2017年06月17日(土)

女子高生アイドルは、なぜ東大生に知力で勝てたのか? 



著者:村松 秀、 五月女 ケイ子
発売日: 2016/3/16

評価〔A-〕 発想力は鍛えられる
評価〔B+〕 発想力は鍛えられる
キーワード:科学、アイドル、東大、テレビ番組、

ロケから帰ってきたすイエんサーガールズたちは、口々に「脳から火が噴いた」と叫ぶのが常だ。それぐらい、頭をグルグルと使うのである。(第1章より抜粋)


番組内で日常で起きる些細な疑問に挑戦してきたアイドルたち・すイエんサーガールズが、企画の一つとして有名大学の学生たちとの知力勝負をするのですが、彼女たちは強敵相手に予想以上の善戦します。なぜこんなに強いのか? 知力と彼女たちの強さの秘密に迫ります。

知力勝負の内容は、自由度の高い柔軟な発想が求められるものです。学生たちの知識を活かした思考力はもちろん、すイエんサーガールズの発想力には舌を巻きました。時には、それでいいの?と思ってしまうような結論で、実際に好記録を出してしまうのは、先入観に囚われないことの素晴らしさを感じます。

著者は番組で培った考える力・グルグル思考と、それを鍛えることによって育まれる知力に注目しています。答えなんてあるのだろうかと思ってしまうような疑問を何度もこなしてきた彼女たちは、相当頭を使ってきたはずです。例えば、「なんで足の小指を角にぶつけてしまうのか?」。これなんて、何が問題点なのかから考えないと答えにたどり着きませんよね。考えに考えることで、発想力や実践力を含む知力を高めていったのは納得です。

彼女たちが挑んだ問題が、読者のためのグルグル思考問題集として挙げられています。グルグル思考を7つの力に分けて、楽しく学べます。発想力を向上させる参考にしても良いですし、単に娯楽として読んでも楽しいです。ロウソクの火を一息とガッツポーズの問題は興味深かったなぁ。ただ、7つの分類した力はどこかで見たことがあるような感じで、斬新さはなかったです。

「知力の格闘技」はどの勝負も白熱しました。どのチームも発想豊かで、どのような打開策が出てくるのかを見ているだけでも面白かったです。かなりワクワクしながら読みました。会場で見てみたかったですね。総じて難しい理論や数式を使わず、知識ではなく知力について楽しく書かれた、楽しい科学読み物でした。



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[ 2017/06/17 18:43 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2017年02月18日(土)

もしも宇宙を旅したら 地球に無事帰還するための手引き 



著者:ニール・F・カミンズ (著), 三宅 真砂子 (翻訳)
発売日: 2008/4/19

評価〔B+〕 科学的検証が現実味をもたせています。
キーワード:宇宙旅行、太陽系、惑星、無重力、

宇宙へ行くと、半数以上の人が微小重力状態に入って数日の間に、宇宙適応症候群、あるいは宇宙酔いと呼ばれるものを経験する。(第5部 医学的な危機より抜粋)


宇宙飛行士が宇宙船の中からテレビ中継する姿は、あまり珍しくなくなりました。電子機器の進歩やネットの発達によって、地球にいても鮮やかな地球の映像を見ることができます。しかし、一般の民間人が外国旅行のように宇宙へいくには、現時点では、まだまだ先の話になりそうです。

もし、この先、宇宙へ気軽に行けるようになるとしたら、どのような点に気をつけるべきなのか。未知の世界での危険について、宇宙物理学者が細かく検証したシミュレーション本です。

空気・放射能等、各項目を短く区切り、宇宙や物理学にあまり詳しくなくても理解できるよう書かれています。空気、水、重力の問題はすぐ思いつきますし、宇宙線や太陽風による放射線の影響も少しは知っていましたけど、思っていたよりも色々と問題点があり驚きました。放射線による機械の誤作動、宇宙酔い、概日リズムのずれ。変わったところですと、惑星・衛星での地震や地すべりの危険性、閉鎖空間に長期滞在する精神への影響が興味深かったです。

ぼんやり想像していた宇宙がほんの少しだけ身近なものとなる、夢のある科学読み物です。SF小説を書く人は読んでいるんでしょうね、きっと。



[ 2017/02/18 21:32 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2016年06月15日(水)

人工知能は人間を超えるか ディープラーニングの先にあるもの 



著者:松尾 豊
発売日:2015/3/10

評価〔A-〕 超えるのはもうしばらく先になりそうだけど・・・・・・。
キーワード:人工知能、科学、コンピュータ、IT、

ディープラーニングによって、これまで人間が介在しなければならない領域に、ついに人工知能が一歩踏み込んだのだ。(本文より抜粋)


日本で屈指の人工知能の研究者が、人工知能がどのように発展してきたか、人工知能にとって何が難しいかを、分かりやすく解説しています。

上のサムネイルは単行本版ですが、所持しているのはKindle版なので、アニメ「イヴの時間」で登場する人工知能が表紙のものです。そういえば、数年前、学会誌にアニメ風のイラストを使用したことで話題になったことがありました。それが著者が編集長を務めたものだそうです。

人工知能をレベル分けして、流通倉庫の労働者や天気予報を例にした説明は、かなり分かりやすく面白かったです。後者の説明によって、ディープラーニングと特徴が完全に理解したとは言えませんが、分かったような気になりました。自分で概念を獲得する、つまり自分で物事を区別する線引きができるようになるのは、相当凄いですねよ。

そうして得た意味・概念が、人間のものとかなり違ってしまう可能性があり、今度は人間と人工知能とのやり取りを難しくと予測しているのは、専門家ならではの発想だと思いました。これは本能の話と連結していて面白いです。生物が持つ本能も、もしかしたら人工知能が獲得する日が来るのかもしれません。

欲を言えば、もう少し現在の研究を紹介してほしかったです。半分くらい人工知能の歴史でしたので、新しい事例を知りたかった。また、技術的な記述が多いので、機械で生活や社会の仕組みがどう変化するのかを知りたい方には、やや物足りない内容かもしれません。

本書の題名の問いには、最後に答えが書かれています。科学者・研究者の予想は当たるとは限りませんけど、最先端を走っている著者が言うと説得力がありますね。どうなるんだろう。



[ 2016/06/15 22:07 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2016年02月26日(金)

ヒューマン なぜヒトは人間になれたのか (角川文庫) 



著者:NHKスペシャル取材班
発売日: 2014/3/25

評価〔S-〕 内面から人の歴史を振り返ります。
キーワード:人類、心、進化、テレビ番組、

『全宇宙の生命を脅かすモノ―― 災いの渦』(本文より抜粋)


人類の進化を生物学や遺伝子学から紹介した書籍は珍しくありません。しかし、本書では従来とは違った角度から、ヒトの内面である心を軸として人類の起源と歩みの解明に挑みます。第10回パピルス賞を受賞。

時間をかけ丹念に調べ、多くの専門家にインタビューをし、新しい説を紹介している非常に読み応えのある本となっています。人類と言えば「二足歩行・道具・言語」が特徴ですが、それ以外でヒトと猿の違いとは何なのかを探っていくのが面白いです。実験や原始的な民族の研究から、普段私たちが何げなく行っていることが、実は他の生物と決定的に違うことを教えてくれます。ヒトがどのようにして血縁関係を超えた集団を形成したのか、わりに合わない農耕生活はなぜ始まったのか、都市の出現とある発明の関係性、平等の心と欲望の心。DNAが、海馬が、なんて話が苦手な人でも興味深く読むことができます。

また、太古と現在では意味が違かったかもしれない物・概念も興味深いです。例えば、おしゃれ。考古学の見地から導かれた自己顕示欲、贅沢品以外の意味は、理にかなっていて唸ってしまいます。それと宗教も意外でした。単に神秘的なものを敬うだけでなく、他にも重要な意義があったとする説はかなり説得力があります。

人間の歴史は戦争の歴史、なんて言いますが、本書を読むと、予想していたよりもヒトは昔から協調性がある生き物だったみたいで少々驚きました。でも、だからこそ、過酷な自然を生き抜いて繁栄できたのでしょう。

話があちこちに飛んだり、本筋が分かりにくいところもありましたが、全体をとおして見ると確かに心について語っています。この環境ではこうした心境だったのだろう、あのような状況ではあのような気持ちかも、と当時の人々の内面を想像しやすいのが良いですね。心という面では、数万年前からほとんど変わっていないと思っています。

著者名から分かるように、NHKの番組を書籍化したものです。それにしても、「人間はどこから来たのか、どこへ行くのか」といい「女と男」といい、NHKの書籍は内容の濃くて興味深い本が多いと感じました。今後も質の高い面白い本を期待しています。



[ 2016/02/26 22:10 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2015年05月05日(火)

99.9%は仮説 思いこみで判断しないための考え方 




評価〔B-〕 科学も不変ではありません
キーワード:科学史、科学読み物、仮説、

われわれは、いくら白にみえる仮説でもいつグレーから黒に変わるかわからない、と肝に銘じておくべきなのです。もちろん、その逆も然りです。(第3章より抜粋)


科学が発達した現代において、科学は絶対不変の真理のように語られることがありますが、実はそのようなことはなく覆ることは珍しくないと説き、物事を柔軟な見方を気づかせてくれる科学読み物です。

著者は物理が専門なので自然科学の例ばかりですが、科学はいつも絶対正しいものではないことが分かります。天動説と地動説の対立からも分かるように、時には感覚や感情が優先され認められないことも多々あります。科学の歴史を解説していて興味深いのですが、既読の『理性の限界』をはじめとする限界シリーズや、『哲学的な何か、あと科学とか』と内容が重なっている部分が多く新鮮味は感じませんでした。本書を先に読んでいたら凄く目新しく感動したと思います。

詳しく知らなかったロボトミー手術は、当時賞賛されていた理論でも容易に覆る好例で、科学に人間が振り回された歴史として知っておいたほうがいいと思います。天動説よりも時代が近いため、より身近に感じられるのではないでしょうか。また、名前だけ知っていたホーキンス博士の実証論は今までにない概念で面白かったです。単なる宇宙論学者ではなかったのですね。

科学は変わりうるものだからひとつの仮説を絶対視せず、相対的に物事を見て判断し理解する努力をしようという著者の意見は説得力があります。物事を柔軟にとらえる心がまえは忘れないようにしたいです。




[ 2015/05/05 21:35 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)