2017年05月27日(土)

キミとは致命的なズレがある 



著者:赤月 カケヤ、 晩杯あきら
発売日: 2011/5/18

評価〔A-〕 後半の急展開が良かったです。
キーワード:サスペンス、学園、記憶、

「最近、何か変わったことは起こっていないか?」(三章より抜粋)


ここ数年の記憶しかない高校生・海里克也が、不可思議な現象を体験するようになり、非日常の世界へと迷い込んでいくサスペンスです。第5回小学館ライトノベル大賞・優秀賞。

まあ記憶がないってところからしてかなり怪しげです。序盤から伏線を見逃さないよう警戒し、主人公の断片的な記憶や周囲の人間の言動から真相を推量しながら読んでいたのですが、うまく騙されてしまいました。著者のミスリードに見事にひっかかったようです。どの場面もつじつまがあうのは巧妙でした。これは強引かなと思うところもありましたが。推理するのも可能・・・・・・かもしれませんが、サスペンスと表現したほうがしっくりきます。

序盤から中盤にかけてじわじわ怖くなってくるのは良いのですが、テンポが良いとは言えず少々退屈でした。しかし、途中から少しずつ真実が明らかになり、驚きつつもどんどん引き込まれ最後まで一気に読みました。特に、遠崎家の場面で隠されていた秘密が暴露されるのは、その場面の結末とともに衝撃的でした。

ライトノベルっぽさはあまり感じられず、一般書籍として出しても違和感なさそうです。



ネタばれ話は続きにて↓
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[ 2017/05/27 21:30 ] ライトノベル | TB(0) | CM(0)

2017年05月07日(日)

結婚と家族のこれから ~共働き社会の限界~ 



著者:筒井 淳也
発売日: 2016/6/16

評価〔A-〕 余裕を持って暮らしたい。
キーワード:結婚、家族、共働き、専業主婦、

家族をセイフティ・ネットとせざるをえないような社会とは、同時に家族がリスクになる社会でもあります。(本文より抜粋)


現代の日本の家族は晩婚化、未婚化、少子化と、数世代前とはまったく異なる特徴や問題を抱えています。このまま進むと家族は一体どう変化していくのでしょうか。本書では歴史や社会学の知見から、現代の家族について分析しています。

意外だったのは、古代では男性優位の社会ではなかったことです。個人よりも子孫を残すことが最も重要であり、家族ではなく村のような小さな共同体が構成員を守っていて、男女関係も厳格ではなくかなり自由だったみたいで興味深いです。歴史の流れで男性優位となり、専業主婦が誕生し、共働きへと変遷していく様子が分かりやすく説明されています。

家事や介護の問題は、他の本でも読んだのでそれほど衝撃的ではなかったのですが、共働きがもたらす格差は知らなかったので少々驚きました。恋愛や結婚を個人的な体験談ではなく、収入の面に注目して考察しているのがいかにも学者の本らしいです。同類婚や異類婚の概念はなんとなく分かっていましたが、きちんと専門用語があったんですね。家族・税・格差の関係が簡潔に示されているので、これから政治を志す人たちには知っていてもらいたいです。

著者の主張するように、家族に縛られることがない社会となるのか、それとも、今までにない新しい形となるのかまだ分かりません。しかし、過去や外国の現状を踏まえて、家族のありかたや問題を包括的に学べる良い本だと感じました。




[ 2017/05/07 17:37 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2017年04月25日(火)

あなたの話はなぜ「通じない」のか (ちくま文庫) 



著者:山田ズーニー
発売日:2006/12/6

評価〔A〕 よく考えて喋るのが重要。
キーワード:会話、コミュニケーション、実用、

問いを発見しよう。あなたが抱く問いには、かけがえのない価値がある。

(第2章4より抜粋)


人と話していると、どうにも用件や感情が伝わっていないと感じることがあります。逆に、相手の言わんとしていることが、よく把握できない時もあります。なぜ意思疎通がうまくいかないのでしょうか? 何が問題点で、どうすればより理解が深まるのか。編集者として長年小論文を担当してきた著者が、うそをつかずに通じ合える技術を丁寧に教えてくれます。

コミュニケーション技術を扱った本は多いと思いますが、本書ほど事細かく丁寧に書かれたものはあまりないと思います。会話の目的から論理的に話す方法、共感と信頼を得る心得と、本質を分かりやすく説明しています。この台詞さえ覚えておけば大丈夫、なんてお手軽な会話術ではなく、その場限りでない良い関係を構築するための考え方が、具体例とともに示されていて良いです。送別会でのコメントの例は、誰しも一度は似たような言葉を聞いたことがあると思うので理解しやすいですし、その直前の問いの見つけ方は会話以外にも役立つことでしょう。

正論はなぜ人を動かさないのか?は興味深かったです。理由を見て、なるほどと感心しました。また、著者が短い時間で全幅の信頼を置いた人物の話も、説得力がありました。こうした、おそらく皆が曖昧な感覚として知っていることを、きちんと言葉にして説明できているのが本書の素晴らしいところです。

得た知識をすぐ使いこなすことはできません。しかし、少しずつ意識しながら話をすることで考える技術を磨き、信頼を得ることによって多くの人と通じ合えることができるようになるのでしょう。前に読んだ「伝わる・揺さぶる!文章を書く」同様、良書でした。




[ 2017/04/25 21:55 ] 実用 | TB(0) | CM(0)

2017年04月12日(水)

ふわふわの泉 



著者:野尻 抱介
発売日: 2012/7/24

評価〔A-〕 泉のネーミングセンスも結構好き。
キーワード:SF、化学、宇宙、

「努力しないで生きたいと思わないか」(本文より抜粋)


SFでは遠い未来の魔法のような技術が度々登場しますが、その技術がいかにして作られ、そして発展していったのかを追ったのが本書です。物語は、努力しないで生きることが目標の化学部部長・朝倉泉が、唯一の部員・保科昶(あきら)と共に文化祭の展示物を制作しているところから始まります。第33回星雲賞日本長編部門受賞作。

身近で少し変わった出来事が起こる学園系SFかーと読んでいたら違っていて、どんどん突っ走っていきます。テンポよく進むので爽快で面白いです。良い意味で期待が裏切られた形でした。練られた伏線ではなく、現実の想像できるところからワクワクするようなところまで発展するのが、容易に想像できるのが本書の魅力ですね。SFの部分も少な過ぎず、かと言ってSFを読んだことない人が嫌になるほど多くもなく、ちょうど良かったと思います。

多少、強引な展開や唐突な急展開もありましたが、面白さが損なわれるほどではなかったです。推理小説のような緻密なシナリオを望む人には、合わないかもしれません。

あとがきによると、設定は専門家にお世話になったらしいので、おそらく科学的考察もしっかりしているのでしょう。あの物質も・・・・・・まあこれは読んでのお楽しみですね、表紙から受ける印象とは異なり、しっかりとした説得力あるハードSFでした。でも、泉の性格のおかげか、または著者の文章力のなせる業なのか、堅苦しくなく読みやすかったです。




[ 2017/04/12 21:08 ] 小説 | TB(0) | CM(0)

2017年04月08日(土)

重力とは何か アインシュタインから超弦理論へ、宇宙の謎に迫る 



著者:大栗 博司
発売日: 2012/5/29

評価〔A〕 物理学の最先端を垣間見た。
キーワード:重力、超弦理論、相対性理論、物理学、

アインシュタインの「最高のひらめき」とは、このニュートン以来の論理を逆転させることでした。(第三章より抜粋)


重力よりも副題の超弦理論の文字にひかれて手に取りました。高次元を解明する最先端の理論としか知らなかったので。

まずは前提となる相対性理論や量子論から始まり、超弦理論やブラックホールと進んでいくのですが、今は科学から遠ざかっている高校生の同窓生に語るつもりで書いたとあるように、かなり分かりやすく書かれています。難解な理論をほとんど数式を使うことなく、図と簡単な具体例で上手く説明しているのは鮮やかです。これなら知識なしでも読める、とは思いますが、やはり多少は知っていたほうが理解が早いですし面白いと思います。

超弦理論の超弦の意味は、高次元を表すことができる凄い紐くらいに捉えていたのですが、超対称性を前提とした弦のことだったとは初めて知りました。また、潮汐力の説明は本当に分かりやすくためになりました。今までの理解が浅かったようです。物理学を10億のステップで考えることと理論の関連性は、なるほどと関心しました。確かに新理論の存在が予見できます。

途中まではだいたい知っている内容も多く少し退屈でしたが、中盤以降はかなりワクワクしながら読みました。こんなに進んでいるんだと思う反面、まだまだ謎が多いとも感じました。事象の地平線の先から特異点まで、物質には何が起こり、最後に何が残るのでしょうか?

何度読んでもピンとこないところもあります。最先端のあの理論も、分かったような分からないような感じです。しかし、多少分からなくても、次から次へと有名人やノーベル賞受賞者が登場し、発展していった物理学の歩みは面白かったですし、興味のある人には是非読んでもらいたいです。




[ 2017/04/08 22:01 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)