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2020年04月14日(火)

予想どおりに不合理:行動経済学が明かす「あなたがそれを選ぶわけ」 



著者:ダン アリエリー , Dan Ariely他
発売日: 2013/8/23

評価〔S-〕 先延ばしの章は耳が痛かったです。
キーワード:行動経済学、選択、決断、無料、買い物、

ふたつの品物からひとつを選ぶとき、わたしたちは無料のほうに過剰に反応してしまうことが少なくない。(3章より抜粋)


合理的もしくは論理的に動いているつもりでも、人間は不合理に行動していることがある、というのが本書の核です。その不合理の規則性を知ることで好ましくない癖を取り除ける可能性があり、よりよい人生よりよい社会へを得ることができます。

著者の専門は行動経済学です。判断・意思決定科学ともいうと序盤に書かれていて、私としてはこちらのほうがしっくりきますが、本書の中では行動経済学で統一されています。

何かを選択する時に、選択肢からの決断に至るまでの思考の流れを考察しています。自分では合理的と思っていても指摘されると不合理だと気づくので不思議です。実体験と照らし合わせても自分も同じ選択をしそうで、納得のいくものが多かったです。例えば、大きく値引きした商品と小さな値引きで無料になった商品なら後者を選んでしまうなどです。合理的に考えるならば前者のほうが得なのですが、後者のほうが魅力的に見えます。興味深いですね。

行動経済学なのでお金に関することを扱っています。しかし、それだけではなくプレゼントを受け取ったときの反応や所有物を合理的に鑑定できない理由など日常的な意思決定にも触れていて、親近感のある話題も取り上げられていて興味を引きます。時には個人的な買い物について、時には社会的なジレンマや問題点と、幅広く応用のきく内容が挙げられていて知的好奇心を満たしてくれます。その個性的な研究はイグ・ノーベル賞を取るほどです。「医師の出す偽薬は高い価格のほうが効果が高い」がこの人の研究だったとは驚きと同時に納得です。

また、不信や不正など社会的に影響の大きい決断の研究も、無料などの個人的な研究同様に興味深いものでした。特に、あまり違いがないだろうと考えていた不正行為と現金と現金引換券の実験は意外な結果になり、権力者や富裕層の陥りやすい不正の構造が理解できました。

不合理にならない対策もいくつか書かれています。2章のアンカリングの罠に陥らない方法では、前の知識は捨て今の相場を調べることを以前から自分で行っていてちょっと驚きました。どの意思決定にも共通するのは、一番の対策はこの不合理を意識して買い物や決断をすることです。知っていれば間違えません。

教授の知的好奇心を満たすために何度も実験対象となったMITやハーバードの学生たちがなんか面白いです。彼ら彼女らは実験に参加してお得な買い物だったとしか思っていないかもしれませんけど。楽しそうに研究していていいなあ。著者の今後の研究に期待しています。

最後になりますが翻訳本にある読みにくさがないのも良かったです。他のハヤカワ・ノンフィクション文庫で感じた冗長さや持って回った言い方がなかったと思います。著者は読みやすい文章を心掛けていたようですし、訳者の能力の高さのおかげかもしれませんね。



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[ 2020/04/14 23:39 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2016年02月26日(金)

ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか (角川文庫) 



著者:NHKスペシャル取材班
発売日: 2014/3/25

評価〔S-〕 内面から人の歴史を振り返ります。
キーワード:人類、心、進化、テレビ番組、

(本文より抜粋)


人類の進化を生物学や遺伝子学から紹介した書籍は珍しくありません。しかし、本書では従来とは違った角度から、ヒトの内面である心を軸として人類の起源と歩みの解明に挑みます。第10回パピルス賞を受賞。

時間をかけ丹念に調べ、多くの専門家にインタビューをし、新しい説を紹介している非常に読み応えのある本となっています。人類と言えば「二足歩行・道具・言語」が特徴ですが、それ以外でヒトと猿の違いとは何なのかを探っていくのが面白いです。実験や原始的な民族の研究から、普段私たちが何げなく行っていることが、実は他の生物と決定的に違うことを教えてくれます。ヒトがどのようにして血縁関係を超えた集団を形成したのか、わりに合わない農耕生活はなぜ始まったのか、都市の出現とある発明の関係性、平等の心と欲望の心。DNAが、海馬が、なんて話が苦手な人でも興味深く読むことができます。

また、太古と現在では意味が違かったかもしれない物・概念も興味深いです。例えば、おしゃれ。考古学の見地から導かれた自己顕示欲、贅沢品以外の意味は、理にかなっていて唸ってしまいます。それと宗教も意外でした。単に神秘的なものを敬うだけでなく、他にも重要な意義があったとする説はかなり説得力があります。

人間の歴史は戦争の歴史、なんて言いますが、本書を読むと、予想していたよりもヒトは昔から協調性がある生き物だったみたいで少々驚きました。でも、だからこそ、過酷な自然を生き抜いて繁栄できたのでしょう。

話があちこちに飛んだり、本筋が分かりにくいところもありましたが、全体をとおして見ると確かに心について語っています。この環境ではこうした心境だったのだろう、あのような状況ではあのような気持ちかも、と当時の人々の内面を想像しやすいのが良いですね。心という面では、数万年前からほとんど変わっていないと思っています。

著者名から分かるように、NHKの番組を書籍化したものです。それにしても、「人間はどこから来たのか、どこへ行くのか」といい「女と男」といい、NHKの書籍は内容の濃くて興味深い本が多いと感じました。今後も質の高い面白い本を期待しています。



[ 2016/02/26 22:10 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2016年01月24日(日)

六花の勇者 6 



著者:山形 石雄
発売日: 2015/7/24

評価〔S〕 挨拶と愛が好きなあの方が大活躍。
キーワード:ファンタジー、ミステリー、

「・・・・・・そうだ。愛は必ず奇跡を起こすんだ」(本文より抜粋)


テグネウの計画、黒の徒花編も、ついにクライマックスを迎えます。

4巻5巻の終盤で徐々に明かされていったテグネウの謀略。ようやく本書で全貌が明らかになります。展開が遅いかなとか、なんか都合のいい設定だなあと思うことも少々ありましたが、それらが気にならないほど盛り上がり面白かったです。テグネウの陰謀、六花の勇者たちの策と奮戦、そして繋がる一本の糸・・・・・・。Amazonの書評でも書いていた方がいますが、ここで終わってしまっても良いかも、と思ってしまうくらい秀逸でした。目立ったのはテグネウの知能と用意周到さです。5巻の終わりでもすごいと思いましたが、それをさらに上回った印象を受けました。

今まで各巻で登場人物たちの過去や内面が詳しく紹介されてきましたが、この6巻ではなんとテグネウにスポットライトが当たります。どのような出来事を経て現在のような凶魔となったのか。単に人間には理解できない敵とせず、性格や信条を丹念に解説しています。物語の途中で撤退するかどうか迷う場面があるのですが、過去を読んだ後だと、あの決断は説得力があって良かったです。

大きな区切りがつき、エピローグで新たな動きを見せ始めました。次はどのような物語が待っているのか。非常に楽しみです。



ネタばれ話はつづきにて↓
[ 2016/01/24 20:06 ] ライトノベル | TB(0) | CM(0)

2014年06月13日(金)

密室殺人ゲーム2.0 ((講談社文庫) 

密室殺人ゲーム2.0 (講談社文庫)密室殺人ゲーム2.0 (講談社文庫)
著者:歌野 晶午
出版社:講談社
出版日:2012/07/13

評価〔S-〕 リアル殺人ゲームが再開します。
キーワード:推理、ミステリ、アリバイ、密室

(本文より抜粋)


現実に事件を起こしネットで推理しあう「密室殺人ゲーム王手飛車取り」の続編です。2010年本格ミステリ大賞受賞作および2010本格ミステリ第1位。

推理ゲームが行われているので、前作を読んだ方は戸惑うことかと思いますが、読んでいくうちに疑問は解消されます。2回目なので新鮮さでは負けますが、一つひとつの事件そのものについては勝るとも劣らぬ、いえ平均的には今回のほうが良かったと思います。最後の「密室よ、さらば」は、彼のハンドルネームに恥じない出来だったのではないでしょうか。

巻末の解説にもありますが、同じようで少しだけずらした感じが面白さのポイントなのでしょう。同じ枠組みで違う物語。結末にしても、前作はあの人のゲームの果てに焦点を当てていましたが、今回は異なる形でゲームの行きつく先を描いているのが興味深いです。今回のほうが終わりがハッキリしているので、前作のようなもやもやした感じにはならずスッキリして良かったかと。

推理小説を評価する上で、トリックが重要なのはもちろんですが、個人的には登場人物たちが気に入るかどうかも大きな要素です。前作はB+をつけましたが、そのあとちょくちょく再読していたということは、自分が思っていた以上に気に入っていたんだと思います。彼らは倫理的にも法的にもダメですが、たとえ文句を言い合っていても、皆ゲームをぞんぶんに楽しんでいるのが伝わってきます。そこが魅力なのだと思います。

この作品から読んでも分かりますが、前作から読むことをお勧めします。そのほうがより楽しめますので。この密室殺人シリーズは3部作になるそうで、本書が2番目で、番外編の「密室殺人ゲーム・マニアックス」まで出ています。最終巻ではどのような物語が見られるのか。本書の最後のあの書きこみを見て、いろいろ想像しながら待つとします。いや、その前に2.5であるマニアックスを読むとしますか。




[ 2014/06/13 22:26 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2014年04月22日(火)

2 (メディアワークス文庫) 

2 (メディアワークス文庫)2 (メディアワークス文庫)
著者:野崎 まど
出版社:アスキーメディアワークス
出版日:2012/08/25

評価〔S-〕 過去の5冊を読んでからお楽しみください
キーワード:演劇、創作、SF、現代

「創作とはなんですか?」
それはあまりにも壮大な質問だった。(本文より抜粋)


役者志望の青年・数多一人は、劇団の入団審査を受けていました。劇団の名は「パンドラ」。日本一と名高い集団でプロとしての一歩を踏み出すところだったのですが、予期せぬハプニングが起きます。ハプニングを起こした張本人は一体何者なのか、目的は何なのか、疑問を抱いたまま彼も動き始めます。

まず注意点があります。野崎まどが本書より前に出した5冊で登場する人物が再登場しますので、本書より先に既刊の5冊を読んでおくと一層楽しめます。読まなくてもおそらく楽しめますが、ワクワク感が違いますので。僕も他の人のそうした書評(助言)を見て、全部読んでから本書を読み始めました。読んでおいて良かった。

主人公がちょっと変わった人物に会い、成り行きで彼女と行動をともにしていく、という著者のお馴染みの展開ですが、既に知っている人物があれこれ絡んでくるのは面白いですね。彼ら彼女らの凄さが分かっているだけに、進行していく創作活動の凄さがよく分かります。

序盤の、とはいっても100ページ超えてますが、あの人物の登場シーンが強烈でした。あれだけでも読んで良かったかなと思ってしまいました。もちろん、著者らしくどんでん返しもあります。ただ、それは過去の作品とは少し違っていて、予期しなかった方向へ進む意外性からくる驚きよりは、推理小説の真相が分かった時の感心のような類のものだと感じました。メインがあの人だから、前の作品を読んでいれば方向性はなんとなく、ね。

中盤の学校で出た話題は興味ある分野だったので、楽しく読めました。こうした部分も面白いのが良いですね。終盤、創作とは何なのかか、ある人物の口から語られます。結果はともかく結論はとても興味深く、いろいろと考えてしまいます。

500ページ以上の長編ですが、比較的軽めの文体のためか苦もなく読めました。厚さにしり込みせず、読んでもらいたい本です。




ちょっとネタばれ話↓
[ 2014/04/22 18:41 ] 小説 | TB(0) | CM(0)