2016年09月10日(土)

ダンゴムシに心はあるのか 



著者:森山 徹
発売日: 2011/3/19

評価〔C+〕 動物学と心理学の研究とは。
キーワード:生物、動物行動学、心理学、

気がついたのが、このように観察者である私に「おかしいな」と思わせる、「意味不明」な出現の仕方をする変則転向、それはまさしく、心によって発現させられた「予想外の行動」なのではないだろうか、ということでした。

(本文より抜粋)


動物行動学の研究者が、心を解き明かすために行っている最新の研究を紹介しています。

心というと意思や感情を連想しますが、著者が主張している心とは平たく言うと『抑制された精神活動部位』です。意識しているが行動にしない考えのようなものだと理解していますが、今のところ半信半疑です。分かるような、いや違うような・・・・・・どこかすっきりしません。何故でしょう?

読み進めていくと、ダンゴムシの観察をしているだけのように見えますが、実験の意図が分かると面白さが分かります。知能や心があるとは思えない昆虫にも、著者が定義した心はあるように思えてきます。大脳に相当する器官はないのに不思議です。4章でも触れられていましたが、知能や心と器官の関連性も、今後解き明かされていくのでしょう。

動物学が少しだけ具体的に知ることができたのは良かったです。研究はまだまだ続いているので、新たな真実の発見に期待しましょう。



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[ 2016/09/10 19:00 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2015年09月24日(木)

人間はどこまで動物か (新潮文庫) 



著者:日高 敏隆
発売日: 2006/11/28

評価〔C〕 題材は嫌いではないのですが
キーワード:随筆、生物学、動物行動学、文庫化、

じつはショウジョウバエは酒そのものが好きなのではない。アルコール分が好きなのである。(P33より抜粋)


動物行動学者のエッセイ集です。新潮社の「波」に掲載されていた文章をまとめた本を、さらに文庫化したものです。

随筆ではありますが、生物学の新書とエッセイをまぜ合わせた内容となっています。ハエや蝶、蝉などが度々取り上げられ、身近にいながら知られていないそれらの生態を知ることができ、興味深いです。また、大学の先生らしく学生や大学も題材として選び、感想や自論を述べています。

好みに合っていると思って読んだのですが、どうもどんどん先を読みたくなるといった感じではありませんでした。なんか合わない、とでも言いますか。理由はいまいちよく分かりません。気になったのは、エッセイにしては詳しく説明していてテンポが悪いことでしょうか。それと、内容が硬めで気軽に読めないと思います。このあたりは好みの差なのかな。

新書のように専門的な文章か、逆に娯楽性を追求した随筆のどちらかに寄っていれば、もう少し違った感想になっていたでしょう。



[ 2015/09/24 21:12 ] 随筆 | TB(0) | CM(0)

2015年05月29日(金)

人体 失敗の進化論 



著者:遠藤 秀紀
発売日: 2006/6/16

評価〔B〕 具体的な進化の過程が面白いです。
キーワード:進化、脊椎動物、生物、人体、動物園、

実は、このように進化の当初の“狙い”と最終的に出来上がったものの役割が異なることは、身体の歴史としては珍しい出来事ではない。むしろ、進化の常道とすらいえるのである。(本文より抜粋)


胎児は母親のおなかの中で、生物の進化の過程を辿るように成長していくという話を聞いたことがあります。なんでも原始的な魚類のような形からどんどん成長して、時間をかけて人間の姿になっていくとか。人類が突如現れた種ではなく、前の生物の形から進化を経てきたことが分かるエピソードだと感じました。本書では、解剖学の研究者が人間がどのように進化してきたか、他の生物の進化も踏まえて解説していきます。

爬虫類が鳥類に進化しました、のような大雑把な話し方ではなく、この器官はこの骨がこのように変化して作られたと細かく説明しているので分かりやすいです。耳や骨のできる過程は興味深く面白いです。しかし、想像しやすく理解しやすい反面、血や肉、骨など生々しいものが苦手な僕としては、読むのがきつい所もありました。

後半は人間の体がどのようにして出来たかが詳しく述べられています。二足歩行と大きな脳を得るかわりに、どのような不都合が出始めたのか。ある程度知っていたとは言え、色々と短所がありなんとも言えない気分になります。また、人間社会の変化と進化の関連性も触れています。「なぜ月経があるのか」の考察は新鮮でした。

終盤、解剖学者としての姿勢や大学とお金の関係、動物園のあり方について意見を述べていますが、こうした記述が多いと不満を訴える印象が強く残ってしまうのではないでしょうか。純粋に学問に取り組みたい心境は分かりますが、さらりと書いて進化と解剖の面白さを押し出したほうが良いんじゃないのかな。




[ 2015/05/29 20:50 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2015年03月19日(木)

死にたくないんですけど iPS細胞は死を克服できるのか 

死にたくないんですけど iPS細胞は死を克服できるのか (ソフトバンク新書)死にたくないんですけど iPS細胞は死を克服できるのか (ソフトバンク新書)
著者:八代 嘉美、海猫沢めろん 他
出版社:ソフトバンククリエイティブ
出版日:2013/09/18

評価〔B〕 iPS細胞をよりよく知るために。
キーワード:生命、iPS細胞、ES細胞、生物学、遺伝子、

昔ならともかく、今なら生物学の最先端研究技術を使うことによって、生老病死にまつわるあらゆる障害を取り除くことができるんじゃないか?(まえがきより抜粋)


題名を見て「まったくだ」と思ったのは久しぶりです。作家の海猫沢めろんが死を克服する方法を、友人で生物学者の八代嘉美にあれこれ尋ねてみたのをまとめた生物学の入門書です。特にiPS細胞について掘り下げています。

二人の対話形式で進みますが、一人が素人でもう一人が専門家なので、分かりやすく読みやすいです。率直に疑問や願望をぶつける海猫沢めろんが清々しいです。生物学や医療の専門家には、希望の持てることを断言してほしいという意見は同感です。

自宅でできる遺伝子検査キットから始まり、ES細胞、iPS細胞と繋がっていきます。ESとiPSの違いがよく分からなかったのですが、違いと倫理上の問題点が明確に書かれていて良かったです。また、遺伝子を組み込むのにウイルスを使ったり、外国より日本のほうが研究の規制が厳しいことなども興味深かったです。

ただ、限定された領域での話ですので、生物学全体を語るには不十分です。専門的な知識を得たい方には、不満を感じる内容でしょう。あくまで入門書です。でも、これらの内容が研究や医療の根本あるいは土台なのかもしれません。




[ 2015/03/19 21:50 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2014年12月03日(水)

人間はどこまで耐えられるのか 

人間はどこまで耐えられるのか (河出文庫)人間はどこまで耐えられるのか (河出文庫)
著者:フランセス アッシュクロフト
出版社:河出書房新社
出版日:2008/05/02

評価〔A〕 これで賞がもらえなかったのは残念
キーワード:生命、医学、自然科学、極限、地球

最大限に順化させた場合でも、7900メートルより上に登ることは危険で、滞在時間は二、三時間にとどめなければならない。これは登山家のいう「デス・ゾーン」で、それ以上の標高に長くとどまると、体の機能が急激に低下する。(本文より抜粋)


人間の体はどのくらい過酷な環境まで耐えられるのか、また極限状態ではどのような反応を示すのかを紹介・説明しながら、人間が生きのびられる限界を探ります。

題名が硬くないので易しめの科学エッセイかと思っていたのですが、過去の事故や研究から考察している科学的な内容です。物理、化学、生物の知識があればより深く理解できますが、理解できなくても楽しめると思います。ただ、読んでいると時々怖くなってしまうのが弱点かもしれません。また、原文の良さか訳者の巧みさか分かりませんが、翻訳特有の読みづらさも感じず読めました。こういう細かいところは結構大切です。

印象深かったのは低地から高地へ大規模入植する難しさと、アフリカの人々が手足が長い理由です。後者は、体内の熱を放出するために、手足を長くして表面積を大きくしているのだそうです。どちらも人種もしくは民族による身体的特徴の違いが要因だとあり、人間も予想以上に順化した生き物なのだなと感心してしまいました。

研究のデータをとるために自ら被験者となる科学者たちの探求心が凄いですね。探らなければわからないけど、一歩間違えば死んでしまうかもしれない。危険よりも知りたい欲求が上回るのには頭がさがります。著者もキリマンジャロに登って高山病にかかったりしています。かなり活動的だ。

宇宙で人間に起きる生物学的反応や、極限状態で生きる人間以外の生物にも触れられていて、読者の好奇心を満たしてくれます。本書は一般読者向けの本の賞を取るために書かれたのですが、残念ながら賞はとれませんでした。でも、十分魅力的な本でした。



[ 2014/12/03 22:01 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)