2016年01月14日(木)

秘書綺譚―ブラックウッド幻想怪奇傑作集 (光文社古典新訳文庫) 



著者:アルジャーノン ブラックウッド (著), Algernon Henry Blackwood (原著), 南條 竹則 (翻訳)
発売日: 2012/1/12

評価〔D〕 こうしたジャンルは好きなんですが。
キーワード:ホラー、ファンタジー、怪奇、オカルト、短編集

そう言ったのは隣の部屋の男で、ノックの音は、じつはショートハウスの部屋ではなく、空部屋だと思っていた隣室のドアを叩く音だったのだ。(「壁に耳あり」より抜粋)


幻想怪奇傑作集の文字にひかれて読んでみた一冊です。怪奇からイメージするのは不気味や恐怖だったのですが、辞書で調べてみると意味は『説明のできないふしぎなこと』でした。オカルト、超常現象のほうがよく耳にする言葉かもしれませんね。

怪奇の名のとおり、幽霊の話や不思議な能力を持つ人の物語など不可思議な出来事を扱ったものばかりです。そして全体の雰囲気はホラー小説に近いと思います。すぐに話を進めず、ジリジリと読者の恐怖心を煽っているかのような文章です。それに加えて、異様な現象にスポットを当てた話なんかもあり、種類も豊富でした。

しかし、原文か訳文かどちらか分かりませんが、どうも焦らすような描写が合いませんでした。映画で言うならすぐに驚かさず焦らしている場面も、恐怖や好奇心よりもじれったい気持ちが大きくなって、度々読む意欲が失われました。また、結末も意外なものというよりは、余韻を残すような雰囲気重視のものが多く、物足りなく感じたのも確かです。

でも、こうした文体が合うかどうかは好みの問題なので、気に入る人もいると思います。テンポが良ければ感想も違ったものになっていたかも。




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[ 2016/01/14 21:07 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2015年12月21日(月)

カーニヴァル化する社会 



著者:鈴木 謙介 (著)
発売日: 2005/5/19

評価〔D〕 まだまだ一つにまとまっていない感じでした。
キーワード:社会、夢、祭り、現代、

私たちの生きる社会は、上述してきたような「祭り」を駆動原理にし始めているのではないか、と私は考えている。(はじめにより抜粋)


現代の社会構造や社会問題を、祭り、すなわちカーニヴァルを軸として読み解こうとする社会論です。カーニヴァルとは地域の特定の祭りではなく、一種の躁状態のことを指すらしく、それが現代社会人に深く影響を及ぼしていると指摘しています。

あちこちに話が飛ぶので、議題の中心が何なのか分かりづらかったです。若者の労働、監視カメラによる監視社会、携帯電話によるコミュニケーションを例を挙げていますが、全体として見ると上手く繋がっていなく、強引に結びつけた感じです。

残念なのは、専門家では常識であろう人物や用語を、あまり説明せずさらりと使っている点です。言葉を正しく使おうとすると、専門用語が多くなるのは分かりますが、新書なので分かりやすさを重視して欲しかったです。特に重要な「再帰」は、始めは分かったつもりでしたが、考察が進むにつれ理解しづらく変化していきました。これは僕の読解力不足かもしれませんね。結論や重要な部分は言葉を変えて説明するなど、努力しているのは感じました。

全体として見るとよく分からなかったというのが正直な感想ですが、個々の内容はなるほどと思う箇所もあります。若者の労働に対する心理状態や、監視カメラは監視する者が監視されている再帰的な状態になっていることは興味深いです。

おそらく著者独自の新しい概念・考え方だと思うので、まだ発表するにはやや早い段階だったのではないでしょうか。さらに研究を重ねて一つの結論に達したら、その時改めて新書で世に広めてもらいたいです。




[ 2015/12/21 22:02 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2015年12月21日(月)

独白するユニバーサル横メルカトル (光文社文庫) 



著者:平山 夢明 (著)
発売日: 2009/1/8

評価〔D〕 読後感が良くないです。
キーワード:ホラー、短編集、文庫化、

私は小は道路地形から大は島の位置まで網羅した単なる地図なのでございます。(本文より抜粋)


面白い推理小説を求めて買ってみたら、そうではなくSF要素のあるホラー小説短編集だったのが本書です。「このミステリーがすごい!」2007年版で第1位。表題作が日本推理作家協会賞を受賞しています。

なんと表現したらいいのか、不快や嫌悪を感じる物語が多かったです。単に怖いだけならばよいのですが、読んでいて辛くなるような展開や救いがなさそうな結末はいただけません。こうした残忍なものにもう少し耐性があるかと思っていましたが、そうでもなかったようです。気味の悪さ、やるさなさ、不快などがごちゃまぜになって読後感が良くないのも、印象が悪い原因の一つだと思います。

しかし、アイディアは豊富で迫力があります。「Ωの聖餐」や「オペラントの肖像」はSF小説に近く興味深かったです。グロテスクな表現を省けばまさにSFといった内容。また、評価の高い「独白するユニバーサル横メルカトル」は、地図が一人称で喋る独特の物語ですが、展開や結末はそれほど良くはなかったかな。

だいぶ人を選ぶ本です。Amazonの書評で『怖いもの見たさ』と書いている方がいましたが、結局最後まで読んだのは、そういうことなのかもしれませんね。



[ 2015/12/21 21:25 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2014年02月12日(水)

納得しないと動かない症候群 

納得しないと動かない症候群 (Forest2545Shinsyo 76)納得しないと動かない症候群 (Forest2545Shinsyo 76)
著者:松本幸夫
出版社:フォレスト出版
出版日:2012/12/30

評価〔D+〕 年配者からみた若者論。
キーワード:仕事、若者、世代論、

「納得しないと動かない症候群」というフィルターを通して「若者」を眺めることで、これまで無意識レベルでしか認知できなかった問題がはじめて顕在化し、対処できるようになるのも確かなことです。(はじめにより抜粋)


企業向けの研修で不可解な言動をとる若者が増えてきていることを危惧し、どうしたら若者たちを理解しうまく対応することができるのかを説いたビジネス書です。若い部下をもつ社会人向けを対象にしています。

若者を理解する本だと思っていたのですが、価値観の違いまでしか語られてなく、深い考察はほとんどありませんでした。用件のみの会話は言語道断と怒り、スポーツカーを買いたがらないのに驚き、異性・お金・出世に意欲がないと嘆くのですが、根本的な理由を考えないので理解できない、嘆かわしいと感想を述べただけで終わってしまうことが多かったです。物事の優先順位や求めるものの違いでしかないのに、著者の考えのほうが当然のことのような書き方は残念でした。人材育成コンサルタントとして同世代よりもはるかに多く若者たちと接してきた人でも、この程度しか理解していないのかと、正直落胆しました。後半の対処法は分析よりは良かったですが、応急処置的なものが多かったと感じました。もっと相互理解に努め、根本的な解決があっても良かったのでは、と思ってしまいました。

悪い点ばかりあげてしまいましたが、著者は本当に社会を憂えているからこそ本書を執筆した訳で、その熱意は立派だと思います。本書で述べているように、行動力のない若者にはない素晴らしさです。また、人気講師として活躍しているだけあって、説得力のある教訓もありました。

本来は上司世代が若者を知るための本なのですが、逆に若者が上の世代の考え方を知るために読むのも良いと思います。どちらの世代が読んでも世代間の差を感じることでしょう。

言葉は悪いのですが、著者がはじめにで記述しているように、『飲み屋のオヤジがワーワー騒いでいる』ような本でした。僕は30代で本書の対象者でしたが「納得しないと動かない症候群」よりの価値観なので、著者の意見に賛同できるところが少なかったのが残念でした。著者と同じ50代半ばくらいの方々には、かなり共感を得られそうですね。




[ 2014/02/12 22:05 ] 実用 | TB(0) | CM(0)

2012年04月20日(金)

ネットデフレ ~IT社会が生み出した負のスパイラル~ 

ネットデフレ ~IT社会が生み出した負のスパイラル~ (マイコミ新書)ネットデフレ ~IT社会が生み出した負のスパイラル~ (マイコミ新書)
著者:川北 潤
出版:毎日コミュニケーションズ
発行:2011/06/23

評価〔D+〕 宣伝広告のような本でした
キーワード:ネット、ECサイト、デフレ、コミュニケーション

なぜネット上の取引は、リアルと異なる進化を遂げているのでしょうか。私に言わせれば、ネットはリアルと異なる特別な取引方法を用いなければ成立しないほど、技術が未熟なのです。(本文より抜粋)


いつからデフレになったかは詳しく知りませんが、物が安くなったと感じるときがあります。特に電化製品の広告を見るとそう思うとともに、この値段で利益はでるのだろうか?と心配になってきます。ネットで価格比較サイトが現れた影響でしょうか。外国で安く製造しているからでしょうか。それとも、ネット自体の発達によるものなのでしょうか。その疑問があって、本書を手に取りました。

著者は、この価格下落はネットの構造の欠陥からくる悪性のデフレと説いています。接客が出来ない現在の電子商取引(EC)サイトは、自動販売機と同じで最終的に価格のみの勝負となるという意見は、とりあえず賛成です。しかし、それに続く現状打開策「ブラウザ通信チャネル」には、魅力を感じませんし画期的な道具だとは思えません。前半で既存の仕組みの欠点を挙げ、スカイプもテレビ電話と変わらないと批判したのにもかかわらず、示された解決方法がほんの少し手を加えた閲覧・通信方法だったので落胆してしまいました。あれで大きく世の中が変わるとは思えないのですが……。

さらに悪いことには、その打開策が著者の会社の商品であることです。話の流れから、まるで商品の広告・プレゼンテーションを受けているかのようでした。これでは自社の宣伝のための本だと見られても仕方ありません。新しい知識や面白いものを求めて新書を読んでいるので、なんだかがっかりです。

また些細なことですが、レガシーメディアやレガシー旅行会社と「既存の・従来の」の意味でレガシーを使っていて違和感を感じます。この言葉を常識と取るか専門用語と取るかは判断しづらいですが、横文字を控えて万人に分かりやすく書くのも、本を書く人には気をつけて欲しいです。

序盤は過去のデータを交えて、説得力があっただけに残念です。僕は著者の新商品にほとんど魅力を感じませんでしたが、実際のところこの新技術が普及し世界を変えるかどうかは、年月が経過してみないと分かりません。数年後そのとおりになったら、素直に自分の先見の明のなさを恥じ、改めて著者と本書を賞賛したいと思います。





[ 2012/04/20 22:11 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)