2017年01月14日(土)

弁護士が教える分かりやすい「民法」の授業 



著者:木山 泰嗣
発売日: 2012/4/17

評価〔A〕 役に立つ超入門書です。
キーワード:法律、民法、弁護士、

自分に債務があることを認めることを「債務の承認」と言います。「債務の承認」があった場合には消滅時効は中断します。(1日目4時限より抜粋)


この本を見た時、知人の裁判の話を思い出しました。相手が悪いのだから弁護士はいらないと、弁護士を雇わないで裁判に行ったら、裁判所の人に弁護士がいなければ勝てる裁判も勝てませんと忠告されたそうです。法律は専門性の高い分野だと思います。中でも膨大な量がある民法は難しいそうです。必要性が高いけれど難解な民法を、できるだけ簡単で分かりやすく説明しようと試みたのが本書です。

超入門書なだけあって、知識がまったくゼロからでも読み進めることができます。内容は2日間の講義形式とし、前半は基礎を、後半はその具体例を挙げて解説しています。具体例が未成年の子供が万引きしたときの責任や、大家さんに無許可で部屋を又貸しなど日常で起こりそうな、または巻き込まれそうな問題が多く興味深いです。

予想通り専門用語が多くです。意思の欠缺(けんけつ)を始め聞きなれない言葉ばかりです。相手に原因があることを「帰責事由」なんて難しく言わなくてもいいと思うのですが、厳密に言葉を使わなくてはならないから仕方がないのかな。

印象に残ったのは上記引用の時効についてです。途中で「債務の承認」があると、さらに時効が伸びるのは知っておいたほうが良さそうです。飲食店の代金、ホテルの宿泊料の有効期限が1年しかないのも意外でした。また、連帯保証人についての記述も勉強になりました。単なる保証人の違いもきちんと説明してあります。債権者がいつでも連帯保証人に請求してよい点がポイントです。

超入門書とはいえ、もちろん分かりにくい難解な箇所もありますが、全体的に丁寧に要点だけ書かれていますので理解しやすいと思います。こうした知識は自分を守るために必要だなと再認識しました。



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[ 2017/01/14 21:35 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2016年12月10日(土)

家事労働ハラスメント 



著者:竹信 三恵子
発売日: 2013/10/19

評価〔A〕 日本の生きづらさの原因に迫る。
キーワード:家事労働、育児、介護、無償労働、

男性の雇用は不安定化し女性の稼ぎは重要性を増しているのに、家事を担う働き手を排除する日本の会社は相変わらず多い。そんな中で世帯賃金を稼げなくなった多くの男性と、家事・育児の担い手を嫌う会社の下で十分にカネを稼げない女性との組み合わせによる新しい貧困化が進む。(第1章より抜粋)


家事は誰かがしなければならない重要な仕事ですが、お金を生み出さないので日本の価値観では軽んじられています。1人暮らしをした時に家事をしてみると分かりますが、手間取り時間もかかるもので、家事をしたことのない人からは過小評価されがちです。日本における家事は主に女性が担当していますが、それが社会にどのような影響を与えているのかを説き、問題点を明らかにしています。

家事はそれ自体だけの問題ではなく、仕事や家庭に強く影響し、はては社会全体を動かす力があります。最近では介護するために仕事を辞めなければならない介護離職が問題となってきました。妻の働き方が夫の働き方に影響を与え、それが家族の在り方、生き方まで左右しているのです。

力仕事を除けば仕事における男女差はないと思っていましたが、家事は女性が行うものという慣習のせいで、男性優位な社会が作られていることを痛感しました。育児や介護を一方的に任せられた女性たちの生の声を聞くと、OECDの報告書に「日本は働く女性冷遇」と書かれても文句が言えません。

時代を下るにつれ、家事に協力的な男性が増えてきましたが、個人の努力だけでは限界があります。職場の意識や法の改正により、労働環境の改善が期待されます。

解決案として外国の例が挙げられていますが、中でも専業主婦大国だったオランダの手法は参考になります。西洋は戦後はずっと男女平等だった印象がありましたけどそんなことはなく、地道な努力によって働き方や人生を変えたことを知りました。

夫婦喧嘩の一因になっているであろう家事の分担は、もはや個人の性格や能力のせいだけではありません。女性について書かれた本ですが、男性も是非読んでもらいたい一冊です。料理なんてしたことないなんて方には特にね。




[ 2016/12/10 21:25 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2016年11月26日(土)

葬式は、要らない 



著者:島田 裕巳
発売日: 2010/1/28

評価〔A-〕 見栄と世間体と贅沢。
キーワード:葬式、仏教、戒名、家族葬、直葬、

どうせ授かるなら平凡なものではなく院号のついた立派なものが欲しい。本人もそれを望むが、喪主となった遺族も世間に対する見栄から立派な戒名を望む。都会における院号のインフレ化の背景には、そうした都会人の欲望がからんでいる。(第6章より抜粋)


家族葬という言葉を数年前に初めて見ました。その時に、家族だけで行われる質素な葬式だと知ったのですが、あまり気にしていませんでした。しかし、それから目にしたり耳にしたりする機会が増え、今ではすっかり社会に定着しつつあります。この家族葬をはじめ、葬式のあり方がどんどん変化しているのを実感しています。高すぎる費用もよく話題にあがります。どうしてこんなにかかるのか、そもそも葬式と戒名とはどのようなものなのか。根本的なところから、日本の葬式のあり方について述べています。

あまり知られていない葬式仏教の成り立ちや戒名の意味、戦後の家族のあり方と葬式の変化が分かりやすく書かれています。最新の葬式にも触れていて、樹木葬なるものは初めて知りましたし、宇宙葬が普通の葬式よりずっと安いのには驚きました。また、戒名は見栄や名誉が強く関係していると指摘している点は、同意します。そうした例を見たことがありますので。現代社会が葬式無用論に近づいているという見解が印象に残りました。

過激な題名ですが、批判や否定だけしているわけではありません。「法的には葬式をあげなくても良い」「本来仏教には戒名という慣習はない」「家を単位とした葬式は現代と合っていない」と説明していますが、上層階級でしかなれなかった檀家になれる贅沢という葬式仏教の良い点もきちんと説明しています。寺の経済事情と戒名料の話も興味深かったです。

出版された当時に読もうと思っていて読まなかった本ですが、数年遅れたとはいえ読んで良かったです。楽しい話題ではありませんが、葬式について家族と話す機会をもうけるのが良さそうですね。本書のすぐ後に、反論するかのように 「葬式は必要!」という題名の新書が出ています。そちらも興味がありますので、近いうちに読むつもりです。



[ 2016/11/26 21:06 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2016年10月07日(金)

「ストーカー」は何を考えているか 



著者:小早川 明子
発売日: 2014/4/17

評価〔A-〕 誰しもなりうる可能性があります。
キーワード:ストーカー、心理学、犯罪、精神医学、

『全宇宙の生命を脅かすモノ―― 災いの渦』(本文より抜粋)


相手にしつこく付きまとい最後には事件へと至ってしまう出来事をニュースでときどき見ます。彼ら彼女らはなぜストーカーになってしまったのか? 何をどのような思いでストーキングをしているのか? カウンセラーとして500人以上のストーカーに対応してきた経験から、その本質を分析しています。

序盤から何件もの事例が挙げられていて、自分が思っている以上にストーカー問題は珍しくないことなのだなと認識を改めました。加害者には加害者なりの言い分がありそれが解決への鍵であると説いています。また、ストーカーは何もしなければ事態は悪化していくのみで改善することはないそうです。被害者の新しい恋人が介入するのも危険だそうです。経験豊富なだけあって説得力があります。また、危険度の見分け方やどう対処すべきかの章は、問題が差し迫った人たちへの助けとなるでしょう。警察へどのように相談したら良いかも書いてあります。

ちょっと興味深いと感じたのは、自然相手の職業に就いているストーカーは今までいなかったことです。自然の力や理不尽さを頻繁に体験していると、相手を思惑通りにしてやろうという気が起きないのかもしれません。それと、男女でストーカーの行動に違いがあること。男性は相手の私生活を狙い、女性は相手の公的な場面を狙うそうです。また、ストーカーの半分は女性なのは知りませんでした。

著者は被害者や加害者と直接会いますが、両方に会うカウンセラーは稀だそうです。正しいかどうか断言できないと書いていますが、他の方法と比較してより効果的であると認められるなら、もっと普及してほしいですね。社会の理解が深まり、専門家が増えることで、不幸な事件が起きないことを望みます。



[ 2016/10/07 21:49 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2016年09月25日(日)

俺の棒銀と女王の穴熊 5 



著者:アライコウ (著), 瑞月シノ (イラスト)
発売日: 2015/7/27

評価〔A-〕 プロ棋士も十人十色の人生です。
キーワード:将棋、高校、部活、

「簡単に言うわよ。もう一花、咲かせたいんでしょう? これが最後のチャンスよ」(本文より抜粋)


来是たちの彩文学園将棋部ではなく、プロ棋士たちが主役の短編集です。外伝のような1冊。完全に独立した話ではなく緩く繋がっているので、連作短編集と呼んで差支えないと思います。

対局だけでなく、仕事として将棋を指すプロたちの日常もきちんと描かれています。棋士だからといって突拍子もないことばかりではなく、一般的な社会人と似たような悩みもあると思います。現実味もあり、彼らが身近に感じられて良かったです。一方、対局では彼らは並々ならぬ熱意を示します。これぐらいでなければプロになれないのでしょう。厳しい世界ですね。

3話目では最近話題のコンピュータ将棋も絡めて話が進み、終盤は盛り上がりました。あの勝負の結果は賛否両論ありそうですが、仮に現実に起きたとしたら作中と同じ展開になりそうな気がします。

この巻はライトノベル独特の雰囲気は薄まり、一般書籍に近いです。趣味として将棋は指すけれど観戦しない自分にとって、かなり面白かったです。将棋好きの人におすすめできそう。



[ 2016/09/25 21:52 ] ライトノベル | TB(0) | CM(0)