2016年11月19日(土)

世論調査とは何だろうか 



著者:岩本 裕
発売日: 2015/5/21

評価〔B〕 調査するほうも苦労します。
キーワード:世論調査、統計、選挙、RDD調査、アンケート

世論調査は世論操作ではありません。そう思われかねないような質問は厳に避けるべきなのです。(本文より抜粋)


テレビや新聞でしばしば世論調査の結果が発表されているように感じます。質問は政党の支持率、仕事や結婚などの考え方など多岐にわたって行われ、国民の意見・意識を知ることができます。結果によっては政策を変えることもあります。大きな影響力を持つ世論調査はどのようにして始まったのか、なぜ少人数に尋ねるだけで全体の意思を知ることができるのかを、なるべく数式を排して説明しています。

調査の歴史を紐解くと、選挙や政治と密接に結びついていることが分かります。民主主義は民意に基づくものなので、当然と言えば当然かもしれません。また、調査方法は時代によって変遷していて、従来の固定電話に掛ける方法は回答率が落ちてきているのだそうです。主な理由は固定電話を持たない世帯の増加やプライバシーの意識の変化で、調査する人の苦労が分かる気がします。どの調査方法も長所短所があり興味深いです。

調査側の主張に騙されない世論調査の読み解き方も紹介しています。質問の仕方や選択肢の選び方、質問の順番によっても答えが変わる可能性があることを指摘しています。統計による誤差や有意差も解説があり、統計の嘘に丸めこまれないよう注意することが大切です。こうした調査の読解力を高めたい方には、「社会調査のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (著、谷岡 一郎)」がおススメです。

著者は、世論調査は民主主義社会に与えられた武器だと説いています。世論操作のために利用される危険もありますが、自分に調査が来た時は、なるべく協力しようという気持ちになりました。




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[ 2016/11/19 21:26 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2013年07月04日(木)

人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか 

人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか (中公新書)人口学への招待―少子・高齢化はどこまで解明されたか (中公新書)
著者:河野 稠果
出版:中央公論新社
発行:2007/08

評価〔B+〕 難しめだけどためになります。
キーワード:人口、人口学、社会学、統計、出生率、少子化、

新聞、テレビなどのメディアで、その数値が「当たらない」と批判を受ける将来の人口予測だが、経済や社会予測と比較すればはるかに正確である。(はじめにより抜粋)


21世紀に入ってから少子化や高齢化でますます将来が懸念され、人口もついに減り始めました。遠い未来に日本人はいなくなる、なんて予測を出した人もいるようで、これはさすがに行き過ぎだとは思いますが、いろいろと今後が気になる方も多いのではないでしょうか。本書はそれらの問題の大本である人口について考える、人口学の入門書です。人口学は聞きなれない言葉ですが、アメリカにおいては社会学の中でも最も威信の高いものの一つであるとか。簡単に言うと人口の増減を分析し、将来の人口や、年齢別の人口分布である人口構成を予測します。

平均寿命や出生率などよく耳にする言葉はもちろん、同年に生まれた人口集団を指す「コーホート」や、人口増減の惰性である「モメンタム」などの専門用語も解説しています。時間の経過とともに人口構成がある状態に近づいていく「安定人口」の話が興味深いです。また、各国では人口に対する様々な問題をかかえていますが、本書の後半は日本での出生率の低下に重点を置いて論じています。晩婚化と未婚率の上昇、避妊方法、男女の意識の変化など興味深いです。

現代の日本でも、乳児の死亡率が40から50歳の死亡率と同じくらいなのが驚きました。育って当たり前みたいな雰囲気がありますが、昔は育てることが本当に難しかったのでしょう。それと、終章で、家庭政策強化によって合計特殊出生率をかなり引き上げることができるかもしれないとあり、希望が持てます。

前半は学術的ですが、後半は身近な話題でありだいぶ読みやすかったです。著者はもっと書きたいことがあったと記述していますが、本書の内容でも素人では量・質ともに手に余りそうだと感じました。内容は濃いですが、そのぶん入門書にしては難しめかな。




[ 2013/07/04 22:00 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2011年05月11日(水)

運は数学にまかせなさい――確率・統計に学ぶ処世術 

運は数学にまかせなさい――確率・統計に学ぶ処世術 ((ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ))運は数学にまかせなさい――確率・統計に学ぶ処世術 ((ハヤカワ文庫NF―数理を愉しむシリーズ))
著者:ジェフリー S.ローゼンタール
出版:早川書房
発行:2010/07/10

評価〔B+〕 実学としての数学
キーワード:数学、確率・統計、ランダム、

これらのシナリオは多岐にわたるけれど、一つだけ共通点がある。どの場合にも、確率やランダム性、不確実性の法則を知ることによって、より良い決断をし、自分を取り巻く世界をもっと鮮明に理解できるようになるのだ。(第1章より抜粋)


カジノのギャンブル、例えばルーレットやブラックジャックは勝つ確率は五分五分のように見えます。どのようにしてカジノは安定して利益をあげているのでしょうか? また、政治家や製薬会社が説明のために挙げる統計データは、どのくらい信用できるものなのでしょうか? こうした日常で直面する確率・統計の問題を、難しい数式を極力使わずに説明しています。数学は実学とは程遠いイメージを持っている人もいますが、身近なちょっとしたことを例にあげて、確率を利用することにより状況を良くする術が多く語られています。

上記のギャンブルや統計データの他に、事故にあう確率や世論調査、不幸の手紙、スパムメール。既読の「社会調査のウソ」と似ていますが、こちらは広範囲で知っていたほうが役に立つことを教えてくれます。どの章の例も、知ってて良かった確率・統計!みたいな感じでちょっと笑ってしまいました。

「公表の誤り」は、正当に見える調査でも特定の意図を反映させることができるのが示されていて、興味深いですね。また、量子力学を用いた乱数生産法には驚かされました。物理を数学に使うとは凄いですね。14章の「モンティ・ホール問題」は知っていましたがやはり面白いです。直観で判断する危険性を説いています。

著者は数学者なのですが、統計学者でも滅多に起こらない事故を心配したり、滅多にかからない病気に脅えたりします。専門家といえど自分のこととなると冷静さを欠いてしまう姿は、親近感が持てるのではないでしょうか。そんな著者が一般の人向けに書いた本書は、確率・統計の良い入門書となるでしょう。「社会調査のウソ」と合わせて読むと、より効果的だと思います。





[ 2011/05/11 22:26 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2009年12月29日(火)

「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ 

「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)「社会調査」のウソ―リサーチ・リテラシーのすすめ (文春新書)
著者:谷岡 一郎
出版:文藝春秋
発行:2000/06

評価〔A〕 実名で批判は勇気あります
キーワード:社会調査、統計、実用、

これほど社会調査が増え、それも玉石混交ということになってくると、それらのリサーチが本物であるかどうかを見極める能力が必要となってくる。(第五章より抜粋)


マスメディアの発展により、何らかの社会調査の結果を見たり聞いたりする機会が多くなりましたが、それらの調査ははたして現実を反映しているのか?信用に足るものなのか?と疑問をなげかけているのが本書です。著者は外国で調査の研究をしていた経験があり、何か意図のある調査や真実を捉えていない調査を批判しています。

今までは、まぁ公平かなと感じていた統計データも、丹念に調べてみると実はそうでもないことがよく分かります。データの計算の仕方によって、結果が変わるのは知っていましたが、学術の分野でも行われているとなると事態は深刻です。また、選択肢の選び方によって回答を誘導することができる強制的選択やキャリーオーバー効果は、知っているといないでは調査結果に対する認識が違うはずです。

一方で、質問する人によって答えが変わりうることがあるインタビューアー効果は、一見なんでもないアンケート調査も、公正に行うのは容易ではないと考えさせられます。アンケート対象となる母集団に偏りがある場合は、あまり役に立たないし、有効回答数は最低でも100は必要らしいのでさらに大変だ。何々50人に聞きましたってのはほとんど参考にならないそうです。

公平な社会調査を行うことは、かなり困難で時間もかかることが分かりました。著者の日本の社会学の未来を憂う気持ちとマスコミに対する憤慨が、文章から伝わってくる本でした。著者も願うように各々がデータを独占するのではなく、日本でもはやく開かれた調査結果のデータベースができると良いですね。




[ 2009/12/29 18:15 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)