2017年09月23日(土)

商店街はいま必要なのか 「日本型流通」の近現代史 



著者:満薗 勇
発売日: 2015/7/16

評価〔B〕 コンビニの次は何だ?
キーワード:商店街、流通、小売り、

店舗小売業においては、詐欺的な不正取引におびえて客が買い物を控えるようなことが起こりにくいので、行商に比べると、よりいっそう活発な取引が展開されることになります。(第3章より抜粋)


題名は商店街となっていますけれど、それだけでなく近代から現代までの小売と流通の歴史を紹介しています。思うに主題と副題が逆なのでは。百貨店、通信販売、商店街、スーパー、日本型コンビニエンスストアの5つの形態について、発祥と成長の過程を考察しています。

商店街の章では、商品を修理して使うのが当たり前で、掛売りが珍しくなかった時代に合っていたとの指摘しています。また、高速輸送の手段がなかった、もしくは限られていたので、現代よりも住民と地域の繋がりが強かったのでしょう。説得力があります。しかし、商店街について語っている文章が、期待していたより多くなかったのが残念でした。5つの章はどれを軸にという訳でもなく、どれも同じくらいの分量なので、商店街が主役と言う感覚はありませんでした。

他の4つはというと、初めて現金正札販売を取り入れた百貨店や、革新的なシステムを取り入れ大量消費社会を作ったスーパーには感心させられました。また、現在隆盛しているコンビニの問題点はニュースにもなり、商店街のことよりも印象に残りました。
コンビニ会計は公平さに欠けるよねぇ。

流通史として読むならバランスよくまとまって分かりやすいですが、商店街のことをよく理解したい場合はあまりおすすめしません。



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[ 2017/09/23 22:13 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2016年07月18日(月)

その数学が戦略を決める 



著者:イアン エアーズ (著), Ian Ayres (原著), 山形 浩生 (翻訳)
発売日: 2010/6/10

評価〔A+〕 人工知能とは違う近未来の力。
キーワード:絶対計算、経済、近未来、統計、回帰分析、無作為抽出、

われわれはいま、馬と蒸気機関の競走のような歴史的瞬間にいる。直感や経験に基づく専門技能がデータ分析に次々に負けているのだ。(序章より抜粋)


映画の売れる脚本や裁判の判決をコンピュータが予測すると聞いたら、そんなのまだ早いと思うのが当然だと思います。しかし、前者は既にハリウッドで動き出していますし、後者は良い結果を出しています。データを集めて商売や危機管理に役立てているのは知っていましたが、創造性や複雑な判断にまでデータ分析が及んでいて、驚くとともに感心してしまいました。

本書では、それらの大量の情報を収集・解析するデータマイニングと、それを行う絶対計算者たちについて、専門家が具体例を交えて説明しています。ちなみに、英語の題名はこのデータ分析で決めたそうです。

計算による予測として回帰分析と無作為抽出の2大理論が、要点のみ分かりやすく書かれています。どちらも知っていたので、すんなり頭に入ってきましたが、数学に疎い方でも大丈夫だと思います。上記のように、様々な分野での実証例が挙げられていますので、それらも理解の助けになります。アメリカでの最先端の研究と、それを適用したビジネスの例が豊富なのが魅力です。

印象深いのは、専門家と絶対計算の比較の章です。人間は自分の予想に自信過剰である、複雑なものの重要要因を見極めるのが得意ではないとあり、おおむね賛成です。公平に偏見なく感情的にならずに物事を判断するのは、かなり難しいと思います。経験も時には邪魔になりますし。計算式によって導かれた確率は、それらには影響されずにすむのが強みです。皆、自分の分野ではデータ分析より人間のほうが勝っていると信じていますが、そうでないことを知ることができます。

全体的に分かりやすく書かれているとはいえ、興味のない話や込み入った話もありました。400ページ近いので、もう少し短くても良かったかもしれません。それと、理論の説明でもほとんど図や表がなかったと思うので、もう少し視覚的に分かりやすい説明が欲しかったです。入門書ならなおさら。

各章の最後にまとめがあるので、読み返す時に便利です。この感想文も、まとめを見て思い出しながら書いています。今後も、データ分析が社会に影響を与える機会はどんどん増えていき、避けられない流れだと断言しています。どのように利用すればよいのか知るためにも、一読するのもよいのではないでしょうか。



[ 2016/07/18 21:22 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2015年01月16日(金)

なぜこの店で買ってしまうのか ショッピングの科学 (ハヤカワ新書juice) 

なぜこの店で買ってしまうのか ショッピングの科学 (ハヤカワ新書juice)なぜこの店で買ってしまうのか ショッピングの科学 (ハヤカワ新書juice)
著者:パコ アンダーヒル
出版社:早川書房
出版日:2009/09

評価〔A〕 現場に行こう。
キーワード:買い物、消費者、現場、ショッピングモール、

このような経営評価の手法は、ビジネススクールでは教えてくれない。利潤差額や投資収益や通貨供給量などとは無関係だからだ。店の四方の壁のなかで何が起こっているかがすべてなのだ。(第2章より抜粋)


ショッピングの科学では、商品を買うことのみならず、お客さんが店に入ってから出るまで何をしたのかを全て調べて分析します。全てです。買う買わないはもちろん、値札を見たかどうか、試着したかどうか、誰と来たか、果てはどのくらい滞在したかなど全て記録するというのですから凄いですよね。そんなショッピングの科学の第一人者である著者が、買い物についてあれこれ語った世界的ベストセラーです。

現場で知り得た多くの情報が書かれています。消費者としては当たり前に感じることも、売り手としてはきちんと観察しないと気づかないことも多いのです。例えば、トイレが汚いからあの店に行かない、欲しいものが棚の一番下にあって取りづらいから買わないなど、実際に客として入ると分かることが、店側の人間には意外と気がつかないものです。ちなみに後者の「物がとりづらい」は年配の方の意見です。とにかく観察経験が豊富なので、非常に説得力があり肯けるものが多いです。

印象に残ったのは、お客は店に入る時は入ることしか考えていないので、掲示板や壁紙はほとんど見ていないこと、です。なるほど、確かにそうかもしれないと納得してしまいました。また、商品自身の魅力ではなく、隣に何を置くかで売れ行きが違ってくるマーチャンダイジングの手法も興味深かったです。買い物の主役である女性のみならず、男性、子供、老人にも注目しているのも良いですね。この章の最後、清涼飲料メーカーの例もなかなか面白かったです。

アメリカの小売業を中心に語られていますが、著者の会社は世界展開していて、様々な国々のショッピングや商品、サービスについても紹介しています。アメリカ人なのにアメリカのショッピングがナンバー1と言わないのは、実地調査の経験の豊富さからなのだと感じました。

興味深い内容なのは良いのですが、とにかく本が厚いです。450ページを超えます。なかなか読み終わらないなぁと、途中で何度もページ数を確認してしまいました。2冊にうまく分けることはできなかったのでしょうか。そうすれば、より効率良く(もしくは楽に)読むことができたと思うのですが。個人的な回想やインターネットに対する批評など、本筋から外れたような話もありましたが、内容の濃い有益な本でした。




[ 2015/01/16 20:25 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2014年10月11日(土)

羽月莉音の帝国 10 

羽月莉音の帝国 10 (ガガガ文庫)羽月莉音の帝国 10 (ガガガ文庫)
著者:至道 流星
出版社:小学館
出版日:2012/02/17

評価〔A〕 半端に終わらなくて良かった・・・・・・。
キーワード:国家、ビジネス、経済、起業、現代

「じゃあみんな。最後の最後、世界の未来を賭けた、乾坤一擲の大勝負――。心してやりましょう!」(本文より抜粋)


無一文どころか借金から始めた革命部も、ついに世界を動かすほどの組織となりました。彼らの国は世界の仕組みを変えることができるのか。最終巻です。

著者の他作品で、物語の終わり方が半端だったり強引だったので、結末を心配していたのですが、本シリーズはしっかり終わりました。革命部の戦術、世界各国の反応は、説得力のあるものだったと思います。仮に誰か同じように事を起こしたとしても、実際こうなりそうな気がします。エピローグはまあ予想通りでしたが、それも含めて良い最終巻でした。

できればその後の話も少し読みたかったのですが、下手に伸ばすよりはスパッと終わるのがテンポの良い本シリーズらしくて良いですよね。引きのばさないのが潔いです。

物語の始まり方や中心人物たちはライトノベルのそれですが、内容は大人が読んでも十分面白いものでした。以前、経済ラノベはありえないと言っていた人もいましたが、そんなことはないようです。シリーズ全体としての評価もAかな。最近の流行りとはひと味もふた味も違う作品ですが、社会勉強にもなると思いますので是非読んでいただきたいです。




[ 2014/10/11 22:23 ] ライトノベル | TB(0) | CM(0)

2014年10月11日(土)

羽月莉音の帝国 9 

羽月莉音の帝国 9 (ガガガ文庫)羽月莉音の帝国 9 (ガガガ文庫)
著者:至道 流星
出版社:小学館
出版日:2011/10/18

評価〔A〕 経済力を手にし、ついに核心へ。
キーワード:国家、ビジネス、経済、起業、現代

「世界の崩壊が、俺たちの建国の狼煙になる。」(本文より抜粋)


最終目標へ秒読み開始です。今までの巻とは少し違い、読んでいて期待と不安でワクワクドキドキしました。だいぶ作品の魅力に取りつかれているようです。

これまでも様々な経済的イベントがありましたが、9巻ではバブル経済について書かれています。一般市民からみたバブルと、市場に影響を与えることができる資本家とでは、やはり物事が違って見えるようですね。大衆が熱狂しているとき、冷静な意見がかき消されてしまうのは世の常なのでしょうか。

また、革命部は建国のため、資金集め以外のこと、軍事力の拡大につとめます。選挙で民主的平和的に独立する訳ではありませんから、現実的といえば現実的な流れかと。そもそも独立部ではなく革命部ですし。相変わらず各章の終わりには部費の収支が記載されていますが、ここまで巨額になると想像すらできません。

終盤、恒太のあの宣言後の世界の様子は、現実でも起こりそうな感じでなかなか興味深いです。特に、マスコミの反応とアメリカの対応は的を射た描写だと思います。現場にいない一般市民に何が本当で何が嘘か判断するのは、難しいですね。莉音たちはこのまま予定通り理想の世界を作ることができるのか。次で最終巻です。



[ 2014/10/11 21:59 ] ライトノベル | TB(0) | CM(0)