいえるのである。(本文より抜粋)


胎児は母親のおなかの中で、生物の進化の過程を辿るように成長していくという話を聞いたことがあります。なんでも原始的な魚類のような形からどんどん成長して、時間をかけて人間の姿になっていくとか。人類が突如現れた種ではなく、前の生物の形から進化を経てきたことが分かるエピソードだと感じました。本書では、解剖学の研究者が人間がどのように進化してきたか、他の生物の進化も踏まえて解説していきます。

爬虫類が鳥類に進化しました、のような大雑把な話し方ではなく、この器官はこの骨がこのように変化して作られたと細かく説明しているので分かりやすいです。耳や骨のできる過程は興味深く面白いです。しかし、想像しやすく理解しやすい反面、血や肉、骨など生々しいものが苦手な僕としては、読むのがきつい所もありました。

後半は人間の体がどのようにして出来たかが詳しく述べられています。二足歩行と大きな脳を得るかわりに、どのような不都合が出始めたのか。ある程度知っていたとは言え、色々と短所がありなんとも言えない気分になります。また、人間社会の変化と進化の関連性も触れています。「なぜ月経があるのか」の考察は新鮮でした。

終盤、解剖学者としての姿勢や大学とお金の関係、動物園のあり方について意見を述べていますが、こうした記述が多いと不満を訴える印象が強く残ってしまうのではないでしょうか。純粋に学問に取り組みたい心境は分かりますが、さらりと書いて進化と解剖の面白さを押し出したほうが良いんじゃないのかな。




[ 2015/05/29 20:50 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2013年04月05日(金)

科学でわかる男と女の心と脳 男はなぜ若い子が好きか?女はなぜ金持ちが好きか? 

科学でわかる男と女の心と脳 男はなぜ若い子が好きか? 女はなぜ金持ちが好きか? (サイエンス・アイ新書)科学でわかる男と女の心と脳 男はなぜ若い子が好きか? 女はなぜ金持ちが好きか? (サイエンス・アイ新書)
著者:麻生 一枝
出版:ソフトバンククリエイティブ
発行:2010/03/18

評価〔A-〕 軽めに見えてしっかり分析
キーワード:性、進化生物学、動物行動学、

性染色体の違いによってなにが起こり、オスやメスの体が形づくられていくのかについては、いまだにその全貌は解明されていない。しかし、いちばん重要な働きをするのが男性ホルモンであることについては、学者の意見は一致している。(第5章より抜粋)


帯のイラストに、可愛い女性で「わたし愛があればなにもいらないの!」と書いてあり、そのすぐ下に『ウソをつけ』とあって笑ってしまいました。表紙のイラストで少々手に取りにくいかもしれませんが、男女の様々な違いを動物行動学・進化生物学の観点から分析した、性についての科学的な解説書です。

とっつきやすい異性の好みや嫉妬の話題から、性と犯罪の関係そして体や心の違いなどかための項目まで広く扱っています。どれも分かりやすく難しくならないよう心がけているようです。例えば、深く考えることのなかった異性の魅力も、進化論を考慮し説明しています。ポップなイラストが使われていますが、多数の論文や書籍・データを参考にしていてしっかりとした内容です。

特に目をひいたのが、第5章です。胎児の時に性が決定していく性分化についてが書かれているのですが、体の性と心の性では、性分化の時期が違うことが驚きでした。体も心も同時に男性になっていくのかと思っていただけに、すごく興味深いです。このことを知っただけでも、本書を読んだかいがありました。

気になる点がひとつ。男が得意なこと女が得意なことが書かれていましたが、以前読んだ「脳と性と能力」では男女の能力にほとんど差はなかったとあったような……。ズレがありますね。もう一度読み直してみようと思います。

分かりやすいですが内容は充実した本です。各項目は短く、新書の中でもスラスラ読めるほうだと思うので、あまり本を読まない人にも読んでもらいたいものです。




[ 2013/04/05 21:40 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2012年10月30日(火)

女と男 ~最新科学が解き明かす「性」の謎~ 

女と男  ~最新科学が解き明かす「性」の謎~ (角川文庫)女と男 ~最新科学が解き明かす「性」の謎~ (角川文庫)
著者:NHKスペシャル取材班
出版:角川書店(角川グループパブリッシング)
発行:2011/01/25

評価〔A-〕 ひとつの話題が短く読みやすいです
キーワード:性、ほ乳類、脳医学、生物学、進化

つまり、同じ課題を解くとき、男性は空間を把握する力を使って解いているが、女性は空間を把握する力は使ってはいなかったのだ。(第1章により抜粋)


いつの時代でもどのような文明でも、人の大きな関心事は性、特に異性のことです。書店でも、男性向けに女性の気持ちを説いた本や、女性向けに男性心理を解説した本を見かけます。本書は、NHKが2009年に放送した番組を、書籍化したものです。なお、ダイヤモンド社「だから、男と女はすれ違う」を文庫化したものでもあります。

男性はこうだ女性はこうだというのではなく、どこに違いがあるのか?から始まり、恋愛の仕組み、なぜ離婚に至るのかなど、分かってはいるが科学的に調べてみるとどうなのかに重点を置き、解説しています。進化の歴史とMRIなど科学技術を駆使した調査を組み合わせ、説得力を持たせています。

前半の内容は専門的ではありますが、分かりやすく書かれていて、軽めの科学エッセイのようでした。上記引用の、同じことを考えても男女で頭の使う場所が違う、はなかなか興味深い事実です。驚きと納得が同時に沸き起こりました。また、なぜ人は未熟な状態で生まれるのかの説明も、説得力のあるものでなるほどと思いました。女性のほうが読むのが得意な地図も、関心してしまいました。

一方、終盤の人間の性の未来については、読み応えがあり面白かったです。精子の劣化はいつだか関連記事をネットで読んだ記憶がありますが、染色体の変化の話は初めて知りました。性の仕組みが未だ変化を続けていることに驚きです。

男女それぞれの研究より、男女が向き合う現場を重視しているため、予想よりも身近で軽めに感じましたが、それでも興味深く他人に話して意見を聞いてみたいことが多かったです。





[ 2012/10/30 21:26 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)