評価〔B+〕 栄光と没落の一部始終キーワード:古典、軍記物、平安時代、源平
彼らの権勢と勇猛心それぞれ並はずれていたけれども、最近の例では、六波羅の入道、前の太政大臣、平朝臣清盛公という方の言動は、うわさに聞くところでは、想像も言語も絶するものである。(訳文より抜粋)
「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」で知られる、平安時代末期の源平の争乱を描いた一大軍記物です。難しい解説書ではなく入門書です。大まかな内容は歴史の時間で学び、古典としても少しだけ授業で触れたので、まったくの無知ではないのですが、どのような出来事があったのか知りたくなったので手に取りました。今年の大河ドラマが平清盛だからではありません。おそらく。この本、昨年に入手したものですし。
巻第一から第十二、そして灌頂まで一応ひととおり揃っていますが、量が多いので、物語の軸となる重要な箇所のみ要約してあり、古典に不慣れな読者も楽しめるようになっています。入門書なので流れをつかむのには適しています。訳文は平易で分かりやすいのですが、登場する人物が多くややこしいのが難点です。巻末にある家系図を見ながら読むと良いと思います。源平合戦略図も役立ちます。
「平家一門でなければ人間ではない」は清盛の台詞だと思っていたのですが、実は清盛の妻の兄・時忠の言葉だと知って驚きました。そんな知らない人の言葉だったんだ……。また、清盛をいさめた長男・重盛や勇猛な武将だった教経など、平氏にも有能な人材がいたことも意外でした。それでも滅亡してしまうのだから、盛者必衰ということでしょうか。木曽義仲は名前くらいしか覚えていなかったので、再確認できました。福原遷都にいたっては完全に忘れていました。記憶力に自信なし。
平氏がどのように立身出世したか、また清盛の横暴ももう少し詳しく書いて欲しかったかな。でも、全体的に予想していたよりもすんなりと読んで、楽しむことができたので良かったです。
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