2017年09月14日(木)

儚い羊たちの祝宴 (新潮文庫) 



著者:米澤 穂信
発売日: 2011/6/26

評価〔B+〕 人の持つ残酷さが強烈。
キーワード:連作短編集、暗黒ミステリ、ホラー、文庫化

わたしは初めて、疑問を持ちました。変わった買い物には、どんな意味があるのだろうか、と。(北の館の罪人より抜粋)


時代は昭和初期あたり、旧家や本家という呼び方が似合う裕福な家々で起きる事件を綴った連作短編集です。裏表紙には暗黒ミステリとありますが、サスペンスホラーと呼んだほうがしっくりくる内容です。

どの逸話もバベルの会という読書会が登場し、これによって5つの短編が繋がっていることがわかります。前から順に読んだほうがよいと思いますが、各々独立していますので読む順番はそれほど気にすることはありません。もう少し強い繋がりのほうが、連作短編らしくて良かったかな。

途中で結末が読めてしまったものもありましたが、「身内に不幸がありまして」や「北の館の罪人」は、意外なオチで面白かったし怖かったです。推理小説とはまた違った面白さですね。使用人や料理人が当たり前のようにいる昔の上流階級の様子や、彼らの価値観も描かれていて、もしかしたらこういう人々や事件があったのかもしれないなと思ってしまいました。

著者の作品は、古典部シリーズや小市民シリーズでおなじみの、日常の謎の印象が強いので、本書のようなホラーも書けるとは驚きました。この作風の短編でこれなら、長編はどうなるのだろうかと思ってしまいます。



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[ 2017/09/14 22:38 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2017年08月20日(日)

グランドマンション (光文社文庫) 



著者:折原 一
発売日: 2015/11/11

評価〔B〕 世相を反映したマンションでミステリー。
キーワード:連作短編集、推理、マンション、文庫化

彼は極度に神経質で、ちょっとした物音が気になる性格だった。車の走行音や屋外の子供の遊ぶ声などはそれほど気にならないのだが、室内の物音、この建物内の騒音にはことのほか敏感だった。(音の正体より抜粋)


グランドマンション1番館の住人達が事件を引き起こす、または巻き込まれる連作短編集です。推理物なので裏表紙にはミステリー連作集と書いてあります。雑誌連載後書き下ろしを追加して刊行された単行本の文庫版です。

各短編にはテーマとなる社会問題、ストーカーや振り込め詐欺などが盛り込まれています。住人同士は交流があまりなく、その近所付き合いの希薄さが事件の遠因になっていることもあって、現代風でなかなか現実味があるなあと思ってしまいました。推理小説ではありますが、こうした推理以外の要素もしっかりしていると、読んでいて引き込まれます。

それぞれ推理のヒントとなる伏線の描写が巧みでした。結構色々な描写に目を光らせて読んでいたのですが、あっさり騙されてしまいました。読者の目を真相からそらすのが上手いなぁ。しかし、物語としては強烈な印象は残りませんでした。何故だろう。また、裏表紙に大どんでん返しと書かれているのも、どういった種類の謎が仕掛けられているか予想がつくので良くないですよね。ま、これも気がつかなくて騙されたわけですが。(笑)

斬新さやインパクトはそれほど感じませんでしたが、うまくまとまった連作短編集だと思います。



[ 2017/08/20 21:01 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2017年06月28日(水)

南極点のピアピア動画 



著者:野尻 抱介、 KEI
発売日: 2012/2/23

評価〔B+〕 はじめが身近なところが良い。
キーワード:SF、宇宙、動画共有サイト、ボーカロイド、現代、連作短編集

「私、聞いたことあります。“ハミマ入店音シリーズ”のことですよね?」(「コンビニエンスとピアピア動画」より抜粋)


表紙や題名から推測できるのですが、動画共有サイトとボーカロイド、そして少し恋愛を加えたSFです。SFマガジンに載った3編に描き下ろし1編、合計4編からなる連作短編集です。

どのお話も、些細な思いつきからとりあえず面白そうなことを始めてみるのが発端で、ネットの動画投稿の精神がそのまま表れているのが実に現代的です。個人の願望がどんどん大きく発展していくのがテンポ良く描かれています。軽く緩い雰囲気を保ちつつ非日常へと繋がっていくのが楽しいし面白いです。2話目の「コンビニエンスとピアピア動画」が結構好みです。

元ネタがニコニコ動画と初音ミクなので、ネットやオタク文化に明るい人は親近感がわき、より楽しめると思います。著者のように動画を投稿している人は特に。逆に、そういうのが好きでない人たちにとっては、ピンとこないかもしれません。

SFらしく科学の専門用語が多い台詞もありますが、理解できなくても物語は楽しめますので心配いりません。私も分かりませんでした。全部分かる人は相当のSF好きか、宇宙ファン(と言うのでしょうか?)でしょう。

現実でタッチパネル式の端末が、突如現れた時のように、かなりワクワクしました。4話目はスピードも量も圧倒的で思わず笑ってしまいました。想像しやすい身近なSFは、なんというか世の中の可能性を感じられて楽しかったです。



[ 2017/06/28 18:53 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2015年04月02日(木)

自称分析官ヴィルヘルムの迷推理 

自称分析官ヴィルヘルムの迷推理 (メディアワークス文庫)自称分析官ヴィルヘルムの迷推理 (メディアワークス文庫)
著者:十階堂 一系
出版社:KADOKAWA/アスキー・メディアワークス
出版日:2014/06/25

評価〔B-〕 勢いが弱まっているような。
キーワード:分析、謎解き、

「知りたいことを知りたいように知るのが私の信条だからね!分析家を自称するからには当然だね!」(本文より抜粋)


面白そうなものは何でも分析したがるテルこと葵子が、仲の良いカモトキ君と一緒に身近な出来事をどんどん分析していきます。推理ではなく分析なので、きちんと正解が出るとは限らないのがポイントです。彼女は自分の面白いほうへと導くのが得意なのですから。題名からピンときた方もいらっしゃるでしょうが、電撃文庫の「赤村崎葵子の分析はデタラメ」シリーズの続編です。

一見もっともらしく聞こえる説明も、実は違う意図が隠されていることが多く面白いです。これは真実ではないなと思っていても、テルの分析を聞くと妙に納得してしまいます。このあたりは「分析はデタラメ」同様です。また、巻末に某登場人物による裏分析があります。本編で隠されていた部分がこれによって明らかにされます。裏の裏を推理しましょう。これもシリーズ共通ですね。

ただ、高校時代のトレードマークだった帽子を止めて外見が普通っぽくなったせいか、内容も「分析はデタラメ」よりも落ち着いた雰囲気です。ライトノベルっぽさが抜けて良くなったと評する方もいますが、僕は前のほうが好みです。分かりやすさと面白さは前のほうが上だと感じました。事件のインパクトが弱いと言いますか、地味でパッとしないような・・・・・・。もう少し大きな事件があっても良かったんじゃないのかなー。裏分析も唸るほどではありませんでしたし。

だんだんと勢いが弱まっているような気がしますが、このシリーズのファンなので次も期待しています。




[ 2015/04/02 21:01 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2013年11月29日(金)

万能鑑定士Qの短編集 II 

万能鑑定士Qの短編集II (角川文庫)万能鑑定士Qの短編集II (角川文庫)
著者:松岡 圭祐
出版:角川書店(角川グループパブリッシング)
発行:2012/12/25

評価〔B+〕 今回は全て個別のお話です。
キーワード:鑑定士、知識、雑学、連作短編集

「気づきません? これまで得た情報から導きだされる結論はたったひとつです。もう不可解な謎なんかじゃありません」(第1話 物理的不可能より抜粋)


Qシリーズの短編集2巻です。5編収録されていますが、短編集1巻とは少し違って依頼人も場所も別々です。それはそれで短編集の良さが出ていて良いと思いました。

1巻の感想でも書きましたが、長編でも短編でも面白さはあまり変わりません。凜田莉子の鑑定は瞬時に物事を見破るので、短編のほうが向いているのかもしれません。探偵ではないですしね。事件簿のほうで登場した人物が再登場したり、既に終わった事件として話題に挙がることがあるのも1巻と同じです。

第5章のソメイヨシノ事件は、珍しく読んでいるうちに犯人と真相の予想がつきました。

テンポ良く読めるのが長編との違いでしょうか。事件解決までが早いです。まとまった時間が取れなくても気軽に読めます。




[ 2013/11/29 21:19 ] 小説 | TB(0) | CM(0)