2016年02月26日(金)

ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか (角川文庫) 



著者:NHKスペシャル取材班
発売日: 2014/3/25

評価〔S-〕 内面から人の歴史を振り返ります。
キーワード:人類、心、進化、テレビ番組、

『全宇宙の生命を脅かすモノ―― 災いの渦』(本文より抜粋)


人類の進化を生物学や遺伝子学から紹介した書籍は珍しくありません。しかし、本書では従来とは違った角度から、ヒトの内面である心を軸として人類の起源と歩みの解明に挑みます。第10回パピルス賞を受賞。

時間をかけ丹念に調べ、多くの専門家にインタビューをし、新しい説を紹介している非常に読み応えのある本となっています。人類と言えば「二足歩行・道具・言語」が特徴ですが、それ以外でヒトと猿の違いとは何なのかを探っていくのが面白いです。実験や原始的な民族の研究から、普段私たちが何げなく行っていることが、実は他の生物と決定的に違うことを教えてくれます。ヒトがどのようにして血縁関係を超えた集団を形成したのか、わりに合わない農耕生活はなぜ始まったのか、都市の出現とある発明の関係性、平等の心と欲望の心。DNAが、海馬が、なんて話が苦手な人でも興味深く読むことができます。

また、太古と現在では意味が違かったかもしれない物・概念も興味深いです。例えば、おしゃれ。考古学の見地から導かれた自己顕示欲、贅沢品以外の意味は、理にかなっていて唸ってしまいます。それと宗教も意外でした。単に神秘的なものを敬うだけでなく、他にも重要な意義があったとする説はかなり説得力があります。

人間の歴史は戦争の歴史、なんて言いますが、本書を読むと、予想していたよりもヒトは昔から協調性がある生き物だったみたいで少々驚きました。でも、だからこそ、過酷な自然を生き抜いて繁栄できたのでしょう。

話があちこちに飛んだり、本筋が分かりにくいところもありましたが、全体をとおして見ると確かに心について語っています。この環境ではこうした心境だったのだろう、あのような状況ではあのような気持ちかも、と当時の人々の内面を想像しやすいのが良いですね。心という面では、数万年前からほとんど変わっていないと思っています。

著者名から分かるように、NHKの番組を書籍化したものです。それにしても、「人間はどこから来たのか、どこへ行くのか」といい「女と男」といい、NHKの書籍は内容の濃くて興味深い本が多いと感じました。今後も質の高い面白い本を期待しています。



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[ 2016/02/26 22:10 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2016年01月24日(日)

六花の勇者 6 



著者:山形 石雄
発売日: 2015/7/24

評価〔S〕 挨拶と愛が好きなあの方が大活躍。
キーワード:ファンタジー、ミステリー、

「・・・・・・そうだ。愛は必ず奇跡を起こすんだ」(本文より抜粋)


テグネウの計画、黒の徒花編も、ついにクライマックスを迎えます。

4巻5巻の終盤で徐々に明かされていったテグネウの謀略。ようやく本書で全貌が明らかになります。展開が遅いかなとか、なんか都合のいい設定だなあと思うことも少々ありましたが、それらが気にならないほど盛り上がり面白かったです。テグネウの陰謀、六花の勇者たちの策と奮戦、そして繋がる一本の糸・・・・・・。Amazonの書評でも書いていた方がいますが、ここで終わってしまっても良いかも、と思ってしまうくらい秀逸でした。目立ったのはテグネウの知能と用意周到さです。5巻の終わりでもすごいと思いましたが、それをさらに上回った印象を受けました。

今まで各巻で登場人物たちの過去や内面が詳しく紹介されてきましたが、この6巻ではなんとテグネウにスポットライトが当たります。どのような出来事を経て現在のような凶魔となったのか。単に人間には理解できない敵とせず、性格や信条を丹念に解説しています。物語の途中で撤退するかどうか迷う場面があるのですが、過去を読んだ後だと、あの決断は説得力があって良かったです。

大きな区切りがつき、エピローグで新たな動きを見せ始めました。次はどのような物語が待っているのか。非常に楽しみです。



ネタばれ話はつづきにて↓
[ 2016/01/24 20:06 ] ライトノベル | TB(0) | CM(0)

2014年06月13日(金)

密室殺人ゲーム2.0 ((講談社文庫) 

密室殺人ゲーム2.0 (講談社文庫)密室殺人ゲーム2.0 (講談社文庫)
著者:歌野 晶午
出版社:講談社
出版日:2012/07/13

評価〔S-〕 リアル殺人ゲームが再開します。
キーワード:推理、ミステリ、アリバイ、密室

(本文より抜粋)


現実に事件を起こしネットで推理しあう「密室殺人ゲーム王手飛車取り」の続編です。2010年本格ミステリ大賞受賞作および2010本格ミステリ第1位。

推理ゲームが行われているので、前作を読んだ方は戸惑うことかと思いますが、読んでいくうちに疑問は解消されます。2回目なので新鮮さでは負けますが、一つひとつの事件そのものについては勝るとも劣らぬ、いえ平均的には今回のほうが良かったと思います。最後の「密室よ、さらば」は、彼のハンドルネームに恥じない出来だったのではないでしょうか。

巻末の解説にもありますが、同じようで少しだけずらした感じが面白さのポイントなのでしょう。同じ枠組みで違う物語。結末にしても、前作はあの人のゲームの果てに焦点を当てていましたが、今回は異なる形でゲームの行きつく先を描いているのが興味深いです。今回のほうが終わりがハッキリしているので、前作のようなもやもやした感じにはならずスッキリして良かったかと。

推理小説を評価する上で、トリックが重要なのはもちろんですが、個人的には登場人物たちが気に入るかどうかも大きな要素です。前作はB+をつけましたが、そのあとちょくちょく再読していたということは、自分が思っていた以上に気に入っていたんだと思います。彼らは倫理的にも法的にもダメですが、たとえ文句を言い合っていても、皆ゲームをぞんぶんに楽しんでいるのが伝わってきます。そこが魅力なのだと思います。

この作品から読んでも分かりますが、前作から読むことをお勧めします。そのほうがより楽しめますので。この密室殺人シリーズは3部作になるそうで、本書が2番目で、番外編の「密室殺人ゲーム・マニアックス」まで出ています。最終巻ではどのような物語が見られるのか。本書の最後のあの書きこみを見て、いろいろ想像しながら待つとします。いや、その前に2.5であるマニアックスを読むとしますか。




[ 2014/06/13 22:26 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2014年04月22日(火)

2 (メディアワークス文庫) 

2 (メディアワークス文庫)2 (メディアワークス文庫)
著者:野崎 まど
出版社:アスキーメディアワークス
出版日:2012/08/25

評価〔S-〕 過去の5冊を読んでからお楽しみください
キーワード:演劇、創作、SF、現代

「創作とはなんですか?」
それはあまりにも壮大な質問だった。(本文より抜粋)


役者志望の青年・数多一人は、劇団の入団審査を受けていました。劇団の名は「パンドラ」。日本一と名高い集団でプロとしての一歩を踏み出すところだったのですが、予期せぬハプニングが起きます。ハプニングを起こした張本人は一体何者なのか、目的は何なのか、疑問を抱いたまま彼も動き始めます。

まず注意点があります。野崎まどが本書より前に出した5冊で登場する人物が再登場しますので、本書より先に既刊の5冊を読んでおくと一層楽しめます。読まなくてもおそらく楽しめますが、ワクワク感が違いますので。僕も他の人のそうした書評(助言)を見て、全部読んでから本書を読み始めました。読んでおいて良かった。

主人公がちょっと変わった人物に会い、成り行きで彼女と行動をともにしていく、という著者のお馴染みの展開ですが、既に知っている人物があれこれ絡んでくるのは面白いですね。彼ら彼女らの凄さが分かっているだけに、進行していく創作活動の凄さがよく分かります。

序盤の、とはいっても100ページ超えてますが、あの人物の登場シーンが強烈でした。あれだけでも読んで良かったかなと思ってしまいました。もちろん、著者らしくどんでん返しもあります。ただ、それは過去の作品とは少し違っていて、予期しなかった方向へ進む意外性からくる驚きよりは、推理小説の真相が分かった時の感心のような類のものだと感じました。メインがあの人だから、前の作品を読んでいれば方向性はなんとなく、ね。

中盤の学校で出た話題は興味ある分野だったので、楽しく読めました。こうした部分も面白いのが良いですね。終盤、創作とは何なのかか、ある人物の口から語られます。結果はともかく結論はとても興味深く、いろいろと考えてしまいます。

500ページ以上の長編ですが、比較的軽めの文体のためか苦もなく読めました。厚さにしり込みせず、読んでもらいたい本です。




ちょっとネタばれ話↓
[ 2014/04/22 18:41 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2013年12月17日(火)

詩羽のいる街 (角川文庫) 

詩羽のいる街 (角川文庫)詩羽のいる街 (角川文庫)
著者:山本 弘
出版:角川書店(角川グループパブリッシング)
発行:2011/11/25

評価〔A+〕 平凡だけど特殊な生き方です。
キーワード:生き方、現代、

「一生に何度のないような刺激的でラッキーな日を経験するか。それとも、こんな変な女のことなんか忘れて、波乱なんかない、いつも通りの日常に戻るか――どっちにする?」(本文より抜粋)


詩羽と名乗る女性が人と出会い話をするだけなのですが、まるで魔法でも使ったかのように周囲に影響を与え変えていく物語です。すいません、なんか上手く説明できません。全4話です。連作中編集?とでも呼ぶのでしょうか。主役はそれぞれ違いますが、他の話で名前だけ出てきた人も登場したりするので、どう繋がっているのか確認すると良いかも。

今まで読んだものや予想していたものとはまったく違っていたので驚きました。詩羽の仕事や生き方、価値観を知るための本と言いますか、人生観についての本のようでした。ですので、彼女に共感が持てるかどうかで本書の評価が決まりそうです。共感した読者の中には、生き方に少しでも変化が出てくる人がいてもおかしくないと思います。

時折出てくる雑学、伝記から仏教のお墓、実写化映画の裏話まで多岐にわたる知識も面白いです。劇中で紹介されている本は面白そうなので、どれか読んでみたいですね。

それと、著者の本を読んだことがあれば分かると思いますが、本書もどこか説教くささがあります。他の作品よりは多少弱くなったかなーと思いますが、著者の主張が登場人物をとおして見えます。そのあたりが苦手と感じる方は合わないでしょう。書評で主張がなあ……と書いている方も、内容は結構褒めている場合が多いです。

SFでもなく推理でもない、個性豊かな小説を求めている人はためしに読んでみてはいかがですか? 世の中が違って見えてくるかも。



[ 2013/12/17 20:56 ] 小説 | TB(0) | CM(0)