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2018年11月14日(水)

閻魔堂沙羅の推理奇譚 



著者:木元 哉多
発売日: 2018/3/22

評価〔A-〕 沙羅は意外と甘いよね。
キーワード:ミステリ、死後、連作短編集、

「あなたが、あなたを殺した犯人を推理して、みごと言い当てることができたら、生き返らせてあげましょう」(本文より抜粋)


推理小説には様々なタイプの探偵が登場しますが、被害者が探偵役というのはどうでしょうか? 本書では死亡した被害者が、なぜ自分は死んでしまったのかを推理する個性的な推理短編集です。第55回メフィスト賞受賞作。

このシリーズは、講談社の「閻魔沙羅からの挑戦状 犯人を当てれば現金5万円!」で知りました。問題も本書と同じく被害者が推理するものでしたけど、情報が限定された状況で被害者と一緒に頭を捻るのが面白いです。本来ヒントはありませんが、彼らの推理がヒントとなるので、自分で解きたい方は霊界の案内人・沙羅がスタートと言った時点で推理すると良いでしょう。事件自体は他の推理小説と比べて易しめです。ミステリマニアには物足りなさそう。

霊界での二人の会話は短いものの、思いのほか人情味があって良かったです。沙羅は冷酷なように見えますが易しいよね。彼女が本人の気づかなかった、もしくは見て見ぬふりをしていたことを指摘する場面は印象に残りました。

推理の難易度だけ見るとインパクトに欠けますが、被害者に推理させる形式はかなり面白いです。変わった推理小説をお探しなら試しに読んでみてはいかがでしょうか。



[ 2018/11/14 21:09 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2018年07月29日(日)

満願 (新潮文庫) 



著者:米澤 穂信
発売日: 2017/7/28

評価〔A-〕 推理の感心とホラーの恐怖を。
キーワード:暗黒ミステリ、短編集、ホラー、文庫化

『全宇宙の生命を脅かすモノ―― 災いの渦』(本文より抜粋)


温泉宿、交番、遠い異国の村と、実に多種多様な舞台と職業の人たちを描いた不穏な雰囲気が漂うミステリ短編集です。このミステリーがすごい2015年1位、週刊文春ミステリ2014年1位、ミステリが読みたい2015年1位、そして第27回山本周五郎賞受賞。

スパッと明るく解決ではなく、最後に明かされる恐ろしい事実で幕を引く短編ばかりなのが特徴です。暗黒小説と言うのでしょうか、それともサスペンスホラーのほうが近いかもしれません。ただ悪意や恐怖のみではなく、推理小説作家らしくまず謎があり終盤に真実が明かされる構造となっています。どの短編もさりげなく伏線がはられていて巧みです。「万灯」はやや長く感じましたけど、見事な終わり方だと思います。

また、美しい女性とその娘たちが主役の「柘榴」は非常に印象に残る短編でした。一人称で淡々と進むので一見本書には不釣り合いに思えますが、ある人物の真意が分かると全てが違って見えてきて驚きました。実写ドラマ化が見たい気もしますが、実際の映像にすると陳腐なものになりそうなので、読み手の想像に任せるのが良さそうです。それぞれが最適な人物像を想像できるのは、小説の利点ですね。

語り手から見て、知るすべのない他の登場人物たちの心情をあれこれ推理するのが興味深い短編集でした。殺人事件を扱うよくある推理小説でもなく、日常の謎でもないものを探している人は試しに読んでみてはいかがでしょうか。ちなみに同著者の「儚い羊たちの祝宴」と同じタイプなので、「儚い羊」が気に入っている人はきっと楽しめるでしょう。




[ 2018/07/29 23:10 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2018年07月23日(月)

ヒトの本性 なぜ殺し、なぜ助け合うのか 



著者:川合 伸幸
発売日: 2015/11/19

評価〔A-〕 攻撃的かつ協力的
キーワード:人間、本性、心理学、比較認知科学、攻撃性、援助行動、

ヒトが攻撃的な傾向を持っているとしても、進化の過程で、自分の攻撃性を抑えるように「進化」してきた、との仮説があります。(第四章より抜粋)


人間は同種の仲間のみならず、時には自分の子どもさえも殺してしまう攻撃性を持つ反面、自分を犠牲にしてまで他者を助けることもあります。果たしてどちらがヒトの本性なのでしょうか? 本書はこの疑問に対し、心や行動を動物と比較する比較認知科学の面から考察しています。暴力・攻撃性と援助行動・協調性が本書の二つの柱です。脳内物質は専門的なので難しいですが、それぞれについて心理実験が紹介されてこちらは分かりやすく説得力があります。

目を引いたのは上にも引用した自己家畜化仮説です。人類には極端に暴力的な人もいたが、そのような社会を破壊しそうな人は排除されていき、自ら攻撃性は低くなっていったという説なのですが、これはなかなか興味深いです。人間は他の動物を品種改良してきましたけど、まさか自らも知らず知らずのうちに変えていったとすると、まるで寓話のようです。

協調性のほうでは、言葉も理解できない赤ちゃんが他人を助けるという実験結果が印象に残りました。強制でも見栄でもなく、何の予備知識もなく援助行動を起こすのは、確かにヒトが持つ本性の一面なのでしょう。ある研究では他人にお金を与えても幸福感が得られるとしていて、協調的な面を補強しています。

実験・研究は多岐に渡り、内容はやや散漫的な感じもしますが、どの章も興味深く読めました。今後も暴力や協調性のどちらか片方だけでなく、同時に研究して新たな発見があることを望んでいます。




[ 2018/07/23 22:39 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2018年06月17日(日)

最貧困女子 



著者:鈴木 大介
発売日: 2014/9/27

評価〔A-〕 想像していたより苛烈でした。
キーワード:貧困、女性、性産業、

家を飛び出したのは「本人の選択」として「もうちょっと我慢すれば」というような言葉を軽々しく吐く者は、同時に加害者と変わらないと僕は思っている。(第三章より抜粋)


解決するのが難しい貧困問題の中で、知られていない若い女性たちの現状を記したドキュメンタリーです。

数多くの生の声が記されていて、その暮らしぶりに驚かされます。ある程度は覚悟して読んだのですが凄惨で、著者が取材はもう限界だと嘆くのも分かる気がします。専門家でも弁護士でもないので客観的な数字がないのが残念ですが、当事者たちの言葉はそれ以上に説得力がありました。

本書に登場する彼女たちのように、苦境に立っている人たちを自己責任の一言で切り捨てる人をネットで見かけます。しかし、実態を知らないから厳しい態度を取ってしまう人が多いのだと思います。具体的に助けることはできないかもしれませんが、非難するだけで終わらないようにしたいです。

印象に残ったのは、どんな学童保育だったら良かったのか?です。厳しい管理が彼女たちの足を遠ざけていることは、注目すべき点だと感じました。管理と居心地の良さを両立するのは難しいですが、もっと利用してもらえるよう何らかの対策が取られることを望んでいます。



[ 2018/06/17 10:41 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2018年05月26日(土)

無能なナナ 2 



著者:るーすぼーい、古屋庵
発売日: 2017/5/22

評価〔A-〕 表紙の隠そうとしない感じも好き。
キーワード:能力者、学園、サスペンス、アクション

「これ、どーいうこと?」(本文より抜粋)


任務を果たしていくナナですが、今回も強力な人類の敵に悪戦苦闘します。

彼女の強さは、どんな窮地に陥っても諦めない精神力です。もうこれダメだろうという状況になっても、冷静さと頭の回転の早さで乗り越えていくさまは、見ていて感心してしまいます。あの柔軟性や適応力は羨ましい。

他の書評で、頭脳戦にしては突っ込みどころが多いとの記述がありました。確かに緻密な設定とは言えませんし、いくつか都合の良い展開があります。しかし、それを上回る緊張感や面白さがあったと思います。敵も自分の強さを過信して油断していると考えれば、ある程度は目をつぶっても良いのではないでしょうか。・・・・・・甘い?

テンポよく進んでいるので、今のところストーリの穴はあまり気になりません。この勢いで突き進んでもらいたいです。



[ 2018/05/26 21:22 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)