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2020年05月22日(金)

もっと言ってはいけない 



著者:橘 玲
発売日: 2019/1/17

評価〔A〕 問題点を間違わないように。
キーワード:社会学、遺伝学、先天的、進化、脳科学、

もしひとびとの素朴な常識が正しいなら、成長につれて一卵性双生児の類似性は下がっていくはずだが、実際には逆に高まっていくのだ。(2、一般知能と人種差別より抜粋)


受け入れがたい冷酷な真実を数々の実験やデータから明らかにしています。本書は前作「言ってはいけない」の続編ですが、こちらだけ読んでも理解できます。ただ、本書のほうが知能と遺伝と進化に絞って前作よりも論じる範囲を狭めているので、少し読む人を選ぶかもしれません。

タブーとされる知能や人種間の違いについても遠慮せずに書いているのが特徴です。読みながらツイッターなどで発言したら大いに話題になりそうな意見が多かったです。データに基づく結論は刺激的で説得力のあるものでした。著者の個人的な意見に対しては自分の意見とは違うなと思うことが時々ありましたが。

引用した上記の「知能に及ぼす遺伝の影響は年齢とともに増加」をはじめ、「同性愛が残った理由」「遺伝子から分かったサピエンスの移動」「アメリカで成功している高知能集団」「東アジア人は幼形成熟説」など興味深いものが多く読みごたえがありました。同性愛の項目では、男性の同性愛者は一見子孫を残すのに役に立っていないようにみえるけれど、彼らは男性を引き付ける魅力があり彼らの女性の血縁者も同様に男性に対して性的魅力を持つので、結果として自分に近い遺伝子を残す機会に恵まれると説明していて疑問は残りますが面白かったです。

また3章にある、犬種の違いを論じても差別ではないのに人種の違いについては否定される、は斬新で新鮮な意見でした。反発する人は出てくるでしょう。しかし研究は進んでいて、遺伝的には東アジア人とヨーロッパ人の差よりもタンザニア北部の人と西アフリカの人の差のほうが大きいことが明らかになっています。アフリカ内でそれだけ差があるなら一言で黒人と呼ぶには大雑把過ぎます。集団の特性を論じるべきか、論じるならどこで集団を区切るのか。難しいですね。

研究や実験によって自分には不愉快な結論が導かれても認めるのが公平であると考えます。問題をタブーとせず、何がダメなのかどこが不公平なのかを議論していく姿勢が大切なのではないでしょうか。



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[ 2020/05/22 20:50 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2020年03月27日(金)

コンシェルジュ インペリアル 7 〔完〕 



著者:藤栄道彦、いしぜきひでゆき
発売日: 2017/11/20

評価〔A-〕 介護業界に入る人に読んでほしいです。
キーワード:介護、介護士、福祉、ケア・マネージャー、完結

「下手すれば健幸都市どころかインペリアルが消えて無くなるよ」(本文より抜粋)


様々なお年寄りやその家族を通じて優菜の成長とともに介護の現場を描いてきましたが、最後は個人的ではなくもう少し大きな話を扱っています。

劇中で優菜が「なんなんでしょうね。この他人事感・・・・・・」と言っているのですが、これはかなり重要な場面でした。私も老後や介護は考えなければならないけれどまだまだ先のことだから後回し、と思っているところがあります。本書の最後まで読むとこの台詞の重要性が分かるので読んでもらいたいです。

欲を言えば、もっと成長して指導する立場となった優菜を見てみたかったです。まあひとつの節目を迎えたと言えそうなので、終わるにはよい時期だったのかもしれませんね。

何回も書いてる気がしますが最後にもう一度書きます。ボスが格好良かったです。



[ 2020/03/27 20:08 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2020年03月21日(土)

家裁調査官は見た  ―家族のしがらみ― 



著者:村尾 泰弘
発売日: 2016/7/14

評価〔B〕 カウンセラー以外の側面も見たかった。
キーワード:家庭裁判所調査官、家族、臨床心理士、家族心理士

家族がうまく機能せず、まとわりついて足を引っ張る意味での「しがらみ」に姿を変えるときに見られるものに「家族神話」がある。まずこのことからお話ししていこう。(第4章より抜粋)


家裁調査官は家庭裁判所調査官の略称で、家庭裁判所のみにいる特殊国家公務員だそうです。裁判所の関係者はたいてい法律の専門家ですが、彼らは心理学、社会学、教育学などを修めた人に関する専門家です。その調査官を17年務めた著者が経験から学んだこと、特に家族のしがらみについてどのように対処していけばよいのかを書いています。

最初のうちは家裁調査官ならではの経験が語られますが、後半になってくるとカウンセラーや心理士と同じような仕事内容で、著者の仕事の独自性があまり見えなくなっていったのが残念です。もう少し家裁調査官とは何をして、カウンセラーとはどこが違うのか深く掘り下げてほしかったです。それとも働く場所が違うだけでほとんど同じ仕事なのでしょうか。

家族問題の内容そのものは夫婦の不和やDV、幼少期の恨みと考えさせられる事例が多かったです。死んだ家族の影響が残り苦しんでいる人がいることが多いのは驚きました。でもそういうものかもしれません。しがらみからのがれるための方法として、物語を書き換えるナラティブ・セラピーなどが紹介されています。ロールレタリング法は効果が得られるのかちょっと信じがたいですが、文字に書き起こすと冷静になったり心理状態に変化が起きるそうなのできっと効果があるのでしょう。不思議な治療法です。

馴染みのない職業の人の意見は興味深かったです。



[ 2020/03/21 22:08 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)

2020年02月05日(水)

コンシェルジュ インペリアル 6 



著者:藤栄道彦、いしぜきひでゆき
発売日: 2017/6/20

評価〔B〕 明日は我が身か。
キーワード:介護、介護士、福祉、ケア・マネージャー、

「受けた愛を忘れない立派な人だと思いますよ」(本文より抜粋)


お年寄りの生き方や家族の性格によって、介護する人々が親身になるか冷たくなるかは様々です。本シリーズは迷惑だとはっきり言う人物が多い印象ですけど、中には暖かく接する人もいて読んでいてホッとします。

生前見積もりや遺品整理はどのように処理するのかが難しいところです。劇中のように物事が運べばよいのですが、急に亡くなってしまう場合は処分するしかなさそうで残念というかなんか惜しいですね。同じ趣味の人がいればその人に譲るのが良さそう。

次が最終巻なのできれいに終わってもらいたいです。



[ 2020/02/05 21:36 ] 漫画 | TB(0) | CM(0)

2020年01月29日(水)

なぜ、わが子を棄てるのか―「赤ちゃんポスト」10年の真実 




著者:NHK取材班
発売日: 2018/5/8

評価〔B+〕 まずは妊婦の相談にのることから。
キーワード:赤ちゃんポスト、こうのとりのゆりかご、慈恵病院、追跡取材、

ポストに預けられたから命を助けてもらえて、今の生活があるので、やはりポストがあってよかったと思います。(序章より抜粋)


何か新しいことが始まるとメディアが注目し伝えてくれるのは良いのですが、その後どうなったかは中々知る機会がありません。新しい飲食店、新しいサービス、新しい生き方……続けることのほうが難しい場合は多々あります。本書では2007年に開設された赤ちゃんポストが10年間どのように運営され、利用されてきたか伝えるドキュメンタリーです。

利用者の利用理由がいくつか挙げられていますが、本当に誰にも助けてもらえない状況ではなく身勝手な理由が結構多くて戸惑いました。不倫で世間体が悪いから、親に迷惑がかかると思って一人でなんとかしようとして、など。また、男性が認めてくれないけれどどうしても生みたくなって生んだ女性の話がありましたが、少々わがままなように感じました。妊娠するとぜひ生みたいという心境になるのでしょうか。それでも育てられないなら中絶すべきではと思ってしまいました。

民間の病院が国内で唯一しかも24時間体制で運営していることや、国が支援に消極的なことに驚きました。前者は病院の人手不足から考えると難しいですし、後者は国として親が他人に託すことを積極的に勧めたくないのでしょう。0歳の養子縁組と考えれば、他の養子縁組と変わらないように見えるのですがどうなんだろう。国に資金がないのは分かりますけど何か良い解決策はないのかな。

実親が誰か知る権利などいくつかの問題はポストのモデル発祥の地・ドイツで新しい制度が導入されているので、日本でも徐々に試していければよいと思います。このような福祉がどんどん進むとなんだかSFの世界のようです。

上記の引用はポストに託された子どもの生の声です。問題点はあるけれどこうして命が助かったのをみると、これからも存続してほしいと願っています。



[ 2020/01/29 20:35 ] 社会・歴史 | TB(0) | CM(0)