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2020年05月05日(火)

「先送り」は生物学的に正しい 究極の生き残る技術 



著者:宮竹貴久
発売日: 2014/3/20

評価〔B+〕 あの手この手で生き延びています。
キーワード:進化生物学、処世術、

状況が変わるのか、変わらないのか、そのときどきの環境に合わせた「変化」と「選択」が求められるのだ。(第2章より抜粋)


昆虫を始めとして様々な生き物の生態や行動から、現代社会を生き残る技を学びます。主に自分より力の強い者や立場が上の者に対してどうすれば生き延びていけるのか、その手法(対捕食者戦略)を考察しています。

題名や裏表紙からは処世術の本のように見えますが、実際は生物の生態の紹介が大部分なので、実用にはあまり向かないと感じました。しかし、生物の本としてみると興味深く、弱者には弱者の生き方があるのだなと感心しました。先送りにも触れていますが分量はそれほど多くありません。変容、擬態、寄生と多種多様な生態に触れています。

著者の専門である死んだふりは何の役に立つのかピンとこなかったのですが、敵が動くものに先に反応するという詳細を知ってかなり面白かったです。会議で指名されないように上司と目を合わせないあれと同じだと説いていて分かりやすかったです。授業の先生の指名も一緒ですね。また、食物連鎖の考え方よりも新しいフードウェブ(食物網)や、托卵で有名なカッコウ戦略も騙される側も変わりつつあるのも興味深かったです。

子孫を残せば満点といった進化生物学の視点は、競争社会の上昇志向とは異なり多少違和感がありますが理解できます。一見後ろ向きにも思えるこうした戦略は、人間の社会でも有効なのかもしれません。



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[ 2020/05/05 16:35 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2018年12月17日(月)

バッタを倒しにアフリカへ 



著者:前野ウルド浩太郎
発売日: 2017/5/17

評価〔B+〕 すごく楽しそう。
キーワード:昆虫学、サバクトビバッタ、モーリタニア、ポスドク、

何も取り柄がない自分だったが、フィールドワークを苦に思わないのが取り柄になるかも。このサハラ砂漠ことが自分が輝ける舞台なのではないだろうか。(本文より抜粋)


表紙のバッタ人間を見て、なんだか軽い感じの新書なのかなと思っていましたが、期待を上回る面白い本でした。題名どおり若き昆虫学者がアフリカはモーリタニアに行き、今までまったく異なる環境でバッタを相手に奮戦します。

まず文体が研究者の書いたものとは思えないほど軽めで読みやすいです。まるでネット記者のようです。加えて、数多くのカラー写真が掲載されていて、モーリタニアがどのような場所なのか、バッタの大群とはどのような光景なのかひと目で知ることができます。

面白いだけでなく押さえるべきところはしっかり書かれています。アフリカでのバッタによる被害の深刻さ、ポスドクとして職を得ることの難しさ、生物相手に思うようにいかない研究。いくつもの困難が著者を待ち受けますが、好きなものに対する意欲と行動力で立ち向かいます。最大の決断を迫られた後の第7章に心打たれました。研究所のババ所長が印象深い。

テレビで若い女性の生物学者がジャングルで何か月も暮らしている様子を伝えていましたけど、あの人と同じなんだろうなと思うと納得できます。好きだからこそ、なのでしょう。ここまで突っ走れるのが羨ましいです。

今後どのような成果を出すのか、その時にまた別の本で合えるのを楽しみにしています。



[ 2018/12/17 21:31 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2018年09月27日(木)

なぜ男は女より早く死ぬのか 生物学から見た不思議な性の世界 



著者:若原 正己
発売日: 2013/12/17

評価〔B+〕 人間だけでなく様々な生物の性を紹介。
キーワード:性、有性生殖、雌雄同体、染色体、

男と女の区別ははっきりしているように見えますが、はたして、本当にその協会がはっきりしていると言ってよいのでしょうか。(第3章より抜粋)


流行りの脳科学ではなく、純粋に生物学の見地から性とは何かを追及していく本です。恋愛やジェンダーを軸に書かれた書籍は多いのですが、こうした基本に戻って生物学を中心にしたものは最近では珍しいかもしれません。Amazonの説明によると全国学校図書館協議会選定図書。

題名から人間の話が主題かと思っていたのですが、昆虫や魚、哺乳類と数多くの性を紹介しています。オス・メスを自由に産み分けられるミツバチ、温度によって性別が変わるサンショウウオ、集団の地位によって性転換するカクレクマノミと想像している以上に性は複雑で、かつあいまいなことが分かります。オス・メスで体の大きさが違う性的二型と夫婦関係も詳しく書かれていて良かったです。

人間は男の子のほうが多く生まれる理由も興味深いです。昔、男性のほうが早死にだから多く生まれると聞いたことがあるのですが、本書のY精子のほうが軽いから早く卵子に到達するという説明のほうがしっくりきました。

生物学の最先端であるiPS細胞も取り上げられています。iPS細胞は多少は知っていましたが、男も女も自分の細胞から卵子と精子を作り出し、1人の人間からクローンでない人間を生み出すことができるのは知りませんでした。どの細胞にも分化できるだけでなく、自家受精や同性同士の生殖も可能になるとは。衝撃的でした。これを知ることができただけでも読んでよかったです。



[ 2018/09/27 21:19 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)

2017年05月07日(日)

快楽の脳科学 「いい気持ち」はどこから生まれるか 



著者:廣中 直行
発売日: 2003/8/30

評価〔B〕 脳の一部だけでは決まらない。
キーワード:脳、快楽、不快、低次脳、高次脳、

私の想像ではあるが、人間は世界を制御できたと思ったときにもっとも強烈な快感を感じるのではないだろうか。(第二章5より抜粋)


気持ち良いという感情を、心理学ではなく脳科学の見地から分析した本です。題名の「快楽」とついていますが、快を知るためには不快・辛さを知る必要として、問題行動が多く取り上げられています。楽しそうだなと思って読むと、なんか違うと思ってしまうかもしれません。

脳を原始的な低次脳と人間らしい高次脳の2つに大まかに分けて、何がどのように作用しているのか細かく説明しています。私は生物には疎いので、化学物質などの専門用語を羅列されると分かりにくいのですが、詳しい人には丁寧に書かれていて分かりやすいでしょう。

他の動物も同じようにある食欲や睡眠欲から、本来避けるべきものに接近する「怖いもの見たさ」まで幅広く取り扱っています。項目により分量に差があり、もっと快の部分を多く書いてほしかったです。また、読んでいるときはあまり感じませんでしたが、全体的にまとまりに欠けるような印象を受けました。各項目では研究が進んでいるけど、それらの軸となる分かりやすい共通点がない、のかな?

正直、理解できているかどうか怪しいです。後でまた読もうかな。本書はもう十年以上前のものなので、著者が新しい本を書く時は進展がありそうなので、気長に待つのも良さそうです。




[ 2017/05/07 17:42 ] 心理・哲学 | TB(0) | CM(0)

2016年09月10日(土)

ダンゴムシに心はあるのか 



著者:森山 徹
発売日: 2011/3/19

評価〔C+〕 動物学と心理学の研究とは。
キーワード:生物、動物行動学、心理学、

気がついたのが、このように観察者である私に「おかしいな」と思わせる、「意味不明」な出現の仕方をする変則転向、それはまさしく、心によって発現させられた「予想外の行動」なのではないだろうか、ということでした。

(本文より抜粋)


動物行動学の研究者が、心を解き明かすために行っている最新の研究を紹介しています。

心というと意思や感情を連想しますが、著者が主張している心とは平たく言うと『抑制された精神活動部位』です。意識しているが行動にしない考えのようなものだと理解していますが、今のところ半信半疑です。分かるような、いや違うような・・・・・・どこかすっきりしません。何故でしょう?

読み進めていくと、ダンゴムシの観察をしているだけのように見えますが、実験の意図が分かると面白さが分かります。知能や心があるとは思えない昆虫にも、著者が定義した心はあるように思えてきます。大脳に相当する器官はないのに不思議です。4章でも触れられていましたが、知能や心と器官の関連性も、今後解き明かされていくのでしょう。

動物学が少しだけ具体的に知ることができたのは良かったです。研究はまだまだ続いているので、新たな真実の発見に期待しましょう。



[ 2016/09/10 19:00 ] 自然科学・医学 | TB(0) | CM(0)